この素晴らしい世界に居座るTSド変態野郎にも祝福を 作:らいじゅう
すまんな、忙しかった(゜ロ゜)
街中の温泉が汚染された、その翌朝。
朝食をさっさと済ませた俺達は、女子部屋にて全員集合していた。勿論遊びにきてる訳じゃない。昨日同様、温泉の汚染事件について情報共有する為だ。
「源泉が怪し━━━━━」
「というアクアの"源泉が怪しい説"は一旦おいておいて、俺達は調査の結果新たな情報を掴んだ」
昨日温泉を浄化しまくって自身満々な水色の言を一言でぶったぎり、カズマは静かに調査内容を書いた羊皮紙をテーブルの上へと置いた。皆の視線が羊皮紙に集まる中、カズマは水色に噛みつかれながら(物理)説明を続ける。
「念の為に各温泉の従業員に話を聞いて回ったんだが、事件が起きた温泉にはとある怪しい人物が出入りしてる事が判明した。というのが、この二人だ」
トン、とカズマが指を立てた場所にはちょっとデフォルメ気味な男女の顔が描かれている。こっちの人のタッチじゃないから、恐らくカズマが描いたものなんだろうけど・・・・・というか、それより、この絵あれなんだけど。
じぃっと紙を覗いていためぐみんが、呟くようにいった。
「こちらの男性はともかく、もう一人はアクアですね」
「どうみてもアクアだな」
「・・・えっと、アクア様ですね」
「まごうことなく、水色だな」
なんだ、事件解決じゃないか。
そう思って水色を見ると肩をびくつかせた。
分かりやすく怯えてる。
「ちょっ!そ、そんな訳ないでしょ!?どうして私が信者の子達が苦しむような事しないといけないの!?違うわよ!これは浄化する為に温泉巡りしてただけで、温泉を汚染させる為じゃないわ!女神がなんで悪いことしなくちゃいけないの!?」
「純粋に悪いと思わず、気がついたら悪い事をしてるのがお前だからな・・・・はっきりいって何かしたんじゃないかと疑ってた。割りと本気で」
「なんでよぉ!・・・ん?疑ってた?過去形なの?」
首を傾げる水色を見て、カズマが俺とめぐみんを見てきた。どうやら茶番劇は終わりみたい。めぐみんに視線をやれば「それでは私が説明しましょう」と鼻息荒く立ち上がった。
「今回の件、あまりに用意周到過ぎているのです。ようやくそれらしい目撃証言は出てきましたが、他は碌なモノが出てこない状況です。もしこれがアクアの仕業であれば、犯人を三回は特定出来て尚おつりが出る程の証拠が見つかる筈ですからね。第一、最初に汚染が起きたのは私達がくる随分前との事です。アクセルの街でキャベツの代わりにレタスを捕まえていたアクアにそんな余裕も時間もないでしょう。━━━━なので、アクアが犯人では絶対ありません!」
どこぞの頭脳は大人な探偵も顔負けに、そう威厳たっぷりにめぐみんが言い切る。効果音がつくなら、きっと『ドンッ!!』とかだろうか?中々様になってるな。
調査を始める前から事件の手口に知性を感じていたので、元より頭パーな水色の事は疑ってなかった。それは俺だけじゃなくてカズマ達や貧乏店主さんも同じだ。加えて昨日の働きぶりや、調査結果がはっきり出てしまえば疑う方がどうかしている。━━━まぁ、温泉を勝手に浄化しまくって、それはそれでかなり迷惑は掛けてたみたいだけど。
めぐみんがこちらを見てきたので、続きは俺が引き継ぐ。
「話を戻すけど・・・・っと、なるとだ。もう一人の不審者が明らかに怪しいって事になる。身長は平均男性より若干高く、浅黒い肌を持ち、茶色い髪を短く切り揃えた男。今回事件の起きた温泉には、必ず一度はこの男の姿が目撃されている」
「そうなの、カナデ?そう毎回毎回、誰かに目撃されるなんて事あるの?」
