エリちゃんの初めてを貰ってから数日後。ヤクザとのゴタゴタも綺麗に(?)収まった僕たちの生活は、すっかりと以前のものに戻っていた。
すなわち、連合のメンバー集めである。
「と言っても、目ぼしい人って中々居ないもんなんだよねぇ」
「地道に探すしかないですね」
「う、うんっ」
トゥワイスと別れた僕たちは、エリちゃんを連れてショッピングモールを堂々と散策して回っている最中だ。今回の変装コーディネートは、休日に遊びにきた平凡な親子といった服装になっている。
エリちゃんは白のブラウスと赤のスカートといったどこにでもいそうな子供を意識した服装。短くなった角もニット帽で隠して、変装も完璧な感じ。
トガちゃんもいつもの制服ではなく、若いお母さんが着るようなシックな服装になっていたりする。髪型も自然な感じでストレートに流してるし、そんな姿も新鮮で可愛い。やっぱり天使か。
「それにしても……ぷふっ、アライブ似合わなさすぎです」
「そうかなぁ?」
確かにサングラスは似合ってない気もするけどさぁ。トガちゃんだって眼鏡してるじゃない。
もしかして服装の方? だったら原因はトガちゃんにある気がするんだけどなぁ。コーディネートしたのトガちゃんだし。
「に、似合ってるよ、アラ……お、お父さんっ!」
「そう? ありがとね、エリ」
わしわしと、ニット帽の上からエリちゃんの頭を撫でてあげる。そう。今の僕たちは親子って設定だから、当然呼び方もそれっぽいものにしてあるのだ。
それにしても、エリちゃんにお父さんって呼ばれると何だか変な気分になってしまう。雫が成長したらこんな感じなのだろうか。
ちなみに、雫はいつも通りトガちゃんの背中に背負われて寝ています。ぐっすりスヤスヤタイムらしい。この子いっつも寝てるけど大丈夫なのだろうか。
「こうしてみると完璧な四人親子に見えるよね」
「じゃあエリはお姉ちゃんになりますね」
「お姉ちゃん……!」
お姉ちゃんというフレーズが琴線に触れたのか、エリちゃんは目をキラキラと輝かせている。嬉しそうだなぁ。
エリちゃんは数日前の
「…………」
「ん、クレープ屋さんですか……食べたい?」
「えっ……えぅ、えっと……」
「そこは素直に買ってあげようね、お母さん」
だけどまだ、ちょっと遠慮がちな部分もあるみたいで。まぁ、これはエリちゃんの過去を考えればしょうがない部分なんだろうけどさ。
「…………」
「それがいいの?」
「あっ、えっと……その……」
店の前に置いてある看板には、期間限定・デラックスリンゴクレープと大きく書かれており、エリちゃんはそれをジーッと見つめていた。非常に分かりやすい。
「デラックスリンゴクレープ三つください」
「かしこまりました!」
店先に立つ元気な店員さんに注文をし、懐からお金を取り出してお会計をする。
最近ヴィランが増えてるのもあって、そいつらからお金を巻き上げて生計を立てている僕たちなのであった。なんともその日暮らし感が満載だ。
「どうぞ!」
「どうも」
「どうもです!」
「あ、ありがとう」
三人揃って店員さんからクレープを受け取った僕たちは、近場にあった椅子に腰かけてそれを食べ始めた。
うん、甘い中にもサッパリとした酸味が効いてて実に美味しい。デラックスって名付けてるだけはあるね。
「どう、美味しい?」
「はわぁ……! すっごくおいしい!」
クレープにかぶりついたエリちゃんは、口元にクリームをくっつけながらも満面の笑みを浮かべている。その姿は実に幸せそうで、オーバーホールの所にいた頃のような暗い雰囲気は影も形もない。やっぱオーバーホールってクソだわ。
「リンゴ好きなんだね」
「へー、私も好きですよリンゴ。外側が真っ赤で血の色みたいでカァイイですよね」
「……お母さんも好きなの?」
む、それは初耳なんですけど。そういえばトガちゃんの好物とかって聞いたことないなぁ。本人が話さなかったのもあるけど、基本的に僕の血ばっかりのんでるからね。だから、他にどんな食べ物が好きとか考えたことなかったって言うか。
