この素晴らしい世界に居座るTSド変態野郎にも祝福を 作:らいじゅう
年末の、エロ休めに決まってるでそ。
「おい、もう一度言ってみろ」
サトウカズマがぽっくりいってから数日後の事。
ウェイターの仕事を休み、サトウカズマ達とクエストにいくために待ち合わせ場所であるギルドの扉を開けると━━━怒りに満ちたサトウカズマの声が聞こえてきた。
いつも賑やかなギルド内がやけに静かになってる。
こういう時、大体一人くらい茶化したり囃し立てたりする奴がいるものだが、サトウカズマの声に含まれた険に圧されたのか誰も何も言わない。
取り敢えず現状を把握する為に人混みを掻き分けて進むと、サトウカズマと
でも、だ。
サトウカズマは俺と違って慰謝料をむしりとったり、しばき回したりしない。そこら辺の事は、いつもは上手くかわすのだ。争うのがめんどいらしい。
そんなサトウカズマが何故と、不思議に思う。
「何度だって言ってやるよ。荷物持ちの仕事だと?上級職が揃ったパーティーにいながら、もう少しマシな仕事に挑戦できないのかよ?大方お前が足を引っ張ってるんだろ?なぁ、最弱職のカーズマさんよ?」
おおう、把握した。
サトウカズマが頑張って怒りを押さえ込んでいると、何を勘違いしたのか
「おいおい、何か言い返せよ最弱職。ったく、いい女を四人も引き連れて、ハーレム気取りか?しかも、カナデちゃんを除いて全員上級職ときてやがる。さぞかし毎日、このお姉ちゃん達相手にいい思いしてんだろうなぁ?」
まぁ、良い思いはさせてやってるつもりだが。
この間は朝までエッチしたし、プレイにも付き合ってやったし・・・いやまぁ、俺もその分楽しんだけども。そう、winwinな関係だよね。うん。
そんな事を思ってるとギルド内に爆笑が巻き起こった。
良いよ、許す。リーンは。
リーンの他にもサトウカズマが笑われてる事に対して、顔をしかめてたり、注意しようとしてる連中の姿も見る。どうやら節穴ばかりでもないらしい。
そうこうしているとトンチンカンが止めに入っていった。何か囁いているが、ここからだと聞こえない。サトウカズマの反応からフォローしてる気はするけど。
俺も交ざりにいこうかなと足を踏み出した時、また
「上級職におんぶに抱っこで楽しやがって。苦労知らずで羨ましいぜ!おい、俺と代わってくれよヒモのカーーズマくんよ!!」
「大喜びで代わってやるよおおおおおおおおおっ!!」
あーあ。
やっちゃったかぁ。
すっかり静まり返った冒険者ギルドの中で、怒鳴り声をあげながらサトウカズマは続けた。
「代わってやるって言ったんだ!おいお前、さっきから黙って聞いてりゃ舐めた事ばっか抜かしやがって!ああそうだ、確かに俺は最弱職だ!!それは認める。だがなぁ、お前!お前その後なんつった!」
サトウカズマの迫力に
フォローしてた三人が面白い顔してる。
「そ、その後?その、いい女四人も連れてハーレム気取りかって・・・・」
「いい女!ハーレム!お前っ、ハーレム舐めんな!!てめぇのハーレムはどんだけお安く出来てんだおい!いい女のハーレム!?ほわい!?何処見て言ってんだ!おら、言ってみろごら!その目玉で、何処見て言ってんだよ!なんだ、その目玉ビー玉かなんかなのか?いいなぁ!世界が楽しく見えてそうで!交換してくれよ!俺の濁った目玉と、お前の綺麗なビー玉と交換しろよぉ!!」
胸ぐらを掴みあげて怒鳴る姿は何処か悲しい。なんか煤けて見える。まるで仕事に追われるサラリーマンのようだ。
まぁ、実際それなりに苦労してるから、その反応も仕方ないんだけど。一回死んでるくらいだしな。
たまにはストレス発散させてやるべきだと思うので、サトウカズマは好きにやらせ、きょとんとしてる三人の元に向う。
「よっす。おまた?」
そう言うと、三人が焦りの表情を浮かべこちらに振り向いた。中でもめぐみんが一番反応が強く、こちらに小走りしてきた。
「カナデ!遅かったじゃないですか!カナデを待っていたら、何やらおかしな事になってしまいまして・・・・」
「途中からだけど聞いてたから知ってる。ま、大丈夫、大丈夫」
「そうでしょうか・・・」
