※この作品はR-18です。

コレデモカノジョデス   作:トクメイデス

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第21話 星の少ない夜空が好きな理由

 たまには三人称で。

「ふぅ……」

 離れの縁側に腰掛け、要は足をぶらぶらとさせている。

 ナサは司と綾のゲーム対決を眺めていたが、要は休憩もかねて、外に出ていた。

 雄一が来るのを、静かに待っているのだ。

「あんまり星が見えないっスね……」

 ジュース片手に夜風に当たっていると、要の脳裏に過去の記憶がよみがえってくる。

「……あの時も、こんな夜空だったっスね」

 目を閉じてしまえば、もう過去の光景しか目に映らなかった。

 

 

 

 泣きはらした後は、ただ空笑いを浮かべていた。

 意外なことに、要には作り笑いの才能があったらしい。周囲は特に違和感なく、日々を過ごしていた。

 ナサの活躍で銭湯も無事経営復帰し、客足も安定しているものの、要の心にはまだ、欠片が一つ足りていなかった。

 ……雄一がそばにいなかった。

「……よう、久し振り」

 数日後、松葉杖をついた雄一が現れた。

 要は離れの縁側に腰掛け、雄一の方を向く。しかし、見るだけでなにもしなかった。

「ああ……この間は、悪かったな。忙しい時に、俺は喧嘩なんかしてて」

 なにも言わない要の近くにより、杖にもたれかかるように立ったまま、雄一は言葉を続けていく。

「あ、そうだ。おわびにケーキ買ってきたんだ。みんなで」

「……どうしてっスか?」

 ようやく口を開いた要は、雄一を見つめていた。しかしそこに張り付けられた笑みはなく、ただ無表情に。

「どうして喧嘩できたんスか?」

「いや、それは……」

 言い訳を考えていた頭は、次の言葉で思考を停止させてしまった。

「どうして……どうして地上げ屋なんかと喧嘩できたんスか!?」

 雄一はなにも、言えなくなった。

 要が浮かべていた無表情がはがれ……

「なにも知らなかったのに。あんなにひどいこと言ったのに! それなのになんで!?」

 要は泣いた。

 立ち上がり、雄一の身体に頭をぶつけ、何度も拳を叩きつけながら。

「なんで、ウチのためにそんなことができたんスか!? これじゃ、これじゃ、私……」

「……はあ」

 雄一は息を吐き、空いた手を要の頭の上に置いた。

「失敗したか……」

「……え?」

 座っていいか、と手振りで示され、要は横に身を引く。その脇を雄一は松葉杖をつきながら歩きぬけ、縁側に腰掛けた。

「……お前も座れよ」

「あ、はい……」

 要が横に腰掛けてから、雄一はゆっくりと話し出した。

「俺の親のこと、話してたっけ?」

「いえ……家がアパレルメーカーの経営者だけど、教育方針で一人暮らしさせられていると聞いたことがあるだけで……」

 それ自体も、ナサが話してくれたことだ。雄一から聞いたわけではない。

「成り上がりだけどな……」

「成り上がり?」

 それは初めて聞いた、とばかりに要は目を見開いた。

「そう、成り上がりだから……いつ潰れてもおかしくない。そう言って追い出したんだよ」

 しかし、雄一の顔はどこか明るく、誇らしげだった。だから要も、不思議そうに彼を見つめていた。

「今でこそ針子やデザイナーの類で仕事しているがな、別に他の仕事でも良かったんだよ。『自分一人で生きていけるなら、好きなことをやれ』って言われてな」

 それこそが、雄一が両親を尊敬する理由だった。

 独り立ちできるよう、いざという時以外は自分だけで物事を解決させてきた。対価さえ用意すれば、コネすら使わせてくれた。自分の力で財産を築けるよう、いくらでも大成する機会を用意してくれた。

