この素晴らしい世界に居座るTSド変態野郎にも祝福を 作:らいじゅう
現在エロ少な目で
投稿させて頂いております。
「何回目か忘れちまったけど、もう一回行くぜ!皆ージョッキ構えろーー!!」
そんな酒精混じりの声に、顔を赤らめた連中が応えるようにコップやジョッキを手にしていきます。勿論各人が手にした物には並々と注がれたクリムゾンビアが揺れていて、どこもお酒の臭いが凄い事になってます。
「サトウカズマの無罪判決にカンパーーーーイ!!」
「「「カンパーイ!」」」
掛け声と共に勢い良く掲げられたジョッキやコップ。
当然並々に注がれていたクリムゾンビアが器に収まっていられる筈もなく、周囲へと飛び散っていきます。
「景気良く奢ってくれる、ダスティネス家のお貴族様にカンパーーーーイ!!!」
「「「カンパーーイ!!」」」
音頭をとるその掛け声は更に大きく、動きも激しく強くなり、掲げられたジョッキやコップからもクリムゾンビアがドバドバ溢れていきます。きっともう殆んど残っていない事でしょう。勿体無いですね。
「クソ領主に目にものくれてやった俺のカナデちゅわんに、カンパーーーーイ!!」
「何が俺のカナデちゅわんだ!ボケ!!殺すぞ!」
「そうだ!馴れ馴れしいぞ、クソダスト!!」
「死ね!性犯罪者ァ!!」
「カナデちゃんのけつ触った手だせや!!今日こそ引きちぎってやる!!」
「んだと、こらぁぁぁぁぁぁぁ!!!!やんのかこらぁ!!あんだこらぁ!!上等だ、雑魚共!!掛かってぇぇーーーこいやぁ!!」
何故だか喧嘩が勃発したようです。
原因の根底に仲間がいるみたいで、何とも言えない争いですね。正直見ていられません。
私は厨房から直接貰ってきた山盛りの唐揚げを抱えながら、慌ただしいそこを後にしました。
人混みを縫うように進んで少し、いつものパーティーメンバーと主に女性冒険者達がくだを巻いてるエリアへ戻ってこれました。こっちも大概ベロベロの酔っぱらい集団らしく、大分グダグダしてるようです。
「あっ、めぐみんらぁ!」
「ああっ、ほんろらぁ!めぐみんらぁ!」
楽しげな声に視線をやれば、クリスとリーンが赤い顔でフラフラしながら近づいてきます。以前の女子会でお酒はもう止める、と固く決意表明していた二人なのですが・・・・駄目だったようですね。
「どょこひっへはのーー?かにゃでがねぇー」
「そうらぁ!ひょこひってたんらぁ!こちりゃの、くりすちゃんが、ありがたぁぁぁーーいおはなししてくれりょのに!」
「ありがたいなんて~えへへ~そんにゃでもないけど・・・」
「にゃんて、うっそー!くりすちゃん、おせっきょーばばぁのまきでしたぁ!」
「なんりゃとぉぉぉ!!だれぎゃ、ばばぁらぁ!こにょこにょー!」
ここでも争いが勃発しました。
なんでしょうね、酔うと喧嘩しなければいけない決まりでもあるのでしょうか。
そのまま放っておくのもなんだったので、貰ってきた唐揚げをそれぞれの口に放り込んでおきました。これで治まるとは思いませ━━━━
「おいひー」
「にくじゅーうまぁ」
━━━治まりましたね。酔っぱらいって一体何なんでしょうか。
もう一個余分に唐揚げを口に詰めてやってからパーティーメンバーの元へと戻ると、カナデとダクネスが静かにグラスを傾けていました。この間の女子会の時は魑魅魍魎の巣でしたが、今日はちょっと大人な雰囲気が漂ってます。
「おっ、めぐみんお帰りー」
「ん?ああ、お帰り。しかし、また随分と貰ってきたな・・・・」
カナデがこちらに手を振ってきます。そしてダクネスの視線は山盛りの唐揚げにきました。
流石ダクネス、筋肉になりそうなお肉の山は見逃しませんか。ふっ、いやしんぼですね。伊達に腹筋が割れてる訳ではないという事でしょう。
「・・・何か失礼な事を考えていないか」
「気のせいですよ、ダクネス。それより唐揚げお待たせしました。レモン掛けてきちゃいましたけど、大丈夫ですよね?」
テーブルへ置きながら念の為に聞いてみましたが、二人は笑って大丈夫だと言ってくれます。ほっとしたのと同時に違和感を感じます。こういう時ひねくれたカズマと妙に拘りを持ってるアクアが一言くらい文句言ってくるのですが━━━━んん?
