平和の象徴が吹き飛ぶ。
先生が発動した個性によって──いや、あれは個性という括りにしてよいものか。
「空気を押し出す+筋骨発条化+瞬発力×4+膂力増強×3……この組み合わせは楽しいな。増強系をもう少し足すか」
本当に人間かな、あの人。
っていうか、組み合わせって言った? 個性を何個も持ってるとか、どういうことだってばよ。
「っ……! オールマイト……」
苦々しげな顔で、緑谷くんがオールマイトが飛んでいった方向を見やる。
そんな緑谷くんに向けて、男が穏やかな声を掛けた。
「大丈夫。心配しなくてもあの程度で死にはしないよ」
あのオールマイトとの戦闘中だとはとても思えない、落ち着いた声。
ああ、こりゃヤバイね。勝てるビジョンがまったく浮かばない。まさしく化け物と呼ぶに相応しい実力者だ。
「さぁ。早く行きなさい、弔」
「先生は……先生は、どうするんだ」
「僕は大丈夫だとも。オールマイトを殺したら、すぐに追い付く」
瞬間、遠くの瓦礫の山から跳躍してきたオールマイトが、先生に向かって殴りかかる。
先生はそれを右手で受け止め、またも周囲に爆風が吹き荒れる。
なんだろうね、これ。一挙手一投足が壊滅的な破壊力なんですが……怪獣大決戦かな?
「常に考えろ、弔。君はまだまだ成長できるんだ」
呆然とする弔くんに、男がそんな言葉をかける。
というか、早く移動しない? この状況、絶対に赤ちゃんに悪影響だって。
「わー、花火みたいですねぇ」
そして呑気! トガちゃん状況わかってる!? 今すぐ離脱しないと僕ら全滅だよ!?
「おい死柄木! パイプ仮面が食い止めてくれてる間に速く──ぐっ!?」
懐に荼毘くんを圧縮して収納したコンプレスが、そう言った──と思ったら、突然地面に倒れ伏した。
それだけじゃない。
「がはっ!?」
「ぐぅっ!?」
「ぞんっ!?」
トゥワイス、スピナー、マグネの三人までもが、気絶して地面に倒れたのだった。
「ったく、とことん世話のかかる野郎だな、お前さんは」
「ぁ……グ、グラントリノ!!」
嬉しそうな、安堵したような顔で、緑谷くんは空中へと浮かぶ人影へと声をかけた。
あれは……たしか、さっき見た、オールマイトの隣に立っていたおじいちゃんだ。
荼毘くんを一発で気絶させた所は見てたけど、ここまで強かったのか。
「わぁ、あっという間に半壊? 笑えないなぁ……」
「アライブ、下ろしてください。私もヤります」
いや、その身体じゃ無理でしょ。明らかにこの前よりお腹膨らんでるんだからさ。
無理は厳禁。
お腹の子に何かあったら、それこそ洒落にならないからね。今までは妊娠初期ってことで許可してたけど、僕の血のせいで成長してしまった今となっては、戦闘するのを許可できる筈もない。
「来い! ヒーロー、デク!」
「っ、はい! 行くよ、麗日さん!!」
「デクくん……うん!!」
そして、そうなると圧倒的に戦力が足りなくなる訳で。
お茶子ちゃんを抱え上げた緑谷くんは、一息に跳躍しておじいちゃん──グラントリノの元まで跳んでいく。
流石にそれは見過ごせなかったのか、弔くんが立ち上がり阻止しようとする──が。
「ちょっと待った」
他ならぬ僕が、待ったをかける。
「帰りたいなら返してあげようよ」
「はぁ? お前、何言って」
「いくらでもくれてあげるよ、あんな
「──ああ、なるほど」
最後の部分だけは、弔くんにだけ聞こえるように小さく呟く。
それだけで、弔くんは気付いたらしかった。手を下ろして、踵を返す。
「先生……良いんだな?」
未だ、空中で戦いを続けている先生を眺めて、弔くんが悲痛な声を搾り出す。
辛いのだろう。
会話を聞いていた限りでは、先生は弔くんの親みたいな存在みたいだし。
ここで先生を置いていくということは、僕がトガちゃんを見捨てて逃げることと同義なのかな……と、思う。
所詮は他人である僕に、弔くんの心は読み解けないので、このくらいしか予想できないが。
「うーん……重い。っていうか、持つの僕だけ?」
「じゃあ私を下ろしてください」
「降ろしたら突撃するでしょトガちゃん」
