コレデモカノジョデス 作:トクメイデス
ある一日の出来事である。
「雄一君、なんスかこれ?」
「ん?」
学生としては休日だが、社会人としては平日という半端な一日のことだった。
家で仕事をしていると家に要がアポなしで遊びに来たのだが、俺が相手できないとなると、なぜか勝手に掃除という名の家探しを始めてきた。
特にやましいものは置いてないから、と放置して仕事をしていたのだが、目途が立って休憩しようかという矢先に、要があるものを持って俺の前に来たのだ。
……グル白で。
「落ち着け……ただの処分忘れだ」
「だからなんだこれはと言っている」
「…………ジョークグッズです」
つまりオナホールです。
「なら捨ててもいいっスね?」
「別にいいが……どこにあったんだ?」
指差されたのはベッドの下……に入れていた箱の中だった。というかこいつ、人のベッドの下を漁っていたのか?
「エロ本隠す基本っスからね」
「分かるが心を読むな……ああ、そっか」
一人暮らしだからと適当な小物入れにエロ本やジョークグッズをまとめて入れていたのだが、一時期買い過ぎて適当な箱に移していたのをすっかり忘れていた。要と付き合うことになった日に南無南無言いながら処分したのだが、ベッドの下までは気が回っていなかったようだ。
というかこいつ、人の秘密を探るのに躊躇なしか。今度こいつの部屋を家探ししてやろうか、って……
「そういえばまだ、要の部屋に入ったことがなかったな」
「なんでそんなところに話が飛躍するんスか?」
「気にするな、俺も要のことが知りたいだけだ」
適当に要の頭を撫でながら、もう片方の手でオナホを取り上げた。
箱によくあるアニメキャラが描かれたシリコン製のホールだが、要が怒ったのはそのキャラを見てだろう。タイプ的には要じゃなくて有栖川の方が近いからな。
「よく見たら未開封じゃねえかよ。こんなのに嫉妬してたのかお前?」
「うるさいっスね。雄一君は綾姉のような女の方がいいんでしょ。どうせ……」
「アホか」
撫でていた手を上げ、軽く手刀を落とした。
「アタッ!?」
「だったら使用済みだわ。箱に入れたまま放置するか」
とはいえ、ゴミの日は昨日だったしな。ゴミ箱に入れておいてもいいが、次のゴミ出しまでに部屋に来るかもしれない要がいちいち気にするのもいただけない。
適当な袋を探していると、要がなにかを思いついたのか、ニヤリと目元を黒く染めて笑い出した。
「ゆういち、くぅん……」
「なに考えているんだ。お前」
嫌な予感しかしない。
「まあまあ、お仕事でお疲れでしょう。そのままベッドへどうぞっス」
「……ああ、展開が読めてきた」
要が身体をくねらせながら、俺をベッドの上に追いやったのだが、その際に奪われたものがある。
そう、例のオナホだ。
力任せに箱からオナホを取り出し、付属のローションと一緒に並べてから、要は服を脱いできた。今日の下着は薄紫色のストライプ上下、しかしスポブラか。そこまで小さい方ではないと思うのだが。
「かわいいかわいい彼女が、これからお仕事の疲れを癒してあげるっスよ」
「そりゃどうも……」
要にズボンを脱がされ、そのまま下着も脱がされた。
ポロリ、と出てきた人参に手をそれられ、まずはとばかりにゆっくりと上下させていく。
「まずは人参さんをおっきくさせて~」
「歌うなよ」
くっそ、体勢が悪くて上半身を起こせない。起こせたらキスして口をふさぐのに。
「よしよし、じゃあ次に人参さんをおもちゃに入れて」
「ちょっと待って、ローション使って!!」
さすがに強引に入れられるのは看過できずに、オナホの使い方を要に手早く説明した。
昔横着してそれやって、すごく痛い目を見たんだよ。
「ほら、初めての時お前の袋口湿らせたろ。潤滑液がないとこすれて痛いんだよ」
「ああ、そのためのやつっスか。これ」
その時点でようやく、要はローションがある理由に気づいたらしい。
「というか、なんだと思ってたんだ?」
「媚薬の一種かと思って、人参さんを入れた後で飲ませようかと……」
「口へ入れちゃいけません!!」
危なかった……もう少しでローション飲まされるところだった。
「じゃあこれ使い捨て、っスか? 一回使ったら終わりっスよね、この量」
「いや、洗えば使える。別売りのローションを買うかボディソープを溶かしてぬるかすれば」
へえ、と感心しながら、要は付属のローションの封を切り、オナホの差込口へと注ぎ込んでいった。ちょっともれてはいるが、使う分には問題ない。
「こんなもんスかね……では改めて」
「お手柔らかに……」
片手で硬くなった人参を構え、もう片方の手で持ったオナホに人参を差し込まれてしまう。
経験上すぐにこれを動かすものだと察した要は、俺の人参が硬くなったのを見てから、両手でオナホを持って上下に動かし始めた。
「あ、これおもしろいっスね」
「彼氏をおもちゃにしやがって……」