「この男アクシズ教徒ホイホイみたいで、大体アクシズ教徒に勧誘されてぶちギレする姿が目撃されてる。男の怒鳴り声や、アクシズ教徒が悪質な勧誘してるらしく目立つそうだ。アクシズ教徒が、特に」
俺の言葉を聞いて水色がお口をチャックした。
「それでな、ダクネスの協力の元━━━」
「カナデ。その件だが、市役所やギルドで私の家の名前を使ったこと、私はまだ許していないからな」
「体の頑丈さと家柄とおっぱいしか取り柄ないんだから、それくらい喜んでやれよ。エロネス」
「しっ、辛辣過ぎやしないか!?い、いや!そこまで突き放されると、それも・・・くぅっ!」
話の腰を折りにきた変態はスルーして続ける。
「市役所とギルドに問い合わせた所、この街の住人ではないそうで、身元は不明とのこと。また街の住人に聞き込みした所、多くのアクシズ教徒が彼と何度も接触しており、その際アクシズ教への勧誘も行っているそうだが、良い返事は未だに貰えてないそうだ。・・・・まぁ、ここまで嫌な思いをしながら街から出る事なく、汚染が起きる温泉で必ず目撃される。犯人かどうかは別としても、何か特別な目的があって滞在してる事は明白だろう━━━━━━今ので喜ぶような、エロネスみたいな変態なら、また話は別だけどな」
「カナデ?!わ、私はっ、変態ではないからな!これはあれだ!そう、これからの闘いを思っての武者震いだ!」
心の中でダクネスは変態だろうと思いながら、話をまとめる役のカズマへ視線を向ける。カズマは一つ頷くと口を開いた。
「━━━で、だ。情報をまとめると今回被害にあった温泉は全部同じパイプを通ってきてる物だった。一部のパイプの内部には経年劣化とは違う、明らかに不自然な腐食跡が残ってる物もあった。━━━━以上のことから、何者かが腐食性の高いなんらかの毒素を温泉へ混入させてる可能性が高い事が判明した。なので、役所やギルドには既に報告を済ませている。もうじきギルドから正式に温泉の調査隊も出るだろう。つまり、結論何を言いたいかというと、俺達の仕事はここでお仕舞いということだ。・・・・・お疲れ、解散!」
キリっとした顔で言い切ったカズマの姿によく言ったと頷くと、トンチンカンが声をあげながら一斉に椅子から立ち上がった。特にめぐみんの反応が凄い。軽く目が血走ってる。
「何を言うのですか、カズマ!!目と鼻の先に敵がいるのですよ!?どんなやつかは分かりませんが、毒を使うようなのはどうせ碌なやつではないのです!ぶっ飛ばしたって文句も言われません。・・・そう、つまり!爆裂魔法で吹き飛ばせる最高のチャンスなのですよ!?それをみすみす見逃すと言うのですか!?今からでも調査隊に入るべきです!」
「そうだぞカズマ!皆が困ってるというのに、私達だけは何もしないというのは冒険者としても人としても駄目だ!!こういう時こそ、勇気を奮い起たせ元凶へと立ち向かうべきだろう!?違うか!?調査隊が出るなら参加すべきだ!」
「私の可愛い信者達が困ってるのに人に任せるなんていやよ!!それに昨日の様子を見てても、私以外まともに浄化出来る人はいなかったもの!誰が悪戯してるか知らないけど、温泉に混じってた物と同じ毒を使うようなやつなら、私がいないと全滅しちゃうわ!可愛い信者達を苛めた罪、私直々裁いてやるわ!シュッシュッ!」
主張内容の細かい所はバラバラだけど、一点して調査隊に参加したい事に変わりはないらしい。予想はしてたけど、ここまで綺麗にまとまるとも思ってなかった。めぐみん辺りは冷静に判断してくれるかと思って期待したんだけど・・・昨日爆裂させなかったから?私も前にオナ禁したから分かるけど、習慣になってるものって止めたら結構ストレスだからなぁ。そこいらでテキトーにって言ったら・・・まぁ、怒るんだろうな。あれで目標には拘ってるみたいだし。私もテキトーなコケシ渡されてオナれって言われたら怒ると思うし。
