この素晴らしい世界に居座るTSド変態野郎にも祝福を 作:らいじゅう
最低限の体裁を整えて水色達と合流してから少し。
めぐみんの案内の元、俺達は紅魔の里をブラブラと観光する━━━筈だったのだが、めぐみん達の帰りが予定より遅かったのと、想定よりめぐみんがお疲れな為、観光は翌日に持ち越しとなった。
それで今は何をしてるのかと言えば、めぐみんを実家に送り届けてる途中だ。勿論、めぐみんの実家の場所なんて知らないので、カズマのドレインタッチで本人を復活させて案内して貰ってる。
「あっ、カズマ。そこを右です」
「あいよ」
いつものようにめぐみんをおんぶしてるカズマは言われるがまま道を曲がる━━━━が、進むほどに段々道が狭く、人家がなくなってる気がする。
まぁ、元より家より田畑が目につく里ではあったが。
「どんどん人気のない所に入っていくんだけど、お前間違ってないよな?」
「自分の故郷ですよ!間違う訳ないじゃないですか!何ですか、カズマは私をボケ老人か何かだと思ってるんですか?!」
「最上級の爆裂馬鹿だとは思ってるけど」
カズマの言葉に歯軋りしためぐみんは、俺の方に助けを求めるよう視線を送ってくる。
そういうカズマの態度はめぐみんの日頃の行いの悪さが招いた事━━━とはいえ、その顔を見てるとちょっと可哀想になってきて、今回は援護してやる事にした。
「はぁ、カズマ?」
嗜めるようにそう伝えるとカズマは俺の顔を少し見た後、何かを考える素振りをしてからゆっくりと溜息を吐いた。
「あー、はいはい。めぐみんの事は非常に頼りになる、偉大で天才なアークウィザードだと思ってるよ。いつも苦労お掛けしてます」
「そ、そうでしょう!そうですとも!その通りです!!これまで私の爆裂魔法がどれだけ多くの功績を残してきたのか!それを考えればその反応も当然ではありますが、まぁ、私も寛大です。これからの行いを改め━━━」
「本当、俺達のパーティーには勿体ないくらいの人材だよ。本当、優秀優秀。是非とも、アクセルの街に戻ったら相応しいパーティーへと移籍すると良い。ああ、俺達の事は気にするなぁ、ゆんゆんっていうフリーの、優秀なアークウィザードを誘ってみるからさっ!」
「な、なぁ、なぁぁぁっ!?聞き捨てなりません!!聞き捨てなりませんよ!!何ですかその言い草は!!しれっと追い出そうとしてる所も腹が立ちますが、それよりも何よりも!!何でっ!私の代わりがゆんゆんなんですかぁぁぁ!!喧嘩売ってますね!喧嘩を!!」
「ぐぇっ!?お、おまっ、首はっやめ!!」
仲良く喧嘩する二人を放ってダクネスと水色を引き連れ歩いてると、林を抜けた所で一軒家の前に辿り着いた。日本家屋風の木造の建物で、お世辞にも大きいとは言えない・・・いや、ちょっとがたついたボロい家だ。めぐみんの実家はあまり裕福ではないと聞いてるし、道はそこで終わっていて他にそれらしき人家もないし、恐らくはこれだろうが・・・うーん。
「うん、なんというか・・・雰囲気のある離れだな。我が家にも似たような物はあるが、これは少々古めかしいというか━━━」
「ダクネス、これが本宅だと思うぞ」
「━━━わ、分かっていたぞ!さっきのは軽いジョークだ!これは、そう、趣のある家だな!うむ!味がある!」
趣があるか、物は言い様だな。
ただのボロい家なんだが。
「私は勿論、最初から分かってたわよ!カナデ!」
「あーーはいはい。そうだな、流石だな」
