コレデモカノジョデス 作:トクメイデス
家で仕事を片付けた後、せっかくだからと草津風銭湯に来ていた。要への土産と、由崎達への陣中見舞を片手に。
「ありがとうっス。雄一君」
「いいよ、ついでだし」
軽く風呂に入ってから、その間に着替えてきた要と一緒に離れへと歩いていく。
「フンフフーン♪」
「気に入ったようでよかったよ」
いつものジャージ上から若草色のブラウスに着替えた要は、嬉しそうに袖口を眺めながら俺の横を歩いている。そんな大したものでもないし、ブラウスだけ着ても仕方がないと思うのだが。
……ジレベストとか、意外と似合いそうだな。いや、パンク系も捨てがたい。
「雄一君、どうかしたんスか?」
「いや……やるのがブラウスだけなのはどうかと思ってな」
リボンかタイも一緒にやればよかったな、と考えていると離れが見えてきた。
要と一緒に中へ入ると、由崎が嫁さんを横に置いてパソコンの前でなにかやっていた。
「よう、由崎夫妻」
「何してるんスか?」
「ああ、二人ともいらっしゃい」
会釈する嫁さんとは別に、由崎はパソコンから目を離さずに答えてくる。
「お嫁さんのためにゲーム作ってるんだよ」
……え?
「ゲーム作ってるって、」
「なんスかその地味なパワーワード?」
よくやるわ、こいつ。
「というかセンパイ、こんな古いパソコン使ったことあるんスか?」
「ないよ。今日初めて見たし」
こんな骨董品レベルのパソコン使えるとか、相変わらずイカれた頭しているな、こいつ。
「でも司さんの選択は正解だと思うっス」
「え?」
要が伴侶に求めるものを語ってきたが……たしかにそうだよな。
俺の知る限り、由崎以上に賢くて頼り甲斐のある人間に心当たりはないし。
「そう考えると……俺はまだまだだな。その辺りは」
「そんなことはないと思うよ。雄一君って、結構頼りになるし」
喧嘩専門だけどな。
「私も甲斐性はあると思うわよ……要が着ているブラウス、かなりいいものじゃないの?」
「いや、そこまでいいものじゃない」
どうやら要から、俺が贈ったものだと聞いたらしい。由崎の嫁さんに要のブラウスを褒められたが、正直生地以外大したものじゃないと思う。
「前に描いたデザインで作ってみたけど、量産向きじゃないし。オーダーメイドにしてはシンプル過ぎる……猫の刺しゅうでも入れればよかったかな」
「私はこれ、結構気に入ったっスよ」
「へえ、作……え、作った?」
……あれ、由崎の嫁さんの顔色がおかしい。
「……由崎、お前俺のこと話したか?」
「あ―……そういえば言ってなかったっけ?」
話せば大したことないんだが、なぜか初見だといつも驚かれるんだよな。
「ええと改めまして、江崎雄一……実家がアパレルブランド経営していて、その関係で針子兼デザイナーとして糊口をしのいでいます。よろしく」
「……それって、アパレルメーカーの御曹司、ってこと?」
「まあ、会社規模は小さいけれど一応」
の割には、結構儲けているんだよな。若干趣味に走り過ぎて経費かさんでるけど。
「そんな人がなんで高校行きながら働いているの!?」
「親の教育方針で」
当ててやろう。どんな教育だ、と内心で思っているはずだ。
わりと理にかなっていると思うんだけどな……
「それで仕事ついでに余った布で作ったのが、今要が着ているブラウスだ」
「君も結構、正解を選んでいるよな……」
「振り向かせるのに、かなり苦労したっスけどね」
その節は苦労をお掛けしました。
「……よし、できた」
嫁さんにグチる要に内心頭を下げている内に、由崎はゲームを完成させていた。
シンプルな縦スクロールのシューティングだったが、結構しっかりと作ってあるらしい。
「ちなみになんだけど―……」
嫁さんがプレイしているのを眺めていると、由崎が設定を話そうとしたので、俺は迷わず逃げようとしました。
「ぐっ……」
しかし先読みしていた要に服の裾を掴まれてしまい、脱出失敗。俺達は由崎のクソダセェゲーム設定を10分くらい聞く羽目になってしまった。詳しくは原作を見てくれ。一々書いてたら規約に引っかかる上に気がめいる。
神よ、なぜこいつに物語の才能を与えなかった!?
