この素晴らしい世界に居座るTSド変態野郎にも祝福を 作:らいじゅう
サンドバッグされる覚悟は出来てる。
おら、こいやぁぁぁぁぁぁ(*´ω`*)!!
魔王軍幹部討伐という偉業を達成して早一週間。
仕事を休ませて貰った俺は、ちょっとだけお洒落をして街の中央広場でサトウカズマと待ち合わせしていた。
「なんか、違和感が凄いなぁ」
周りの視線やらスースーする感じが気になって視線を落とせば、違和感の正体が風に揺れていた。
そうスカートである。
別に今日初めて穿いた訳ではない。ウェイターの時は常にスカートだから穿き慣れてはいる。穿き慣れてはいるのだが・・・・それはあくまで仕事の時だけという話。普段着は普通にズボン派なので、外でスカートを穿いたのは何気に初めてだったりするのだ。え?連れ込み宿で、コスプレ御奉仕したじゃないかって?あれは室内だったのでセーフ。
何がともあれ違和感が凄い。
改めて自分の姿を見下ろして思う。
うーむ、なんだこれ。
「自分の格好見て、何顔しかめてんだ?」
聞き慣れた声に顔をあげるとサトウカズマがいた。
俺と違っていつもの冒険者の格好だ。
なんだ、なんか悔しい。
「お前も着替えろ・・・・こう、パリッとしたスーツとか着ろ。七三で」
「何でだよ。着ねぇし、七三にもしねぇよ」
「なんか、俺一人で馬鹿みたいだろうが。おのぼりさんみたいだろうが。お前も馬鹿になれよぉ」
恨めしげに伝えると溜息を吐かれた。
「だったらそんな格好して来なきゃ良かったろ」
「好きでこうなったんじゃないわ。同僚に着させられたんだよ。お前と出掛けるって言ったら。意味わからん」
「━━━ごふっ!?」
サトウカズマは急に咳き込んだ。
なんか死にそうな勢いで。
ちっさい声で「あの人は・・・」とかもぼやいてる。
「・・・大丈夫か?」
「だ、大丈夫だっ!それより行くぞ!アクアとめぐみんは簡単に撒けたんだけど、なんかダクネスか妙にしつこくてな」
「ダクネスが?そう言えば昨日も飯食ってる時、やけに見てきたな・・・・まったく何なんだか」
サトウカズマの歩みについて俺も足を踏み出す。
行き先が決まってるのか、迷いのない歩みだ。
ふむ。
「なぁ、何処行くんだ?」
「まぁ、少しな・・・」
「ふぅん?」
内緒とは生意気な。
まぁ、楽しみにしておくとしよう。
それにしても━━━━。
「今日、本当に良かったのか?せっかく色々用意してたのに・・・・別に買い物くらい普通に付き合うぞ?態々ご褒美の代わりに頼まなくてもさ」
「い、良いんだよ。━━━と言うか、それもうお前のご褒美になってるだろ」
「うーん?あはは」
「笑って誤魔化すな」
まぁ、何がともあれ今日は付き合ってやろう。
これがサトウカズマへのご褒美なのだから。
「・・・・あーカナデ。いや、その、割りと良いと思うぞ。そういう格好も」
「おう?そうか?俺的にはスカートの違和感が凄いんだが・・・・ま、ありがとな」
感謝を伝えるとサトウカズマが首を傾げた。
「でもお前、スカートなら仕事の時も冒険者の時もしてるだろ。何が気に入らないんだよ」
「仕事は割り切ってるからな。で、冒険者の時のあれはスカートって言ってもキュロットだから、そこまでなんだよ」
「・・・・うん?そうか、成る程なぁ」
「・・・・分からないなら分からないって、言って良いんだぞ?」
約束通り凄い事をしようといそいそ準備していたそんな時、サトウカズマからある提案が来た。それが「ご褒美として1日買い物に付き合ってくれ」という物だった。
あまりに真剣な顔でお願いしてくるので、思わず頷いてしまって━━━━━まぁ、今に至る訳だ。
本音を言えばご褒美にかこつけて色々オプションつけて、死ぬほどエッチするつもりだったのだが・・・・まぁ、それは胸の内に留めておこうと思う。俺の企みはバレてるみたいだし、そういう雰囲気ではないしね。
それにあの時は特に何も考えず勢いに負けてOKしたけど、今となっては良かったような気がしてるのだ。
「━━━ん、なんだカナデ?」
「んーん、別にぃ」
サトウカズマが嬉しそうなら、ご褒美としてそれが一番だからな。
サトウカズマについて行くと、テレポート屋と書いてある旗を背負うお兄さんの元に着いた。テレポートとは移動魔法の事だ。噂通りならお金を払えば術者が行き先を登録してる場所に連れていって貰える。
サトウカズマは慣れた感じでやり取りを済ませお金を払った。安くない額だ。
だから自分の分は出そうとしたのだが、それは断られてしまった。自分が無理に連れ回す訳だから、これくらいは自分が持つ━━━という事らしい。
"例の件"もあって心配したのだが、サトウカズマに無理してる所がなかったので遠慮なく甘えさせて貰う事にする。折角だからね。
そうしてサトウカズマに続いて初テレポート。
気がつくと賑やかな街に着いていた。
街の中央付近になんかでっかい城まで見える。
「何処ここ?」
「王都・・・えっと、ベルゼルグ王国の首都だな」
「へぇ・・・また随分遠くに来たねぇ」
アクセルの街からかなり離れた場所にある土地の筈だ。実際訪れたのは今日が初めてなので、どれぐらい遠くなのかは分からないけど。しかも魔法で来ちゃったから、まじでさっぱりだ。
「それでお買い物の品はなんで御座いますか、サトウカズマさん?」
