この素晴らしい世界に居座るTSド変態野郎にも祝福を 作:らいじゅう
そうですか。
エロは?
ん?あんまり、ない。
ほとんどないといっていい。
成る程。
:.∴(°Д°)グハッ(ハラキリッッ!!)
殆どの者が枕に頭を預ける夜もふけた頃。
光が煌々と灯り、楽しげな声と人で賑わう場所がある。
俗にいう歓楽街と呼ばれる場所だ。
私はその歓楽街の光が差し込む路地裏で、自分の浅はかさを後悔していた。
何故、大人しく帰らなかったのかと。
「お、おい。クリス。やはり、止めておかないか?」
「何言ってるの、ダクネス。ここまで来て引き下がれる訳ないでしょ?噂の真偽を確認しないとっ!」
建物の影から通りを覗くクリスは何処か楽しげに言う。私はと言えば、罪悪感とかなにやらで一杯一杯だ。正直バレる前に帰りたい。騎士としてもどうかと思うし。
「あ、ダクネス、ダクネス!!こっちこっち!」
やたらとテンションの高いクリスに手招きされ仕方なしに覗いて見れば、歓楽街を歩く二人の姿が見えた。
仲間であるカズマとカナデだ。
「よしっ!いこう、ダクネス!」
「うわっ、ちょっ、クリス!?━━━!」
始まりは数日前、クリスのほんの一言から始まった。
「ダクネス。噂聞いた?」
数日ぶりの再会でお昼を共にしていた時、不意にクリスが悪戯っ子のような顔で聞いてきた。
よく見知ったその顔で。
クリスは根は良いやつなのだが、隙あらば悪戯をしかけてくる茶目っ気が強い所もあるやつだ。実際親しくなってから幾度もからかわれた経験があった。
最初こそ身近にそういう者がいなかった為、色々と躊躇う事もあったが、今ではもう慣れたもの。何か良からぬ事を考えていれば、何となく分かるくらいになっていた。
だから少しだけ警戒して、私は耳を傾けた。
何んの話なのかと。
「カナデとカズマが付き合ってるって話ー」
「ぶっはっ!!?はっ!?はぁぁぁぁ!?!?」
最大限警戒していたのたが、思わず飲んでいた水を噴き出してしまった。対面に座っていたクリスから苦情がくるが━━━それどころではないので無視した。
「どういう事だ!!?カナデとカナデが━━じゃなかった。カズマとカズマが━━━じゃなかったな。なんだ、えっと、カナズマが?カズマで?カナデがカナデで?」
「一旦落ち着いてよ、ダクネス。意味分からないこと口走ってるから。はい、深呼吸、深呼吸」
促されて深呼吸をし、もう一度言われた事を頭の中で整理する。サトウカズマが、カナデと、お付き合いをしている。成る程。
「いや、成る程ではない!!どういう事だ!!」
「だぁぁーもう!声が大きい!周りに聞こえるでしょ!あくまでも噂よ噂よ!はいはい、座って座って!」
促されて座り、水を勧められジョッキに注がれた一杯を飲み干す。それから二度三度と深呼吸をし、そうしてようやく落ち着いた。
それから詳しく話を聞くと最近そういう噂がたっているらしいとの事だった。曰く、連れ込み宿に入る二人を見たとか、二人でイチャイチャ飲んでる姿を見たとか、二人が恋人みたいな濃厚なキスをしている所を見たとか、そんな話だ。
ただ、どれも眉唾もので確証はないものらしい。
「それでさ、同じパーティーのダクネスなら、何か知ってるんじゃないかなぁってさ。ねぇ、そこんとこ、実際どうなの?ねぇねぇ?」
「と、言われてもだな・・・・うーん」
「いやね、分かるよ。パーティー内の事だからあんま言いたくないのはさ。でもね、聞いて。私さ前に━━━」
「いや、パーティー内の事だから言いたくない訳ではない。それにクリスの事は信用しているから、それなりに訳があれば教える事に抵抗もない。ただな、分からないのだ」
クリスがポカンとした。
そして小さく「分からない?」と首を傾げる。
「ああ、分からないんだ。カナデとそういう話をした事もなければ、二人にそう言った類いの関係性を感じた事もない。なんというか・・・男女のというよりは・・・男友達?とでも言うのか?あの二人は割りとそんな感じなんだ」
実際色々見てきた私としては噂が出ていること自体驚いている。あんなに雰囲気のない二人もないからだ。
同郷の繋がりで仲が良くつるむ姿は見ているが、それは気のおけない友人という言葉の方が余程あっている姿。噂にあるような体の関係があるのはしっくりこない。
「そうなの?でもあたし、前にカナデからカズマの童貞狙ってる話聞いたんだけど・・・・」
「童貞を狙ってる・・・・・か。ふむ。それは・・・・いや、待て、なんの話だ!?そしてそれは本当の話か!?」
「本当だよー。だから余計に気になってるんだってば」
カナデ、カズマの童貞を狙ってるのか!?
