この素晴らしい世界に居座るTSド変態野郎にも祝福を 作:らいじゅう
「ああ・・・じゃりっぱっ・・・・じゃりっぱが行ってしまいます・・・・じゃりっぱ・・・・」
悲しげな声をあげ馬車を見送るめぐみんを他所に、俺達は青の街並みへと視線を向けた。
アクセルの街を出てから二日目の昼過ぎ。
走り鷹鳶を殲滅したり、ゾンビだの蹴散らしたり、水色の誤爆でうっかりウィズを成仏させかけたり、ていうかウィズって人間じゃないの!?リッチー!?マジで!?あっ、でも前にそんなの聞いた気がするかも・・・?てか魔王軍幹部!?ってなったり・・・思ってたより慌ただしい旅路を経て、俺達は目的地である水と温泉の都ことアルカンレティアへと辿り着いた。
流石に観光の名所となってるだけあって、その景色は中々目を見張るものがあった。
「ふぁ・・・・・」
青を基調とした統一性のある美しい街並み。
街の至るところに通された水路は、太陽の光を反射して宝石のように煌めいている。そしてそんな水路が張り巡らされた街は、まるで湖畔に揺蕩う浮島のようで、凄く綺麗で、凄く幻想的だった。
あまり美術的なセンスはないつもりだけど、流石にこれには熱い溜息が溢れてしまう。
「来て良かった」
思わずそう溢すと、視界の端に映ったカズマが嬉しそうにニヨニヨした。素直に笑えば良いのに・・・まったく。まぁ、そんな顔も好きだったりするから、俺もどうしようもないんだけど。
「あぁ・・・・じゃりっぱ、じゃりっぱが・・・」
自分の甘っちょろさに呆れていると、めぐみんの悲しそうな声が聞こえてきた。さっきから、何なんだろうか。じゃりっぱ、じゃりっぱと。じゃりっぱって何?
俺が不思議に思ってるとカズマも疑問に思ったのか「なんだよ。その"じゃりっぱ"って?」と尋ねた。するとめぐみんより先に水色が何か思い付いたように手を打つ。
「あのドラゴンの子供の事?そういえば、お金持ってそうなお客さんの一人に、色々と助けてくれた大魔道師様に、名前を付けて欲しいって頼まれてたわね」
・・・よりにもよって、めぐみんに頼んだのか。
カズマも俺と似たような事を考えたのか、酷く可哀想なものを見る目で馬車の走り去った方向を見る。
「ドラゴンは一度名前を付けると、二度と他の名を呼んでも反応しなくなると聞いたのだが・・・」
未だに意識が戻らないウィズを背負ったダクネスがそっと爆弾を設置すると、カズマが重い溜息をついた。完全にやっちまったなぁの顔だ。気持ち、分かる。
「お前、俺の愛刀におかしな名前付けるだけに飽きたらず、人様のペットになんて事してんの?訴えられたら、どうすんの?馬鹿なの?ああ、ネーミングセンスはもう馬鹿だったな」
「なっ!?何ですか、失礼な!格好いい名前を付けてあげたじゃないですか!ちゅんちゅん丸の何処がおかしいと!?」
「おかしいだろ。お前、ちゅんちゅん丸って。そもそも何処から出てきたんだよ?ある意味すげぇよ。いい加減、お前ら紅魔族のネーミングセンスは変だって自覚しろよな」
そうカズマが言い切るとめぐみんが見るからに不機嫌そうに眉間にしわを寄せた。ネーミングセンスは皆無だけど、矢鱈と自信はあるから当然の流れか・・・。
というか、あの腰の刀ちゅんちゅん丸って言うのか。
何回聞いても教えてくれないから、どうしたのかと思ってたけど・・・・成る程なぁ。
「ふん。カズマに名付けのセンスが無いのは分かりました。せっかくそんな格好良い名前を持ってるのに嘆かわしい。将来カズマに子供が出来たなら、私が名前を付けてあげますよ」
そんなめぐみんの言葉に、カズマが諸にこっち見てきた。止めい。そんなに、熱い目で見るな。ちょっと疼いちゃうから。やめ、止めろ、馬鹿野郎。
めぐみんとの会話戻れ、馬鹿。
じっと念を送れば、カズマははっとしてめぐみんに視線を戻して・・・何か気づいた。
「お前に名付けはさせないのは・・・・まぁ、確定事項なんだが・・・・俺の名前がなんだって?カズマって紅魔族的にいけてる名前なのか?それ、凄く凹むんだけど」
「大丈夫だ、俺も格好良いと思うし」
「えっ、そう?マジ?・・・じゃ、良いや」
「それはどういう意味ですか!?カナデは良くて、なんで私だと凹むのですか!?カズマ!?カナデもなんか言って下さい・・・・あれ、カナデ?カナデ聞いてます?カナデ!?」
涙目で訴えかけられたけど、下手に助けて将来子供に変な名前を付けられても困るので目を逸らしておく。
すまんな、めぐみん。それ以外なら、味方になってあげるからさ。うん。
それから少し、荒れ狂うめぐみんを宥めた後。
早速宿屋へと向かおうとしたのだが・・・ここにきて水色が恐ろしい言葉を口にした。
「そうよ。このアルカンレティアこそ、水の女神を御神体と崇め奉る、我がアクシズ教団の総本山なのよ!どう、凄いでしょう!」
綺麗な街は見掛けだけの人外魔境だったようだ。
人も見掛けで判断してはいけないと言うけど、どうやら街もそうらしい。知らずの内に、下手な悪魔信仰者よりよっぽどによっぽどな連中の巣窟に迷い込んでるとか・・・どんな悪夢?手が鉤爪のおじさんとかいる?
