この素晴らしい世界に居座るTSド変態野郎にも祝福を 作:らいじゅう
こっそりセックス生活も板についてきた今日この頃。
ちょっとした事情からお尻に違和感を感じつつも皆が出掛けた後一人屋敷の掃除をしていると、門の所に掛けてある呼び出しのベルが鳴り響いた。
訪問者自体少ないので何だろうかと掃除の手を止めて見に行けば、スーツを着こなしたオールバックな男前がそこにいた。見知らぬ男にホウキ片手で警戒すれば、男は俺を見て何が面白いのか高笑いを始める。
そして、その様子に気づいた。少し前に見た、あの胡散臭い男の事を。
「フハハハハハ!!暫くぶりであるな、性欲のまま日夜仲間のスケベ小僧と爛れた生活に励む娘よ!!魔王より強いかも知れないと噂の、偉大なる悪魔公爵バニルさんだ!今日は汝が払うべき約束の対価を受取に━━━━━っはぁうわ!!?」
俺は水色から貰っておいた聖水を叩きつけた。
水色曰く悪魔特効のあるありがたいお水で、並みの悪魔であれば即成仏レベルの代物らしい。ただ、動きこそ鈍くなったとはいえ、目の前のこいつにはそこまでダメージなさそうだが。
「ぐぉぉぉぉぉ!?貴様っ━━━━ぶぉはっ!!?ぐおおおおっふぐぇっ!?あだだだだだ!?なっ、何個持ってるのだ!?貴様っ!?相も変わらず見通しにくいっふぐお!?」
隙だらけの姿に聖水をぶつけまくる。
こんな時の為に水色から安く買い上げておいた。
手持ちは15個しか用意してないが、今投げてる小瓶なら家に帰れば100個はある。一撃必殺の大瓶も5個あったりする。
投げて、投げて、投げて、投げまくる。
手持ちが尽きた所で、肩でぜぇぜぇと息する隙だらけのそいつの脳天目掛け、ホウキの柄に全体重を乗せ突く。
しかしまだ息があったのか、当たる寸前の所でかわされた。惜しい。
「鬼か!?貴様っ!?ここまで徹底する者も、久しく見ないぞ!!よく人の姿をとった我にここまで攻撃出来るな!?」
「?・・・人じゃないんだろ?」
「いや、確かに人ではないがな!?我が言うのもなんだが、貴様本当に人か!?」
「人に決まってるだろ」
流石に魔王軍幹部といった所か。
あわよくばと思ったけど、そう簡単には死んではくれないらしい。
「まぁ、良いや。用があるなら外で話せ。入ってきたら殺す」
「・・・この悪魔の公爵たる我を前に、ここまで堂々と殺意をぶつけてきたのは記憶する限り神以来だぞ。魔王ですら敬意を払うというのに・・・貴様、本当にいい性格をしてるな」
「悪魔に言われたくないわい」
「言われたくなれけば、少しはしおらしさを学んで来るが良い。万年発情娘が━━━ぐふっは!?貴様っ、まだ隠し持っていたのか!?」
全部投げたとはいってない。
まだそこらに置いてある。
「魔王軍幹部を辞めたい? 」
掃除と洗濯を済ませた午後。
書き置きして戸締まりをきちんと済ませた俺は、夕飯の買い出しついでに例の約束を果たす為、見通す悪魔と町外れの酒場へとやってきていた。
最初は心底嫌ではあったが人目につく方が不味いので、屋敷の中で話を聞こうと案内したのだが・・・何やら家の屋敷に結界が張ってあるらしく悪魔が断ってきた。無理をすれば破れるし、成仏したりもしないらしいのだが、結界を破れば結界を張った術者に察知されると言うので外へと出掛けたのだ。
それで今あまり人のいない酒場の隅っこにて、こっそりお話し合い中なのである。
「ああ、そうだ。相違ないぞ」
「辞めたいから辞める、なんて出来る職種なのか?悪ーーー・・・魔?」
「人が少ないとはいえ悪魔は止めろ。というかそこで踏み止まって何故言い切った?敬意も添えてバニルさんと呼べ。━━━ふむ、まず魔王軍の幹部とは言っても、魔王に頼まれて城の結界の維持をしているだけの、いわばなんちゃって幹部でな」
