この素晴らしい世界に居座るTSド変態野郎にも祝福を 作:らいじゅう
「碌なもんじゃなかったなぁ……」
すっかり太陽が高くあがった午後の頃。
お茶を啜りながら遠い目をしたカズマがそんな事をぼやいた。
場所は小高い丘の上、『魔神の丘』と呼ばれる場所で、丘の上で告白して結ばれたカップルは魔神の呪いにより永遠に別れる事が出来ないと言われてるいわくつきの場所だ。
何故こんな場所にきたのかと言われれば、水色がムーディーな場所に行きたいとリクエストした結果なのだが……ムーディーとは一体なんなのか、カズマと一緒に頭を悩ませたのは言うまでもない。
そんな色んな意味でアレな場所ではあるけど、この丘は素晴らしく見晴らしが良かった。朝から変わらず天気も良いままで、時間帯もお昼頃になったという事もあり、オレ達はそこでお昼を取ることにしたのである。
そして今はその食事も終わり、皆でまったりと食休み中だ。
色んな意味ではあれだった猫耳神社を出た後も、めぐみんの案内で里の観光スポットを見て回った。
抜いた者に強大な力が備わるという岩に刺さった聖剣。
斧やコインを供物として捧げると金銀を司る女神が召喚出来る願いの泉。
世界を滅ぼし兼ねない兵器が封印されている地下施設と、その近くに併設している経歴も用途も不明の謎の施設。
後は話だけだけど、邪神が封印された墓とか名もなき女神が封印された土地とか……どっちも既に封印が解かれていて見るものがないとかなんとか━━━━名前とか由来とかはいい感じなのだが、どのスポットも詳しくその内容を聞くとがっかり感が強い場所ばかりだった。
最初にあげた聖剣なんかは、紅魔の里の鍛冶屋の親父が四年前くらいに設置した物だった。聖剣を抜きにチャレンジする為には挑戦料が掛かる上、その肝心の聖剣ときたら選ばれた勇者とか英雄とかは関係なく一万人目の挑戦者が引き抜けるように魔法で封印されている始末。
願いが叶う泉も仕掛け人は鍛冶屋の親父らしく、これまで泉に女神が出たことはないし、泉に投げ込まれたコインや斧は鍛冶屋の親父が回収しリサイクルしてるのだとか。
謎の施設と地下施設は用途も経歴も謎の、正真正銘の謎の場所でしかなかった。
まぁ、そうやって色々と見て回ったわけだ。
で、その感想はといえば━━━━ぶっちゃけた話、個人的には面白かった。ツッコミどころは探すまでもなく色々とあったけど、紅魔の里の文化というか人間らしさを感じれて、見たり聞いたりしてる分にはそれなりに楽しめた。
同時にまかり間違ってもここには引っ越さないと決めたけど。
カズマとしてはツッコミ疲れたらしく、ご飯を食べ終えたらすっかり黄昏れてしまった。なんか少し老けた気がする。
その元凶の一員である水色は、こめっこと一緒にお昼寝モードに入った所だ。どちらも食べ過ぎが原因で妊婦のようにふっくらしたお腹を上に向け、スカーーっと寝息を立てている。
めぐみんはと言えばオレの隣にいて、妙にくっついてきていた。
どうしたのか?と聞けば、頭でスリスリしてくる。
その様子が可愛いかったので頭を撫でると、めぐみんは頬を少し赤らめて甘えるようにもっと強く擦りついてきた。
可愛いのでもっとヨシヨシしといた。
そうしてるとカズマが物欲しそうな顔でこっちを見ているのに気づいた。どうやら黄昏タイムは終わったらしい。
なので仲間に入れてやろうと手招きすれば、ささっとカズマが近づいてきてピタっとくっついた。そしてカズマと反対側にいるめぐみんが嫌そうな顔をした。
「……カズマは、離れて下さい。どうせ、後で、幾らでも、時間があるのですから。今は私の番です」
「それはそれ、これはこれだ」
「むむむ」
何故か俺を挟んで威嚇し合う二人。
何が二人にこうさせるのかは謎だけど、取り敢えずどっちの頭も平等に撫で撫でしておいた。なんか、そう、甘えたい次期なのだろう。誰にでもそういう時はある。うんうん。
「それはそうと、これからどうしようか。他にも観光スポットはあるんだろ?」
午後の予定についてめぐみんに聞くと、猫みたいに目を細めながらうーんと考える素振りを見せた。
「んーーー?そうですね、後は展望台くらいでしょうか。超強力な遠視の魔道具が設置されている、全てを見通す展望台。その名もバニルミルド」
「おお、なんか凄そう」
「勿論です。遠くの魔王城も隣にあるかの如く、くっきりはっきり見えてしまうのですよ。お金が掛かるので私は直接見たことはありませんが、オススメの監視スポットからは魔王の娘の部屋も覗けるそうです」
碌なもんじゃなかった……おっと、カズマと台詞が被っちゃったな。えへへ。
「……魔王の娘」
呟くようなカズマの声にふり返れば、カズマが物凄い勢いで目を逸らした。顔は見えないが首筋に流れる冷や汗が見て取れる。
その様子に寸前までホワホワしていた気持ちが一気に冷め、思わずジト目で見てしまう。隣のめぐみんもジト目だ。
二人でジトっと見てると今度はカズマが話し始めた。
「それはそうと、めぐみん。観光はこの辺りで終わりで良いだろ。ほら、あれだ、ローブ買うんだったよな?帰りによって行こうぜ。か、カナデも、何か買うなら奢るぞ。紅魔の里製って他にはあんまり出回らないらしいし興味あるだろ?」
「ええ、勿論そのつもりです。予備の分も含めて一杯買って貰いますからね。財布の用意をしておいて下さい」
「まぁ、確かに気にはならないと言ったら嘘になるけども。それより━━━━」