めぐみんは爆裂魔法の事となると完全に狂ってるけど、基本的には仲間思いの優しい子だ。サトウカズマの反応に寂しさを覚えたのだろう。
取り敢えず一回撫でておく。
「売り言葉に買い言葉で、サトウカズマも本気で言ってる訳じゃないから大丈夫。流石にこんなんで解散とかにはならないから」
「そうですよね。すみません、変な事を言って」
「おう。気にするな」
俺の言葉に安心したのか、今度は三人でサトウカズマを上から目線でディスり始めた。やれ私達のありがたみが分かってないとか何とか。果てしなく巨大なブーメランな気もするけど、そこについては突っ込まないでおく。
それからサトウカズマと
あれがリーダーとか気が進まないので、今日は大人しくウェイターに戻ろうかな?とか思ってたら、サトウカズマに腕を掴まれた。
「行くぞ、カナデ」
「ん?おう」
「あ、おい!カズマ!カナデちゃん何処連れてくんだよ?!」
俺を連れて歩き出したサトウカズマに、
けれど、サトウカズマは眉間にしわを寄せながら直ぐに返した。
「上級職の、女子に囲まれて、チヤホヤされながら、楽なクエストがしたいんだろ。生憎こいつは俺と同じ最弱職の冒険者様だ。何だよ、いらないだろ?それとも何か?負担にしかならない、俺と同じ最弱職の冒険者様を、態々お連れ遊ばせたいのか?ええ?」
「・・・・お、おう。いや、でもなぁ、いや、そうなんだけど・・・・・・ううん、カナデちゃんはぁ・・・くそぅ」
「━━━━はっ!行くぞ」
サトウカズマにドナドナされながら、寂しげな目で見てくるめぐみん達にガッツポーズをしておいた。
今日1日だけ皆で頑張れよ、と気持ちを込めて。
「カナデちゃぁぁぁん、かむばっーーく!」
「死ね」
「カナデ、うちの馬鹿がゴメンね」
リーン達と臨時パーティーを組みクエスト目的に向かっている途中、リーンがそんな事を言ってきた。別にいつもの事なので許しちゃう。ん?いやまぁ、またあいつの財布から慰謝料はとるのは止めないけど。
「なんやかんやサトウカズマが乗ったのも原因だしな。そこまで気にするなよ。というか、なんであんな害虫の親戚とパーティーなんて組んでんの?脅されてたり、弱み握られてるのか?うちくるか?」
「誘ってくれるのは嬉しいけど、ゴメンね。脅されてたりとかそう言うのじゃなくて、このパーティー普通に気に入ってるからさ。それにしても、害虫の親戚かぁ・・・・あははは。ダスト聞いたら泣くだろうなぁ」
「?」
いつも泣かしているが?
何を今更。
「おーい、お二人さん。もちょっとペースアップしてくれないか?」
声に視線を向ければ臨時パーティーのリーダーであるテイラーがこっちを眺めていた。そして前を進んでいた男衆と若干離れてしまっていることに気づく。
小走りで合流するとテイラーが溜息をついた。
「お前らなぁ・・・」
「ゴメンゴメン。つい、話込み過ぎちゃって」
「リーン。一時的とはいえ女の子の仲間が出来て浮かれるのは分かるし、仕方ないとは思うぞ。でもな、目的地までまだ距離があるとしても、ちっと気を抜きすぎだ。警戒は怠るな━━━━カナデちゃんもな」
テイラーに向けられた視線に素直に頷いておく。
「でもな、大丈夫だと思うぞ。サトウカズマが警戒してるんだろ?」
「ん?ああ、まぁそうなんだが・・・」
サトウカズマは冒険者という職を生かし、色々なスキルを持っている。今は敵感知スキルを使って周囲を警戒してくれている筈だ。
自分が能力的に戦闘に向かない事を知っているサトウカズマは、それ以外で役立ちそうなスキルを習得する傾向がある。主には盗賊系だけど、初級魔法はほぼ全属性習得してるし、最近では鍛冶スキルもとったとか。
出発する前その話をしたらリーン達に驚かれた。
才能がないと分かっても冒険者という肩書きが邪魔をして、そこまで割りきってスキルを割り振りする奴は稀なんだそうだ。
そんな訳で今はサトウカズマを先頭に、敵を索敵しながら進んでいる状態なのである。本来俺達二人は荷物持ちなのだが、その有用さからサトウカズマの背には自分の荷物しかない。荷物は各自持ちだ。
またサトウカズマの背中を見ながら歩き出して少し。
テイラーに肩をチョンチョンされた。
