この素晴らしい世界に居座るTSド変態野郎にも祝福を 作:らいじゅう
ごめん、な、18禁なのに、んな、様でよ・・・。
死しして屍、拾うものなし!!
「討伐依頼ですか?」
受付先輩のあげた素っ頓狂な声に、俺は思わず振り向いてしまった。見ればサトウカズマと水色がいた。
「ジャイアントトードは難易度としてはそこまで高くありませんが、家畜も襲うモンスターですので危険もありますよ?本当にお二人で?」
「当然よ!!カズマは兎も角、私は上級職のアークプリースト!!カエルの一匹や二匹、ちょいちょいのちょちょいで片付けちゃうわ!!問題ないわ!!」
「そう、ですね。分かりました。お気をつけて下さい、サトウカズマさん、アクアさん」
俺は困った顔のまま依頼を受注した受付先輩から、隣で皿洗いしてる同僚に視線をうつす。視線が合った同僚が怪訝そうな顔をしてきたが、それはスルーしとく。
「ジャイアントトードって、ヤバイんですか?」
「ジャイアントトード?まぁ、それは私らからするとねぇ。家畜丸飲みにする化け物だし。私も実家が家畜飼ってたけど、この季節になると放牧してたヤギとかやられたわね」
「へぇ、成る程なー」
「でも、低級クエストよ?ちゃんと武装した冒険者なら、さっきのアクアさんの言葉通りちょちょいのちょいでしょ」
「へぇ、成る程なー」
何故か頭を叩かれた。
「なぜに?」
「返事の仕方がむかついたから」
なんて理不尽。
「それより、すっかり居着いてるけど、あんたはここで働いてて良いの?冒険者になりたくて来たんでしょ?」
一瞬同僚が何言ってるのか分からずキョトンとしてしまう。だが直ぐに元の設定を思い出した。そういう体だった。
ここでの生活が充実しててすっかり忘れていたよ。
ローション作戦が思いの他きいて、楽しいオナニーライフが始まりだしたから忘れていたよ。
サブクエの魔王退治とか、今更思い出したくらいだ。
「・・・・いや、でも、別に。危ない事したくないし。オナニー楽しいし」
「本当にあんたは変態ね。昨日も煩かったし・・・いっそ娼婦にでもなりなさいよ。あんたの天国でしょ。お金も稼げるし」
「いや、娼婦はちょっと。不特定多数といたすのは、病気が怖いし」
「時々現実的よね、あんたは」
でも、そうだなぁ。
折角冒険者になったのだから、一度くらいはモンスター退治とか行ってもいいかもしれない。
記念に。
思い立ったらなんとやら。
これからクエストに行こうとするサトウカズマに声を掛け同行許可を貰った。最初は渋ってたけど、上目使いでお願いしたら一発だった。「汚ないぞ、変態野郎のくせに」とか言われたけど、そんな変態のお願いを聞いてしまうサトウカズマも中々のものだ。
許可を貰った後は残った洗い物をさっさと済ませて、即行で半休貰った。日頃の行いが良かったお陰か案外すんなり。対価として昨日気紛れで作ったプリンのおかわりを所望されたけど、それくらいなら別にね。
設定が心の中でも生きている間に購入しておいた冒険者なりきりセットにささっと着替え、待ち合わせ場所に向かう。腰に提げたモーニングスターが重い。
「おう、来たかカナデ。なんか冒険者っぽいな」
そう言って手をあげたサトウカズマはいつものジャージ姿。腰に剣は提げてるけど違和感しかない。
いっつあ、のんふぁんたじー。
「今日はいきなりごめん。で、同行させてくれてありがと」
「ああ、別にいいよ。てか、俺達についてきても、あんまり勉強にはならないぞ?二人とも初心者なんだよ。こいつ上級職だけど、戦闘経験とかないし」
こいつと指差された水色は頬を膨らませる。
「むぅぅぅぅ!!何よ、何よ!!確かに戦闘経験はないけど、ヒキニートのカズマさんと一緒にしないでくれますぅ!!女神なのよ、私は!!見てなさいよ、デカいだけのカエルなんてワンパンよ!」
シュッシュッとシャドーする姿は心強く見える。
けど、サトウカズマは顔をしかめてた。
信用はないらしい。
「それよりも貴女!貴女も転生者だったのね!カズマから聞いたわよ!この世界にすっかり馴染んで楽しんでるみたいね。感じるわよ、魂の輝きから・・・!さぁ、感謝して敬いなさい!私のお陰で貴女は今幸せなんですから!!今晩のご飯奢ってくれて良いわよ!!」
意味が分からず首を傾げるとサトウカズマが訝しげに見てきた。
「転生する時、こいつに会ったんだよな?」
「いえ?俺の時は天使っぽい人でしたよ?」
「あ、去り際あった、アクアの後任になった人かな?・・・って、何が覚えてるだよ!?アクアこら!!お前、送り出した人の顔くらい覚えておけよ!!」
サトウカズマの声に水色は視線を逸らした。
水色の額には冷や汗が浮かんでる。
「い、行くわよー!!」