「じゃあ──」
トガちゃんの好きなものは何か、と聞こうとした所で、急にポケットにいれていたスマホが振動する。電話でも来たのだろうかと取り出して画面を見てみれば、そこに映っていたのはよく見慣れた名前だった。
いったい何の用事だろうかと通話ボタンをタップしてみれば、いつも通りの陽気でしゃがれた声が僕の耳に届いてくる。
『もしもし? 元気してたか、アライブ?』
「やぁ義蘭。元気だよ、嫌になるくらいに」
ヤクザ騒動以来の義蘭からの電話。いや、あの時は僕から電話したんだけどさ。
っていうか、義蘭には一言物申しとかなきゃいけないよね。主に約束破った件について。
「っていうかさ義蘭、なんで約束破ったわけ?」
『破った? なんのことだ?』
「ほら、お茶子ちゃん送ってって言ったのに来なかった件について」
『あん? 俺はちゃんと送り出したぞ?』
む、どういうことだろうか。今の義蘭の声色からは、嘘の臭いは感じ取れなかった。だとすれば、お茶子ちゃんがあの場所に来なかったのは何か意味があるのか。
「お茶子ちゃんは帰ってきてる?」
『いや、戻ってきてねぇな』
義蘭のところにも戻ってない……うーむ。取り敢えず、お茶子ちゃんが今何処に居るかだけでも聞いとかなきゃいけないだろう。
「発信器とか付けてる?」
『おう。スーツにデフォで付いてるぜ』
デフォなのか。いや、別にとやかく言うつもりはないけどさぁ。でもこれじゃあトゥワイスのスーツにも発信器ついてそうだなぁって。
『えーと……おいおい、マジかよ』
「どったの?」
『いや……悪いアライブ、ちょっくら連れ帰ってくれねぇか。色々と面倒な場所にいるみてぇだ』
「面倒って……場所は?」
あんまり遠くないところだといいなぁ……なんて、そんな僕の胸中を知ってか知らずか、義蘭はそのままその場所の名前を告げる。
『雄英高校』
予想以上にめちゃくちゃ面倒で遠い場所だった。
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僕たちが居たショッピングモールは地方にあるマイナーな所で、そこから雄英に行くとなると三日は掛かる。あ、僕の本気移動でって意味だよ。公共交通機関は顔バレが怖いからあんまり使いたくないしね。
で、そうなると当然僕一人でいかなくちゃいけなくなる訳で。
「あーもー! 義蘭マジ許さん!」
高速で走りながら、遥か遠くに居る悪友に悪態をつく。ついても無駄だってのは分かってるけど、つかずにはいられないだろう。
黒霧さんが捕まってなければもうちょっと楽だったのなー。この移動方法疲れるんだけどなー。
「はぁ……ま、愚痴ってもしかたないか」
さっさとお茶子ちゃん回収して帰ろう。まさか雄英の敷地内に入ってるなんてことはないだろうから、高校の近くを探せば会えるでしょきっと。
ヴィランが隠れそうな場所にも心当たりはあるしね。何しろ本業なので。
「よっと、到着ー」
そんなわけで三日三晩、不眠不休で走り続けて、ようやく雄英高校周辺に着きました。
朝日が眩しいなぁ……ふぁ、眠い。さて、お茶子ちゃんはどこかなっと。取り敢えずここに来るまで路地裏とか結構見て回ったけど、ゴロツキしか居なかったからね。例外無くお金巻き上げてボコボコにしといたけど。
そしてヴィランが潜みそうな路地裏に居ないとなるとあとはもう雄英高校の敷地がある山林に潜んでいる可能性しかないよね。この辺廃ビルとか全くないんだもん。
「うわぁ……迷いそう」
というわけで、僕は仕方なく山林の中に足を踏み入れる。木が間断なく生え揃っており、まるで林間合宿襲撃のあの時を思い出してしまった。
あの時は道に迷って大変だったからなぁ。今回はそうならないように注意しないと……と、言ってる側からまーた道が分かんなくなってきたぞ?
「……………………迷った」
案の定だよ、はい。
僕ってば方向音痴なのかなぁ? いやいや、地図があれば僕だって迷わないよ、流石にね。だって森の中って地図ないじゃん?