「……だからなんで、っスか?」

 けれども、要にはまだ疑問だった。今の説明も、だからどうした、としか思えないのだから。

「それはな……」

 雄一は空を見上げながら、言葉を続けた。

「……この銭湯に通うことが、俺の日常だからだよ」

「日常?」

「そう、その時一緒に、『ただ、日常だけは壊さないようにしろ』とも言われてな」

 雄一はいつものように、腕を持ち上げて要の頭に手を置いた。今回は、置いたままでなにもせずに。

「両親が成り上がった途端な、周囲の態度も変わったんだってさ。金に目がくらんだり、成功に嫉妬したり、な。実際、親戚付き合いすらほとんどなくなっちまったらしい」

 それを聞いた時、雄一の心に見えない恐怖が宿った。

『人が変わる』、という恐怖を。

「だから変えたくなかったんだよ。また通常営業している銭湯に、風呂に入りに来る度にお前らが笑って迎えてくれる、そんな日常を」

 だからこそ、雄一は拳を握った。

 経営に関してはナサがいる。だからその間だけ、誰にも気づかれずに守り通せれば、日常を守れる。そう考えて。

「喧嘩を見られた時も、謝ればまだ戻せると思ってたんだがな……」

 しかし、失敗した。誰にも気づかれないように行動するつもりが、雄一は最後の最後で失敗してしまった。

 どこで聞きつけたのか、要は雄一が地上げ屋と衝突していたことを知ってしまった。

 地上げ屋の恐怖を知り、怯えさせてしまったのだ。

「そんなことされて、私はどうしたら」

「……別に」

 要の頭から手を離し、松葉杖をついて雄一は立ち上がる。

 歩を進め、遅々とだが離れから、要から離れようとした。

「できれば黙っててほしいが、話したければ好きにしろ」

 一人で抱え込めないだろう、そう考えての発言だった。

 怪我が治っても、もうここには来れないだろうな。そう考えると少し寂しくなるが、失敗した以上は仕方がない。

『成功も失敗も、大きいほど周囲を変えてしまう』

 そう教わったのに、結局はなにもできなかった。

 うまくいかないな、と思っていた雄一の手を引く者がいた。

「……お礼くらい、言わせてくれないんスか?」

「いらない、結局は俺のためだ。俺が勝手に日常の一部たと思い、勝手にやり、勝手に怪我しただけだ。いちいち気にするな」

 要の手を払うことはできたが、そうしてまで離れる理由もなかった。

 ひとまずは気が変わるまで、雄一はじっと待つことにした。

「……あんな大金まで持ち出しといて、っスか?」

「そこまでばれてたのかよ……」

 さすがに後味が悪くなったのか、掴まれていない方の腕を松葉杖を脇に挟んで、空いた手で頬をかいた。

 数千万円も当たっていたロトくじを全額医療費に換えてしまったのだ。そっちも隠していたつもりだったが、無駄だったらしい。

「仕方ないだろ。親にばれて事情聞かれるわけにもいかないから、真っ当な医者にかかるわけにいかないし……」

 もしかしたら貯金も吐き出すことになるかと覚悟していたのだが、どうにかギリギリ耐えられたと思っていたのに。そう考えていると、雄一にふと要に話した心当たりが浮かんできた。

