この素晴らしい世界に居座るTSド変態野郎にも祝福を 作:らいじゅう
それは悲しみ。
エロなし。
それは18禁の名折れ。
エロなし。
それははっきり言って苦痛(((( ̄皿 ̄井))))
爆炎が幹部様達に落ちるのをみて、冒険者達から大きな歓声があがった。普段迷惑でしかない騒音の原因も、今日ばかりは手放しで喜ばれているようだ。
感謝の滲む頭のおかしい子コールが降り注ぐ中、俺に背負われためぐみんが忌々しそうな視線を辺りに向け「後で殴ります」などと悪態をつくが、その顔には言葉とは裏腹な表情を浮かべていた。
口元がニヨニヨしてる。照れているのか頬は赤く染まっていて、それに何処か誇らしげでもある。
普段爆裂魔法の事はサトウカズマくらいしか褒めてくれないから、皆に褒められて普通に嬉しいのだろう。
正直言えば、結果がはっきりするまで気を引き締めてて欲しいのだが・・・まぁ、今は許してやろう。
現実を突きつけるには、あまりに忍びない顔だからな。そんなに嬉しかったのか、めぐみん。
ふと顔をあげるとサトウカズマが手を振ってこちらに向かってるのが見えた。なので同じように振り返そうとしたのたが、サトウカズマが浮かべていた焦るようなそれに嫌な予感を覚える。
「カナデ、めぐみん!走れ!」
「━━━━━爆裂魔法とは驚いた。こんな所に、これ程の魔法を操る者がいようとは思わなんだ。まさか部下を全滅させられるとはな」
いまだ煙立ち込めるその場所から、聞き覚えのある低い声が響いてきた。
警戒し身構えると突風が吹き荒れた。
視界を塞いでいた煙が散らされ、いまだ火が燻る巨大なクレーターが目の前に現れる。
そしてその中心には、大剣を握りしめた漆黒の鎧を纏う幹部様の姿があった。
「駆け出し程度に本気を出すのも馬鹿らしいと思っていたが・・・・興が乗ったわ。魔王軍幹部であるこのベルディア、直々に貴様らの相手をしてやろう。無論、本気でいくぞ」
やる気満々と言った様子で歩き出した幹部様は、先程までとは違う危険な雰囲気を纏っていた。見ているだけで背筋がゾクゾクしてくるような威圧的な雰囲気だ。
口にした言葉は冗談ではなさそう。
「あの魔法受けて無傷な訳がねぇ!てめぇら行くぞ!あと一押しだ!!」
囮を買ってくれた冒険者が中心になり、幹部様へ駆け出していく。一見するとバラバラな動きだが、それぞれが自分の役割を踏まえた、ある意味で統率のとれたプロの動きだ。
一瞬にして囲まれた幹部様だが、その余裕は崩れない。
寧ろ楽しげに辺りを見渡している。
「ふんっ、くだらん」
吐き捨てるようにそう言った幹部様は自分の頭を空へと放る。両手が自由になった幹部様は片手で振り回していた剣を両手で握り━━━━一瞬で囲んでいた冒険者を斬り伏せた。それも囲まれていたにも関わらず、まったくの無傷のまま。
あまりの早さに目が追い付かない。剣をふったという事を辛うじて認識出来る程度だった。
ただ、地面にジワジワと広がる赤い水溜まりや倒れてからピクリとも動かない冒険者の様子をみれば、それが一撃必殺の剣であったのは嫌でも分かった。
幹部様は落ちてきた自分の頭を自らの手に納めると、再び歩み始めた。一歩一歩と。
その歩みを邪魔をする者はもういない。
その強さを目の当たりにして誰も彼もが動けなくなっていたのだ。だがそれを責めようとは思わない。かくいう俺もちょっとチビってしまったくらいだから。じゅんじゅわぁぁって感じだ。まぁ、逃げ足は止めないけども━━━ん?