「なんちゃって幹部・・・・」
正面に座るバニルの表情からは何も汲み取れない。ただ、大分信用し難いふざけた発言だけど嘘も感じない。
悪魔の言動にどれだけ信用がおけるか謎だが。
「そして我輩は、世間で言う所の悪魔族。悪魔の最高のご飯は汝ら人間が発する、嫌だなと思う悪感情だ。我輩達にとって、汝ら人間は美味しいご飯製造機であり、それを壊したりするなどナンセンスでしかないのだ。むしろ、汝ら一人生まれるたび、我は喜び庭駆け回るくらいなのだ」
「ふぅん?食糧調達の為に、死なない程度、真綿で首は絞めていきますけどね・・・って?いい性格してるな」
「貴様に言われたらしまいだな。まぁ、良い。話を戻すぞ━━━━━」
色々あって俺達が倒した魔王軍幹部の調査を引き継ぐ事になったバニルだったけど、最初からやる気とかなかったらしい。結界の維持にも飽き、魔王の部下から貰える微妙な悪感情にも飽きてしまい━━━この仕事を機に引退し、以前から温めていたとある計画を実行する事を決めたのだとか。
「━━━とまぁ、そういう訳だ。こちらの街に住んでいる友人とも話をつけ、次の宿り木も見つけた。我が引退するに相応しい舞台も見つけ・・・それらの支度も終わっている。二人がかりだというのに、随分と手間が掛かったがな。それで仕上げの部分、口火を切るのに顔の広い貴様の手を借りたいのだ。当然、貴様の出した条件はクリアしている。まぁ、今回対価について、この羊皮紙に詳細をまとめた。目を通し、問題がなければサインせよ」
ぱっと胸元から取り出された羊皮紙の束を見てみてれば、長ったらしく俺がやる事が書き込まれていた。やること自体は難しくはないのだが、言い方がアホみたいにまどろっこしい。完全に条件を山のように提示した俺への当て付けだろう。
まぁ、条件書き込みまくってやったからな。復讐される覚えもなくはない。
書類の中には条件の中に盛り込んだ相互利益の提示もされていて、今聞いた話と相違ない内容が明記されてる。書類の上ではこちらが不利益を被る事はなさそうに見えるのだが・・・相手は未来を見通すと自称する悪魔。確実にここに書かれてない利益が存在するだろう。そしてそれは俺の不利益も同じように。
とまぁ、ぼやいた所で未来の事なんて予想出来ないし、対策も打ちようもないし、はっきり言ってどうしようもないのだが。
その後は書類を確認しながら、気になる所を確認しつつ数十分。一通り確認し納得した俺は羊皮紙へサインを書き込みバニルへと差し出す。
少しだけ怪訝な顔で羊皮紙を掴んだバニルに、一言だけは付け加えておいた。
「俺の身内に何かあったら、地獄の果てまで追い掛けにいくからな」
目を見てそう伝えれば、バニルは呆れた表情で羊皮紙をとっていった。
「その悪感情、好みではないが中々美味である。━━━が、恐ろしい事をさらっと言うな。我とて恨みを買って良い相手くらいは選ぶ。誤って玄武をくびり殺すような真似はせん・・・まぁ、あれらはそうそう死ぬようなたまでもないが」
「玄武?」
「それも直に分かるであろう」
それだけ言うとバニルは羊皮紙を懐にしまい出口へと向かっていく━━━━が、出入り口の戸に手を掛けた所でこちらに振り向いてきた。
「これは助言だ。掃除がてら屋敷の至る所へ聖水を撒くのを止めよ。出会いの妨げとなっている」
「出会いの?」
「貴様らにとって損はない。信じるか信じないかは、貴様の自由だがな・・・・・ああ、それと、我の見立てでは痔にならぬから安心して昨晩のように励むが良い。今も尻穴が気になって仕方がないド淫乱変態TS娘よ」