あー、トガちゃんに会いたい。三日もトガちゃんに会ってないからトガちゃん成分が欠乏してるよ。早く帰ってセックスしたいなぁ。あの淫靡すぎる満面の笑みを一刻も早く見たい所存。
「ん?」
と、そんなことを考えていたら、遠くの方で何やら音が聞こえた。木が折れたり、地面が抉れたりしているような派手な音……間違いない、これは戦闘の音じゃな?
トガちゃんと出会う前は戦い漬けだった僕には分かる。というか、トガちゃんと出会ってからはセックスしてばっかりなんだけどさ。あー、トガちゃんのおっぱい吸いたい。
「よーっし、見学しに行こうっと」
覗きはヴィランの基本だからね。トガちゃんが着替えてるところ覗いてるのを見つかって罵倒されながらナイフで目玉を刺されたい人生だった……うん、いい感じに頭がバグってきてるね。眠い。
「どれどれ……ん?」
音を頼りに最速で目的地に向かってみれば、そこには地面に押さえつけられた老紳士と、押さえつける人物に対して涙を流しながら抵抗する少女が。
そして、その老紳士を押さえつけている人というのが。これまたよーく、見たことのある人物で。
「あれー? 奇遇だねぇ──
だから思わず、茂みから飛び出してしまった。きっと、寝不足で頭がボーッとしていたからだろう。楽しそうな出来事、ハプニング満載な出来事に自ら首を突っ込んでしまいたくなったのだ。
だって僕、ヴィランだから。
「おっ、お前はっ!?」
「な、なに……!?」
緑谷くんと少女が揃って驚いたように此方を向く。老紳士はしゃべる気力も残ってなさそうだけど。
「不死身の……アライブ……!」
「ピンポーン。最悪だ……って顔してるね」
僕を認識した途端、みるみる顔が青くなっていくのが分かる。隣の少女はまだポカンと呆けていたけれど、取り敢えずは僕のやるべきことをしようか。
「じゃまずはその人から離れてね」
「なんっ──ぐはっ!?」
右足で思いっきり地面を踏み込み、神速のスピードで拳を叩き込む。いつも通り右足が吹き飛んで拳もボロボロになったけど、いつも通りまったく問題ない。
「あ、あなたは……」
「よっと、立てるおじさん?」
「……お、おじさんでは……ない。私はまだ……32だ……」
おじさんじゃん。いやまぁ、年齢不詳の僕が言えたことじゃないけどさぁ。
捕まっていた老紳士を助け起こして、取り敢えず背中に背負う。何だか嫌な予感がするからね、急いでここを離れないと。
「ジェ、ジェントルをどうするつもりなの!?」
「いや、別にどうも……僕ってば、ヒーローの邪魔をするのが趣味みたいなところあるから」
緑谷くんが戦っていたってことは、この人はヴィランであることが確定しているだろう。
その人を助けるということは、十中八九ヒーローにとっての嫌がらせになる、とそう思ったわけだ。我ながら嫌がらせのスケールがちっこいなぁと思うけども。
「キミはこの人のパートナー? だったら一緒に来なよ、助けてあげる」
まぁ、塵も積もれば山となる。こういったちっこい嫌がらせから攻めていくのも悪くないだろう。
僕が差し出した手を見て、少女は思いっきり悩んでいるらしかった。そりゃそうだよねぇ、いきなり現れた人の言うこととか信用できないよねぇ。
「ま、ま……て……アラ、イブ……!」
「うわ、もう起きてきた。しぶとさSSRかな緑谷くん」
「えっ──きゃっ!?」
こうなったらなりふり構ってられないので、少女の手を引っ張って頭の上に乗っける。小さいし意識もあるみたいだから、頑張ってそこに掴まっていてもらおう。
「じゃあね、緑谷くん」
未だにフラフラと足取りが覚束ない緑谷くんを尻目に、僕は一気に跳躍してその場から離脱した。逃げ足の早さには結構定評あるんだよね、僕。
「あわわわわわわわ!!!」
「むぉ……こ、これは……」
ちなみに、逃げている最中はとても賑やかだった事をここに記しておこう。主に、頭の上の少女によって、だけれどね。
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「くそっ……! くそっ、くそっ……!!」
地面に膝をつき、力無く地面を殴り付ける緑谷。また、またあの男にいいようにされてしまった。林間合宿の時も、死穢八斎会の時も、今回も。いつもいつも、あの男に出し抜かれている。