彼女を抱き上げたまま、僕は足を使って気絶した四人を次々背中に乗っけていく。
気を抜いたら、すぐさま潰されてしまうだろう。そう確信できる重さだった。ま、すぐに戻るから良いんだけどさ。
「じゃ、先に行ってるよ弔くん」
その言葉を最後に、僕はみんなを担いでワープゲートへと入っていくのだった。
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結果として、あれから弔くんの先生は帰ってこなかった。
あれからテレビであの戦いを確認していたのだが、やはりというか、絆のパワー的なアレを受けたオールマイトが紙一重で勝っていたのだ。
やっぱり人が作り出す繋がりってのは凄いんだなぁ、と再確認する僕なのであった。
「さて、という訳で……洗脳は順調?」
『ああ。あと数日もすれば完了するだろうよ』
薄暗い路地裏をぶらぶらと歩きながら、僕はわりと付き合いが長い闇のブローカーへ電話を掛けていた。
トガちゃんはクリムゾンヒールの所へ定期検診に行っていて、ここには居ないのだ。悲しみ。
『へっへっへ。しっかし、えらい上物を捕まえたもんだ。あの雄英に通ってたリアルJKなんてなぁ。プレミアもんだろ、これは』
電話の向こうで、ギランが邪悪にほくそ笑んでいるのが容易に想像できる。
おまけに、微かにだが女の子の喘ぎ声も聞こえているので、洗脳の真っ最中なのは間違いないだろう。
「壊さないでよ。僕らの大事な仲間なんだから」
『へいへい。しっかし、仲間なんだったら洗脳なんてしなくても良くねぇか?』
「うーん、そこはほら……快楽漬けだけじゃ完全には屈服させられなかったからさ」
『そんで今度は快感と洗脳のダブルパンチかい? エグいねぇ』
まぁ、自覚はしてる。
こんなに用心を重ねなくても、お茶子ちゃん
「柄でもないけど、楽しみだなぁ」
世間一般で言われている『神野の悪夢』から今日で三日が経った。
単純に結果だけを述べるならば、ヒーロー側は勝ちはしたが、敗北したのだ。
勝負に勝って、試合に負けた、というものだと思ってもらえればいい。詰まるところ、ヒーロー達は詰めが甘かった。
その成果はヴィラン連合の黒幕を逮捕。拐われた人質の
「ヒーローは完璧を求められている……か。やっぱり窮屈だよねぇ、そんなのさ」
その点、ヴィランは自由でいい。まぁ、捕まるかもというリスクは確かに有るし、安定を求めているのなら絶対に進まない方がいい道だけどね。
それでも、一度踏み出してしまったのなら進むしかない。トガちゃんとイチャイチャする為にも、ヴィラン連合は捕まるわけにはいかないのだ。
『あの記者会見、傑作だったなぁ。ヒーロー達は何にも悪くねぇってのに頭下げてよ』
「悪いのは僕たちなのにね」
『お陰で、ヴィランの間じゃお前らはカリスマ扱いだぜ。入りたいって輩のなんと多いことか』
電話の向こうで、ギランはまたも嗤う。
弔くん、有象無象は入れない方針らしいから増員は厳しいかもね。
ま、僕はトガちゃんさえ居ればそれだけで良いんだけどさ。
『ああそうだ。一人、気になる奴を見つけたぜ』
「気になる奴?」
『見た目は普通の小娘なんだがな……何て言うか、目が普通じゃねぇんだよ。アレは色々とイッちまってる奴の目だ』
イッっちゃってる……ねぇ。僕もトガちゃんも毎晩イッてるけどねぇ。
え? そういうことじゃない?
「でも、それだけじゃ印象には残らないんじゃない? 他にも何か気になる要素あるんでしょ」
『まぁな。相変わらず勘だけは良いねぇ、お前は。バカなのに』
「喧嘩売ってる?」
『おう、特売だぜ。買ってけよ』
上等だこらぁ。
『ま、頭の回転は速いからな。バカってのは撤回してやるさ』
「うむ、よろしい」
『発想が突飛なアホではあるけどな。JKを快楽堕ちとか、どっからそんな考えが浮かんでくるんだよ』
バカの代わりにアホにランクアップしたもよう。いや、ランクダウンか、これは。どっちだ?
「っていうか、僕がバカかアホかはどうでもいいんだよ。さっさと本題」
『へいへい』
ギランはやれやれとでも言いたげに声を落とした。話が脱線したのはそっちのせいだと思うんだけどなー?
