この素晴らしい世界に居座るTSド変態野郎にも祝福を 作:らいじゅう
テキトーに流すべきだったかぁ(´・ω・`)
「はぁ!?協力要請に応じない!?」
裁判を翌日に控えたその日の朝。
カズマと裁判の事で打ち合わせにいこうと準備を着替えていると、ひょっこり郵便屋がやってきた。渡された手紙を裏返せば封蝋に王都の冒険者ギルドの印璽が入っており、裁判のあれこれでの話かと思って見てみれば、そんな馬鹿みたいな事が書いてあった。
一人手紙の内容に驚いていると、郵便屋は他にも何通か手紙を寄越してきて、どれも似たような内容が書かれていた。ルナさんと回り説得した、冒険者ギルド全滅という結果にちょっと、というか本気で焦る。
俺の声を聞いてめぐみん達が集まってきた。
不思議そうな顔をしたそいつらに手紙を渡してやれば、同じように驚愕の声をあげる。
「こ、これ、どういう事ですか!?裁判は明日なんですよ!?なんで今更!!」
「これも先の件について撤回の手紙か・・・まさか、これ全部か?」
「何を二人は慌ててるの?そのお手紙が何なの?借金の請求書?」
焦りを見せる二人の姿に、水色だけ不思議そうに首を傾げた。・・・・・こいつはぁ。
手短に内容を噛み砕いて説明してやると、途端に額に汗を浮かべてオロオロし始めた。・・・・・こいつはぁ。
「うそ、うそよね!?あんなに頑張ったのに!?私、お酒も我慢して頑張ったのに!?ちょっと、めぐみん貸して頂戴!」
めぐみんの見ていた手紙に水色の手が掛かった。
そっと引き抜かれるそれを逃がすまいと、めぐみんは指先に力を込め━━━必然紙がピンっと張る。
「うわっ、ちょっ、まだ私が見ているのですが!」
「ちょっ、ちょっとだけよ!なによ!良いじゃない私が先に見てもぉ!!」
「おい、止めろ、アクア、めぐみんっ━━━たぁ!あふっ、こらっ、あふん!もっと、叩いて━━━はっ!なんでないぞ!!二人ともその目はやめろぉ!堪らないだろうが!」
ワチャワチャし始めた三人を放って置き、最初に見たその手紙をもう一度読んでみた。その文自体フェイクで何かしらのメッセージが入ってるのではと思ったけど、やっぱりただのお断りの手紙。なんの変哲もない。
まさか王都の冒険者ギルドがこれを蹴ってくるとは思わなかった。自殺志願者か、と本気で疑う。脳足りんでもこうはならない。並みの貴族では圧力は掛けられない。とすれば王家クラスからとなるけど・・・こんな大きな動きがあったなんて聞いてない。
「・・・・どうなってんだ?」
流石におかしい。
いや、情報収集してた時点で気づいていたけど、今回の件といい、前回の魔王軍討伐に関することといい、あまりに異常だ。異常過ぎる。敵の動きがまるで見えないのだ。
裏で誰かが糸を引いてるのは分かってはいた。汚い手を使われる事を承知だった。だから王都や各街に潜り込ませた冒険者達に監視をして貰っていたのだ。不測の事態にいち早く気づけるように。
なのに、その動きがまるでない。
それなのに魔法みたいにコロコロ状況だけ変わる。
それこそ魔法・・・魔法・・・・・・みたいに??
