この素晴らしい世界に居座るTSド変態野郎にも祝福を 作:らいじゅう
「「「「・・・・・」」」」
「おう、言いたい事があれば言ってみろ。馬鹿共」
出来るだけ優しく、丁寧に。
それでいて笑顔を浮かべながら、尚且つ指を鳴らしながら、見た目は反省してそうなそいつらに聞いてみる。俯いていて表情は見えないが、正座させた全員が肩を跳ねさせたので、どんな顔してるのかは見なくても分かる。一応反省はしてるらしい。
「俺が見送った時・・・出発する前に、いったよな?最近上手く行ってるからって、調子に乗ったり油断はするなよって?俺言ったよな?アタッカー一人欠けた状態で行くんだから、よくよく気をつけて行けよって?━━━━水色、俺さぁ、言ったよな?」
名前を出すと水色がびくりと肩を揺らす。
目線を沢山泳がせた後、辿々しく話始める。
「いっ、言いました!でも違うのよ?聞いて頂戴カナデ。私はちゃんとしてたの。ほっ、ほらっ、カズマのこともちゃんと蘇生させたでしょ?ね?それに私ね、とても頑張ったの。敵に一杯襲われて凄く大変で━━━」
口が回るようになってきた所で、水色の部屋に隠してあった酒瓶を取り出し水色に見せつける。
水色の表情が絶望の色に染まった。
「お前が最初に馬鹿やらかしたの聞いたばっかりなんだけど、それがお前の言いたかった事で、良いんだな?」
「━━━━はい、ごめんなさい。調子に乗ってすみませんでした。でも、本当に、良かれと思ったんです。本当なんです、ごめんなさい。だからその手にあるお酒は取らないで下さい。お願いします、カナデ様」
「・・・・はぁ」
今日のその騒動は朝早くから屋敷に突撃してきた、領主との一件以来アクセルの街に常駐させられてるセナさんから始まった。
魔王軍幹部バニル討伐の功から、最近カズマに色目を使うセナさんが持ってきた話は、リザードランナーの討伐というクエスト。火を吐いたり、魔法撃ったり、さんまが畑から採れたりが当たり前の世界で、攻撃力が馬くらいしかない上、基本大人しいことで知られる家畜系モンスターの討伐依頼なんて何で持ってきたのか?と思ってると、とある事情があった。
それがリザードランナーのマドンナ、姫様ランナーの出現だ。
リザードランナーはメスを巡って、他種族を相手に走り競い、その抜き去った数で勝負をする特殊なモンスターだ。その競争時にオスは非常に気性が荒くなり危険で、普段の温厚さはどこに差し出したのかと思わんばかりの蹴りを放ってくるそうだ。え?うん。俺自身何言ってるんだろうかとは思うけど・・・他種族と走って、蹴りなりなんなりの妨害行為をしながら、その抜き去った数で勝負するモンスターなのだ。
そんな七面倒な生態系をもつリザードランナー。
メスの中でも特異個体である姫様ランナーを巡る争いともなれば、オスのやる気もいつもの数十倍とからしく、何十匹も群がりながら馬車を追い抜いたり、蹴ったり、騎竜追い抜いたり、蹴ったりするので非常に危険で、出来るだけ早くに討伐して安全を確保したいとか。
丁度俺の装備が新調中だったし、ギルドで手伝う約束もしていて予定が合わなかった。なので今回は他の冒険者に任せようと提案したのだが、魔王軍幹部討伐で変に自信をつけたカズマはこれを快諾してしまった。
鼻の下を伸ばしながらセナさんに調子の良いこというカズマの背中に、何とも言い難い嫌なモノを感じつつも、カズマがそこまで言うなら何か手があるのだろうと・・・クエストに出掛けたカズマ以下トンチンカンを見送った訳なのだが・・・・・はぁ。
結果は、まぁ、姫様ランナーと群れの大半を討伐と格好のつくものに終わった。終わったが・・・その代価がよろしくなかったのだ。