「妙な敬語使うな。なんかゾクッとする」
「プフフ、悪い悪い。でもほら、なんか、今日の俺の立ち位置って付き人みたいな感じだろ?」
「・・・・」
軽い冗談のつもりだったのだが、サトウカズマが眉間にしわを寄せたままジト目で見られてしまった。
「ん?どした」
「なんでもない━━━行くぞ」
「あいよー」
街の風景を眺めながら少し、サトウカズマが屋台の前で足を止めた。目的地かと思ったが、屋台は普通の食べ物屋。態々テレポート屋を使ってくるような店には見えない。疑問に思ってると、サトウカズマがこちらに振り返ってきた。
「カナデ、昼まだだろ。少し買い食いしていこうぜ?好きなの選べよ」
「いいよ、別に。朝御飯遅かったから、そこまでお腹減ってないし・・・てか、余裕そんなにないだろお前。買う物もあるんだから、それまでお財布はチャックしとけ」
「大丈夫だっつの。あのな、アクアじゃないんだから、後先はちゃんと考えてある。それにこれは、先行投資みたいなもんなんだよ」
「先行投資?」
サトウカズマから改めて今日のお買い物の目的を聞くと、どうやら金策を求めて王都にきたらしい。
全ては抱えた借金を返す為に。
魔王軍幹部の討伐という偉業を成し遂げたサトウカズマパーティーには当然多額の報酬金が出た。その額なんと三億エリス。降って湧いた幸運にサトウカズマ達は多いに喜んだ━━━━喜んだのだが、続いて告げられた言葉に絶望する事にもなった。
『門の修繕費・・・三億四千万エリス?え?誰が?俺が?払うの?えぇ!?』
ギルドから突き付けられたのは水色が壊した門の修繕費の見積書。確かに壊したのはうちの駄目神であるし、弁償する事はなんら可笑しくはないのだが・・・どうもおかしな請求に思えてならなかった。仮にも魔王軍幹部の討伐という、近年誰も成し遂げなかった偉業を成したパーティー。魔王軍討伐に力を入れてる王国にとって手離したくない人材の筈だ。それこそ褒めて煽てて良いように働かせて使い潰す事はあっても、何もさせない内からパーティーを解散に追い込むような圧力をかけるだろうかと。
疑問に思ってギルドの偉い人にも聞いたが『領主様が決めた事だ』と取り合って貰えなかった。ムカついたから脛蹴ってやって辞表叩きつけてやったのだが、何故か時給が三割上がったうえに有給休暇を貰えたので、まだギルドで住み込みで働いてたりする━━━━おっと話が逸れた。
まぁ、そうしてサトウカズマパーティーは多額の報酬金と、多額の借金を同時に背負う事になってしまったのである。
冒険者の報酬金は決して高い物ではない。確かに高レベル専用のクエストであればそれなりの報酬金が貰えるが、大抵そういう物は支度金が結構掛かったりする。無事にクエスト達成しても手元に残るのは危険と見合わない小金。加えてクエストは生物で安定して受け続ける事も出来ない。冒険者はあまりに浮き沈みが激しい仕事なのだ。そんな職で借金返済など夢のまた夢、現実的ではない。
そこでサトウカズマは考えたらしい。
自分の特性を十全に発揮でき、安定して稼げる方法を。
「それで商売かぁーー、なるほどなぁ」
買って貰ったお焼き的な何かを齧りながら、俺は普通に感心した。俺と対して変わらないというのに、もう起業を考えてるとは・・・いやはや、恐れいった。というかこいつ、このフットワークの軽さを持っていながら、なんでヒキニートなんてしてたんだ?道楽?
「まぁ、まともにやって返せる額じゃないから、それなりのもの考えなきゃいけないけどな・・・・不味くは無いけど、これで四千万は無理だな」
「なん万個作るんだって話だもんなぁ━━━━ん、ごち」
「おう」
サトウカズマが食べ終わるのを待って次の目的地に向かう。大通りにある屋台を中心に見て回り、良さげな物を見つけては食べたり、手にとってよく見てみたりした。食べ物系とか工芸品とか装飾品などが定番らしかったが、魔王軍との最前線の街だけあって露店にも武器・防具屋など多く見掛けた。まぁ、それでも一番儲かっているのは結局の所観光客相手に商売してるお土産屋のようであったが。
何処にでもあるもんだな、ペナントみたいなの。
え、ペナントなの?昔の勇者が?ふぅん。
なんだ・・・王都饅頭とかもありそ━━━あ、あるのね。
ある程度露店を見終わった後は、通りに並ぶ店を冷やかしにいった。もうこっちは参考がどうのとか関係ない。完全な観光である。折角来たのだからね。仕方ないね。
そうして入った数件の武器防具店。
立派な店構えから分かっていたが、やはり都会の店は高級嗜好が強く、どの店も目が飛び出るほど高い物で埋め尽くされていた。高い物は剣一振り、鎧一つで一千万。一番安い投げナイフ一本とっても高級品で、それはサトウカズマの今使ってる剣より高かったりした。
サトウカズマは泣いた。
お店の人にお願いし、御試しで百万エリスの剣を振らさせて貰ったら一気にご機嫌にはなったけど。
目が凄いキラキラしてた。
ん?うんうん、せやな。
いつか買おうな。
うん。
え、他にも見て回る?市場に?掘り出し物があるかも知れないからって?うん、せやな。
行ってみようか。
うん。
うん、せやな。
なんだ、こいつ。
可愛いか。
ギャップ萌えは止めろ。
疼くだろうが。