「そうか、あの医者か……」

 ドクター黒須という流しの医者に、口止め代も込みで治療スタッフとして待機してもらっていた。

 しかし別れ際に受けた『ギリギリ足りた』という発言が、雄一の脳裏に妙に引っかかっていたのだが、どうやらそこから話を聞いたらしい。

「もし……」

 しかし聞いていたのかそうでないのか、要は手を握ったまま雄一の背中に顔をうずめてきた。

「もし……私が黙ってたら、また通ってくれるんスか?」

「……お前がいいなら、な」

 ずるい、要はそう思った。

 そう言われたら、要にはなにも言うことができなかった。

《ああ、そうか……》

 しかし、同時に気づいてしまったことがある。

《……私は、この人のことが好きなんだ》

 泣きそうになる気持ちを引き締め、目に力を込めて耐えようとした。そのつもりだったが、あの時に一度大泣きしたからか、苦もなくこらえることができた。

《好きだから、私達を放って喧嘩していたことを怒ってしまったんだ……バカっスね、私》

「どうした、妹?」

《自分のためだけならとっくに逃げている人が、死にかけてまで喧嘩してくれたってことに、気づかなかったんスから……》

「なんでもないっすよ……」

《……まあ、先に妹呼びをやめさせるところから、っスね》

「……だから、皆の所でケーキ食べましょう。雄一君」

「ああ、ありがとう……ん、雄一君?」

 そう呼ばれたことに不思議そうな顔をする雄一を置いて、要は彼から離れて先を歩き出した。

「さすがにあきれてものも言えないっスからね、今回ばかりは……だから」

 雄一を一切見ずに、要はてくてくと歩きながらこうほざいた。

「もう先輩だと敬意を払う気、まったくないんで」

 かすかに残る涙をぬぐいとり、後ろ向きにピッ、と小さな中指を立てながら。

 

 

 

 しれっと一人称に戻して。

「しかし……苦労したっスよね」

「なにがだ?」

 ようやく手土産片手に離れに来てみれば、縁側に腰掛けていた要からもれ聞こえていたつぶやきにそう問いかけた。

 しかし当人はなんでもない、とばかりに首を振ってくる。

「お疲れさまっス、雄一君」

「ああ、悪い。待たせたな」

 とりあえず土産のケーキを要に渡し、俺は靴を脱いで縁側に身を乗り上げた。

「まだ騒いでたのかよ……あれ、ナサの声が聞こえないけど」

「多分中で綾姉達のゲームながめてると思うっス」

「ずいぶん盛り上がってるみたいだな……」

 戸を開けて中にいるナサに挨拶してから、ゲーム中の女二人の後ろを通ってから離れに入った。

 ふと、要がついてきていないことに気づき、振り返って声をかける。

「要、どうした? 入らないのか?」

「ああ、今入るっス!」

 慌てて入ってきた要にぶつかられた。一瞬何事かと思ったぞ。

 

 

 

《ほんと……鈍感な雄一君を振り向かせるのに苦労したっスよね…………》

 

 

 

 そして、時間は既に深夜帯。

「やるな、お前……」

「お前もな……」

 などとほざき合いながら寝転がってグータッチするアマ二人に、さっきまで俺達とブラックジャックして遊んでいた要が立ち上がって声をかけた。

「あの、提案なんスけど……」

 なんとなく展開が読めたので、俺とナサはトランプを片付け始める。

「雄一君も来たし……そろそろタコ、焼きません?」

『……あ』

 俺って、タコパに呼ばれてたんだよな、とようやく思い出すのであった。

 

 

 

「あれ、今回僕のセリフこれだけ!?」

「というか三人称じゃなくても、今回は別に要視点の一人称で良かったんじゃ……」




以下今週号(2019年25号)及びマーベル映画のネタバレ話が混ざる可能性有、注意




















凪:なんで原作上の同じ年に『無限戦争』と『最終遊戯』がやってんだよっ!?

颯:……これ伏字代わり?

凪:訳は適当だけどな

颯:あと、それ言い出したら、

颯:僕達の時なんて携帯からあっさりスマホに代わってたじゃない?

凪:まあ、某探偵漫画なんて携帯普及前になぜかスマホ使った過去編やってたしな

颯:原作と現実の流れが違うと、いろいろと面倒だよね……

凪:それ言い出したら、今回の話もだろうが

凪:いくら過去編でもはしょりすぎだ

凪:せめてロトくじを一度高額当選させていたとか

凪:少しでも話しておくべきだろうが馬鹿作者め!!

颯:まあ、それはいいんだけど……

颯:ようやく終わるんだね……この話

凪:意外と長く続いたが、さっさと終わらせろというんだ

凪:すでにインセンティブ稼ぎを始めているというのに

凪:原作ヒロインのポーズなんて気にしている暇ないだろうが!!

凪:現実では何してもいいからさっさと終わらせろ!!

颯:皆さん、ではオリジナルストーリーでお会いしましょう

凪:気長に歯でも磨いて待ってろ。ではな!!



凪:……別に今回で終わらせてもいいんじゃないか?

颯:シー!!

颯:それ言っちゃダメだって!!

颯:回収していない伏線もあるんだからさ!!

凪:ほんとロトくじでも当たればいいのにな……

凪:書きたいものに対して割り当てられる時間がなさすぎる

颯:世の中そんなものだよ……
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