カズマ、二度目の死亡という、その結果が。
半泣きで謝る水色から一応深い反省を感じたので、取り敢えずお酒は返しておいた。ほっとする水色から視線をカズマへと映す。
カズマはびくりと肩を揺らす。
「まず、首は大丈夫か?」
「首は大丈夫です。はい、違和感はありますけど。はい。すみません」
俺は抑えきれない溜息を一つ吐き、めぐみんとダクネスに視線を向けた。何故か二人も肩を揺らす。
今回は群れの討伐では活躍したというのに、なんでビクビクしてるのか不思議で仕方ない。さっき聞いた報告ではダクネスが敵を引き付け、めぐみんが集まったそれをきっちりと爆裂魔法で仕留めたと━━━褒められることはあれ、怒られる内容ではないと思うんだけど。
「めぐみんとダクネスは良くやったな。馬鹿と抜け作のフォロー大変だったろ。お風呂入れといたから、ゆっくり入って疲れでも取ってこい。夕飯は・・・俺がお金出してやるから外で好きな物食べてくると良い。俺はカズマとじっくり話す事があるから、気にしなくて良いぞ」
笑顔でそう伝えると二人が静かに頷いた。
聞き分けの良い子は好きだよ。俺は。
めぐみん達にお金を握らせてると、水色がこそっと手をあげてきた。視線で言葉を促せば恐る恐るといった様子で口を開く。
「あっ、あのーー、カナデさん?私は、どうなるのかしら?私も、あの、お腹ペコペコなのだけれども・・・」
「水色は一回ごめんなさいしたしなぁ・・・まぁ、自主性を重んじる、とだけ言っておく」
「そ、そう!それなら私も、ちょっとお出掛けしてくるわね!めぐみん達とご飯行ってくるわ!ね、めぐみん!ダクネス!」
慌てた様子でそういうと、水色はめぐみん達と風呂場に向かって逃げていった。あれだけ反省してそうでも、恐らく三日もすれば綺麗さっぱり忘れるんだろうなぁと思いながら━━━━俺はカズマに視線を戻し、満点の笑顔を見せてやった。カズマが見るからに怯える。
「おう、カズマは取り敢えず、暫くはそのまま正座しようか。それからちょっと面貸せや」
「はっ、はいっ!!カナデ様ぁ!!」
めぐみん達が逃げるように出掛けて少し。
言われるがままついてきたカズマは、俺の部屋に入るなり何も言わずとも石畳の床へ正座した。カズマは基本ひねくれた事しか言わないし口先だけで誤魔化す事が多い奴だが、本当に自分が悪いと思った時は潔く謝る奴なので、今回の事は本当に反省しているんだろう。
「・・・取り敢えず立て」
「はい」
すっと立ち上がったカズマに、ベッドを指差してみせる。カズマは少しだけ怪訝そうな顔をしたが、命令に逆らうつもりはないのか大人しく従い、ベッドへと腰掛けた。
「ちょっと顎あげろ」
「お、おう?」
変な方向に曲がったらしい首を確認してみる。
水色の治癒が適切だったのか、傷痕や変な所は見受けられない。カズマに一言触る事を告げてから、触ってみる。やっぱり特別おかしな所はなかった。
「触られて痛かったりしないか?違和感あるっていったけど、具体的にどう変なんだ?」
「痛いとかは、ないです・・・違和感は、その、寝違えた時みたいな、左向く時とか少し動かしづらいというか・・・」
「そっか」
万全とはいかなくても、生活に支障が出る程ではないか。しかし、違和感か・・・。水色は怪我自体は完治してるって言ってたのにな。まぁ、カズマも首の骨がへし折れたらしい事はぼんやり分かってるみたいだし、気持ち的な問題なんだろうな。
「あの・・・カナデ様?怒ってないんですか?」
首の具合を確かめてると、妙にしゃちほこばった言い方でカズマが尋ねてきた。目には緊張以外に困惑が見てとれる。またお説教の続きをされるのかと思ってたのだろう。