「めぐみん、ちょっと」
「ん?はい、なんですか」
声を掛けるとめぐみんは手紙を放ってやって来た。
そんなめぐみんにそっと耳打ちして聞いてみる。
ふと思ったそれを。
「人の心を操ったりする魔法ってある?」
俺の質問にめぐみんは唸る。
「ないとは言いませんよ。ですが、そういった魔法は昔から煙たがれる物でして・・・あまり取得してる人はいないです。かっこよくありませんし。我が故郷、紅魔の里でも使用者は片手の数もいませんね」
「あるにはあるんだな?魔法も、それを使える人も」
「はい。━━━━ですが、恐らくカナデが思ってるような使い方は出来ませんよ。操るといっても簡単な命令だけですし、外部からの刺激に弱いので小突くだけで解けてしまう物ですから。それに魔力消費も馬鹿になりません。紅魔族の者でも、日に一人二人を操る程度しか出来ません。こういった事を覆そうとしたら、責任者だけ操れば済む話ではないですよね?だから無理です」
絶対に?と聞けば、めぐみんは首を横に振った。
「・・・文献の中にはそういった古代魔法、ロストマジックも書かれています。強大な魔法で都市の人全てを操ったりしたとも。ですがそれも確かな証拠がありません。所詮は眉唾物なのです」
「うーん、そうか」
これが一番しっくりくるんだけどな。
何かと残念なめぐみんだけど、魔法の知識は本物だろうし、嘘つく理由もないだろうし・・・。
取り敢えずこのまま手をこまねいてても仕方ない。
駄目が元々でもう一度王都の冒険者ギルドに助力を願うしかない。カズマとの打ち合わせをめぐみんと水色に任せ、ダクネスには留守を任せた。
そして俺は一人で再び王都へと向かう。
是が非でも、頷かせる為に━━━━。
━━━と、ある程度覚悟していたのだが、あっさりと受諾されてしまった。寧ろおかしな手紙を出してしまって済まないと謝罪される始末。お土産にお菓子の詰め合わせまで持たせてくれるというおまけ付き。
俺はギルドを出て、そのまま首を傾げた。
折れるんじゃないかって程に。
「絶対おかしい」
本当におかしい。
なにこれ。
意味が分からない。
さっき会った責任者はかなり遠回しではあったけど謝ってきた。当時、何故そう考えたのか分からないが、少なくともそれがその時は当たり前の事だったと思ったのだと言った。そうするのが正しいと。念の為に他の職員に聞いても、今回の件についての書類を処分してしまった事を謝られ、今日中には届けると言ってくるだけ。そしてそれは、冒険者ギルド職員全員にいえる事だった。誰もが口を揃えていうのだ。その時はそうするべきだと思ったと。
勿論、それらは彼等が本当の事を話してる前提でだが。
「これって、やっぱり、そうなのか?」
おもえば告発者を叩き潰す為にめぐみん達に頼んだ事の、その報告も大概妙だった。今回の告発者について色々と探らせていたんだけど、その周囲があまりにもおかしな事になっていたのだ。
今回の告発者であるアクセル一帯を管理してる領主アルダープは頗る評判が悪かった。それこそ、なんでこんな奴の告発なんて検察まともに受けてんの?と思う程に。
メイドに手を出すのは日常茶飯事で、子供が出来ても責任も取らずに放り出す鬼畜野郎。
アクセルの管理なんて小指一本分もまともにしないくせ、恐らく国から補填されてるであろう補償金だけはちゃっかり着服してる税金泥棒。
その他にもあげたらキリがない程、領主のアルダープはやらかしていた。脳ミソどっかで落としてんじゃないのか?と思うレベルでだ。
それも、それだけやって起きながら、ただの一回も訴えられていない。
それに、あれだ。もう1つ引っ掛かってる事がある。
めぐみんと水色が領主の話を聞きにいくと、何とも無かったかのように話し始めるのに、毎回が毎回話してる途中で表情や態度を急変させ、怒り狂ったり泣き喚いたりしたそうだ。
最初は権力に負けて泣き寝入りしたものの、思い出したら色々と思う所があったんじゃないか?ぐらいの気持ちで聞いていたんだけど、それにしてはあまりにあまりだったと。
めぐみんから言わせると、まるで忘れてたみたいだったとも。
「・・・・・うーん、なんかあるよなぁ。状況から考えると、脅し掛けられるというより絶対何かされてると思うんだけど。魔法、催眠、暗示、そんな類いのこと」
情報が少な過ぎる。考えるだけ無駄な気がする。
でも、だからと言ってこのまま放置する訳にいかない。
どうやってるかは分からないが、もし何かしらの手段で人の気持ちや考えを誘導したり出来るのであれば、裁判なんて勝てる訳がない。土壇場でこれをやられたら堪らない。まず、間違いなく証言は潰される。裁判官の印象操作なんてされたら負け確だ。