「━━━━ん?貴様」
俺と同じような反応をした幹部様が足を止めた。
理由は幹部様の道を遮るようにうちのドM騎士ダクネスが立ちはだかっていたからだ。
ダクネスは腰の大剣を引き抜き構える。
「おいっ!ダクネス!自棄になるな!!足遅いのは分かるけどなっ、頑張って逃げろ!!」
そんなダクネスの姿にサトウカズマが逃げるように指示を出した。優しさから出た言葉なのだろうが、ダクネスが顔を赤らめながら「逃げられなくて自棄になった訳ではない!」と憤慨する所をみると上手く受け取って貰えなかったようだ。
「・・・・ふん、まったく。安心しろカズマ。私は頑丈さでは誰にも負けない。ベルディアの剣は確かに恐ろしく鋭い。攻撃スキルも乗った一撃必殺の剣だ。生半可な防具では受け止め切れぬだろう。━━━だが、私の防御スキルの乗った防具ならばそれも可能だ」
ガンっ、と自らの鎧を叩き、ダクネスはサトウカズマに笑顔を見せた。けれどサトウカズマの不安そうな顔色をみて、その表情を苦笑に変えた。
「言いたい事は分かる。それは、私自身分かっている事だ。だがな、聖騎士として・・・・守る事を生業とする者として。一人の冒険者として。お前達の仲間として。どうしても譲れない物があるんだ。任せてくれ」
さっきまでポンコツ・オブ・ポンコツだと思っていたダクネスが、少しだけ輝いて見えた。
まるで一端の騎士みたい。
対する幹部様は騎士が相手という事で、ただでさえやる気だったが更にやる気に。凄い燃え上がってる。楽しげにダクネスを挑発もしてきた。「是非もなし!」とか格好つけてる始末。
「いくぞっ、ベルディア!!」
怒号と共にダクネスが武器を構え駆ける。
「こいっ、聖騎士!!お前の輝きを見せてみろ!!」
それにこれ以上なく応える幹部様。
まるで物語に出てくるような伝説の戦いが始まりそうな雰囲気である。
俺はその先を見ていられなくて目を瞑った。
恐ろしくて見ていられなかったのだ。
ここまで気分高めておいて、恐らくスカるであろうダクネスの剣の行方が。
それから間もなく、幹部様の気の抜けた声が聞こえたのは言うまでもない。
ごめんな、幹部様。
うちのノーコン騎士が迷惑かけて。
盛大な肩透かしを食らいぶちギレた幹部様。
当然の怒りと共にぶった切られたダクネスだったが━━━やはりというか、何というか。ダクネスは頑丈だった。
「本当、なんなんだお前らは!!先程のアークプリーストといいっ、アークウィザードいい!!ふざけるなっ!!駆け出しが集まる所ではなかったのか!?ここは!!なんだこの硬さは!?馬鹿か!」
「くっ、やるな!ベルディア!!」
「よく言ったな!ノーコン騎士が!!やるなも糞も、お前の攻撃は一度も当たってないどころか、掠りすらしておらんわ!!」
幹部様の言うとおり、如何にも死力を尽くして戦ってる風なダクネスの攻撃は空を切り続けている。初対面の頃、不器用で攻撃が当たらないとか言っていたが、最早そんなレベルではない気がするのは俺だけなのだろうか。もうそれ、呪いレベルだろう。なにこれ。
「━━━━それと、さっきから騎士もどきの後ろからチクチク攻撃してくる小娘ぇ!!お前だお前━━━後ろを振り向くな!鬱陶しいわ!!止めろっ!そんなに効かぬが、妙に嫌らしい所ばかり狙いおって!!性格の悪さが滲み出ておるわ!」
「多額の借金を残して夜逃げした父親から『人の嫌がる事は積極的にしていけ。でもお父さんにはするな。お父さん以外だぞ?ね、お父さんと約束だぞ』と、そう教わりましたので」
「碌でもない父親の言葉など無視しておけぇ!真っ直ぐ育て!!馬鹿者が!!」
ダクネスを盾にして盾チクしてたらめちゃ怒られた。
こんなチャンスあるまいと思い、めぐみんを冒険者達に預けて飛んで来たんだが、どうも駄目らしい。
まぁ、他に攻略法考えつかないから、言われて止めるつもりもないが。
しかし、幹部様の言うとおり俺の攻撃があまりにショボい。これで痛み分け程度にダメージを与えられれば一番良いのだろうが、悲しいかなダクネスに溜まるダメージの方が遥かに高い。じり貧とは正にこの事だろう。
サトウカズマが何か考えているようなので、それに期待したい所だが・・・・あとどれくらい持つか。
なのでダメージを確認しようと盾役のダクネス軽く声をかけたのだが、返ってきたのは悲壮とかけ離れた興奮したような声だった。
「ああっ!カナデ!このデュラハンやはりやり手だぞ!さっきから鎧を少しずつ削りとってくるのだ!!全裸に剥くのではなくっ、中途半端に一部だけ鎧を残し、私を公衆の面前で、裸より扇情的な姿にして辱しめようとしてくる!!・・・・・くぅっ、はぁ!たまらん!!」
