この素晴らしい世界に居座るTSド変態野郎にも祝福を 作:らいじゅう
そうやで、覚悟しときー(・д・)ノ
店主さんことウィズの合流により、非現実的と思われていた機動要塞デストロイヤーの討伐作戦は一気に進んだ。職員が中心によって行われた会議によって怒涛の如く作戦内容が具体的になり、各員の配置と役割が決まり、作戦の責任者が決まり━━━とんとん拍子というの言葉の見本のような様子がそこにあった。
そして今、決まった作戦を実行する為に、俺達はデストロイヤーを迎え撃つ決戦の場所、街の正門の前に広がる平原にて、敵の到着を今か今かと待ち構えていた。
「たく、ダクネスはしゃーねーなぁー・・・・てか、なんで俺が・・・指揮者なんだ」
作戦の指揮者であるサトウカズマと共に。
最後防衛ラインへ張り付いたダクネスに離れるよう説得しにいったサトウカズマは、結局一人で俺が待機してる元の配置に戻ってきた。ぶつぶつと呟いてるその内容を聞けば、ダクネスの意地が勝ったらしい。
「おかえり。俺は、サトウカズマが指揮者は適任だと思うけどな?」
「おまっ、聞いてたのかよ。つか、他人事だと思って・・・・」
弱音を吐くサトウカズマの撫で撫でしながら、俺はデストロイヤーがやってくると言われた地平の彼方を眺めた。まだ姿は見えないのでピンと来てない所があるが、周りの雰囲気を見れば冗談だったり嘘だったりの可能性はない。必ず来るのだろう。これだけの冒険者がいて、匙を投げてしまうような化物が。
「━━━━なぁ、カナデ」
ぼんやり風景に散らばる冒険者達の姿を眺めていたら、サトウカズマの声が聞こえてきた。視線を向ければこちらを見つめるサトウカズマと目が合う。
「どうした?」
「・・・・いや、やっぱ止めとく。フラグになりそうだし」
「何言う気だったんだよ・・・まったく」
プイッと前を向いてしまったサトウカズマの様子に、少しだけムッとした物を感じる。だからサトウカズマの横へと並んで顔を覗いてやった。
覗いた横顔は、なんか少しだけ赤い。
「もしかして・・・・エロい事頼もうとした?フェラとか・・・ああ、おっぱいする?」
「こんな場所で、んな事頼むかぁぁ!!公衆の面前でんなこと頼んだら、俺本物の鬼畜になっちゃうだろうが!!━━━てか、お前の中での俺は、どんだけ節操なしなんだよ!?」
ううん?二人きりだと結構遠慮なくなって気がするけど・・・でもまぁ、それもそうか。
ふと周りを見渡すと少し離れた位置に冒険者達が点々としているのが見えた。デストロイヤーが進行方向を変えた時、纏まっていると直ぐに行動出来ない為、戦力を分散して対応出来るよう配置されているのだが━━━━各員それほど離れていないから、やることやったら丸見えになってしまうと思う。
サトウカズマはあんまり青姦とかには興味なさそうだったし、基本的に人に見られるの好きじゃなさそうだしね。俺は興奮するけど。
外エッチ、いつかしたいなぁ。
妄想していたら、ぎっと頬っぺたをつねられた。
あんまり痛くないけどちょっと驚いてしまう。
つねってきたサトウカズマを見れば、物言いたげにこっちを見つめてきていた。
「何考えてんだ・・・顔に滲んでるぞ、ド変態」
「ちょっと意味が分からないなぁー何が滲んでるって?」
「碌でもない事考えてたろ。どうせ」
そう言うと、サトウカズマは俺の後ろを見た。
つられて見るとめぐみんが何かを呟きながら俯きプルプルしてる。
この後の大役を任されたプレッシャーに、まだ心が吹っ切れてないらしい。めぐみんのフォローが俺の役目なので何としないといけないのだが・・・どうしよっかなぁ。
「カナデ」
囁くような声に振り向くと唇が重なった。
ほんの少し、触れるだけのキス。
なのに触れた所が凄く熱い。
いきなりの事に少しぼーっとしたが、直ぐに状況を思い出してサトウカズマを睨んでやる。
めぐみんに見られでもしたらどうするのかと。
すると、真剣な目がそこにあって━━━出掛かった文句を思わず飲み込んでいた。
「映画とか漫画とか・・・そういう物の中で、フラグになりそうな事言うやついるだろ。いつもさ、あーいうの見て何で言っちゃうかなぁとか思ってたけど・・・・今なら分かる気がする。理屈じゃないんだろうな・・・」
その目に灯る熱に、何故か胸が高鳴る。
バクバクと心臓の音が聞こえてきて、顔が熱くなっていくのが分かる。
目を合わせているのが辛くなって、気がついたら目を逸らしていた。けれど、いつまでもそうしていられなかった。そっと頬に添えられたサトウカズマの掌で、顔を振り向かせられたから。
