コレデモカノジョデス 作:トクメイデス
「結構おいしかったっスね。雄一君」
「元々、一流シェフを迎え入れたからその宣伝をしたくて、ホテルの関係者や常連に無料招待券を配っていたらしいからな……しかし誰からもらったんだ? あの人」
どこから手に入れたチケットだったのかを考えつつも、結論は出ないからと思考を止めて展望レストランからの景色を楽しむ。要は食後の紅茶に口をつけながら、じっとこちらを見つめてきていた。
「……どうした?」
「いや、べつに……」
視線がそれるも、チラチラとこちらを見てくる要の様子を、俺は横目で眺めていた。
やがてそれに飽きると、俺は自分の分の紅茶を飲み干し、向かいに座る要の方に顔を戻した。
「どうする? このままホテルの部屋に行くか、それとも……」
と、俺は提案しかけるが、ふと思い直してその口を閉じた。
「……あ~やっぱり、ちょっと散歩、付き合ってくれるか? このホテル、最上階が展望台になってるんだってさ」
「いいっスよ。私もちょっと、風に当たりたかったし」
話はまとまり、俺達はレストランを後にして最上階の展望台に出た。
少し肌寒くはあるが、レストラン内の熱気火照った身体にはちょうど良かった。
「ほら、羽織ってろよ」
「あっ、どうもっス」
要に適当なベンチに腰掛けさせ、スーツのジャケットを渡してから俺は天を仰いだ。
東京の空でも、多少は星空は見えるらしい。さすがに排気ガスのない田舎には負けるだろうが。
「もうちょっと晴れてれば良かったんだけどな……」
「そっスか? 私は結構好きっスよ。こういう夜空も」
ベンチの横に立つ俺を見上げるように、要はそう返してきた。
まあ俺も、要がいればわりかし嫌いにはなれなかったがな。
「……悪かったな、付き合わせて」
「いや、食事はおいしかったので別に」
「そうじゃなくて……口止めさせたことだ」
夜空を眺めながら、俺はベンチの背もたれに腰を付けた。
「結局は俺のわがままだからな。要が無理に付き合う必要はないんだぞ?」
「なに言ってんスか、いまさら」
どこかあきれたような口調で返されてしまう。
ま、結局は男のエゴだから、あきれられて当然か。
「それに……」
言うと、要は立ち上がって数歩前に出た。腕を後ろで組み、夜空を眺めながら。
「……結局、私は変わっちゃいましたからね」
振り返ってくる要の目は、どこか寂しげだった。
「怒ってるっスか? 知っちゃったことを」
「今更だろ……知ろうとしてきたならまだしも、知った後だと意味がない」
そう、意味がない。
俺はそれを隠そうとしたのに、最後の最後で失敗してしまった。
俺のやったことは、要の分だけ無意味になってしまった。
「でも……かえって良かったのかもな」
そう言って、要の前に立つ。
するとなぜか、笑いがこみ上げてしまうから不思議だ。
「こんなかわいい彼女ができたんだ。完璧、とはいかなくても、まぁいっか、って思っちまったよ」
「……ほめたって、なにもでないっスよ」
「別にいいさ……」
身体をかがめ、要の唇を奪う。普段よりも優しく、普段よりも淡く。
「……お前がいてくれたら、それでいい」
「女ったらし……」
今度は頭を掴まれて、そのまま貪るように唇を奪われた。
周囲に人が少なかったから良かったようなものの、普段なら絶対にできない行為だった。
「雄一君……大好き」
「そりゃどうも」
春先とはいえ、さすがに夜だからか冷えてきた。
ジャケットを羽織ってはいるが、要の身体も冷たく感じてしまう。
「そろそろ、いくか」
「ぅ……うん」
恥ずかしがっているな、要の奴も。
まあ俺も、初のお泊りだから内心かなりビビってるんだが……
ホテルへのチェックインをすませてから、俺達はダブルの部屋に入った。ツインと違い、ベッドは一つしかないのでさらに緊張感が増していく。ラブホテルと違って直接的なエロスはないが、ロマンチックな夜景がまた違ったムードをあおってくる。
ラブホテル行ったことないけど。
「先に風呂入ってこい。身体冷えたろ?」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