「その様子だと、本当になにも知らないみたいだねー。まぁ、ダクネスは鈍いし仕方ないかぁ。あーあ、つまんないのー」
「わ、悪かったな!というか、つまらないとはどういう意味だ!クリス、やはりお前━━━━」
「ははは、まぁまぁ、そんなに怒らないでよ。それよりさ、ちょっと提案があるんだけど━━━━聞いてくれる?」
それからクリスが話した提案は簡単。
カズマ達を尾行してみないかというもの。
最初は断った。人の秘密を探るような真似はしない方が良いと。
だが、クリスに色恋の拗れからパーティーが解散する事もあると聞かされ━━━結局は心配で見に行く事にした。良い関係を築いているなら何も言わず、もし悪しき関係であれば正してやろうと思ったのだ。
ほんの少し、そう言った事に興味があったから、というゲスな理由もないとは言わないが・・・・。
そうして尾行すること数回。
湖の浄化クエスト達成祝いも兼ねた食事会を終えた帰り、ようやくその機会が訪れた。
訪れたのだが━━━━━正直、もう帰りたくて仕方なかった。
「ダクネス、ダクネス。見てみてっ!ほら、宿に入っていくよっ!ほらっ!」
クリスは声を抑えながら黄色い声をあげてはしゃぐ。
色恋沙汰になると途端に首を突っ込みたがる所は相変わらずのようだ。前に注意したのに。
「クリス、ここまで確認出来れば良いだろ。様子を見ていれば同意の上での事のようだし・・・となれば、こちらから口を出すことはない。二人とも職もあれば酒も飲める歳、成人だ。だから後の事は二人に・・・・」
言い切ろうとする前に、腕を引かれた。
視線を前にやれば目をキラキラさせたクリスがいた。
嫌な予感しかしない。
「もうちょっとだけ」
「クリス」
「そ、そんな怖い顔しないでよっ!だって気にならない?二人が何するのか」
気にならないと言えば嘘になる。
だが、駄目だ。
騎士としてどころか、人としても。
だから止めようとした。
したのだ。
けど、その言葉が私を止めた。
「カズマって、スケベでしょ?だからほら、すっごいこと、されてるかも知れないし・・・心配じゃない」
すっごい、こと、だと・・・・っ!
「ほら、カナデってダクネスと同じで・・・ちょっとあれだから、それもね」
私と同じであれ・・・・っ!