『実はな、その小娘
「宗教ねぇ……どんな?」
『人類再生教』
「うさんくさ」
『いやいや、これが結構バカに出来ないんだよ。特に、お前はな』
僕がバカにできない? ということは、何か僕に関係のある宗教なんだろうか。
僕に関係している宗教……んー、なんだっけ。つい最近そんな事を聞いたような──って、まさか。
「……あのさギラン」
『察したか? 勘だけは良いもんな、お前』
うん、察した。
再生ってところがダイレクトだよね。色んな意味にもとれる単語だけど、僕に関係のあるなんて言われちゃうと、もうそういう意味にしか聞こえなくなってくる不思議。
「もしかして、その宗教が崇めてる神様って……僕?」
『その通りだぜ、神サマ』
なんと僕、いつの間にか神様になってました。
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みんなに届けと、歌が響く。
その歌は周囲の怪我をした人々の元へと優しく降り注ぎ、みるみる内にその傷を癒していった。
静かで、優しく、暖かい歌声に人々は聞き惚れる。その歌は人々の心に染み込み、彼女への敬愛をより強固なものと変えていった。
「~~~~~~~~~♪」
人々は手を合わせ、祈る。まるで神に捧げるように、敬虔なる祈りを彼女へと捧げる。
部屋の隅に寝ていた、傷を負い、床に伏していた人々もいつの間にか起き上がって手を合わせる。
今や、この部屋の中に彼女を信奉しない者などいない。この空間において、今の彼女は紛れもなく
「ふぅ……皆様、ご静聴いただき感謝いたします」
歌が止み、彼女が恭しく頭を下げる。すると、どこからかともなく拍手が上がった。
それは次々と部屋中に伝播していき、あっという間の部屋を埋め尽くす大歓声に発展したのだった。
「すっごい良かったー! ありがとう聖女さまー!」
「こんなワシらの為にわざわざ歌って下さるとは……本当にありがたい事ですじゃ」
「俺ぁ……俺ぁ……モーレツに感動してるぜ! 歌で泣いたのなんかこれが初めてだ!」
十人十色、様々な声が飛び交っている。そんな歓声に、彼女は恭しく頭を下げて応じて見せた。
「ありがとうございます。これからも、我々
たおやかな笑顔を浮かべて、教祖である彼女は──
──────────────────-
とある暗い部屋の中。と言っても、壁のほとんどが無くなっている解放感抜群の部屋な訳だが。
果たして、これは部屋と言えるのだろうか。少なくともベッドがあるだけマシなのだろうけども。
「ふふ、今日の場所も酷いですね」
「ごめんねトガちゃん。ホテルとかに泊まるとバレちゃうからさ」
地方の寂れた港町。その郊外にある廃墟で、僕たちは裸になってベッドへと横たわっていた。元は病院で、ここは沢山あった病室の一つらしい。
時折吹いてくる波風が少しベタついて不愉快だが、今は夏なので裸でも寒いということはない。
「私はアライブと一緒なら、どこでもいいよ」
「僕もトガちゃんが居れば、何もいらないよ」
「変態ですね」
「えー、僕だけ?」
汗で濡れた身体を起こし、お互いに笑い会う。
ああ、幸せだなぁ。こうして彼女と一緒に居るだけで、生きてる意味があったのだと思えてくる。
「さ、早く服着よう?」
風邪は引かないだろうけど、ずっと裸というのも赤ちゃんに良くないだろうし。
いや、僕個人としてはトガちゃんの裸はいつまでも見てたいんだけどね?