そりゃ怒ってることは怒ってる。
水色がいるお陰でこうして帰ってこれたが、本来ならカズマのミスは命を落とす致命的な物。生きて帰ってきたなら、そりゃ小言の一つや二つや三つ言いたくなる。自殺しかけた俺に言う資格があるかは別として、本当に身勝手な話であるけど、カズマには死んで欲しいとは思わないから。
でも正直言えば、怒りたくないという気持ちの方が強い気がする。体の調子とか悪いだろうし、疲れているだろうし。何より形はあれとして、クエストはきちんと果たしてきたのだ。労いの言葉を掛けて、ゆっくり休ませてやりたいとさえ思う。
頭に浮かんだそれをどうやって伝えれば良いか考えてると、首を擦っていた俺の手にカズマの手が重ねられた。元ニートとは思えない無骨な手から、じんわりと熱が伝わってくる。
「・・・・あのな、怒ってるぞ。普通に」
「あっ、はい。ですよね」
「もっと気をつけろ、馬鹿たれ。水色がアホなのも、めぐみんが好戦的なのも、ダクネスがドMなのもお前はちゃんと分かってるだろ。もっと、もっと気をつけろ。馬鹿。前に無茶した俺が言える事じゃないかも知れないけど・・・・」
首に添えた手のひらをそのままに、もう一つの腕で頭を胸に引き寄せ、ぎゅっとカズマの頭を抱きしめる。
呼吸の熱が胸に触れて、汗の匂いが鼻について、髪がチクチクと肌を刺激する。そんな色んな事が、カズマが生きてるって事を教えてくれる。
「っお!?あっ、カナデ?!」
どこか慌てるような声をあげたカズマだったけど、頭を撫で撫ですれば動きも声も静まった。なんか犬撫でてる気分。
「カズマ、聞こえてるか?」
「えっ、はい、き、聞こえてます!なにか!?」
「別に、ちょっと呼んでみたかっただけ・・・・今そういうことしたら、マジで怒るからな」
カズマの手が太腿に触れたので一言釘を刺しておけば、物凄い早さで手が離れてった。
空気の読めない無粋さとその抑えきれない下心に、少しだけ呆れた気持ちになったけど、それがカズマなのだと思うともう許してる自分がいて・・・自分にも少しガックリする。こういうのは惚れた方が負けだというけど、あれは本当らしい。
「・・・・あのな、カズマがどうしてもっていうなら、何だって幾らでも相手するけど・・・でもな、出来たら今日はこのままが良いんだけど・・・駄目か?」
一応そう聞いてみると、カズマは少し悩んだ素振りはみせたけど首を横に振った。即答しない辺りカズマらしい。━━━というか、そこで首を振るな。胸がくすぐったい。
「か、カナデ、キスくらいは、良い感じか?」
この野郎・・・・。
まぁ、なんのかんのと言っても、我慢させ続けるのも可哀想なので、仕方なしに抱き締める力を緩めてやる。
すると直ぐ胸から顔を覗かせたカズマと目が合った。
「んっ」
目を瞑って唇をちょっと突き出せば、柔らかい物がそこに触れた。小鳥が餌をつつくみたいに、小さくツンツンと。それはくすぐったくて、いつもとは違うけど気持ちよかった。
「・・・舌入れたら、怒る?」
「怒る」
「・・・・おう」
それから暫く、めぐみん達が帰ってくるまでの間、俺達はいつもよりやんわり触れ合った。手を絡めて遊んだり、添い寝してみたり、子供みたいなキスをしたり・・・まぁ色々。
本番なしでカズマは少し消化不良そうだったけど、俺はそれなりに楽しめたので今度もやろうと思う。
てか、男を焦らすの、普通に楽しいわ。
あの子犬みたいな顔でこっち見てくるのとか、なんか堪らないもんがある。ゾクゾクするもの。
これはMではないな、俺は。