私は幻視した。
怪しい赤の灯火に照らされた小さい部屋を。
転がる玩具達、悠然と佇む三角木馬、壁に掛けられた手錠に鎖、ゆっくりと雫を落とす蝋燭。
床には汗と愛液、それと白濁の液体がぶちまけられ、異様な臭気がそこに立ち込めている。
響くのは艶めかしい嬌声と、男の威圧的な罵倒の言葉。
私は思わず溢れた涎を拭いてクリスに頷いておいた。
「クリス、いこう。あと少しだけ」
「・・・・多分だけど、ダクネスが想像してるような事は起きてないと思うよ。だったとしても止めるし」
「止めるな。二人に失礼だ」
「いや、絶対止めるから」
そうして二人の後を追い連れ込み宿へ入り、カズマ達の入った部屋の隣を借りて入室した。女二人で入るということに、何となく奇妙な気持ちを抱く。
それはクリスも同じだったらしく苦笑していた。
「さて━━━しかし、これからどうするんだ?聞く耳を立てようにも、防音加工がされていて聞こえないんだろう?」
家の関係で知っているが、連れ込み宿など風俗目的で使われる建物は国から正式な監査が入る。使われる目的が目的なので防音や防臭などといった、国から提示された幾つかの項目をクリアしなければ営業許可が降りる事はない。
勿論違法に営業されている場合ならその限りではないだろうが、この店は国から認可を受けて経営している。入り口にかけてあった認可証の写しで確認しているので、それらは然るべき状態の筈だ。
私がそう尋ねると、クリスはバッグから妙なカチューシャを取り出した。
猫のような耳がついたカチューシャだ。
「なんだ、それは」
「いやぁ、この間遺跡を探索してたら面白い物手に入れちゃってさ。はい、ダクネスの分」
さっと、兎のような耳のついたカチューシャを渡される。
「・・・・なんだ、これは」
「取り敢えず付けてみなよ。ほら、ほら」
猫耳をピクピクさせるクリスに言われ、仕方なくカチューシャを頭に付けた。すると頭の中で何かが繋がった感覚が走り、次の瞬間たくさんの音が頭の中に響いてきた。
「おおおっ!?なんだ、これは!?」
「ははは、さっきからそれしか言ってないね。音を聞く魔道具らしくてね、これくらいの壁だったら音が拾える優れものなんだよ。まぁ、形はちょっと趣味悪いけど」
「成る程。しかし、こうも煩くてはな・・・・」
「意識を集中してごらん。聞きたい場所に向けて。そうしたら拾う音をある程度指定出来るから」
アドバイス通り隣の壁に意識を向ける。
すると耳が連動するように動き、音がクリアになっていった。
『あ、んっ、んっ、ん』
艶めかしい女性の声が聞こえてきた。
グチュグチュと粘着性のある水を捏ねるような音も。
よく聞いてれば荒い呼吸音も聞こえる。
私は思わず隣を見た。
クリスも似たような心境なのか、顔を赤らめてこちらを見てきている。
「ど、どうだ?カナデだったか?それに声ではなかったが、女性とは違う呼吸音が・・・・」
「わ、分からないよ。あたしも今聞き始めた所でっ、ていうか、ダクネスが分からないと駄目でしょ!」
そ、そんな事言われてもな。
私もいきなりで━━━━
『っんあ』
━━━━ふぁっ!?
甘い声に胸をドキドキさせたしまった私は、取り敢えず落ち着くために深呼吸した。すると隣からも同じ様な音が。
私とクリスは互いに見つめあい、お互いの様子をよく確認すると、どちらとも知らず頷きあった。
そして、二人してそっと耳を隣の部屋に傾ける。
何がともあれ、もうちょっと聞いてみようと。
『らめぇぇぇ!!そんにゃについひゃら、いっひゃうっ、いっひゃうのぉ!あん!やらぁ!まらっ、やらぁ!かずゅまぁ!!』
『わ、悪いっ!もう、限界なんだっよ!出すからなっ、カナデっ!』
『ひゃあっ、おくにしてぇっ!いひばん、おくぅ、いっぱいぐりぐりして、いっぱいだひて!かずっ、まっ!あっいくっ、いっひゃう!あああああ!!』
『ッッッッッ━━━━!!』
一際大きな打ち付けるような音が鳴り、隣の部屋から聞こえる音は荒れた呼吸音が二つだけ。もうベッドの軋む音も、厭らしい水を捏ねる音も聞こえない。
聞き始めてから数時間。
結局私達は、二人の交わりを最後まで聞いてしまった。
『えへへ、さとうかずまぁー』
幸せそうなピロートークが始まりそうだったので、私はカチューシャをとった。流石にそこまでは聞いていられない。色んな意味で。
「クリス、帰ろう・・・・・ん、クリス?」
ふと隣を見ると、クリスが完全に逆上せていた。
顔を真っ赤にし気を失ってる所を見ると、意外と初だったらしい。私も人の事言えないが。
私は鼻から溢れた鼻血を拭き取り、クリスを背負い外へと出た。
取り敢えず何も聞かなかった事にしよう、とそう心に決めて・・・・いや、無理だな。どうしよう。どんな顔で明日会おう。誰か教えてくれ。