着替えのバスローブを持って、要はバスルームへと入っていった。
ワードローブもすぐ近くにあるので、ドレスを脱いでおくこともできるはずだ。
俺も待っている間にスーツを脱ぎ、バスローブに着替えて備え付けのソファに腰掛けた。
「ひぃ、ふぅ、みぃ……」
財布から包装ゴムを取り出し、数えながら。
「よしよし、けっこうあるな……」
とはいえ、少し心配でもあった。
体力や時間、そして初めての時に少し痛い思いをさせてしまった負い目から、普段は一回か二回で終わらせているからな。
「さて、泊りがけで何回できるか……」
まあ考えていても仕方がない。
股間の人参が硬くなっている分は出させてもらおう。出遅れた分の果汁はトイレにでも流しておけばいいか。
そうこうしていると、バスローブに着替えた要が下ろした髪をタオルで乾かしながら出てきた。
「雄一君、次どうぞ……って、なにやってんスか?」
「いや、ちょっと夜の準備を、な……」
卓上に並べた包装ゴムをそのままに、俺はそそくさとバスルームへと向かった。要のグル白が向けられる前に、と。
「ふむ……」
しかし、要の目がグル白になるどころか、なにか考え込んでいる表情になっているのを、その時の俺が知ることはなかった。
「家よりましだが、さすがにせまいか……要がさっさと出てきたわけだよ」
シャワーを浴びつつ、湯船で身体を温めつつも、けっこうくつろげていた。
こういう時くらい、股間の人参も気を抜いていいと思うのだが、これからのことを考えてか、いまだに硬度を保ったままだ。
「あ~……まあ、銭湯だとこうはいかないからな」
「どうしてっスか?」
「男相手に硬くなるわけないし、なにより要が……」
湯船の外に、その愛しの彼女がいた。
要はバスローブのまま、頬に手を当てて覗き込んできている。
「……なんでいる?」
「別にいいじゃないっスか。ヤることヤるんだし」
そういうこと言うなよ。雰囲気壊れるだろうが。
「それに、ちょっと冷えましたしね……」
要はバスローブをはだけ、近くの取っ手に投げ掛けた。
そして下着をまとってない裸体を湯船の中に沈み込ませてきた。つまり俺と一緒の風呂に入ってきやがったのだ。
「いやぁ、さすがにちょっと早かったのか、身体が冷えちゃって」
「お前な……そんなことするんじゃねえよ」
我慢できなくなるだろうが。
湯船の中で要の身体を抱え、小さな胸やくびれを撫でまわしていく。
くすぐったそうにする要が振り返り、顔を近づけると唇を合わせてきた。
「……雄一君、人参さんが当たってるっスよ」
「無茶言うな、この彼女様め」
身体を裏返してきやがった。
互いに唇を貪りながら、身体を触り合う。ここはホテルの部屋で他に人もいなく、泊りがけなので時間もたっぷりある。おまけに由崎夫妻は今頃奈良県だ。
正直由崎達の所在はどうでもいいのだが、なぜ脳裏に走ったのだろうか?
「雄一君、入れて……」
「ちょっと待て、ゴムが向こうに――」
しかし要に唇を塞がれ、その間に袋口に人参を入れられてしまった。
降ろされた小さな腰に逆らうこともできず、人参が小さな袋口に絞られてしまう。
「おまっ、中に出したら――」
「大丈夫っスよ」
しかし要は気にすることなく、俺の顔を猫のように舐めてきた。
「今日は安全日だし、避妊薬飲んできたんで……今日だけ中出しし放題っスよ」
「あの……俺が男だって忘れてない?」
加減が効かなくなっても知らないからな。
湯船からお湯がこぼれるのもかまわず、俺達は腰を振り暴れた。
「誘ってきたのはお前だからな!」
「いいから、いいからもっとぉ!」
要の身体をきつく抱きしめ、逆に袋に入れられた人参が締めつけられていくのを楽しみながら、
「出るっ!!」
「ぁ……」
吐き出された人参の果汁にあてられたのか、要の顔がゆるんでいく。その唇からこぼれ出るよだれをなめとりながら、俺は小さな身体を抱えて湯船を出た。
「ほら、しっかりしろ」
「ぁぅ、ぅ……うス」
おざなりに身体をふきながら、身体がうずいてしかたない俺達はベッドへと急いだ。