「なぁ、カナデちゃん。カナデちゃんらって、いつもこんな感じなのか?」
「こんな感じ?」
「いや、なんつーかな、カズマの歩みに淀みがないっつーかさ。ああやって歩くのが普通みたいな。つか、さっき聞きそびれたんだけど、もしかしてカズマって参謀的な立ち位置なんじゃねぇか?」
そんなテイラーの言葉にリーンが目を丸くした。
「え?!そうなの?だって冒険者でしょ?」
「そうはいってもな、あれは普段からそうしてる奴の動きだからな。手際が良すぎんだよ。冒険者って先入観とって見りゃ、まだ未熟な所はあるが良い線行ってるよ」
「へぇぇーー、そうなんだ」
いや、あいつリーダーなんだけど。
訂正しようか迷っているとサトウカズマの静止を求める声が響いてきた。流石にリーン達の冒険者としての経験値は高く、一瞬で話すのを止め戦闘体勢を取ってる。
うちのパーティーならこうはいかないだろう。
「どうした、カズマ」
「敵感知に反応があった。・・・でもな、一つなんだよ。この辺は群れるモンスターが多いんだよな?なんか心当たりはあるか?」
「一つ?・・・この季節にか?妙だな・・・」
テイラーは少し考え、様子を見る事を決めた。
カズマの潜伏スキルに便乗して全員で物陰に身を潜め待つこと少し。
それが目的地の方向からやってきた。
リーンが声なき悲鳴をあげる。
他のメンバーも軒並み息を飲んだ。
勿論サトウカズマも。
と言うのも、俺達の前に現れたのは鋭利な長い牙を持つ、ライオンより遥かに大きなサーベルタイガー的な四足獣だったのだ。
冬場のモンスターは強いのが多いと聞き、念の為にギルドに飾ってあったよく切れるハルバードを持ってきたが、こいつ相手ではその切れ味も何処まで通用するか怪しい。隠れて本当に良かったと思う。
暫く隠れていると、そのサーベルタイガー擬きは臭いをかぎながらズンズンと何処かに行ってしまった。
誰から途もなく安堵の声が漏れる。
「あっ、ぶなかったぁー初心者殺しかよ」
キースの言葉にサトウカズマと一緒に首を捻るとリーンが説明してくれた。先程目の前を通った化け物は初心者殺しと呼ばれるモンスターらしい。今回の討伐対象であるゴブリンやコボルトなどを利用して、それらを狩りにきた冒険者などを捕食する、冒険者を殺すために生まれたようなモンスターなのだとか。
なんだろうな、その理不尽の塊みたいなモンスター。
普通に怖っ。
「私らでも、あのモンスターは手に負えないから、やり過ごせて良かったよ。カズマには感謝しなくちゃね。ありがと」
感謝の言葉と共にリーンから笑顔を向けられ、サトウカズマは照れ臭そうに頬を掻いた。そしていつものようにぶっきらぼうな返事をしてしまう。相変わらず褒められたり、頼られたりするのに弱いなぁ。こういう所でもう一つ気の利いた台詞を言えればモテるだろうに・・・ふっ、残念なやつだ。
そのままへたれっぷりを眺めるのも良いが、俺は友人を大切にする女。友人の幸せの階段を踏み外そうとするなら、スルーは出来ない仁義の女。
だから軽くだが、アドバイスしてあげようと思うのだ。
手招きしてサトウカズマを呼び出し、そっと耳打ちしてやる。
「リーンとお近づきになりたかったら、格好つけるくらいじゃないと駄目だぞ。あれでいて、王子様待ってるタイプだから」
そう教えてやると、サトウカズマから何か言いたげな視線が返ってきた。
「?何だよ」
「・・・何でもねぇよ」
「んーー?それなら良いけど?」
それだけ言うとサトウカズマは男衆に交ざってクエストについて相談を始めてしまう。
何だか素っ気ない態度にモヤモヤした物を感じてると、リーンに肩ポンされた。
「何言ったか知らないけど、まっ、どんまい。男心もわりと繊細みたいだからさ」
リーンは凄いドヤ顔でそう言い切り、そっと水筒を差し出してきた。
よく分からないまま水を飲み、一呼吸ついた所で思う。
いや、分からいでか!と。
あれだからね。
大きい声で言えないけど、元男だかんね、俺。
ちんこ生えてたからね。
サトウカズマよりでっかいのっ。
・・・・。
・・・・・・・・。
・・・・そうなんだよ、"元男"なんだけどなぁ。
むむむむ、分からん。
何だって言うのか。