コレデモカノジョだから、余計たちが悪い。
「ふっふふん、ふっふふん……」
「はぁ……」
まあさっきまで仕事してて、まともに相手してやれなかったんだ。
これくらいはいいか、と俺はベッドに身体を預け、天井を眺めながら要のされるがままとなった。
「雄一君、出そうっスか~?」
「要、一つ言い忘れたんだが……」
要の手が止まる。しかし俺は天井を見上げたまま、ピクリとも動かなかった。
「……興奮材料、つまりおかずがない」
「雄一君……」
「いや触覚だけじゃ足りなくて……」
暗に視覚にも刺激が欲しいと、俺は手ぶりで示した。
それで察したのか、要はオナホを持ったまま、身体を回転させて俺の上を跨いできた。
「ほらほら、パンツっスよ~」
「もうちょっと色っぽいのが……」
「さすがに予算が……それにルカのCDも欲しいし」
水蓮寺ルカか。そういえば、もうすぐ新譜が出るな。
「俺がルカのCD買って貸そうか? ここで聴いててもいいし」
「それもいいんスけどね……」
微妙に煮え切らない態度。
……ああ、そういうことか。
「だったらこうしよう」
「はい?」
四つん這いの姿勢で身体の下を覗くように、要の視線が俺に向けられた。それに応えるために、近くにある脱がされたズボンから、財布を一つ取り上げた。
「実は生活費用とロトくじ用に財布を分けてるんだ。そっちは半分小遣いみたいなもんだから、余った金で貯金しない分を入れてるんだよ」
「しっかりしてるっスね~家計簿もつけてるんスか?」
「それが面倒だから分けているんだよ……」
見せたのはロトくじ用の財布。あまり入れていないから、そちらは二つ折りのものにしている。対して生活費用はカードやクーポン券等も入れるので、幅広の縦長財布だ。
「ロトくじの分だけ共用にしようぜ。これくらいなら、生活に支障はないしな」
「いや、あの……」
「別にいいよ」
どうせ俺の金を使うことに躊躇しているだけだろう。
あの時に使ったアレを気にしてのことだろうが、こっちは別になんとも思っていない。
……ロトくじ買うのを止めさせなきゃな。
「少しは格好つけさせろ。これでも彼氏なんだからな」
「あまり、甘やかさないで欲しいっス……」
まあ、その間もオナホを上下させられていたから、全然格好つかないんだけどな。
「……雄一君もルカ、好きっスか?」
「歌はな。さすがに写真集とかまでは買う気がない」
というか、彼女がいるのにわざわざアイドルの写真集を買う気が起きないだけなのだが。
「じゃあ、雄一君が喜ぶものにしか使わないっス」
後に、微妙に高給だと気づいて、少額ならばアホほどたかるようになるのだが、その時はまだ知る由もなかった。
「まあ、それでもいいが……」
照れくさくなり、俺は頬をかいた。
その間俺の視界には要のショーツが映り、人参にはオナホががっつりはまっているわけだが。こんな状況で話すことでもなかったな。
「……決まり。そろそろ終わらせてくれ」
「にっひっひ……どうしよっかな~」
見えていなくても、今グル白になっているのが良く分かる。
まだ仕事が残っているので、そろそろ終わらせてくれると助かるのだが……
「じゃあフィニッシュ、っス!」
ああ、一気に上下運動強めてきたな……もうだめだ。
「うっ!」
オナホの中に人参の果汁が飛び出ていくのが分かる。要もてのひらにまでその感覚が伝わってきているのか、ゆっくりと手を動かすのを止めた。
「はぁ……」
「癒されたっスか?」
「そうだな……実はさらに癒されるイベントが残っている」
俺の上からどいた要からオナホを受け取り、人参に差したまま部屋のある一角を指差した。
「……風呂湧かしてくれ」
実は後始末が大変なんだよ、これ。
「ああ、さっぱりした……」
「銭湯の娘にお風呂沸かさせるとか、かなり贅沢っスよね」
ソファに腰掛けて漫画雑誌を読んでいた要にそう言われながら、俺はパン一でバスタオルを肩に掛けながら風呂から出てきた。
すでに服を着ている要の前で服を着ながら、夕食の献立をどうしようかと考えていた時だった。
「雄一君、電話なってるっスよ」
「電話?」
俺はシャツを着てから、ハンズフリー用のイヤホンマイクを耳につけて電話に出た。
……そして激しく後悔した。
「……要求変更?」
聞くと、気が変わったから仕事内容を変更したいとのことだった。おまけに特急料金で。
「どうしたんスか? 雄一君」
「今までの仕事が無駄になり……これから新しい仕事をしなければならない。しかも急ぎで」
それを聞いて、要は雑誌を置いてから立ち上がった。
「……手伝えること、なにかあるっスか?」
「夕飯の支度、お願いします……」
俺は生活費用の財布も、要に見せることになったのである。
今日はとことん、要に俺のことを教える日だったらしい。
「あのアマ……今度会ったらしばく」
「誰っスか?」
「クライアント」