「━━━━そう言えば、カズマとアクアは何処にいったのですか?」
ふと見渡すといない二人の姿。
私の質問にカナデは口元に人差し指を当て、苦笑いで自分の膝を指差します。
よくよく覗いてみれば、酒臭いカズマがイビキをかいて寝ていました。まさかの膝枕です。
さっき戦争を始めた人達には見せられない光景ですね。ある意味で結束して、一時的に平和になりそうでもありますが・・・そのあとを考えなければ。
「それで、アクアは向こうだ」
ダクネスの指差した方向には十八番である花鳥風月でギャラリーを湧かせる、酒瓶を装備したアクアの姿がありました。
「どうも、どうもー!あ、おひねりは投げないで下さーい!これはそういう物ではないので━━━」
・・・・あそこはある意味で平和そのものですね。
カナデの隣を諦めダクネスの隣へ。
席についた私の前に小さいグラスが置かれました。
とてもシュワシュワしてます。
「・・・か、カナデ?あの、これは?」
シュワシュワを置いたのはカナデです。状況から考えれば、普通なら飲んで良いよという事でしょう。ですが、普段飲酒に関して一番に厳しい態度を示すのも、そのカナデなのです。
なのでどういう意味でこれを置いたのか聞いてみると、カナデは悪戯っ子のように悪い笑みを浮かべます。
「子供の内から飲むは良くないけどな・・・まぁ、この国では14歳っていったらもう成人だろ?それにお祝いの席だしって事で━━━━ちょっとだけな?」
「い、良いのですか!?後で怒りませんか!?」
「怒らない怒らない。でも、それだけだぞ。後はもちょっと体が大人になってからな」
「はい!頂きます!」
シュワシュワとその名前の通りの音がなるコップを手にすると、コップ越しその冷たさが伝わってきます。
そのまま口をつけようとした所で、私は一旦その手を止めました。別に飲みたくないからとか、体の事を考えてとかではありません。そこら辺は今更です。
手を止めたのは他でもありません。
どうやって飲んだ方が一番美味しく飲めるか、それを悩んだからです。
よく一気で、という言葉を聞きます。
ギルドで食事をしてるとそれは実際よく見る光景で、そういう人達は決まって凄く良い顔をしてるものなのです。まぁ、お酒の弱い人は大変そうでもあるのですが。
ですが、折角許された一杯。
それを一気に飲んでしまっては勿体無い気がします。
そんな事して味分かりますかね?
やはり、よく味わって飲んだ方が・・・・ですが、一番美味しく頂けるのが一気であれば一気の方が・・・・しかし、量も問題です。これだけしかないのです。ほんとの一口だけ。果たして一気で美味しくなるのでしょうか。なんか、こう、ガブガブ飲むのが気持ちいい的な、様子を見てるとそんな所もある気も・・・しないでもないです・・・・むむむむ!