おう、心配して損した。
後一時間はいけるな、お前。
幹部様もそのドMぶりにびっくりしたのか、手を止めて体をのけ反った。すかさず玉金目掛けてモーニングスターを突きつけたが回避される。くそぅ。
「時と場合ぐらい考えろ、この筋金入りのド変態が!!」
不意にサトウカズマの罵倒が聞こえた。
振り向けば掌を突きだしたサトウカズマの姿がある。
「カナデ退けっ!!」
声に従いダクネスの襟首を掴み、サトウカズマの攻撃射線外へ自分の体ごと引き摺り出す。
その直後、サトウカズマの掌から水流が噴き出した。
放たれた水流は真っ直ぐ幹部様に向かって飛ぶが、あまり速いと言えない水流は容易く避けられた。
辺り一面を濡れた様子を見て、サトウカズマが何をしようとしてるのか分かった━━━が、同時に理解出来なかった。一度見せた物が魔王軍幹部などと大層な肩書きを持ってる奴に通用するのか?という事が。
サトウカズマは悪知恵だけは働く。
だから周囲をよく見て━━━漸く理解した。
こちらも準備する為に、未だに地べたに這いずる盾の尻を蹴りあげる。
「ダクネスっ、走るぞ」
「ひゃうん!なんて遠慮のないキック!」
◇◇◇
「『フリーズ』っ!」
俺の声が響くと同時に、再び地面が凍りつく。ベルディアの元は氷の床へと変わった。
それはベルディアにとって不利な状況━━━にも関わらずベルディアは逆にその光景を鼻で笑った。
「はっ!先程見たわ!二度同じ手が通じると思うな小僧!!それ以前に━━━━!!」
ベルディアが踏み出す。
砕けるようなバキィっという音が鳴る。
その一歩は氷を容易く割り、地面を踏みしめた。
「━━━俺に、このような小細工は効かぬ!!」
わかっていた。
何となく。
これで足止め出来るなら、こんなに簡単な事はない。
仮にも人類最大の敵組織の幹部が、初心者に毛が生えた程度の冒険者に止められる訳がない。
けど、諦める訳にはいかない。
「畜生!かっこよく終わらせろよな!・・・でもな、だろうとは思ってたよ!!完全には封じれなくてもっ、動きは鈍ってるだろ!!回避が鈍ればそれで十分なんだよ、武器取らせて貰うぞ━━━『スティール』!!」
窃盗スキルが発動し手が光った━━━━が、光が消えた時その手には何も掴まれていなかった。
指先は虚しく空振りするだけ。
その様子を見たベルディアが「悪くない手」だと言いながらも落胆の色を見せる。
「見たところお前はあの妙な連中の仲間だろう?故に少しは期待したのだがな━━━━ふぅ、世界はいつも残酷だ。俺にもお前にも等しく、な。レベル差というヤツだ。小僧」
この世界のルール、レベルという特別な概念。
未だにそれが何なのか分からないし理解出来ないが、その数値の高さで生物の強さが決まるのは痛いほど理解している。何度も信じられない物を見てきた。
この世界はまったくもって理不尽で、どうしようなくメチャクチャだ。
けれど、それがこの世界なのだ。
「知ってるよ」
だから俺は勝てない。
「世の中上手くいかない事も、俺が何処までも凡人な事も」
だから俺は燻っていた。
「お前に言われなくても分かってる」
でも、だからと言って何もかも簡単に諦められる程、大人でもない。
「誰よりもなっ━━━━━━━アクア!!」
その叫びと同時に光が空に走った。
光の発生源には霧の様な物が漂う中、爆裂魔法発射前のような雰囲気を放つアクアの姿。
「なんのつもりだ、小僧!!」
「こういうつもりだよ、やれぇ!!」
その声を聞いたアクアは光を増した。
髪が眩しいほど青く輝き、霧のようだった水の粒達は肉眼ではっきり分かるほど大きな水玉となって髪と同じように輝いた。
「この世に在る眷族よ・・・・・水の女神、アクアが命ず・・・・・・」
レベルが、スキルが、ステータスが全てだというのなら。うちにはとびきりの奴がいる。掛け値なしで本物の神様が。
何かを察知したのか、ベルディアが弾かれるように逃げ出す。だが、氷に足を取られ歩みは鈍い。加えてその先にはカナデとダクネスが道を遮るように立ちはだかっていた。
「機動騎士ドMン、ごー」
「魔王軍幹部の辱しめという物を、私に見せてみろベルディアああ!!」
「こっちにくるな馬鹿共!!くっ!!」
ベルディアの足が止まる。
「『セイクリッド・クリエイトウォーター』」
ターンアンデットはあくまでも癒しの聖魔法。アンデットに対して特効能力を持っているが厳密には攻撃魔法ではない。だからこそ、対策しているベルディアにその一撃は致命傷足り得ない。
ならば、他の魔法なら?アクアの馬鹿魔力を攻撃力に換算出来る、単純にして明快なそんな魔法であれば?加えて聖魔法同様の効果すら備えた女神の攻撃であれば?