草木が生い茂る林の中で、緑谷は一人無力感に苛まれていた。
「なにが……なにが、最高のヒーローだ……!」
悔しさや不甲斐なさ、劣等感などが全身を蝕んで、頭がどうにかなりそうだった。
負けてばかり。その事実が、緑谷の心に暗い影を落とす。
実際はタイミングの問題なのかもしれないが、運も実力の内という言葉もある。そういうタイミングを自ら掴んだのだろう、あの男は。
「ン……ミドリヤ? ナニヲシテイル、コンナトコロデ」
「あ……エクト……プラズム、先生……」
不意に頭上から響いた声に、緑谷は蹲ったまま顔を上げる。そこに居たのは、個性をフル活用して周辺の警戒を担当しているエクトプラズム(の分身)だった。
その姿を認めて、反射的にマズイと悟った緑谷は勢いよく立ち上がると、何でもないように服や手足についた土をはたき落とす。
「あ、あのこれはですね! 買い出しにいって、間に合わなくなりそうで……ち、近道しようと思ったら……その、林の中で転んでしまって!」
「…………フム」
我ながらチグハグで苦しすぎる言い訳だな、と思いながらも、緑谷は必死に弁明する。
内心では冷や汗をダラダラ流していて、生きた心地がまるでしていなかったが。
「……マァイイ。イソイデモドロウ、モウスグ──」
と、エクトプラズムがそう言いかけた瞬間、周囲にけたたましい警報が鳴り響いた。
『シンニュウシャハッケン! シンニュウシャハッケン! コウナイニシンニュウシャ!』
「ム!?」
無機質な機械音声が、エクトプラズムの持っている通信端末から発せられる。
これは、雄英高校の敷地内に生徒や教師以外の不審者が侵入した時に発せられる緊急警報だ。
それが、鳴ってしまった。
鳴ることはないと──鳴らせるものかと──そう万全の態勢で準備していたにも関わらず。つまり、それが示すところは。
「なっ……そんな……!」
呆然としたまま、緑谷は膝から崩れ落ちる。その警報が鳴るというところの意味を、緑谷は知っていたから。
事前に決まっていた──不審者の一人でも確認された瞬間、文化祭は中止になる。それは、つまり。今までみんなで準備してきた全てが、泡沫となって消えたという事実を指し示していた。
「……カズハ」
『ヒトリ! ヒトリ! セイベツハジョセイ!』
「……ダレガムカッテイル」
『イレイザーガタイオウチュウ!』
「……ソウカ」
地面に崩れ落ちた緑谷を尻目に、エクトプラズムは通信端末から情報を受けとる。流石にショックは隠せていないようだが。
「……ミドリヤ、イコウ」
「そんな……なんで、なんで……こんな……!」
エクトプラズムが手を差し出すも、緑谷はうなだれたままボロボロと涙をこぼしていた。
あんなに一生懸命準備してきたのに。たくさんの笑顔があったのに。それらはすべて、たった一人の侵入者によって台無しになってしまった。
悔しさ、不甲斐なさ、悲しさ──そして怒り。今の緑谷の中では、様々な負の感情が渦巻いていた。
「くっ……くっそぉぉ──ー!!」
「ミドリヤ!?」
咆哮と共に勢いよく立ち上がった緑谷は、そのまま思いっきり地面を踏み締めた。そして全速力で雄英高校へ向かって走り出す。
それは今の緑谷に出来るなけなしの抵抗。今すぐ現場に急行して侵入者を捕まえれば何とか文化祭を再開できないかという、子供らしい淡い期待を孕んだ行動。
だが、現実は無慈悲で残酷だ。
この日、緑谷は更なる絶望に苛まれる事になる──しかし、今の緑谷はまだ何も知るよしもないのであった。
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緑谷くんからあの二人組を助けた後、僕たちは一旦休憩する為に雄英高校からかなり離れた建設放棄中のビルの一室に逃げ込んでいた。
流石にここまで遠くに逃げれば追ってこないでしょ。丁度いい所に休憩場所もあったし、今日はツいてるツいてる。
「ふー……ひとまず逃げ切れたかな?」
「に、人間ってあんなに高くジャンプできたのね、ジェントル……」
「あぁ……驚いたね、ラブラバ……」
老紳士と少女を床に下ろし、壁に寄りかかって座り込む。もうめっちゃ眠くてしょうがない。寝不足の体で全力逃走はやっぱ堪えるね。
