ヴィラン連合との顔合わせから一週間が経った。
今日も今日とて義蘭から連絡は無いけれど、新しい遊びを発見した僕たちは退屈せずにその連絡を待てている。
「んー……動いた?」
「気のせいですよ」
撮影を終え、いつもと同じビジネスホテルの一室に帰ってきた僕たち。
ベッドの上に腰かけた僕たちは、さっきまでの淫らなアレコレとはかけ離れた穏やかな時間を送っていた。
座った彼女のお腹に耳を当て、その中に宿った小さな命の鼓動に耳を傾ける。
「ぐー、って聞こえた」
「……それは私のお腹の音です」
そういえばもう昼時だもんね。そんなことを考えながら耳を離して姿勢を正せば、目の前には若干頬を朱に染めた彼女が居た。
あれ、もしかして照れてる? 普段はサイコパスなのに、こういう所はしっかり乙女してるのってギャップがあってイイよね。最高に萌える。
「アナタの血でノドを潤すことにしましょうか」
「えっ、いきなり悪の女幹部みたいなこと言ってどうしたのトガちゃん」
「つべこべ言わずに飲ませてください」
「いやー、襲われるー! けだものー!」
いつの間にやら懐から取り出したナイフで、彼女は僕の首を
そりゃもう鮮やかな手際で、頸動脈をスッパリですよ。流石は何回も僕の身体を切り刻んでいるだけのことはあるね。惚れ惚れするナイフの入れ具合だ。
「あはぁ。今日もアライブの血、綺麗ですねー」
「それは……ひゅー……なにより……ひゅー……何だけど……ごぼぉっ……喋りずら……げっほ!」
むせた、思いっきりむせたよ今。死ぬかと思ったよ、死なないけど。
「私のことをサイコパスだなんて思った罰です……ちうちう」
「えっ、でもトガちゃん事実サイコパ……あふん」
何とか気道は繋がったので普通に喋れるようにはなったのだが、今度は血を吸われるとき特有の気だるさ──虚脱感と言うべきか──のようなものを感じて、僕は彼女の支配下に置かれてしまうのだった。
一番好きな時間は彼女とセックスしてる時だけど、二番目に好きな時間はこうして血を吸われてる時かなぁ。
「ちうちう……ちうちう……」
「はぁぁぁ……」
血を吸われながら、僕は恍惚とした表情を浮かべる。この、自分の大切なものが根こそぎ彼女に吸い尽くされていく感覚は、言葉では言い表せない気持ちよさがあるね。
セックスとは違う、真に深い所で僕が彼女に求められている事を感じ取れているというか、なんというか。
つまり、かのじょの
「ぷはっ……ふふ、ごちそうさま」
「お粗末様でした」
彼女が傷口から口を離したと同時、そこにあった傷はキレイサッパリ完治していた。
うん、切り裂かれる痛みにもだいぶ慣れてきたかな。
いつもの戦闘では筋肉断裂やら複雑骨折やらがメインだったから、こうやって肉が切り裂かれる痛みっていうのは新鮮だったよ。今も新鮮だけど。
「喉も潤ったので……んしょ。一つお礼をしてあげます」
口元についた血を拭いながら、彼女は着ていた制服を脱ぎ始める。
セーターを脱ぎ、ワイシャツの前を開けると、そこから瑞々しい果実が溢れ落ちてきた。あれ、ブラジャーがないけども。
「またノーブラ?」
「安心してください。出掛けるときは付けますし、セーターも着てるので透けませんから」
いや、僕が心配してるのはそこじゃなくてね。
「乳首擦れて痛いでしょ」
「そんなに動かないから大丈夫ですよ……あんっ」
急に、彼女が色っぽい声をあげた。急にどうしたのかと視線を下に下げれば、そこでは僕の右手が彼女のおっぱいを揉みしだいていたのだった。
って、いつのまに。欲望に忠実すぎでしょ、僕の右手。
「いきなり……んふっ、えっちぃ触りかたしますね……この変態」
「トガちゃんのおっぱいがこんなにおっきぃのが悪い」
「あふぅ……減らず口を……ひぅんっ!」
あくまで、悪いのは彼女だと言い張る。だって、僕は彼女以外にこんなことしないのだから。
全部、彼女の魅力が悪いのだ。おっきくて柔らかいおっぱいも、もちもちとして張りのあるお尻も、ぷるりとして瑞々しい唇も──そのすべてが、僕の情欲を煽ってくる。
「トガちゃんかわいい」
「はっ……はっ……なんですか急──にぃぃぃぃ!!??」
突然、彼女は歯をくいしばって身体をビクビクと痙攣させた。
イッた──いや、イカせた。乳首を潰れるくらい思いっきりつねって、彼女の身体を一瞬で絶頂に導いてあげたのだ。
「こんな乱暴にされてイくなんて、とんだマゾ乳首だね。吸ったらどうなるのかな? もしかして母乳出たりする?」
「はひゅぅぅぅ……ま、まだ出ませ──んひぃぃぃ!!!???」
彼女の乳首に口を付け、思いっきり吸い上げる。
「ひんっ……や、やぁ……ひくびぃ……」
そうして口に含んだ乳首を、歯でぐにぃっと押し潰した。
「んやぁぁぁぁ!? か、かまっ、かまないれぇぇ!!」
目にうっすらと涙を浮かべ、いやいやと顔を振りながら彼女は懇願する。ホント、めちゃくちゃ乳首弱いんだから。
そんな彼女が愛しくて、かわいくて。だから時折いじめたくなる。
「
「しゃべんないでくださいぃぃ……あうんっ!?」
乳首に口をつけたまま、僕は空いた左手で彼女の下半身に手を這わせる。
スカートの内側にするりと入り込み、あっという間にパンツの中に左手を潜り込ませた。
