※この作品はR-18です。

この素晴らしい世界に居座るTSド変態野郎にも祝福を   作:らいじゅう

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んー( ´∀`)

こんな時もあるよね。


もう駄目だぁーそんな時、それでも勝つのが主人公の役目ですが?

サトウカズマの声で弾かれるように逃げ始めて少し。

まだアクセルのアの字も見えないようなその場所で、怒れる初心者殺しに早くも追い付かれそうになっていた。

 

悲しいことではあるが、獣の本気に人が敵わないのは当然ではある。レベルなんて物があるこの世界でも、それは変わらない。人は基本的に、食い物にされる弱い存在なのだ。

でもだからと言って、それを受け入れるかどうかはまた別の問題。

 

ふと見渡して見れば、悲壮な表情を浮かべていても、諦めて走ってる者は一人もいない。

皆生き残る為に必死に走っている。

 

けれど、前を走っていたテイラーが一度振り返り初心者殺しの位置を確認すると、その目の色が雰囲気が変わった。

覚悟を決めたそれに。

 

「━━━━カズマ!カナデ!リーンを連れて街まで走れ!!ここは俺とキースが食い止める!!ギルドにいって応援連れて戻ってこい!!」

「ちょ、マジかよテイラー!?━━━でもまぁ、リーダー様の命令なら仕方ねぇな!!それによ!一度ヒーローってやつになって見たかったし、丁度良いぜ!!」

 

覚悟を決めた男達の言葉。

それは力強く、けれど何処か儚い。

 

本来ならその言葉に、男達の覚悟に、涙の一つでも流してやって任せるべきなのかも知れないのだが━━━━俺の目には別の物に見えていて、もうそれどころでは無かった。

 

だって降って湧いたような、突然の死亡フラグ乱立なのだ。そっちに気がいってしょうがない。

 

くっきりはっきり見えるフラグに俺は動揺を隠せない。生まれてこの方色んな経験はしてきたが、こんなにはっきり見える死亡フラグは俺も初めてなのだ。こんなに?!こんなに分かるもんなの!?と心からびっくりしてる。

サトウカズマも思いっきり顔をしかめてる。考えてる事は恐らく同じのようだ。

 

そんな別の事を気にしてる俺達とは違い、武器を手にした二人にリーンが目を見開く。けれど直ぐ気持ちを切り替えたのか、唇を噛み締め俺とサトウカズマの袖を掴んだ。

 

「二人とも、私がっ、風の補助魔法かける!だから走って、二人の気持ち、無駄にしないでっ!」

 

声に含まれた真剣さに、俺は漸く現実に引き戻された。

フラグがどうのと言ってる場合ではない。

これは現実なのだ。

 

意味もなく当たり前のように誰かが死ぬ。

そんな残酷な現実なのだ。

 

リーン達は自分達でも初心者殺しは相手に出来ないと口にしている。そんな相手にフルパーティーの半分、メンバーたった二人でどうにか出来る訳がない。

これは死ぬことも計算に入った囮作戦。一人でも多く生き残らせる為に選んだ方法。

 

だから、二人はほぼ確実に死ぬ。

辛うじて助かったとして、五体満足はあり得ない。

このまま、二人に任せてしまえば。

 

 

 

 

「サトウカズマ!」

 

 

 

 

名前を呼べば振り向いたサトウカズマと目があった。

そう長い付き合いではないが、俺のやろうとしてる事が分かったのか眉間にしわが寄った。

 

「リーンと先に行け!!」

 

恐らくそれが最も時間を稼げ、最も生き残る可能性が高い。サトウカズマが何か言おうとしたが、それより速くリーンが口を開いた。

 

「何言ってるの!駄目だって!二人が━━━」

「二人に任せたら間違いなく死ぬぞ。絶対応援は間に合わない」

「でもっ」

「二人が死ぬだけならまだ良い。最悪なのは、二人を殺したあいつが、逃げる俺達を追い掛けてきた場合だ。そうしたら誰も助からない。アタッカーの俺一人じゃ、初心者殺しの猛攻は押さえられないからな」

 

リーンは目に涙を浮かべながら、言葉に迷いながらも続けた。

 

「じゃ、じゃぁ!皆で戦えばっ!」

「それが出来ないから、テイラーは撤退を選んだんだ。そうだろ、テイラー」

 

テイラーに視線を向ければ肩を竦めた。

 

「初心者殺しの皮は厚い。俺達の武器じゃ刃が通らねぇし、魔法抵抗力もあるって話だから無謀過ぎる。勿論弱点もあるが、敵も馬鹿じゃねぇんだ。簡単には攻撃させてくれねぇだろうさ。戦うのは現実的じゃねぇ」

 

テイラーの言葉にリーンは口を告ぐんだ。

その姿を見れば『一応リーダーだ』と自分の事を紹介してきたテイラーが、ちゃんと仲間から信頼されてその位置にいる事が分かる。

 

「確かにな、カナデちゃんが残ってくれりゃかなり時間は稼げる。実際やって見なくちゃ分からねぇが、応援が駆けつけるまで間に合う芽も出る。正直いっちまえば助かる。けどな━━━━」

「?なんだよ?」

 

テイラーの視線がサトウカズマに向いた。

 

「それを決めるのはカズマの仕事だ。俺は自分のパーティーメンバーでもない奴に、分の悪い賭けに命を張らせるような真似させる気はねぇからな」

 

サトウカズマは頭が回る。

だから俺の言った事を理解して直ぐに頷く━━━━と思っていたのだが、サトウカズマは首を横に振った。

 

