この素晴らしい世界に居座るTSド変態野郎にも祝福を 作:らいじゅう
延滞につぐ延滞。
多額の料金を請求されたものの、何とか支払いを済ませた俺達はギルドに向かっていた。
「━━━━流石に体がダルい・・・腰いったぁ」
本当に丸1日もエッチした訳で、疲労感が半端じゃない。じんじんする腰に手を当て動かすとボキボキ鳴った。
同じ姿勢が多かったからか体が固まってるみたい。
後は筋肉痛といった所か。
それにしても宿のオバサンには助かった。
常連さんだからって割安にして貰えて。
じゃなかったらヤバかったなぁ。それでもヤバかったもんなぁ。
「んっ、なんだよ、カズマ」
手に触れた感触に振り返ると、カズマが手を握っていた。しかも恋人繋ぎ。素面な今だと、ちょっと照れてしまうやつだ。
「わ、悪い。やってみたくて」
捨てられた子犬みたいな顔に胸がきゅんとする。
そういう顔はずるい、駄目だって言えなくなってしまう。絡み合った指にちょっと力を込めて握り返すと、カズマがニヨニヨ嬉しそうな顔をした。
もうっ、可愛いやつめ。
「それに潜伏使ってるし」
こすいなぁ、流石カズマは。
恥ずかしいならやらなきゃ良いのに。
宿を出てからカズマとは色々と話し合った。
めぐみん達パーティーメンバーになんと説明しようかと。パーティーメンバーの色恋沙汰とか、基本的に御法度なのだ。絶対碌な事にならない。事実、それが理由でパーティーが解散したり、険悪になったりする事が多々ある。この街の冒険者ギルドではあまり聞かないけど、それでもゼロではなかった。痴話喧嘩なんてギルドでウェイターしてた時はよく聞いたし。
色々と検討した結果、やっぱり一か八か正直に話そうという事になった。下手に隠して後で拗れる方が面倒だし、カズマに考えがあるらしい。
それで最初は家に向かっていたのだが・・・その途中である事を聞いて行き先をギルドに変えた。
というのも、何やら王都から騎士の集団がギルドに向かったとこの事を聞いたからだ。この何もない冬の時期、田舎なアクセルにやってくる王都の人間なんてそうはいない。特別に何かあるのだろう。
それで直ぐデストロイヤーの件を思い出し、もしかしたら例の報奨の件じゃ無かろうかとカズマとギルドに向かっていたのだ。例の件についてなら、めぐみん達と来てるだろうし丁度良いだろうし。
「良い報せだといいんだけどなぁ」
「おい、止めろカナデ。変なフラグ立てんな」
「あのな、歴史を紐解いても、王族とか貴族なんて基本碌でもないのがデフォだぞ?かの有名なルイさん一家も革命されちゃうくらい酷かったんだぞ。警戒しない方がどうかしてるってもんだ」
「ルイさん一家は、あれはあれで複雑な話だろ。別に浪費が酷かっただけじゃないってなんかで聞いたぞ」
「カズマは変な所で知識あるんだよなぁ・・・」
駄弁りながら歩いて暫く。
いつものギルドへと辿り着いた。
入らなくてもガヤガヤと賑やかな声が中から聞こえてくる。
「もうやってるみたいだな」
「そうだな」
カズマは手を離しスキルを解除した。
ぼやけてた姿がくっきりする。
扉を開けて中に入ると全員の視線がこちらに向いた。
まさかここまで反応されると思わなかったので、心臓が必要以上にドキドキしてしまう。
「カナデ!」
大きな声と共に人混みを掻き分け、めぐみんがダッシュで駆け寄りそのままの勢いで抱き着いてきた。
その後に続いて水色とダクネスも顔を出す。
「カナデっ!何処をほっつき歩いていたのですか!心配しましたよ!もう!お金に困ってるのは分かりますが、泊まりかけのクエストならちゃんと話してくれないと駄目です。今度からはちゃんと一言下さい」
おや?