少し身じろぎするだけで柔らかそうにぷるんと震えるそのおっぱいも、今でははっきりと赤ちゃんが入ってるのだと分かる大きくなったボテ腹も、見るだけで射精できそうな色香を放つおまんこも、そのどれもがずっと見ていたい程のエロさを兼ね備えたリーサルウェポンなのだから。
っと、とにかく何が言いたいのかというと、名残惜しいけど赤ちゃんのために服着ようってこと。
僕は先にベッドから立ち上がると、床に脱ぎ散らかしておいた自分の服を手に取る。
「んしょ……重い」
同じく彼女もベッドから立ち上がり、服を拾おうとし──その瞬間、不意に雲が途切れて、その隙間からまんまるな月がその顔を覗かせてきた。
頭上から降り注ぐ月の光が、彼女の肢体を幻想的にライトアップする。
「どうしました、アライブ?」
キョトンと、彼女が此方を見つめてくる。普段と変わらない、何て事のない仕草の筈だ。
なのに──なのに、今の彼女は普段とは比べ物にならないくらい、とても美しいと思えたのだ。
汗に濡れて、月光を反射する肌。ついさっき、出したばかりの精液が垂れ落ちるおまんこ。
そして何より、大きく突き出したお腹を大事そうに抱えるその立ち姿に、僕は隠しきれないほどの情欲を抱いていた。
「……いや、何でもないよ」
「ソコ、そんなにさせてたら説得力ないですよ」
あっという間に臨戦態勢になった僕の肉棒を指差し、彼女は悪戯っ子のように可愛く微笑む。
いや、だって仕方ないじゃん。
トガちゃんがエロ過ぎるのが悪いんだもん。これは至って普通の生理現象だもん。
「さっき十発も出したのに、まだ足りないの?」
「全然足りないね」
「いっそ清々しい程に性欲魔神ですね、アライブったら」
「トガちゃんがエッチなのが悪い」
「妊婦に欲情する変態さんが何か言ってます」
ぺたぺたと、裸足のままこちらに歩み寄ってくるトガちゃん。
そうして僕の目の前まで来ると、おもむろに彼女は唇を重ねてきた。
「んっ……んむっ、じゅるっ、ぷあっ」
「ふっ、んん……あむっ、むぐっ」
今まで何千回と繰り返してきたディープキス。互いの唾液を交換して、それでも足りないと相手の唾液を根こそぎ吸い尽くす貪欲なキス。
子供には絶対見せられないような、ねちっこくて甘ったるいキスだった。
「ぷはぁっ、はぁ……ふふ、収まった?」
「全然。むしろ滾ってきた」
「まったくもう、しょうがないアライブですね」
そう言って彼女はその場でしゃがむと、おもむろにその爆乳で僕の肉棒をむぎゅっと挟み込んでしまった。
温かくて柔らかい感触が、肉棒全体で感じられる。これは正に、極楽という他ないだろう。
「パイズリ、してあげます」
そのまま、トガちゃんが自身のおっぱいを上下にずりゅずりゅと動かしていけば、乳首からぴゅるっと白い液体が溢れだしてきた。
微かに感じる、甘いミルクの香り。
それと同時に感じる、腰が抜けそうになるほどの快感。肉棒に合わせて形を変える彼女のおっぱいは、それはもう例えようもなく厭らしくて。
「うぁっ……トガちゃん、それっ、柔らかっ」
「あは。アライブのおちんぽ、ガッチガチです。そんなにパイズリがいいんですか?」
「んぐっ……も、もちろん」
「ふ~ん?」
その爆乳でパイズリをしながらも、僕の顔を見上げてニンマリとした笑顔を浮かべる彼女。
僕の肉棒に掛かった母乳がローション代わりとなり、パイズリをしている谷間からは、ずちゅずちゅと卑猥な音が立ち上っている。
「ちゅっ」
パイズリの最中、彼女が谷間から顔を覗かせる亀頭にキスをした。
先走り液と母乳でぐちゃぐちゃになったそれを、彼女は愛おしそうに舐め上げ、咥える。
「はぁ……れろぉっ、はぷっ」
肉棒の先っぽが、ヌメヌメとした温かい感触につつまれる。
亀頭全部が彼女の口に頬張られ、舌で尿道をチロチロと刺激されれば、もう僕は我慢の限界だった。
「くぅっ……出すよっ、トガちゃん!!」
僕のその言葉に呼応するように、彼女はおっぱいを両腕で押さえつけた。
そしてそのまま精液を絞り出すようにおっぱいを持ち上げ、追撃だと言わんばかりに亀頭へのバキュームフェラを敢行する。
「ちうっ、ちぅぅぅぅぅ──ちゅぽんっ!!」
まるで精液を根こそぎ搾り取るかのような極上のバキューム。目の前がチカチカと明滅する。
その勢いに乗せるように、僕は肉棒の先っぽから大量の精液を射精した。
「ひゃあぅっ!?」
谷間に肉棒を挟んだまま、そこから発射される精液をすべて顔面に受ける彼女。
当然の結果と言えるだろう。パイズリ中に射精すれば、こうなるのは自明の理だった。