その手つきはエッチの時みたいに・・・いつもするみたいに・・・・優しくて、温かくて、くすぐったくて━━━心地よかった。
「カナデ、俺な━━━━━━」
「かずっ、かずかずかず、カズマさあああああん!!なんか来たっ!!ねぇ!なんか来たんですけどおおおお!!」
サトウカズマの言葉を遮るように水色の声が響いてきた。不機嫌そうにあたりに視線をやったサトウカズマは、ある方向を見て目を見開く。
サトウカズマが何を見たのか気になってそっちに振り向くと、地平線の彼方から現れた大きな影な目に留まった。
その影は少しずつ大きくなっていく。
近づくに連れて、少しずつ。
そして距離が縮まるその様子に理解する事になった。
どうして誰もが逃げる事をいの一番に考えたのか。
分かってしまった。
小山の如き圧倒的な巨体を揺らし、地響きを鳴らしながら高速で近づいてくる化け物を見てしまえば。
いやでも。
冒険者達の動きに戸惑いが混じったその時、大きなアナウンスが響いてきた。
ルナさんの声だ。
『機動要塞デストロイヤーを目視で確認!!冒険者の皆さん準備をお願いします!最悪を想定し、街の住人の避難は完了していますので、いざというときは迷わずに撤退してください!!』
響くルナさんの声には震えが混じっている。
けれどその声はそれでも続いた。
勇気を振り絞るかのように力強く。
『━━━━ですがっ、ですが!この街の住人の一人として、いえ、私個人の勝手を言わせて頂ければ!私はっ、この街でっ、また皆さんと会える事をっ、切に願っております!!またっ、あの場所でっ、皆さんとお仕事が出来る事をっ、願っております!!━━━━ご武運を!!』
その言葉に声にどれだけの意味があったのか分からない。所詮はただの言葉。
でもそれはここにいる皆の耳に響いて。
誰かの足を確かに動かした。
「第一陣っ、出るぞ!!」
男の野太い声に何人もの声が続く。
それぞれがそれぞれの役割を果たす為に動き出す。
それはまるで一つの生き物のように。
「サトウカズマ」
促すように声を掛ければ、サトウカズマは大きな溜息をついた。そしてゆっくり顔をあげる。今日一番の引き締まった表情を浮かべて。
「━━━━やるかっ」
その声に俺は頷いた。
作戦が開始されてから少し。
デストロイヤーとの戦いは早くも佳境に来ていた。
防衛ライン第一陣、第二陣、第三陣と突破され、残す所後二つとなった防衛ラインを前にして最後の徹底抗戦が行われていた。
度重なる妨害によって速度を落とした鉄の巨体に目掛け、魔法職の冒険者達から攻撃魔法が発せられる。何十人もの人間によって放たれた攻撃魔法は煌めきながら、雨のように鉄の巨体へと降り注ぐ。
豪雨のように落ちる魔法。
甲高い音が短く幾度も鳴り響いていく。
しかし、鉄の身には未だ一つとして傷はない。
何故なら傘のように展開された魔力結界が、降り注ぐそれを弾いていってしまっていたからだ。
だが、その光景を前に悲壮な顔を浮かべる者は少ない。
何故ならそれも作戦の内、この後の水色の攻撃を通しやすくする為、少しでも魔力結界を消耗させるのが目的なのだから。魔力結界も所詮は魔法。魔法は魔力によって発動するもので、無限にだし続けられる訳ではない。
攻撃を受けながらもデストロイヤーが第四陣を突破した所で、サトウカズマが怒号をあげた。
「アクア!!今だ、やれっ!」
その声に配置につい水色がその身を輝かせる。
珍しく女神様みたいに神々しい。
「『セイクリッド・ブレイクスペル』ッ!」
周りに巨大な魔方陣が浮かび上がり、小さな白い光の玉が水色の周囲に漂う。それは水色が手を翳すと掌の先に集まっていき、一つの大きな光の玉へと変わり、デストロイヤー目掛け飛んでいった。
光の玉がデストロイヤーにぶつかると一瞬光の膜が現れて抵抗したが━━━直ぐにヒビが入りガラスのように割れ粉々に砕け散っていく。
歩みは止まらないが問題はない。一番の問題をクリアした以上、あとはめぐみん達の攻撃で仕留められる。
「めぐみん!ウィズ!頼むぞ!!」
サトウカズマの掛け声に店主さんは頷いたが、めぐみんはまだ緊張して震えていた。
敵に向けた杖がプルプル震え、詠唱も噛み噛みで危なっかしい。
ちょっと前に励ましておいたんだけど、まだ立ち直ってなかったようだ。
「めぐみん、めぐみん」
「あっ!?はふぁ!?はい!?めぐみんです!」
「緊張し過ぎだろ」
引き寄せてぎゅっとしてやれば、少しだけ震えが小さくなった。
「深呼吸しな、めぐみん。大丈夫だから」
「は、はい・・・・」
「そのまま、深呼吸しながら聞いてくれな。成功とか失敗とか、そういう事は気にしなくていい。めぐみんはいつも通り爆裂魔法を撃てば良いんだ。サトウカズマと撃ちにいった時みたいに」