「そうでしょう!女神たる私の目は誤魔化されないわ!敢えて外見を悪くさせて、泥棒達の眼を欺く造りなのよね!前にめぐみんから実家は魔道具職人って聞いてたもの!いい、ダクネス?これはセキュリティの一種なのよ?」
「なんと!そうか、だから敢えてこういう造りに!」
変な事をダクネスに教えるな。
水色、こっちにおいで。
お馬鹿な水色のコメカミを拳でグリグリしながら、俺は改めてめぐみん見てみた。なんか見覚えがあるような?少し考えてみたが、特にこれといった物も思い付かなかった。一般的な日本家屋風の建物だし、前世に似たものを見たのかも知れない。
少しするとカズマ達もやってきた。
一応、背負われためぐみんに確認すると、やはり目の前のボロい家はめぐみんはの実家だそうだ。
そしてめぐみんの言葉に、ダクネスが静かに冷や汗かいた。俺は家について何も言わないでおいた事を改めてほっとする。
めぐみんに代わり俺はドアをノックした。
乾いたコンコンという音に、バタバタという足音が家の奥から駆けてきて━━━━ドアがそっと開かれる。
開いたドアの先にはめぐみんを小さくした感じの女の子がいた。歳のころは小学校低学年くらいだろうか。くりくりした真っ赤な目で俺達をマジマジと見てくる。
「ほう、めぐみんの妹か?随分と可愛らしい子だな」
そう言いながら、ダクネスが柔らかい笑みを浮かべた。
「なんかちっこいめぐみんが現れたんですけど。ねぇ、小めぐみん、飴ちゃん食べる?」
「こめっこ、ただいま帰りましたよ。良い子にしていましたか?」
本場のマジシャンより鮮やかに何処からともなく水色が飴を取り出し、カズマの肩越しから顔を出しためぐみんが穏やかな表情で優しげに声を掛ける。
『こめっこ』という何とも言えない名前に思う所はあったが、それより何よりミニめぐみんの視線が気になった。なんか俺の顔とカズマの顔を交互にガン見してる。何か嫌な予感を感じ始めた頃、こめっこが俺の事を指差しながら口を開いた。
「さっき林の所にいたおねぇちゃん!」
その言葉に俺は固まった。
思慮が一瞬で停止する━━━が、直ぐに高速で回り始める。そして気づいた。めぐみん実家さっき見た。カズマと致す為の場所探してる途中、林の奥に人家を見つけてそれで別の場所へと行ったのだ。
しかし、何処まで見てるんだ。この子。歩いてる所ならまだ良い。まさか最後まで?いや、まさか。でも感知スキルに反応は・・・・。
「林?なになに、虫取りでもしてたの?カナデって男の子っぽい所あるとは思ってたけど、そういうのも好きなの?それならあっちの所でカブトムシいたわよ。セミとクワガタも・・・・あっ、クワガタは小さいやつよ。大きいのは見てないわ」
水色、頼むからシャラップしてて。
あとな、いらん。虫は。
「おにいちゃんも!」
びっ、と指差されカズマも固まる。
水色はそんなカズマを見て「あらやだ、カズマさんも虫取りしてたの?お子様ね!」とプークスクスと一笑いしてから、俺にしたようにカブトムシの場所を教え始めた。カズマにそんな話を聞いてる余裕はなかそうなんだが。
そうこうしてる内にこめっこは酷く驚いた顔をした。
何に気づいたのか"驚愕"といった様子だ。
問題が大きくなる気がして咄嗟に手を伸ばしたが、伸ばしたそれを軽く掻い潜られる。
「おとうさーーん!!お姉ちゃんが、男ひっかけて帰ってきたー!でもふりんだよー!」
ちょ、ちょっと待って!!
お菓子あげるから!!