なにやら二人揃ってボーッと呆けているが、そんなことより僕は眠いので寝ます。
「あ、あの……」
「ん?」
そう思って壁に寄りかかり、目を閉じた瞬間にさっき助けた少女から声を掛けられた。
何の用事なのかな。今の僕ってばめっちゃ眠いから、あんまり急な用事じゃなかったら後にしてほしいなぁ。
「あ、あなた、不死身のアライブでしょ。ヴィラン連合のあなたが……なんで、私たちを助けたの?」
「え? さっき言ったよね、嫌がらせだって」
というか、ヴィラン連合なの関係ある? 僕は単純にトガちゃんとイチャイチャ出来ればそれでいいんだよね。連合に所属してるのは、ただ単純にトガちゃんが入りたいって言ったからであって。
ヒーローに嫌がらせ──という名の妨害行為──をするのは連合に入る前からのライフワーク的な所あるし。
「さっきオジさんが戦ってた緑の髪した子は、個人的に色々と因縁があってね。見かけるとついつい虐めたくなっちゃうんだ」
まるで好きな子を虐める小学生男子のように。いや、別に僕は緑谷くんのこと好きじゃないけどね。むしろ苦手な部類だ。
あそこまで懇切丁寧にヴィラン堕ちさせようとしたのに、あっさりとヒーロー側に戻っていっちゃったし。僕とトガちゃんの苦労を返してほしいよ、まったく。
「で、でも! あなた達ヴィラン連合は、暴力と殺戮で世の中に恐怖を撒き散らすのが目的なんでしょう!? なんで私たちを助ける必要があるのよ!?」
「えぇ……? 僕らって世間からそんな風に認識されてたの?」
心外にも程があるよね。まだ誰も殺してないし、目立つ悪さ……はしてるけど、そこまで重大な罪は起こして……起こしてるな、うん。どう足掻いても悪人だったよ。
「一つ訂正。他のみんなはどうか知らないけど、僕は別にそんな大層なこと考えてるわけじゃないからね。向かってくる敵はボコるけど、必要以上に戦闘はしない」
え、そこいらのヴィランボコるのは良いのかって? あれはお金を貰うために必要な儀式だからノーカンです。
「僕が戦うのは、いつだってトガちゃんの為。それ以外はどうでもいいんだよ、ハッキリ言ってね」
実際、僕の行動原理の九割はトガちゃんの為に行うものだ。最近、残りの一割がエリちゃんとかシズク達の為になってきてるのは、喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか。
「ふむ……どうやら、君も中々にジェントルマンなようだ」
「え、そんな老けて見える? うーん……超再生で見た目の年齢とか戻せないのかな……」
「いやいや、見た目ではなく心がという意味でだね」
老紳士からいきなりジェントルマン認定されてしまった。そんなジェントルマンなこと言ったかな、僕。
「たった一人の女性のために、世界のすべてを敵に回す……おぉなんと麗しい愛情か! 我々は誤解していたようだ、ラブラバ。彼には渋々ヴィラン連合に属しなければならない深い事情があるらしい」
「はっ! そういうことだったのね、ジェントル! つまりこの人は、ヴィラン連合に何か弱味を握られているってことなのね!」
「その通りだともラブラバ! であれば、私たちが彼の力になってあげるべきだろう!」
「ええ、ジェントル! 助けられた恩も返さなくちゃいけないものね!」
なんか二人だけで盛り上がってるねー。じゃ、僕は眠いので寝ます、お休みー。
「では! 今日という記念すべき日のために、私が淹れた紅茶をご馳走しよう!」
「いや、そういうのいいから……って、あっつ!」
かかった。いまめっちゃ頭に紅茶かかったから。なんでそんな至近距離で淹れるの。僕じゃなかったら火傷確定だよ、これ。
「おっと失礼……では改めて」
「私たちがヴィラン連合から抜け出すための力になるわよ!」
「このジェントル・クリミナルと!」
「その相棒、ラブラバがね!」
ビシッと何かよく分かんないポーズをキメて、二人は改めてそう宣言した。
あぁ、うん。なんか盛大に勘違いしてるみたいだけど……訂正するのも面倒だし、別にいっか。
「ん……じゃあよろしくね、二人とも……」
最後に短くそう告げた僕は、ようやっと目を閉じて眠りにつくことが出来るのだった。