「サトウカズマ、俺の話聞いてたか?!」

「聞いてたよ、バーサーカーか。つーかお前は基本的に頭馬鹿なんだから、無駄に頭を使って考えるな。どうせ碌な事考えないんだから」

「んだと、のらぁ!!誰が馬鹿だぁ!俺は馬鹿じゃない、エッチな事考える時間が人よりちょっと多いだけだぁぁぁ!!」

「そういう所が馬鹿なんだよ」

 

そう吐き捨てたサトウカズマは俺から視線を外し、背後に迫る初心者殺しを見た。

そして何かを考えるよう顎に手を当てブツブツと小さく何かを呟き始めた。

 

「カズマ、何かあるなら言ってくれねぇか?もうじき追いつかれちまう」

 

焦りを滲ませたテイラーの声にサトウカズマは人差し指を立てた。

 

「一つだけ良いか。あいつの弱点知ってるって言ったな?何だ?」

「ん?ああ、初心者殺しのって訳でも無いんだが・・・『目』だよ。目だけは他の獣と変わらない程度の強度しかないらしい。倒した奴の話、目に剣を突き入れたら脳みそまでスルッと貫けたとか言ってたぞ。でも言うは易しってやつだ。暴れる獣の目玉貫くなんて、そんな芸当出来る奴早々いねぇ。キースも無理だ」

「・・・・・」

 

それを聞いたサトウカズマは俺を見てきた。

悩むような素振りに、俺は直ぐにピンとくる。

だから言ってやった。

 

「任せろ」

 

背中を押す、その言葉を。

 

俺の言葉を聞いたサトウカズマは溜息をつく。

そして頭をガシガシとかいた後、皆の顔を見て言った。

 

「俺達で倒そう」

 

らしくない、男らしい顔つきで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

必要最低限の説明が終わった後、全員がそれぞれの役目を果たすために走る。

 

迫る初心者殺しに真っ先に向かったのはタンクであるテイラー。リーンによる補助魔法を受けたテイラーの回りには風が吹き荒れる。

 

「掛かってこいやあああああ!!」

 

剣で盾を打ち鳴らし、吼える。

デコイのスキルも併用されてるせいか、初心者殺しの視線はテイラーに集中していく。

 

目と鼻の先まで初心者殺しが迫ると、テイラーの背後にいたサトウカズマが顔を出した。サトウカズマの手にはクリエイト・アースで作ったサラッサラの土と、リーンが洒落っけ出して買った香水の水溜まり。

 

「『ウィンドウブレス』っ!!」

 

突然吹き荒れた土埃と甘ったるい香水の臭い。

妨害攻撃と受け取った初心者殺しは、その臭いと周囲を囲む土埃に混乱しながらも怒りを込めて吼える。

戦意はまだ高い。

 

「━━━━シッ!!」

 

短く息を吐く音と共に空を切る音が鳴る。

キースが矢を放った音だ。

何処に当たったか、こちらから見えないが初心者殺しの意識がそちらに向いたのは感じた。

 

「貧乏店主さんから教わった、とっておきよ『ボトムレス・スワンプ』!!」

 

矢が放たれた方向からリーンの声が響く。

それと同時に初心者殺しの足が沼に変わった地面に沈む。

 

そこにすかさずテイラーが怒鳴り声をあげながら剣を振るが、それは初心者殺しの剛脚に容易く払われた。

 

 

 

 

けれど、それで良い。

 

 

 

 

息を殺したまま、俺は駆ける。

武器を構え、全速力で。

 

テイラーが体を張り敵の選択肢を減らした。

サトウカズマの機転で視界と嗅覚を封じた。

キースの攻撃で意識を背けさせた。

リーンの魔法で動きを鈍らせた。

 

お膳立ては十分。

 

俺がサトウカズマから言われた事は一言。

それをやる為に、それだけの為に。

走る。

 

 

 

『倒してこい━━━━━任せたぞ』

 

 

 

加速した勢いと全体重も乗せる。

体のバネも腕力も脚力も体力も全部注ぎ込める。

そして後も先も何も考えず、ハルバードの切っ先を初心者殺しのがら空きの横顔に━━━金色に輝く獣の瞳に突き入れた。

 

何かが潰れるような、何かを砕くような。

そんな得体の知れない音が響き、感触が手に伝わる。

初心者殺しは絶叫をあげ体を暴れさせた。

 

あまりの激しさに武器を握っていられず吹き飛ばされた。衝撃が肩に走った後、体中に小さい衝撃と痛みが走り回り視界がぐるぐる回る。

 

漸く視界が定まり体を起こした頃には、ぐったりと横たわる初心者殺しの姿が見えた。

ついでに初心者殺しの生死を確認しているテイラー達の姿も。

 

「━━━カナデ!!」

 

大きな声に振り向けばサトウカズマが駆けてきていた。

何処か不安そうな顔が気になって、大丈夫だとアピールする為に手をあげようとしたのだが、どうにも上手く上がらない。

 

ちょっと見てみれば腕がダランとしてる。

興奮してるせいで痛みがなくて気づかなかったが、どうやら骨折か骨が外れてるっぽい。

 

それによく見たら全身擦り傷だらけ。

一言でいうなら赤かった。

 

「あー、成る程」

 

これはあんな顔するわ。

呑気にそんな事を思っていると、ふぅっと意識が遠退いていった。

 

目の前が暗くなって力が抜ける。

 

倒れるなぁと他人事みたいに思ったけど、何か固い物に引っ掛かって倒れる事はなかった。

それは何処かほんのり暖かくて、良い匂いがした。

 

そして聞こえた。

最近ずっと側にいる、その声が。

近くにいる事が当たり前に思えてきた、その声が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カナデっ!!」

 

 

 

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