「ふわぁ……すっごい濃いです……」
顔どころか、髪にまで降り掛かった精液。彼女の金髪が、所々白く染まって斑色になっている。
そんな彼女はおっぱいから僕の肉棒を引き抜くと、両手で顔に掛かった精液を丁寧に掬い取っていた。
「じゅるじゅる……んっ、んくっ……もぐもぐっ、ごくっ……ぷはぁっ」
そうして手のひらに集まった精液をうっとりと眺めると、そのままそれに口をつけて一気に飲み干すのだった。
飲み干した直後の彼女の顔は、そりゃあもう誰にも見せられないレベルでトロトロにとろけていたが。
「いやまって、エロすぎじゃない?」
射精した直後のボーッとした頭で目の前の光景を見ていたのだが、ここまでの一連の動きがパーフェクト過ぎてヤバい。
男が喜ぶツボをとことんまで刺激してくるその光景に、僕は改めて彼女の恐ろしさを実感するのだった。
「十一回目とは思えない濃さですね。ほら、つまめちゃいますよ」
「うわ。我ながら凄いなぁ」
髪についた精液を指でつまみ、口へと持っていく。そのままそれを口に入れると、数回わざとらしく咀嚼してから大袈裟な動きで飲み込んだのだった。
「ふぅ……やっぱり私は血の方が好きです」
「散々美味しそうに飲んでおいて言うことがそれ?」
あんな嬉しそうに、美味しそうに飲んでたのに。
「あれは……そう、あれです。アライブを喜ばせてあげるためのリップサービスですから」
「その割には目がトロンとしてたような」
「見間違いじゃないですか?」
「口角もつり上がってた」
「上がってない」
「一口一口噛み締めるように味わって、飲み込むときですら一瞬もったいないって躊躇してたのは誰だったっけ」
「殺します」
うわっと、だから危ないってば。一体どこから取り出したのそのナイフ。全裸だったでしょうが。
「避けないでください」
「いやあ、僕は別に良いんだけどさ。服に掛かっちゃうとマズイでしょ?」
十中八九、ここで流血したら僕と彼女の服に血痕が付着する。
これからのことを考えると、そんな分かりやすい『非日常』をくっつけて行動する訳にもいかないだろう。
「言い訳です」
「いやいや、マジだよ。ちょっとこれから僕、野暮用があってさ」
「野暮用?」
野暮用、という言葉に、彼女がこてんと首を傾げる。ああ、そんな彼女もまた天使のように可愛くて最高だ。
特に──首を傾げたせいで髪の先についた精液が落ちるか落ちないかギリギリの瀬戸際を保っているその状況を指先一つで簡単に崩壊させてまたも指についたそれを愛しそうに舐め取って恍惚の表情を浮かべるところとかまた最高っていうか結婚してくださいっていうかずっとセックスしてたいなぁって気持ちがムクムクと沸き上がってくる訳ですよ押し倒していいですかね。
っと、まぁとどのつまり、彼女の可愛さは唯一無二であるっていうことを伝えたいだけなんだけどね。
「ギランに呼ばれててさ。交渉が上手くいけばヴィラン連合のメンバーが増えるかもしれないんだよね」
「……一人で行くの?」
「ん、まぁ。一人で来てくれって言われたからね」
服を拾い上げ、着直しながらトガちゃんの疑問に答えていく。実の所は、彼女以外の連合メンバーなら連れてきて良いって言われたんだけどね。
つれてく意味も無いから、誰にも声かけて無いけれど。強いて上げるならトゥワイスかな。でもトゥワイスの性格的に交渉は絶望的に向いてないから、やっぱり却下で。
「ま、ちょっと行ってくるだけだから、心配しないで」
「…………」
服もすべて着終わり、所々に付いた汚れをはたいて落とす。というか、彼女からの返事がないが、どうしたのだろうか。
「トガちゃん、どうし──んむっ」
彼女の居る方へと振り向いた瞬間、唇に軽くキスをされた。先程のディープキスとは違う、淡く触れるだけのライトなもの。
キスを終えて離れる彼女の唇から、ふわりと甘い香りが漂ってきた。
「……浮気したら、殺します」
「え、なに、どうしたの急に」
狼狽える僕の質問に答えず、彼女はウェットティッシュで体を拭いてから服を着始めた。
何だったんだろう、いったい。浮気したらってどういう意味なのだろうか。
っていうか、トガちゃんにはこれから誰と会うかは言ってない筈なんだけどなぁ。乙女の勘ってやつなのかもしれない。妊婦さんだけど。
「心配しないでトガちゃん。何があっても、僕のすべてはトガちゃんのもの、だからさ」
どこか不機嫌そうに服を着ていく彼女に向けて、僕はいつも通りの声をかける。
こうして、僕たちのいつも通りの夜は、静かにゆっくりと更けていくのだった。