「ようこそいらっしゃいましたアルカンレティアへ!観光ですか?入信ですか?冒険ですか?洗礼ですか?あぁ、仕事を探しにきたならぜひアクシズ教団へ!今なら他の街でアクシズ教の素晴らしさを説くだけでお金がもらえる仕事があります。その仕事に就きますと、もれなくっ、なんとっ、アクシズ教徒を名乗れる特典が付いてくる!さぁ、どうぞ!」
「・・・・結構です」
「そう言わずに!お話だけでもぉ!今ならこちらのアクシズ教団のシンボルマーク入りの石鹸もついてきますよ!百パーセント自然由来の成分で作られた肌に優しく、なんなら食べられる大変ご利益のある石鹸で、一擦りで汚れが落ち、二擦りで罪が洗い流され、三擦りで宝くじが当たったり当たらなかったりするとかなんとか」
「本気でいらない」
水色の言葉が切っ掛けになったかは分からないが、それから宿に着くまでの道中、悪質なアクシズ教徒に勧誘されまくった。通りを一つ越える度に勧誘されたのだから、もう狂気としか言いようがない。見てたよな?断ったの?頭おかしいのん?ってなった。・・・アクセルの街にもこういう手合はいたが、あいつらはまだ話が分かる連中だった。それに比べてここの連中は精練され過ぎてて・・・もうあれだ、端的にいって怖い。昔から苦手だけど、ここのは特にヤバい。怖い。
ただ━━━━━。
「なんて美しく輝かしい水色の髪!地毛ですか?羨ましいです!その、アクア様みたいな羽衣もお似合いで!」
「ふふふっ、この髪の美しさをよく分かってるじゃない!やっぱり、我が可愛い信者達はやれば出来る子ばっかりね!」
「当然です、同士!我がアクシズ教徒に出来ない子などいません!歓迎いたします、アークプリースト様!」
「ほほほほ!」
水色はアクシズ教のアークプリーストとしてチヤホヤされて喜んでいるみたいだったけど。
旅行が終わったらそのままあいつは置いていった方が幸せなのでは?とカズマに相談すると「あいつを一人にして大丈夫だと、本気で言ってるのか?」と言われてしまえば「頑張ろうな」としか返せなかった。
もともとカズマの特典扱いだし、それなら持ち主が最後まで責任持たないとだもんな。世間様に迷惑は掛けられない。
「・・・今度首輪でも買っとくか?リードと合わせて」
そうぼやくと皆に微妙な目で見られた。
何故に。
「カナデは時々、私より過激ですね」
「過激な自覚はあったんだな、めぐみん」
「寧ろ、そっちに驚きだな」
「カズマ、ダクネス。爆裂魔法の的にされたいなら、素直にそう言って下さい。喜んでぶちこんでやりますよ」
悪質なアクシズ教徒から逃げるように早足で駆け抜ける事少し。予約していた温泉宿へと着いた。
カズマが予約したそこは街で最も大きい温泉宿と言われるだけあって、それまで通りで眺めてきたどんな宿より大きく立派で、貴族御用達といってもおかしくない高級溢れる西洋風の建物だった。
そしてあまりの立派さに、正直腰が引けた。
主に料金の事が心配で。
ダクネス家が料金を持ってくれると聞いていたが、それでも心配になってカズマを見れば、苦笑いと共に宿泊券と書かれた紙を見せてくる。
「なんだ、それ?」
「いや実はな・・・」
不思議に思って聞けば、今回旅路を共にした商隊の人が偶然にも予約した宿の経営もしてたらしく、お世話になったお礼にと3日分の宿泊券をくれたらしい。どうやらあの商人の人に随分と気に入られたようだ。
尤も、感謝してるのは嘘ではなさそうだけど、モンスター討伐の手際の良さに加えて、めぐみんや水色が人外魔法とか見せちゃったからなぁ。顔を繋ぐ意味も含めて下心半分で渡した物でもあるんだろうけど。行商人なんかは何かと冒険者と絡むからなぁ。