隣のカズマを見ると首を横に振った。
知らないらしい。
「そうよ、働き者なのは別に良い事よ。でもパーティーメンバーにちゃんと言うのが常識でしょう?よって勝手な事した二人は罰として、今晩のお夕飯を奢って頂戴ね!いっぱい稼いできたんでしょう?私、高級シュワシュワを所望するわ!」
アホの水色が何か言ってる。
昼間から酔っぱらうなんて、本当アホだな。
あいつには暫く酒を控えさせた方が良いかも知れない。いくら女神とはいえ、急性アルコール中毒には負けるかも知れないし。
すりついてくるめぐみんの頭を撫で撫でしながら、ふとダクネスを見ると良い顔で親指を立ててきていた。
意味が分からず隣のカズマを見れば、額に手を当てて溜息をついてる。何か二人の間に秘密がありそう。
・・・まさか。
「カズマ、お前まさか、ダクネスにも手出してないよな・・・・?」
そっと耳元で呟くとカズマは全力で首を横に振った。
けれどその目には焦りが滲んでる。
エッチしないまでも、何かあったっぽい。
まぁ、俺のこと好きでいてくれるなら、別に何処で遊んでようと追求するつもりはないけど。元男と美人でボインのおねぇちゃんなら、後者を選ぶのが普通だと思うし。
「サトウカズマさん、あの、ちょっと良いですか?」
不意にルナさんの声が聞こえた。
視線を向ければ申し訳なさそうな顔したルナさんと、その背後に鎧兜を身に纏った騎士達の姿がある。
何だろうかと見ていると騎士達の間を割って、長い黒髪を流す切れ長な目をした女の人が向かってきた。
カツカツと床を鳴らし背筋を真っ直ぐに歩く姿は、ブレザー的な服も相まっての高校にいた風紀委員長を思い出させる。
「冒険者、サトウカズマ!」
女の人は丸め込まれていた羊皮紙を封をきり、こちらに内容が見えるよう、これでもかと見せつけてくる。
俺はそれを読んで━━━━カズマと羊皮紙を二度見した。
「貴様には現在、国家転覆罪の容疑が掛けられている!自分と共に来てもらおうか!」
何をしたんだよ、カズマ。
それからセナさんというその女の人の話を聞くと、どうもデストロイヤーの時にカズマがウィズにやらせた事が問題になったらしい。
コロナタイト、それはデストロイヤーを動かしていた伝説級の秘宝の名前だ。自爆しようとするデストロイヤーを止める為、カズマは機関部からそれをスティールで外し強制的に起動を停止させた。
所がだ、エネルギーの塊みたいなそれはデストロイヤーの心臓部から取り外された事により暴走した。
そのまま放っておけば爆発し、街ごと吹き飛ばす大惨事になっていたかもしれないらしい・・・のだが、カズマの機転でウィズのランダムテレポートで危機を回避。街を守り抜いたと聞いていた。
けれど、そのランダムテレポート先が不味かったようだ。どうやらコロナタイトが飛んでいった先は、この地を治める領主の屋敷だったらしい。それで、ぼーんと爆発。綺麗さっぱり吹き飛んだと。
幸い使用人は留守。
領主も地下室にいた為無事。
人的被害はないそうだ。
カズマを罪人のように扱うセナの言動にイラッとしてると、くっついていためぐみんが顔をあげた。
「さっきから聞いていれば失礼な。カズマはデストロイヤー戦において功労者ですよ?確かに石の転送を指示したのはカズマですが、あれだって緊急の措置という事で仕方なくやった事です。カズマの機転がなかったら、コロナタイトの爆発で死者だって出ていたかもしれません。褒められはしても、非難されるいわれはありません」
そう言ってフンスと鼻息を吐くめぐみん。
流石は利口で魔力値の高いと噂の紅魔族。弁がたつ。
普段は「爆裂ー爆裂ー」と口ずさむ爆裂狂の変態だけど、ちゃんと庇う辺りただの変態じゃない。良い変態だ。
そんなめぐみんをセナさんが睨んでくる。
「ちなみに、国家転覆罪は、犯行をおこなった主犯以外の者にも適用される場合がある。裁判が終わるまでは、言動に注意した方がいいぞ。この男と共に牢獄に入りたいというのなら止めはしないが」
吐き出された冷たい言葉にギルド内が静まりかえる。
めぐみんも渋い顔をした。
水色がアホな事言いそうだったので蹴りを入れて止め、セナさんを見返してやる。
「繰り返すようだけど、めぐみんの言うとおり、カズマは今回の件において功労者であって犯罪者じゃない。だから身柄を渡すつもりはない━━━━分かりましたか?」
返した言葉にギルドの空気が悪くなった。
騎士が少しだけ身構え始める。
分かってはいたけど、厄介。
「庇うつもりなら、こちらにも考えがありますが?確か、サトウカズマパーティーのカナデさんでしたか?」
「庇うつもりもなにも、当然の事を言ってるだけですけど?お役所仕事がしたいなら外に出ないで、大人しく引きこもって手紙だけ送っていた方が良いんじゃないですか?態々こちらにいらっしゃらなくても結構ですよ。こちらも日々の生活に追われて時間もありません。おままごとがしたいなら、他を当たって頂きたいのですが」