取り敢えず話せば何とかなるみたいなので、次の協力者を説得する為に俺はテレポート屋へと向かう事にした。
場当たり的な対応だが効果がある以上やるしかない。
人混みを縫うように進み、テレポート屋の旗を見つけた所で━━━急に横から出てきた黒の胸板にぶつかった。
小走りでの衝突による衝撃は決して小さくない。
鼻が潰れてめちゃ痛い。
「っ、すみません」
「いや、気にする事はない。我も意図して行った事だ。何分、貴様の未来は酷く見えづらくてな。矢鱈と眩しい小娘よ」
「は、はぁ、眩しい?」
顔をあげると頭二つ分は大きい、端正な顔つきの男がいた。黒いスーツみたいな服がやけに似合ってる。
男はこっちを見下ろすと、不躾にジロジロ見てきた。
「漸く捕まえたが・・・ふむ、やはり妙だな。てっきり、奴らの手先かとも思ったのだが・・・・人間は人間か。しかし鬱陶しい光だ。まったくもって気に入らん」
「はぁ」
「まぁ、良い。貴様には幾つか聞く事がある。悪いようにはしない。暫し貴様の時間を寄越せ」
そう言うと男はいきなり俺を横抱きにした。
俗にいうお姫様抱っこだ。
突然の事に動けずにいると、男はそのまま歩き始める。
テレポート屋をすっかり過ぎ、人の賑わいが過ぎ、いよいよ人気のない路地裏に入った所で、漸く脳が高速で回り始めた。緊急危険信号キャッチである。
「っ!?ちょっ、なんだよ!?離せっ、こらぁ!!」
「なんだ今更。暴れるな。何を喚いているのだ。ふむ?━━━━くっ、わからん。人間の分際で、見通す事を生業とする我の目を誤魔化すでないわ。忌々しい」
顔をしかめるこいつに離す気配はない。
なので右拳を顎目掛けて振り抜いた。
直撃寸前でかわされたが体勢が崩れ、死角が生まれた。なのでそのまま体を起こし、渾身の頭突きを横っ面にかましてやる。
「っぼはっ!?」
「びぐぅわっ!?」
男が手を離し大きくのけ反り倒れる。
当然俺を支える者もいなくなった訳で空中に放り出され━━━━尻から落ちた。衝撃と痛みで変な声が出てしまう。痛いなんてもんじゃない。超痛い。内臓飛び出るかと思った。
お尻を擦りながら何とか立ち上がると、男もフラフラしながら立ち上がっていた。こっちを見る視線が鋭い。
「貴様っ、本当に文明人か?いきなり殴り掛かるわ、頭突きをくれるわ。正直、品性を疑うぞ」
「・・・いっ、いきなり抱っこされて、人気のない所へ運ばれたら、殴り飛ばす権利くらいあって然るべきだと思うんだが?」
「なるほど、それは何とも文化的だ。権利を主張するあたり、まったくもっての文明人だな。━━━それが如何なる暴力的で短慮に過ぎる主張であったとしても、まったくもって文化的だ。貴様、一万年は生まれる時を間違えたな」
喧嘩売ってきてるのだけは分かった。
誰が原始人だ。おい。
「フハハハハ!ふむ、その悪感情、中々に美味である」
何か戯言を抜かした男は額に手を当てる。
撫でるようにその手が顔から離れると、白黒の仮面が男の顔に付けられていた。
「まずは自己紹介と行こうか。我は悪魔、見通す悪魔のバニル。七大悪魔の一柱にして、第一席を頂く地獄の公爵である。以後お見知りおきを」
恭しく礼をする姿には、身分の高さを感じる。
悪魔がどうというのは信じるのは別としても、それを当たり前に出来る以上タダ者とは思えない。
第一、こんな所に、王都のど真ん中に、魔王軍幹部のバニルがいるわけないし。
「・・・冒険者、兼、冒険者ギルドのウェイターのカナデです」
「ほう、我が悪魔と聞いても動じないとは。これは中々・・・・しかし、ふむ?ウェイターか・・・女性の店員であればウェイトレスが適当ではないか」
・・・・・・・おう?何いってんだ。
それは当たり前の事だろ・・・・・・・おう?
・・・・うん?
・・・ほう。
あれ、もしかしてずっと間違って名乗ってた?
「━━━ふむ、その羞恥、中々に美味である。貴様、思った以上に感情豊かだな。貴様個人としては少し気に入ったぞ。これからもちょいちょい、我がからかってやろう」
「喧しい、ぶっ飛ばすぞ」
「ふむ、怒りの悪感情、美味である━━━━━さて、チカチカと眩しい貴様をいつまでも見ていても仕方ない。早速だが豆電球の小娘カナデ、貴様今、随分な面倒事に関わっているだろう?」
バニルと名乗った男は顔を近づけ続けた。
「我にも一枚噛ませよ」
「ことわ━━━━」
「ええい、少しは考えよ。貴様にとっても、そして我にとっても決して悪い事にならぬ。これは対等な取引と言える。見通す悪魔の名において保証しよう」
「━━━━━る」
「躊躇いもなく言い切るでないわ!」