「しかし私達は幸せだな……」
「そっスね……こうやって私達のために、いろいろと作ってくれたりして」
大したことをした覚えはないが、妙な照れくささが俺と由崎を襲ってきていた。
「でもよかったよ、ゲーム楽しんでくれて」
たしかに、作ったものを喜んでくれることが一番……
「この部屋、ほらテレビがないから」
「え!?」
由崎いわく、嫁さんはテレビが大好きらしく、ないことを悲しんでいたとかいないとか……あ、忘れてた。
「そうだ、由崎達にこれ持ってきたんだった」
「なんスか、それ?」
要の疑問に答えるよりも、実物を見せた方が早いと袋から取り出す。
「……地デジチューナー?」
「そういえば、古いテレビがあったっスね」
「それ思い出して持ってきたんだよ。昔一緒に片付けたろ?」
……気のせいか、本当に、と問いかけてきた嫁さんの頭に動物の耳が生えていたような。
「あとそっちにも親父の古いゲームとかがいろいろあるので、使ってみます?」
「みます。ぜひ見ます!」
すごい変わりようだな……このまま離れに居座るんじゃねえの、こいつら。というか嫁さん。
「私……しばらくこの家の子で大丈夫だから、家はゆっくり見つけましょう」
「ええっ!?」
……ダメだ。完全に目がいってる。
頼むから、一生居座るとかアホな展開はやめてくれよ。場合によっては俺が実力行使しなけりゃならないだろうが。
「とりあえずおっぱい揉んでるとこ見せてくれたら」
「よしなさい」
「あたっ!?」
ひとまず要の頭に軽く手刀をくれてから、俺は由崎に地デジチューナーを手渡した。
「この前テレビ買い替えたから、引っ越しのタイミングで返してくれたらいいよ」
「う、うんありがとう……」
むくれる要を膝に乗せてかまいながら、それを見て微妙な顔をする由崎であった。
……あ、どうせ持ち主いないから、引っ越し時に全部嫁さんに渡す、って言えば済む話か。これ。
で、しばらくした後になぜか、俺は要の部屋にいた。
「可愛い彼女をぶつからっス……」
とはいえ、本人も本気ですねているわけではない。
俺を部屋に連れ込み、軽くすねて遊ぼうというのが今回の狙いのようだ。
「……それで、どうして欲しいんだ?」
「とりあえず謝るっス」
「ごめんなさい」
そして軽く殴られた。解せぬ。
「まあ、いいっスけどね」
「おい、だったらなんで謝らせた?」
しかし要は答えず、ベッドの上に腰掛けていた俺におおいかぶさり、唇を合わせながら押し倒してきた。
「ちゅ……んぁ、っ…………」
そのまま互いの舌を絡ませ合い、ディープキスに持ち込まれる。俺は抗うことなく、要の行為を全て受け止めた。
「じゅ……んみゅ、ん…………」
ディープキスはあまりしない方だ。上手く絡ませられるならともかく、互いに若干力任せにやるとけっこう痛いんだよな、これ。
だから俺は抵抗せず、要のするがままにされていた。
すると俺の人参にも手を伸ばされ、軽くさすられた。
「ふむ……こんなものか」
「なにが?」
要の顔が離れたかと思えば、俺からどいて立ち上がらせてきた。とりあえず一緒に立ち上がると、扉の前に連れていかれる。
「じゃ……勝手に帰って悶えてるっスよバーカ! バーカ!」
背中を蹴られ、俺は要の部屋から追い出された。
「彼氏なら無条件で味方しろバーカ!」
バタン、と扉が閉められる。
えー、という感情に俺の心が支配されていると、通りかかった有栖川に肩を叩かれる。
「ドンマイ♪」
「楽しんでんじゃねえよ……」
大方うまくいかなかったのを喜んでんだろうが、残念だったな。今要からL○NEが来た。
「……これ見ても同じこと言えるのか?」
「なに?」
有栖川にそのメッセージを見せる。
『雄一君も、たまにはわがまま言ってもいいっスよ』
「……どゆこと?」
「さすがにわがままだって自覚してんだろ」
部屋を離れると、再度L○NEが来る。
『いつもこっちがわがまま言ってごめん』
「……たいしたことじゃないさ」
これも男の甲斐性かね、などと考えながら俺は玄関を出て、草津風銭湯を後にした。
……インスタントカメラって、今いくらくらいだろう?
以下今週号(2019年11号)ネタバレ話有、注意
凪:おいっ、C4はまだかっ!?
颯:ごめん、あのやくざ持ってなかった!
凪:くそっ、本当に読みが浅いな!
凪:あの作者!
颯:まさか5巻が3月に発売するなんて……
颯:もう少し先だと思ってたんだけど
凪:考えたら、原作も結構溜まっているからな
凪:だから読み間違えたんだよ
凪:おかけでやる気のない作者にはっぱをかける羽目になってしまった
颯:でもこれ……『発破』だよね?
凪:なんでもいいだろ、作者がやる気出せば
凪:要も出てきたんだし、さっさと書けというに……
颯:おまけに新キャラも出てきたしね
凪:しかもそいつの人物設定的に……
凪:ちょっと困ったことになるからな
颯:早く書かないからそうなるんだよね……
凪:しかたないだろう
凪:その肝心な話をするのが第5巻なんだから
颯:でも今は2月だし、まだ間に合うんじゃないの?
凪:だからやる気を出させようとしているんだ!
凪:早くC4でふっ飛ばしてやる気を出させろ!
颯:作者死んじゃうんじゃないかな……
凪:とにかく!
凪:少なくとも第4巻分はさっさと片付けろ!
凪:じゃあな、お前達もしっかり歯を磨いておけよ!
凪:……個人的には今回の新キャラともからんでみたかったらしいんだがな
颯:出てきたばかりだから、まだ設定がよくわからないのに?
凪:だが面白いくらいに濃いだろ?
颯:たしかに……