「よ、よっ、よーし!それなら午後の予定は決定だな!おい、アクア!休憩はボチボチいいだろ!商店街行くぞ、商店街!買い物して喫茶店辺りでオヤツでも食おうぜ!いやー忙しくなるなぁー!」
慌てて立ち上がったカズマは水色達を起こしに行く。
その後ろ姿をジト目で見てると、隣のめぐみんが「本当にあれで良いのですか?」と聞いてきた。言いたい事は分かるので、思わず苦笑いしてしまう。確かに今の姿はカッコ悪い。
でも、仕方ないのだ。
そういうのも引っくるめて、もうすっかり好きになってしまったのだから。
「まぁね、惚れた弱みってやつだよ。めぐみん」
「ふぅん?そんなもんですかね」
「そんなもんだよ。めぐみんも好きな人が出来たら分かるよ。あんな姿でも可愛く見えちゃうもんなんだよ。それにめぐみんだって、カズマのカッコいい所はよく知ってるだろ?」
カズマ達を見ながらそう言うと、めぐみんはジッと同じ方向を眺めた。
「ま、まぁ、そうですね。今はアレですけど」
そっとその言葉を呟いためぐみんの横顔は、随分と可愛らしいものだった。頬は林檎のように真っ赤だ。瞳も優しい色に染まっている。
「………今度、三人で一緒にする?もう成人してたよな?」
「しっ、しませんよ!何を言ってるのですか!カナデはハレンチです!変態です!エッチ大魔神です!あーーもう!漸く話したと思ったらこれですか!これもあれも、カズマがスケベなせいですよ!どーしてくれるんですか!カナデが変態になってしまったではないですかぁ!!」
なんか、カズマのせいにされた。
スケベ度合いでいったらどっこいか、もしくは俺が勝ってると思うんだが。
最初に襲ったの、俺だし。
まぁ、流石にその辺りは詳しく話すつもりはないけども。昨晩だって大分ぼやかして伝えておいたのだ。それはもう、ぼややんとした感じに。恋に恋する少女達の夢を壊さないように……いや、既に何度か見られてたらしいけどね。それでもね。うん。
やっぱりこういうのは男の威厳というか、そういうのがあると思うし。半分レイプ紛いに童貞奪った話とか、カズマの為にも黙っておくべきだろう。
プンスコしながらカズマの元にいくめぐみんを横目に、俺は改めて心の中でそう固く誓っといた。
始めてのプレイの内容は、墓場まで持っていくことを。
早々に片付けを済ませて、出発の準備が出来た頃。
それまで周りのメンバーとワチャワチャしていたカズマが神妙な顔で里の方を見つめ始めた。何事かと聞けば「ちょっと待ってくれ」と真剣な声が返ってくる。
気になって同じ方向を見てみたが、俺には長閑な里の光景が見えるだけで、特に気になる物は見つけられなかった。
俺と同じ様にめぐみんも里の方を見つめて首を傾げる。
「何かありましたか?」
「いや、特には」
二人で疑問を抱いてると、水色が手を筒のようにして里の方を見つめた。
「あら?何かしらアレ」
水色が何を見つけたようで、それにつられるように同じ方向へと視線を凝らせば里の端の所で何かが蠢いているのが見えた。森の中を進むその影ははっきりと見えないが、どうにも不審な様子だ。
一瞬、里の住人達が変なイベントでも始めたのかと思ったが、めぐみん達の様子を見るにそういう訳ではなさそうだ。
「あれは、家のある方向ですね。モンスターでも迷いこんできたのでしょうか?」
めぐみんがそうぼやくのと同時に、カズマが「あッ!」と大きな声をあげた。
「いや、あそこにいるのは多分魔王軍の連中だぞ!数はあんまりいないみたいだが……」
「おや、性懲りもなく来たのですか。あれだけこっぴどくやられておいて、まだ襲撃してくるとは。しかし少数でくるとは自殺志願者でしょうか?目的がわかりませんね。あんな風にコソコソしているという事は、何か理由があるとは思いますが……まさか里の施設でも狙っているのでしょうか?」
里の施設と聞いて、午前中に見て回ったあれ等が脳裏を過る。
そして同時に、あれ等が狙われる理由とは思えなかった。
それもう色んな意味で。
「確か、邪神の墓とか、物騒なものがあったよな?封印されているとかいうやつ……いや、でもあれは、もう封印解けてるんだけっけか」
「はい、解けちゃいましたね。なので今更魔王軍の幹部が欲しがるような物なんて、この里には……はっ!まさか、猫耳神社の御神体が!」
「それが本当だとすれば、そんな魔王軍はこの里と一緒に滅びればいいと思う」
あーでもない、こーでもないと話した結果、世界を滅ぼし兼ねない兵器辺りが狙われてるのではないか?という事になった。
次点で、里長や指揮官クラスの暗殺当たりじゃないかという事にもなった。情報が足りないのでどっちも予想の域は出ないのだが。
「とにかく、まだ里の連中が気づいてない。あのままじゃ侵入されるぞ!さっさと下に降りて、里の人達に魔王軍の連中がウロウロしてますよってチクリに行くぞ!」
格好いいんだか、格好悪いんだか分からないカズマの台詞と共に、俺達は急ぎ足で下山を始めた。
「さすが、カズマさんね。虎の威を借る他力本願っぷりが潔いわ!」
あと水色の余計な一言も添えて。
おっす、オラらいじゅう!
またまた、ぴょーさんがカナデの可愛いイラストを書いて下さったぜ!とてもきゃわわなので、皆にも見てほしいぜ!
感謝ッ、圧倒的感謝ッッッ!!
https://img.syosetu.org/img/user/272009/109270.jpeg