「はははっ、そんなに悩んで飲むもんでもないぞ?」
「そうは言いますが、私にはこれしかないのですよ?こんな機会、次はいつあるか・・・」
「次は当分なさそうだもんなぁ」
「むむむっ!その言い方聞き捨てなりませんよ!!そうやって余裕でいられるのも今の内だけですからね!!直ぐに私の方が・・・━━━」
・・・・どうでしょうか。少なくとも私の母を見ている限り、血筋的な面で言えば希望はなさそう・・・い、いえ!血筋が全てではありませんよね!そうです、そうに決まってます・・・・。
ふと胸に触れて見ると、そこにはほんのりとした膨らみがあるだけ。というか、その膨らみも、ほんのりもほんのりです。もう14歳なのに・・・。
『━━━めぐみん、勝負よ!』
脳裏に同い年でありながら凶悪な巨峰を抱えるあの子の姿が浮かび、胸の奥底へ何とも言えない痛みが走っていきました。ぐぬぅぅぅ、次あったらもぎってやりましょう。
「・・・どした、めぐみん?」
「はっ!い、いえ、何でもありませんよ。よし、決めました━━━━━」
「何してるのーみんなー・・・あっ!駄目よ、めぐみん!」
これからという時に、パッと横から伸びてきた手が、コップを拐っていきました。突然の事に呆然としてると、コップを拐っていった犯人がそれを一気に飲み干し「ぷはーっ」と気持ち良さそうに吐息を漏らしました。
勿論、私の目の前です。
「もぅー駄目じゃない、カナデもダクネスも。ちゃんと見てないと!めぐみんが間違ってお酒飲んじゃう所だったわよ?もう、みんな私がいないと駄目ねー!ふふふ!あっ、感謝はいらないわよ!私もお酒貰えたから、まぁ、おあいこで━━━━」
「な、なな、なななな!何をするんですかぁーーー!!わた、私のっ!あ、アクアぁぁぁ!!」
「━━━━っうぇ!?な、何よ!!いきなり大きな声出して?お腹でも空いてるの?」
あまりにもベストタイミング。一瞬三人に謀られたのかと思いましたが━━━━流石にそれは邪推し過ぎたようです。アクアの間の抜けた顔に計画性は感じられません。嘘つけるような人でもありませんし。
ついでにカナデとダクネスも随分な間抜け顔を晒しているので、きっと本当に白なのでしょう。
事故、事故なら、致し方ありません。
仕切り直せば良いだけですから。
「カナデ、あの━━━━」
「残念だったなぁ、早く飲まないから」
「━━━━え」
私の言葉を遮るように、カナデがそう言いました。
ちょっと内容が分からなかったのでカナデを見つめて復唱を求めましたが、唐揚げを食べ始めてしまって見てくれません。
「ダクネス、あの━━━━」
「それだけ、という約束だからな。残念だったな、めぐみん。まぁ、そう焦らずともその内飲めるようになるから、いま暫しの我慢だ」
「━━━━ええぇぇぇぇ!そんなっ!私、少しもっ、カナデぇ!」
私の声にカナデがこっちを向きます。
カナデは優しく微笑み、その手で唐揚げを摘まむと私の口元へ差し出してきました。
「はい、あーん」
「あーんっ・・・・・って、騙されませんよぉ!!」
「あはは」
何とか二人の説得を試みたものの、結果は断固としてのNO。最初に言ったように『それだけ』だそうです。まぁ、もたもたしていた私にも非はありますから、あまりしつこくはしませんが。━━━え、いや、アクアとは話し合いの場を設けますよ。勿論です。
それから暫くは、いつものようにお喋りしながらご飯を食べていたのですが、ふとある事に気づきました。
カナデの飲み物の事です。
カナデが手にしたジョッキの中身がずっと水なのです。いつもなら好きじゃないとしても、周りに合わせてそこそこ飲む筈なのですが・・・。
「・・・カナデ、体調悪かったりしますか?」
そう尋ねるとカナデは不思議そうに首を傾げました。
「いや、別に?ああ、いや、ちょっと眠いのはあるかな。でも、いきなりどした?」
「さっきからお水ばかり飲んでいたので」
カナデは一瞬目を丸くした後、苦笑を浮かべました。
「ちょっとな」
それだけ言うとカナデは視線を落としました。
様子を伺っていましたが、もう何も言う気がないようです。なので、また、それまでと同じように食事に戻ろうとしたのですが━━━━それが目に止まりました。
優しい顔でお腹を撫でる。
カナデの、その姿が。
それまで小さな違和感はずっとありました。
確信を得る為にも動きましたが、いつも寸前でかわされていました。状況的には限りなく黒でしたが、物理的に何も掴めなかった以上、何も言わないでおきました。
ですが、そんな顔されてしまっては、もう素直に知らないふりはしてあげられませんよ。
カナデ━━━━━。