「ほーら見てごらん?このちゃぶ台の上にひっくり返したマグカップ。これがスイスイとちゃぶ台の上を動き回りますよ!」
「すごい!すごい!!どうやって?ねぇどうやってるの?青髪のお姉ちゃん、どうやってる!?」
「磁石だ!きっと、ちゃぶ台の下から磁石で動かしてるんだ!そうだろう?当たりだろアクア!?」
ちゃぶ台の上で動くマグカップを中心にして楽しくワイワイとやってる三人を他所に、俺・カズマ・めぐみんの三人はめぐみんの両親と向かいあっていた。重苦しい空気と共に。
何を言うか考えていると、不意にめぐみんの父親であるひょいざぶろーさんからアイコンタクトされた。なんだろうかとその鋭い視線の先を追うと、隣に座ってるカズマの視線がマグカップに向いていた━━━ので、足を軽くつねっておいた。くぐもった声と共にカズマの顔が前へと向き直る。現実逃避したいのは分かるが、もう腹を括れお馬鹿。
「家の娘が日頃からお世話になっているそうだね。それについては、心から感謝する」
感謝すると言いながら、カズマを睨み付けているが。
そのお陰でカズマが小刻みに震えてるので止めてあげて欲しい。この子、普段はノミの心臓なんです。ここ一番だけしか強くないんです。本当に。
そんなカズマの様子をひょいざぶろーさんの隣に座ってるめぐみん母、ゆいゆいさんが何処か楽しそうに眺めながら口を開く。
「カズマさん達の事はめぐみんからの手紙がよく伺っております。いつもお世話になっているようで・・・」
チラっと、ゆいゆいさんが俺を見る。
何か言いたげな視線だ。
その視線に続くようにひょいざぶろーさんが咳払いし、カズマを見つめながらゆっくりと話始める。
「それで、カズマくん。キミは家の娘とはどのような関係なんだね?そこのカナデくんとも、どうなのかね。うちのこめっこが、林がどうのと、不倫がなんだとかって言ってたのは一体なんなのかね?説明しなさい。さぁ、ほら、今すぐに」
「あの、どのような関係と言われましても。ただの友人で仲間です」
カズマの言葉を聞いたひょいざぶろーさんは目を瞑り深く息を吐く。そしてゆっくりとした動作で水色達がキャッキャはしゃいでる元に向かい、ちゃぶ台へと勢いよく手を掛けた。
瞬間、ゆいゆいさんがひょいざぶろーさんへとタックル。羽交い締めにして動きを止める。
「なあぁぁぁぁ!!くっ、離せぇ!妻よぉ!!俺はぁ!!おれはぁぁぁぁぁ!!!俺はこのクズにぃ、言ってやらねばならぬ事があるのだぁぁぁぁ!!娘にかわってなぁぁぁぁ!!はぁぁぁぁ!!」
「あなた!!それなら言葉だけにして下さい!!やっ、止めてっ!ちゃぶ台をひっくり返して壊すのはもう止めて下さい!今月は特にお金がないのよおおおおお!!」
二人の荒れっぷりに若干引きながらも、カズマとダクネスが慌てて二人を止めに入っていく。俺?俺はそれ所じゃないから。言い訳しか考えてないから。
「お、お父さん!少し落ち着いて下さい!まずは深呼吸しましょう!!深呼吸を!!話なら幾らでもしますので!!だから、どうか、ちゃぶ台から手を離して下さい!!」
「うるさぁい!!だまれぇ!!誰がお父さんだ!!殺すぞ、貴様ぁ!!はっ、貴様っ、まさか既に手を出してる訳ではないだろうな!!お父さんになるような事、娘にしてるんじゃないだろうな!!まだ成人前だぞ!!この変態野郎ぅ!!純粋な娘をだまくらかしてぇ!!ゆるさぁん!!」
「まぁ!?あらやだ、そんなっ!私はてっきり!!それならそうと、カズマさんには聞きたい事があるのですけれど。何か事業を為さっているとか・・・・あっ、私の事はお義母さんと気軽に呼んで貰って良いですからね。ここも自分の実家だと思って」
「めっ、めぐみんのお母様!?何かとんでもない勘違いを為さっていると思うのだが!?カズマとめぐみんはそのような・・・・・違うよなカズマ?そうだったら、流石に私も一言あるのだが。カナデの事もあるのだし━━━」
「ああああッッーーー!!あああああああああ!!このっ、なんでお前まで疑ってんだよ!!変態ポンコツ騎士!!良いからお母さ━━━━ゆいゆいさんを止めてろ!!」
「なっ、なに馴れ馴れしく俺の妻の名前を呼んでいるんだ!!まさか、妻にまで手を出すつもりか!!貴様ぁ!!」
「あああ!もう、この親父さんなんなんだよぉ!」
騒ぐ四人を横目に水色がマグカップをちゃぶ台から浮かせてスイスイと動かし始めた。こめっこは大興奮である。騒ぎに無関心過ぎる、この二人。
そんな混沌としてきた空間で、めぐみんがそっと耳打ちしてきた。
「あの、両親がすみません。何か勘違いしてるようで」
「あー、うん、いや、まぁ、気にするな。多分、俺達のせいもあるから」
「・・・・けれど、カナデ達は林で何をしていたのですか?まさか本当に虫取りしていた訳ではないんですよね?」
「いや、虫取りだ。セミを取ってた。懐かしくてな」
「え、せ、セミ・・・?」
「小腹減ってたからな」
真顔でそう伝えるとめぐみんは口を閉じた。
何か言いたげだけど、取り敢えず突っ込む気配はない。
なのでめぐみんの事は一旦置いておく。
さて、どうやってこの状況を丸め込もうか。