「・・・・うむ、その羞恥美味である」
話し合いが終わって一時間程。
聖水片手に悪魔を追いかけ回したが、残念ながら仕留めるには至らなかった。奴が逃げ去った路地裏を見ながら、次は仕留めようと改めて心に誓い、聖水用の小瓶をダースで購入して帰った。後日一杯届いた。
それから数日の間、俺は頼まれていた事を実行へと移した。何も魂を捧げろとか、生け贄を差し出せとか、誰かを陥れろとか・・・如何にも『貴様っ、悪魔かっ!』みたいなそういう事はしてない。
俺がやったのは頼まれた噂を流す事、それだけだ。
内容は『魔王軍幹部のバニルさん、キールのダンジョンで引退パーティーするってよ』っという愉快極まりない噂だ。正直こんな噂を流して魔王を刺激しないのだろうかと疑問に思い聞いたが、バニル曰く「我の行動に関しては割り切っておろう。結界に関しては、頭を抱える事になるやも知れぬが、なっ!・・・フハハハハハ!ただでさえ寂しい頭がどうなるか、これから見ものであるな!!」らしい。あいつは最低だと思う。
ウェイトレスしながら冒険者達へと流した噂は、尾ひれも付きながらあっという間に広がっていった。引退につきお宝大放出祭りなんだとか、モンスターが宝石をドロップするとか、今ならスタンプ二倍だとか、イージーモード実装とか、ダンジョン攻略すると二つとない秘宝が手に入るとかなんとか。
勿論俺はそこまで質の悪い噂は流してないので、恐らくあの悪魔が人に紛れて余計な話を追加していったのだろうと思う。ただ、実際に宝と呼べる代物を手にした者もいて、丸っきり嘘でもないそうだった。実際に宝を見たクリスが血眼になって探してるらしいので、相当の値打ち物なんだろう。
噂が噂を呼んで、多くの人がダンジョンへと引き寄せられた。そしてキールのダンジョンから最寄りの街であるアクセルにも当然その余波はあり・・・暫くの間アクセルの街は人でごった返す事になった。
俺はウェイトレスとして奮闘し、街の皆もこのお祭り騒ぎに便乗し、それぞれがそれぞれに稼ぎまくった。いつもは閑古鳥が鳴いてる貧乏店主さんの店もその時だけは大盛況で、笑い声が特徴的な男と一緒に荒稼ぎしていたらしい(めぐみん談)。
うちのパーティーも例外ではなく、カズマとめぐみんが開いた屋台が大当たり。キャベツの報酬なんて目じゃないレベルで稼ぐ事が出来た。水色はいつもの調子で戦力外、ダクネスは実家が大変な事になってると帰ってしまったりでアレだったらしいが。
おおよそ一週間程続いたお祭りだったが、それはある日突然終わりを迎えた。━━━というか、うちのパーティーが終わらせてしまったようだ。聞く所によると以前の功績で冒険者仲間によいしょされたカズマが他のパーティーメンバーと特攻。なんやかんやとバニルを討伐してしまったとか。いずれ頃合いを見て倒されるとは聞いていたけど、まさかうちのパーティーに倒されるとは・・・。
同僚には「良かったねぇ」とニヤニヤされたが、正直裏事情を知ってる身として微妙で、頑張っても苦笑いしか出来なかった。報償金貰えるのは嬉しいけどな・・・うん。
いや、まぁ、嫌に格好つけて「野暮用を済ませてくるぜ」と死亡フラグ立ててったから何かあるとは思ってたよ?まさか魔王軍幹部倒しにいくとは・・・プレッシャーかけ過ぎた事は反省はしてる。
最後にうちのパーティーメンバーに代わって、ダンジョン攻略組が持ち帰ったクリア報酬についてだけ教えておこうと思う。
彼らがげんなりしつつ、ギルドへ報告の為に持ち込んだそれは、裁判やら何やらで俺達を散々に振り回した、領主アルダープの無駄に神々しい裸夫画だった・・・・俺がやつの笑い声を幻聴したのは言うまでもない。