「・・・・なっ!」
青筋が浮いたセナさんとやら。
こんな事で表情を出すなんて随分と若い。
少なくとも、昔あった詐欺師よりヘッポコ感がある。
「こちらは王家より正式に━━━━!」
「今回のデストロイヤー襲来に関して、国からは勿論、領主様からもなんの対応もありませんでした。騎士の派遣もなければ、領主様からの声明の一つも出ていません。確認出来たのは、冒険ギルド同士で共有された情報だけです。━━━まずは、国民に対する責務の放棄をした王家と領主様の罪から調査するべきだと思いますが?」
「王家に罪だと!貴女何を言ってるのか━━━━」
「こういった場合、アクセルの地を治める領主様が、国の必要な機関への報告を当然行っている筈ですが、それはどのようになっていますか?王家には当然報告がいっている筈ですけど・・・・まさか、最初の報告が領主様自身の屋敷が損失した話ではありませんよね?事前に被害予測や補助金について話し合いがあった筈です━━━その中には当然、領主様がとる対応についても報告があった筈ですけど・・・違いますか?」
当てずっぽうにテキトーぶっこいたけど、セナさんの顔が明らかに曇った。
「領主様の、ひいては国家運営の一助を担う、貴族様に対する攻撃的な行動の事実が問題であるなら、そちらにも確認しておきたい事があります。ランダムテレポートによる転送である事を把握していらっしゃるのであれば、当然その転送に誘導を是とする調査結果があるのですよね?」
「そ、それは、いまの所は・・・・」
「でしたら今回の件について国家転覆罪は些か過ぎるのではないでしょうか?流石に一切の責任がないとは言いませんが、それを言ってしまえば今回の件に関わった冒険者ギルドも責任を取るべきでないですか?何故なら、サトウカズマに作戦の指揮権を与えたのは冒険者ギルドです」
見守っていた元同僚達が目を反らした。
「で、ですが、屋敷を消し飛ばした責任が」
「街を守る義務のある領主様は一切の責務を放棄している事実もあると思いますけど?そちらは?地下にいらっしゃったんですよね?先ほど聞きましたよ?街の危機を知りながら何一つ行動せず、自身は身を隠していたのですよね?王家より与えられた領地に対する責務を放棄していらっしゃいますけれど、それこそ国家転覆罪ではありませんか?━━━ああ、これは流石に言葉が過ぎました。想像で語るなんてお恥ずかしい。さぞ、特別な理由があったのでしょう。王家より賜った街を放り、やらなければならない特別な事」
一歩セナさんに向かって進む。
「法を盾にカズマを捕らえるつもりなら、事前調査が少し足りないように感じます。出直された方が宜しいのでないでしょうか?」
一歩、一歩、進む。
「それとも王家は罪があるかもどうかも定かではない冒険者を━━━━魔王軍幹部撃退やデストロイヤー討伐において多くの功績をたてた冒険者を━━━━大した調査もなく罪に問うような方々なのでしょうか?」
歩み続けセナの前に立てば、セナさんが少しだけ後ろに引き下がった。
俺はもう一歩進み、セナさんの耳元に口を寄せた。
「魔王軍との最前線を張る賢明で勇敢な我が国家が、魔王軍幹部を撃退出来る人材を、みすみす手離すような真似をして━━━━━本当に大丈夫ですか?ここ数十年、魔王軍に対して幹部撃退などの戦果をあげたのは、アクセルの街の冒険者のみ。その作戦において重要な位置にいたサトウカズマを罪にとう意味が分かっていますか?ここは始まりの街ですよね?冒険者が生まれる街。良いんですかね、そんな所で戦果をあげた人を、こんないい加減な罪にとうて。そんな事して、大丈夫ですかね。今後、冒険者になろうなんて奇特な人間が、生まれるでしょうかね?」
ばっと、セナさんが目を見開いてこちらを見た。
気づいたのだろう。
この国の現状。
この国に生きる為、俺は色々と情報は集めていた。
簡単な法律や理念、歴史も軽くなら知ってる。
魔王軍との戦いにおいて、冒険者達の力が重要視されてる事も。
「一旦お持ち帰りなさった方が宜しいと思いますけど。どうでしょうか?話が聞きたいのであれば、後日こちらからお訪ねしますよ」
「・・・・一度、上層部と事実確認を取らせて頂きます。明日、警察署にきて下さい。任意での事情聴取です。断って貰っても構いません」
「いえ、必ず明日お伺いします」
顔を青くさせて帰ってくセナさんを笑顔で入り口まで見送る。騎士達も去っていき扉が閉まると、歓声があがった。少し悲鳴も聞こえるけど。
「まったく、また面倒な事になりそうだなぁ。なぁ、カズマ・・・・カズマ?」
ふと振り返るとうちのパーティーメンバーが身を寄せあって震えていた。
「カナデが、怖いです」
「ごめんなさい、いつもごめんなさい」
「責務を果たせずに済まない・・・」
トンチンカンの良く分からない言葉の後、カズマが重々しく口を開いた。
「早まったかも、しれない」
どういう意味だ、こらぁ。