コレデモカノジョデス 作:トクメイデス
「いちゃつく、ってなんだと思う?」
「いちゃつく、か……」
それは、俺が仕事上がりに草津風銭湯に寄った時のことだ。
暖簾をくぐると由崎が近寄ってきて、おもむろにそんなことを聞いてきたのだ。俺はその問いかけに数秒悩み、そして結論を導き出す。
「……独自の解釈になるが、かまわないか?」
「大丈夫、参考に聞きたいだけだから」
それだけ聞くと、俺は結論から口にした。
「いちゃつく。それすなわち…………戦闘力なり!!」
「せっ、戦闘力っ!?」
勢いよく叫んですっきりした俺は、驚く由崎をよそに、あるものを掲げて見せた。
「たとえばここに、仕事帰りに銀座で買ってきたお土産のプリンがあるだろ?」
「うん、高そうだね……」
「これをまず、取り出す」
俺はしゃがんで紙袋を置くと、その中から一つ取り出してから立ち上がった。するとめざとく捕捉したのか、グル白化した要が箒片手に音もなく近寄ってくる。
「すると要が寄ってくるだろ?」
空いた手であごを撫でると、猫のようにごろごろ鳴き出した。グル白化を解いてから頭も撫で、プリンの蓋を開ける。
「要がプリンを物欲しそうに見ているだろ?」
そこで俺は一緒に持っていた付属のスプーンを空いた手に持ち、一口分すくう。
「目の前に差し出すだろ?」
スプーン上のプリンは、パクンと要に捕食されてしまう。味が気に入ったのか、すっごい笑顔を俺に振りまいてくる。
そして床に置いた紙袋を肘にかけ、箒も脇に挟んだまま器用に、俺からプリンとスプーンを強奪して立ち去って行った。
「さて、由崎…………お前これを見せられてどう思った?」
「少なくとも四回!! 雄一君がうらやましかった!!」
力強く返事をする由崎に俺は深くうなずいてからやつの肩を叩いた。
「これが戦闘力、またの名を…………リア充力だっ!!」
「リア充力!?」
戦慄する由崎に、俺は畳みかけるように語った。それはもう熱く!!
「そう。非リア充はもちろんのこと、並みのリア充すら打ち砕く恋人とのふれあい! それ自体が戦闘力を持つリア充の一撃……それこそがいちゃつくってことだぁ!!」
「そっ、そうだったのか!?」
驚愕であごが外れんばかりにおののく由崎に背を向け、俺は男湯の暖簾をくぐった。
「まずは、お前がやってみたいことをやってみろ。そこから徐々に鋭い一撃を生み出せばいい……」
「しっ、師匠っ!?」
いいことをすると気持ちがいいな……端の方で聞いていた要と由崎の嫁さんからの視線が痛かったが。
で。
「あれなんだったんだ?」
「多分、新居に移ってからどういちゃつこうか、って悩んでたんじゃないスか?」
「新居?」
風呂上がりに要の部屋で貰い物のメロンを一緒に食べながら、さっきのはどういうことかと聞いてみた。なんでも前の大家が新しく建てる新築の部屋を借りないかと紹介されたらしい。
結局は向こうのミスで見れなかったようだが、高級マンションを見学できて楽しかったとか要に話していたようだ。
「しかし新居か……」
今の部屋だと風呂が狭いんだよな。
次はいっそのことマンションの一室でも買うか。一部屋を完全に仕事場にして、夜は広い風呂でゆっくりと……うん、悪くない。
「いや、この前行った一軒家も捨てがたい」
「まあ、この家の近くならなんでもいいっスけどね……」
食べ終わったメロンの皿をまとめてから、ベッドの上に腰掛けていると隣に座った要に引かれて倒れ込んだ。そのまま膝枕の状態になっていると、いきなり耳になにかが突き刺さった。
「耳掻きしてあげるっス」
「せめて刺す前に言って欲しかった……」
物騒な彼女だがコレデモカノジョだ。
なにより女の子に膝枕して貰った上に耳掻き付きとか、贅沢極まりないな。
「ああ、気持ちいい……」
「いいから、次反対側っスよ」
寝返った俺の顔は、要の腹に埋もれた。
「要の匂いがする……落ち着くな」
「……臭いとか言ったらグサッと刺してたっスよ」
物騒なことを言う彼女だな。
そうこうしていると耳掻きも終わり、俺は膝枕のまま、仰向けに寝転がった。しかし、頭だけ要に抱え上げられてしまう。
「ぅちゅ……」
「ん……」
さすがに首が痛いので、腹筋に力を入れて上半身を起こした。
唇を重ねるだけから、徐々に舌を割り入れて互いを貪りあう。このまま致したいところだが、要の実家でやるわけにはいかないのが痛い。
……興奮はするんだけどな。
「ぷぅ……雄一君、一発どうっスか?」
「無茶言うな」
いっそこのまま出掛けてもいいが、風呂上がりなんだよな。おまけに少し暗くなってきているし、下手なリスクは避けるべきだが……こっちも我慢できん。
「この家に人気のないところってあったっけ?」
「今お母さんが店番しているからこの部屋、って言いたいっスけど……多分綾姉が自室でゲームしてるんで」
あのド天然、本当に俺と相性悪いな。
「じゃあどうすっかな……この前みたいに都合よく騒音鳴ってないし」