「待てやこら!!」
そうやって賑やかに走り出した二人。
なんやかんやと実に楽しそうだ。
夫婦と間違われても仕方ないな、これは。
俺も武器を片手に、その背中を追い掛けた。
雲一つない、晴れやかな青空の下。
「あああああああ!助けてくれ!アクア、カナデ、助けてくれえええええ!」
「プークスクス!やばい、超うけるんですけど!カズマったら、顔真っ赤で涙目で、超必死なんですけど!」
大爆笑する水色から叫び声があった方向へと視線を向けると、ジャイアントトードに追われるサトウカズマの姿があった。
大層な名前がついてるが、要はデカいカエルの化け物だ。見た目は迫力あるが、強さは全然感じない。小四の時にキャンプ場であった、ヒグマより全然弱そう。打撃系の攻撃が効きにくいとの事もあって、剣を持ってるサトウカズマが格好つけて戦いを挑んだのだが、結果は語るまでもないものだった。
その情けない姿があまりに可哀想だったので、水色に視線を向けて言ってみた。
「助けないんですか?」
「えぇぇー?今面白い所なのに━━━」
残念そうな顔だな、本気か。
割と瀬戸際なのにな、サトウカズマが。
「アクアー!アクアー!!お前いつまでも笑ってないで助けろよおおおおお!!」
「まずは、この私をさん付けするところから始めてみましょうか」
「アクア様ー!」
サトウカズマが綺麗な手のひら返しを披露した所で、漸く水色が重い腰をあげて体をポキポキ鳴らす。
上級職、起動━━━━あ、やば。
「しょうがないわねー!いいわ、助けてあげるわよヒキニート!その代わり、明日からこの私を崇めなさい!街に帰ったらアクシズ教に入信し、一日三回祈りを捧げる事!ご飯の際には私が頂戴って言ったおかずを抵抗せずに素直に寄越す事!そしてひゅぐっ!?」
ふんぞり返りながら何か言ってた水色は、サトウカズマを諦めてこちらに来ていたカエルにパックリいかれた。カエルの口の端から、ぷらんと青い物が生えてる。
南無。
「あ、ちょっ!アクアー!おまっ、お前、食われてんじゃねええええええ!」
サトウカズマの声に反応して、カエルの口から零れた水色の足がビクンビクンと震える。
死ぬな、これは。
そんな事を思いながら、上級職だし何とかなるんじゃねと淡い希望を抱き眺めてると、サトウカズマがショートソード片手にカエルへ特攻した。
ちょっとかっこ良かったのは内緒だ。
水色パックンチョから五分くらい。
目の前には顎を砕かれて絶命したカエルの化け物と、カエルの粘液まみれになって泣きじゃくる水色の姿。
その隣にはそれらを呆然と眺めるサトウカズマ。
「うぅっ・・・・ぐずっ・・・・あ、ありがど・・・カズマ、あ、ありがどうね・・・・っ!うわあああああああんっ・・・・・!」
よっぽど怖かったのか、水色は子供みたいに泣きっぱなし。私的にはちょっとやってみたくなったが、最悪食べきられてしまうと死んでしまうので、安全が確保出来るまでは控えたいと思う。
何とかカエルを倒したサトウカズマだけど、その顔には疲労が浮かんでいた。もうやりたくないと顔に出てる。分かりやすいなぁ。
泣きじゃくる水色を慰めながら、どうにか帰ろうと説得を始める所を見れば本当にもうやりたくないのだろう。わっかりやすいなぁぁ。ちょっと可愛く見えてきた。馬鹿な子ほどって奴だろうか。
「ぐすっ・・・・。女神が、たかがカエルにここまでの目に遭わされて、黙って引き下がれるもんですか・・・・っ!私はもう、汚されてしまったわ。今の汚れた私を信者が見たら、信仰心なんてダダ下がりよ!これでカエル相手に引き下がったなんて知れたら、美しくも麗しいアクア様の名が廃るってものだわ!」
おおう、何故か闘志が灯ってるじゃないの。
どうしたのよ。
サトウカズマの説得も虚しく、何故か闘志を燃やした水色は怒号をあげながら走り出した。離れた場所でグータラしてたカエルに向かって。
水色の拳が白く光出す。
「神の力、思い知れ!私の前に立ち塞がった事、そして神に牙を剥いた事!地獄で後悔しながら懺悔なさい!ゴッドブローッ!」
凄い威力がありそうな光の拳。
期待出来そうなのに、何故か期待出来ない。
というのも俺の脳内に、打撃系に耐性がある情報が過っていたのだ。
ボヨン、とカエルの腹が揺れる。
カエルの表情に変わりはない。
拳の威力は見事に殺されたようだ。
水色の死を悟った俺は、そっとその冥福を祈った。
南無、と。
「・・・・カ、カエルって、よく見ると可愛いと思うの」
そしてやっぱりパックリいかれた水色。
そして案の定助けに走ったサトウカズマ。
その日、俺は知った。
冒険者って大変なんだなぁと。
そして俺は今晩カエルシチュでオナる事を決めた。
楽しみだなぁ。