答えはきっと、この先にある。
「うおおおおおおお!?馬鹿か貴様らあああぁぁぁぁ!!」
ベルディアの絶叫が響いたそこへ濁流が押し寄せた。
予想よりずっと強力だった一撃は、周囲の人間も土地も巻き込み大蛇の如く荒れ狂う。
ベルディアの近くにいたカナデ達の心配が頭を過ったが、水が落ちる寸前ダクネスが見せたガッツポーズを信じ、俺は俺のやるべき事を━━。
「━━━━って、アクア!!もう良い!門まで届いてっ、うおおおおおおお!馬鹿ああああ!!」
調整ミスなのか、やる気にさせ過ぎたのか、それとも俺の「なんちゃって女神」と呼んだ事への報復なのか。
うちの馬鹿女神はその洪水クラスの濁流を更に暴れさせ、正門を巻き込むほど攻撃範囲を広げ何もかも一切合切水に流した。当然俺も。
「━━━━━んあっ、は!?」
少しの意識の混濁の後、意識を取り戻した俺は水に濡れて重くなった体を持ち上げた。周囲を確認すればぐったりとした冒険者達の姿が見える。
そして、片膝をつくベルディアの姿も。
相当効いたらしくフラフラしているように見える。
立ち上がって虫の息のベルディアの元にいくと、アンデット特有の生気のない瞳と目があった。
「お前っ、仲間ごと、普通やるか・・・?」
「普通にやったら、勝てないだろ。だから賭けたんだよ。俺の運と、あいつらの優秀さを。お前の言うとおり、俺は凡人も凡人でつまらない奴だからな」
ふとベルディアの後ろの方を眺めると、ダクネスとその背中に背負われたカナデの姿が見えた。
カナデは俺の視線に気づくと、いつものように柔らかい笑みを返してくれる。
「ふざけたやつだ。メチャクチャだったのだな、お前も。━━━━だが、悪くはない。人間達への怨嗟にまみれ異形の物になり果てた俺の最後が、貴様のような人を信じ絆を重んじる人間で終わるのなら。元騎士として、この上ない最後だ。・・・・冒険者、冥土の土産に貴様の名前を聞かせろ。俺を打ち倒した、貴様の名を」
ベルディアは酷く落ち着いた声で聞いてきた。
「・・・・ああ、俺はサトウ━━━━」
「『セイクリッド・ターンアンデット』ッ!!」
「ぎゃあああああああああああ!!!」
聖なる魔方陣の光に包まれたベルディアは、悲鳴をあげながら消失していった。
憎しみの視線をこちらに向けながら光になり空に消えていったベルディアを送った後、後ろで「どうよ!これが女神の力よ!」と自身満々に言うアクアへと視線を向けた。
「なになに?カズマさん、私の顔を見て。ああ、私の力をみて、これまでの無礼な所業を詫びたいというのね?しょーがないわね、さぁ好きに懺悔なさい!女神である私が直々に貴方の罪を聞いてきあげるわ!━━━ただし、簡単には許してあげないわよ。散々無礼な事言ってきたんだもの。何を言われたのかあんまり思い出せないけど・・・兎に角よ!今晩のご飯はカズマさんのおごりよ!シュワシュワの飲み放題を所望するわ!」
「いや、格好つけさせろよおおおおおおおお!!」
俺の慟哭が空に響いた。
次回、ご褒美編(エロしたい欲望にかられて書くから、恐らくエッチな回になると思いますが、万が一にも気分が乗らなくなった場合イチャイチャして終わる可能性もあるのであしからず)