マッチポンプ感を気にしてるカズマにその事を教えてやれば、最初は怪訝そうな顔をしてたけど直ぐに理解してホッとした様子で胸を撫で下ろした。訴えられないかどうかと、ヒヤヒヤしてたそうだ。
「いらっしゃいませ!旦那様からお話は伺っております!どうか、ごゆるりとおくつろぎください!」
「「いらっしゃいませ!!」」
入り口の所にいた従業員に宿泊券を見せると、直ぐ支配人らしき人と何人もの従業員が現れた。どう伝わってるのか分からないけど、思ったより掛けられた期待値が大きいのかも知れない。
ウィズと荷物を予約していた部屋に置くと、夕飯までの空いてる時間は解散となった。俺としては温泉入って部屋でのんびりしようと思ってたのだが━━━━
「カナデ、ちょっと付き合ってくれよ」
━━━カズマが外出を誘ってきた。
いつもなら二つ返事で行っているかも知れないが、外には話の通じない狂信者達が当たり前のように闊歩してる。ぶっちゃけ頷き難い、というか普通に行きたくない。デートとか期待してたけど、ここではやだ。
俺は飲んでいた紅茶をテーブルに置き、優しい声を心がけて諭すように伝えてやった。
「俺の事は気にしないでめぐみん達と行ってこいよ。俺は、ほら、ウィズの様子見とくからさ。観光は、ほら、まぁ、明日とかにするよ」
笑顔と共にそう伝えると、カズマは俺の隣の席に腰掛けた。その子犬のような瞳に諦めの兆しはなし。
さてどうやって断ろうかと考えてると、太ももにカズマの手が置かれた。相変わらず温い。
「あいつらはアクアと行くらしいからさ。というか、さっきもう出掛けてった」
「えぇぇぇぇ・・・・追い掛ければ良いじゃん。俺は温泉入るからパス」
放って置いたカズマの指が、俺の太ももをいやらしく擦ってくる。ちょっとこそばゆい。
「お前、割りと本気で行きたくないのな。まぁ、気持ちは分からんではないんだけど・・・」
「わっ、分かってるなら諦めろ・・・んっ、こらっ」
太ももを擦るのに飽きたらず、今度は首筋にキスしてきた。
唇が触れた場所が熱い。
「何かあっても、俺が何とかするから。なっ、一緒に出掛けようぜ?最近は、ほら、な?」
「んーっ、でも、なぁっ、ひゃっ!・・・あれと関わるの・・・ふぁっ!い、嫌だかりゃっ!?おっ、おい、お前っ、気絶してるけど、そこにウィズがいるんだからにゃっ!」
話してる間もカズマは少しずつ場所を変えながらキスしてきた。一つ唇が触れる度、体が勝手に反応してしまう。胸のドキドキが止まらなくて、首筋からゾクゾクしてきて、お腹がポワッとしてきて、頭がボーッとしてしまった。━━━━それだけでも馬鹿になってるのに、耳たぶまでねっとりしゃぶられて、もう考えがまとまらない。
「カナデ」
「ふぇっ、あっ、ん」
呼ばれて顔を向けたら唇を食まれた。
エッチな音を立てながら啜られ、舐められ。
優しく甘噛みされる。
カズマの熱の篭った瞳に唇ばっかり映ってて。
何だかそれが酷く恥ずかしくて、でも何処か嬉しくて。
俺はそのままカズマに体を預けた。
暫く唇を味わった後。
カズマは俺の頬に手を当てながら見つめてきた。
何も言わずに、ただじっと。
「・・・・続きしたいだろ?じゃ、流石にここだとあれだから、お出掛けしような?」
「・・・・・ぅん、いくぅ」
「そのチョロさ、少し心配になるんだけど・・・いや、まっ良いか」
頑張って返事を返せば、カズマが頬を撫でてきた。
そして、また、熱いキスをしてくれる。
「━━━・・・っん、えへへ、かずまぁ、しゅき」
「その顔止めてくれ、我慢出来なくなるから」
「ふぁーぃ」
「━━━━ぅーん、うーん、ベルディアさんが、ベルディアさんが・・・」