「ですが━━━━」
「大丈夫。力一杯撃ってこい。いつもみたいに。あとの事は俺達が何とかしてやる。だからな、めぐみん、気持ちの良い一発頼めるか?」
めぐみんは俺の体から離れ、マントを翻し杖を掲げた。
「かっ、カナデに言われるまでもありません!・・・我が名はめぐみん!!アークウィザードにして爆裂魔法を愛し、極めんとする者!!見せてあげますよっ、取って置きの、渾身の、最強の爆裂魔法を!!」
煌々と輝き出した瞳でデストロイヤーを見つめためぐみんはいつか聞いた詠唱を口にした。
「『黒より黒く、闇より深き漆黒に』」
めぐみんの様子に遠目から見ていた店主さんが続く。
「『我が真紅の混交に望み給もう』」
急速に二人の元に魔力が練り上がっていく。
「『覚醒の時来たれり、無謬の境界に堕ちし理、むぎょうの歪みと成りて現出せよ!』」
杖の先端についた玉が光を灯す。
「『踊れ、踊れ、踊れ━━我が力の奔流に望むは崩壊なり。並ぶ者なき崩壊なり』」
巨大な魔方陣が現れ、大気が大きく揺らぐ。
「『万象等しく灰燼に帰し、深淵より来たれ!これが人類最大の威力の攻撃手段!!これこそが!究極の攻撃魔法━━━━━━エクスプロォォージョンッ!!』」
爆風と共に二つの火炎の塊が、鉄の巨体へと落ちる。
まるで流星のようなそれは、轟音をあげながら熱と風を撒き散らしながら鉄の巨体より伸びていた脚を穿ち、一つ残らず粉砕していった。
脚を失ったデストロイヤーは地面に落ち、走っていた勢いのまま地面を滑る。地響きを起こしながら滑っていったデストロイヤーの巨体は、最終防衛ラインに立つダクネスの目前まで迫ったが━━━そこでようやく止まった。
きりっとした顔でデストロイヤーを見つめ続ける、実際何もしてないダクネスは放っておいて、俺の背中の上で爆裂魔法の反動によってぐったりしてるめぐみんの様子を見た。
めぐみんは動かない体で何とかデストロイヤーの様子を見ようとモゾモゾしてる。見易いように体を傾けてやれば、デストロイヤーの姿を見て「くっ」と悔しそうな声を漏らした。
よくよく見ればめぐみんの攻撃が当たった所と、店主さんの攻撃が当たった所ではダメージの大きさが違っていた。店主さんの方は根元までバッカァーンなってるが、めぐみんの方はチョロッと脚の根元が残ってる。
差はそこまでないように思うが、めぐみんには気にくわないポイントだったようだ。
「まぁまぁ、凄かったぞ?お疲れな」
「うぅ、そういう問題ではないのですが・・・カナデには、一番凄いのを・・・・・いえ、何でもありません」
少し頬を膨らませ、めぐみんは背中にグリグリしてきた。どうしても納得出来ないらしい。うんうん、今度頑張ろうなぁー。
それにしても、これで本当に終わったのだろうか。
ふとデストロイヤーを見ると、俺と同じ様にサトウカズマが沈黙したそれを眺めていた。
状況を理解した冒険者達が喜びの声をあげ始めた頃。
呑気な声が響いてきた。
「やったわ!何よ、機動要塞デストロイヤーなんて大袈裟な名前しておいて、期待外れも良いところだわ。さぁ、帰ってお酒飲みましょうか!なんたって一国を亡ぼす原因にもなった賞金首よ。報酬は、一体お幾らかしらね!!」
「あっ、おまっ、馬鹿っ!!」
━━━━ピキーン。
俺の頭の中で何か光みたいなものが走った。
知ってる、俺こういうの知ってる。
サトウカズマがさっき言ってた、あれだ。
「━━━━フラグ」
急に地鳴りが始まった。
震源は沈黙した筈のデストロイヤー。
果てしなく嫌な予感がする。
ビービーと如何にも警告音くさい音がなり、ひび割れた感情の篭ってない声が響き始めた。
『この機体は、機動を停止致しました。この機体は、機動を停止致しました。排熱、及び機動エネルギーの消費ができなくなっています。搭乗員は速やかに、この機体から離れ、避難してください。この機体は━━━━━』
難しい言い回しだが、ようは消費出来ないエネルギーが溜まってて、その内爆発しますよって事じゃないのだろうか。これ。
ふとデストロイヤーからサトウカズマを見ると、水色の両肩を掴み激しく揺すっていた。
その顔に怒りを浮かべて。
「ほら見た事か!お前って奴は、一つ役に立つと、二つ足を引っ張らなきゃ気が済まないのか!」
「待って!ねぇ待って!これ、私のせいじゃ無いからっ!私、今回まだ何もしてない!!濡れ衣よぉーーーー!!」
不吉な事は言ったけど、流石に今回は水色のせいじゃないから離してやれ。サトウカズマ。
今回は、そいつのせいじゃないから。
今回は。