「個人的には物足りないんスけど、たまにはいいですかね」
こういう時、実家で遊ぶのは手間なんだよな。どっちの家でも家族が見張っているというのは……
「これ以上は我慢できないし、そろそろお暇しようかな」
「たしかにもう、夕飯時っスよね」
時間もちょうどいいしな。
「でもその前に」
「ん……」
今度は舌を絡ませず、唇だけのキスをずっと続けていた。
正直要の身体に触れたいとも思うが、理性がもたないので今回は自重することに。
「……あれ、雄一君?」
「おう、有栖川」
部屋から出てきた有栖川が不思議そうに首を傾けているのを、俺は席に着いて茶を飲みながら見返した。
有栖川はいつも座っているという、俺の向かいの席に腰掛けてくる。
「どうしたの、こんな時間に」
「ちょっと夕飯にお呼ばれしてな」
そして茶を啜る。若干わざとらしく。
「……え、そのお茶はなに?」
「無論、愛しの彼女が淹れてくれたお茶だ」
ゴン、という音がしたが気にすることはない。大方照れた要がなにか落としたのだろう。
「まさかそれ、食後のお茶じゃ……」
「想像に任せるよ」
ズズズ……とさらに音も立てて有栖川に見せつけてやった。部屋に籠ってゲームやってた仕返しに盛大にだ。
「ちょっと待って……じゃあ私の夕食は!?」
「美味しゅうございました」
テーブル越しに放たれる拳をさばき、持っていた湯飲みを置く。
「危ないな」
「私のご飯返せ!」
予想通りの行動に出た有栖川をおちょくっていると、要が夕飯を盆にのせて出てきた。
「雄一君、綾姉をあまりからかわないで」
「いや、面白くてつい……」
「……え、どういうこと?」
このお茶は食前だってことだ。
夕飯前にお茶飲んでいただけなんだよな、実は。
「今日お母さんが遅くなるからって、自分の分を雄一君にくれたんスよ」
「あの人は出前取るんだと。せっかくだから寿司の割引券やっといた」
この間のお礼に。
「は、はは……」
まあ、エロ展開の不安要素かましてくれた仕返しは、これくらいでいいだろう。
「じゃあ、ご飯にするっスよ」
「はあ……この恨みは大きいわよ脳筋」
「だまれド天然」
そして俺達は、嫌味と下ネタが飛び交う食卓を囲んだのであった。
夕食後。
「……ありがとうね、雄一君」
「なにがだよ?」
(家事のできる)要の代わりに見送りに来た(家事のできない)有栖川に、俺はそう言われた。
正直、心当たりがなさすぎるので、逆に怖い。
「要ちゃんのそばにいてくれたことよ」
「ずいぶん今更だな……いったいどうした?」
「ちょっと心配していたのよ……お父さんのことを思い出すんじゃないか、って」
ああ、しまった……普段あちこちで一緒に食べ歩いているから忘れてた。
そういえば、この家であいつと食卓を囲んだのは今回初めてだ。そして、由崎の奴がお呼ばれしない限り、食卓に男がつくことはない。
そう、駆け落ちした要達の親父以来、ないことだった。
「悪い、気づくのが遅れた」
「別にいいわよ。平気そうだったし」
するりと俺の前に立つと、上目遣いに見つめてくるのを止めろ。外見(だけ)は完全に美少女なんだからさ。
「だからありがとう。ナサ君と一緒にこの銭湯を守ってくれたことも含めて」
「……どこまで気づいている?」
「なんとなく、よ……」
有栖川は背を向け、中へと戻っていく。
「要ちゃん泣かせたら怒るからね」
その言葉だけを残して、有栖川は俺の前から去って行った。
「……肝に銘じておくよ」
誰にも聞かれることのない言葉だが、自らの戒めとしてつぶやいておく。
「なんだかんだ、『姉』なんだな、あいつも……」
女は怖い、と改めて思いながら、俺は家路に着いた。
凪:ようやく原作4巻分まで終わったな
颯:最後かなり巻いちゃったけどね
凪:かまわん
凪:これ以上読者を待たせるな
凪:いいかげん、さっさと完結させればいいのだ
凪:でないと『二次創作界の盲腸』の称号を手に入れてしまうぞ
颯:どちらかと言うと、それはエタってる作品全般だと思うよ
凪:……お前って結構毒舌だよな
凪:だがまあ、いいだろう
凪:とにかく、ようやく原作5巻だ
凪:この物語の核心を語り、
凪:何やかんやオリジナルやって完結し、
凪:やり逃げするのだ!!
颯:なんでやり逃げにこだわるんですか?
凪:決まっているだろう
凪:先走った二次創作特有の
凪:『原作とちょっと違ってましたごめんねテヘペロ♪』
凪:を避けるためだ!!
颯:とっくに手遅れだと思うけどな……
凪:それこそ今更だ
凪:というか二次創作なんて結局はファンのエゴの塊だ
凪:原作だけ楽しんでいればいいのだ!!
凪:というわけで、次回から原作5巻編が始まるのだ
凪:全員歯を磨いて待っていろ!!
颯:皆さん次回もよろしくお願いします!!
凪:雑誌のさ、原作者のあらすじあるだろ
凪:あれいつか、まとめ本出してくれないかな……
凪:登場人物のセリフ込みで
颯:微妙に売れそうだよね……あれ
颯:『ONE PIECE』の扉絵の例もあるし