とはいえ、止めようと思えば止めれる。
命を預けあい戦ってきた仲間達だ。付き合いは短くても、暴走特急トンチンカン号の事はちゃんと分かってるつもりだ。当然、その止め方も。あの手この手を使えば、こいつらに諦めさせる事は出来る。
けど━━━━━
「カズマ」
━━━━━━そこら辺はやっぱり・・・我らがリーダーに決めて貰うとしよう。俺の視線を受けて、カズマが少し照れるように頬をかく。けれどすぐに真っ直ぐな目でこちらを見返して、力強く頷いてみせた。
「聞いてくれ。あのな、正直あんまり乗り気じゃない。面倒なことは放り投げて帰りたいってのが本音だ。何せ俺達の見つけた、恐らく敵であろうこいつは、随分と用意周到に今回の件を計画して実行してる。つまり非常時の備えもばっちりだって事だ。藪から蛇どころか、ドラゴンとか出て来てもおかしくない。だから、そんな危ない事を俺はやりたくない」
「俺はいつも思ってた。毎回、毎回、なんだって俺達が身の丈に合わない仕事ばかりしなきゃならんのかって。一流の冒険者は幾らでもいるのに、なんだって駆け出しの俺達がってな。デュラハンと戦った時も、デストロイヤーと戦った時も、初心者殺しと戦った時も、バニルと戦った時も、俺はいつだって後悔しっぱなしだ。でもな━━━━」
「━━━━きっと、あの時、一度だって逃げてたら、アホなお前達ほったらかしにしてたら、俺はもっと後悔してたと思う。ここでお気楽に笑っていられなかったと思う。・・・・・だからな、もう本当っ、今回だけだぞ馬鹿野郎共!!」
ヤケクソ混じりのカズマの言葉を聞いて、トンチンカンが喜色をその顔に浮かべる。水色はやたら眩しい後光を背負いながらシャドーボクシングを始めて、めぐみんは瞳に赤い光を灯しながら杖を胸に抱えて不適な笑みを浮かべ、ダクネスは腰に提げた剣を鞘から僅かに引き抜くと剣の鈍い光を確認してイケメンスマイルを見せる。
本当、可愛いやつらだ。こいつら。
あっ、貧乏店主さんも巻き込まれてる・・・。
頑張って下さいねー。あはは。
「・・・で、本当に良いのか?」
「どうせ反対したって、あいつらは勝手にいっちまうだろ。だったら、まだ俺が指揮した方がマシってもんだ。あんな馬鹿共だけど、死なれでもしたら胸くそ悪いしな・・・・なんだよ」
「別に・・・・ふふ」
カズマはお人好しだ。それも損するタイプの。
素直じゃないから、その優しさは凄く分かりづらい。分かる人には分かるけど・・・でもきっと、気づかない人の方がずっと多い。いちいち悪態なんてつかないで、そのままの素直に気持ちを伝えれば、前の世界だってこの世界でだって、もう少しモテただろうに。
本当、残念なやつだ。
でも、そうでいてくれたから、俺が隣にいられる。
何とも皮肉で嬉しい話だ。
「カズマ」
「なんだよ━━━━っょ!?」
皆の視線がこっちに向いてないタイミングを見計らって、俺はカズマの頬に一つキスを落とした。カズマは酷く慌てた様子でパーティーの皆と俺を交互に見て、皆が気づいてないことを察すると見るからにホッとする。
「おまっ、お前なぁ・・・・」
ジト目で見てくるカズマの耳に唇を寄せて。
俺は胸の中で溢れ出そうになるそれを、精一杯の気持ちを込めて声に出した。
「お前のそういう所な、大好きっ」
アホみたいに顔を真っ赤にさせたカズマを追い越して、俺は皆の背中を追い掛けた。