(ぐちょぐちょだ)
パンツの中に手をいれた瞬間、ぐちょりとした感触が伝わってくる。十中八九、彼女の愛液だろう。
数回割れ目をなぞった僕は、左手を引き抜いて乳首から口を離す。
「ぷはっ……トガちゃんこそ、その濡れやすい体質どうにかしなよ」
「ぬ、濡れやすくなんかないです。アライブに触られると、自然とあふれちゃうだけで」
「ふーん?」
「なんですかその顔は。はやく死んでください」
いやー、お腹の子を残して死ねないでしょ。そもそも、彼女を置いて死ぬ気は毛頭無い。死ぬときは二人一緒が良いし。
もしくは、彼女に僕を殺してもらいたい。それまでは誰にも渡さない。彼女は、僕だけのものだ。
「えいっ」
「わわっ」
そんな猛烈な独占欲を心の奥に押し込めて、彼女の脚を掴みながら頭の方へ移動させる。そのまま脚を左右に開くと、その中央にぐちょぐちょの下着が鎮座していた。
俗に言うまんぐり返しの体勢になった彼女。脚から手を離し、その秘部にそっと指を這わせた。
「ふっ……んっく……!」
小悪魔ブラックな下着が彼女の秘部にピッタリと張り付き、おまんこの形をくっきりと浮き彫りにしている。
あまりにもピッタリすぎて、皮を被ったクリトリスの形までハッキリと分かってしまう。
「愛液でとろとろ……エッチだね、トガちゃん」
「う、うるさいです」
その愛液を指に絡ませてクリトリスに優しく触れる。まだ勃起せず、皮に包まれているであろうそれは、僕が優しくなでなでしてあげるとすぐにぴょこんと屹立した。
「んくっ……」
彼女が少し、顔を歪める。恐らく皮の剥けたクリトリスが下着に擦れて痛かったのだろう。
いくら愛液でぐちょぐちょとはいえ、敏感な部分だ。布が擦れるのはやはり痛いらしい。
という訳で、僕は彼女のパンツを脱がしてあげる。いわゆる紐パンというやつだったらしく、端に結んであった紐をほどくと、パンツはそのままべちょりとベッドに落下した。
「トガちゃんってばこんな脱がしやすいパンツ履いて……もしかして期待してた?」
「期待もなにも、あなたはいつも
「否定できないなぁ」
確かに、僕ってば暇さえあれば彼女とセックスしてばっかりだったからなぁ。今から考えれば、そりゃ妊娠もするよねって感じだ。
「まったく……飽きないんですかね」
「飽きないよ。むしろ四六時中抱いてたいぐらい」
「抱き枕じゃないんですから」
「夜は一緒に抱き合って寝てるけど」
「変態」
「トガちゃんもね」
丸見えになったおまんこを、ピッタリと閉じたスジにそってなぞっていく。
つるつるで、ぷにぷにで、ずっと触っていたい不思議な感触。おっぱいとはまた違う、別ベクトルの柔らかさだった。
「いつまで触ってるんですか」
「痛ったー!?」
夢中になって彼女のおまんこをずっとぷにぷにしていたら、その僕の腕にいきなりナイフが突き刺さった。
しかもそのままぐりぐりと傷口を抉るおまけ付きで。どうやら、彼女は早く先に進んで欲しいようだ。
「痛い……ヒドいやトガちゃん……」
「文句を言いたいのはこっちです。どれだけ焦らされてると思ってるんですか」
ほっぺたを膨らませながら、こちらをジト目で睨む彼女。刺さったナイフを抜きながら、僕は内心でそんな顔もかわいいと思ってしまうのだった。
「んじゃまあ、お望み通りに──っと!」
「あきゅぅっ!?」
彼女のクリトリス──肉芽に直接触れる。すごく敏感らしいので、指の先っぽで軽く撫でた。
それだけで、彼女の体は弓なりにビクンと跳ねる。
「ビリって……ビリってしましたぁ……!」
うっすらと瞳に涙を浮かべながら、彼女はこちらを睨んでいる。
ちょっと刺激が強すぎたのだろう。皮の上からは何度か触っているとはいえ、敏感な箇所なのだからこういった反応をするのも至極当然と言える。
「ごめんごめん。トガちゃん」
「むぅー……!」
「ほら、仲直りのセックスしよ?」
僕は自分のズボンと下着を脱ぎ去り、ガチガチに固くなった肉棒を露出させる。
それをぷにぷにのおまんこに押し当てると、すぐさま濃厚な愛液が溢れ出してきた。
「ふんっ」
「我慢は体に良くないよ。ほらほら、早くセックスしよう?」
「あなたがシたいだけでしょう」
「あ、バレた?」
まぁ、本音を言うとそうだ。いつものごとく肉棒は限界まで固くなり、早く彼女のナカに精液を吐き出したいとねだってくる。
空腹の時に、目の前に盛り付けられたご馳走をどれだけ我慢できるかという話である。
そして、それは僕だけでなく彼女にも言えることで。
「トガちゃんのここは正直だけど?」
「…………」
現在進行形でドロドロと本気汁が溢れているのが見てとれる。クリトリスへの攻めでちょっと拗れてしまったが、先程の言から分かる通り、とっくに彼女も準備万端だったのである。
「クリトリス触ったのは悪かったって。謝るから、ごめん」
「心がこもってないですね」
「そりゃ、性欲が……ね」
正直、今の僕は彼女を犯したいという事以外、何も考えられない。そこに、他の感情が入る余地なんてものは存在しないのだ。
だからこそ、言葉に感情が乗らない。乗ったとしても、それは溢れんばかりの劣情を含んだ下品なものになること請け合いだろう。
なので、今のこの平坦な言葉はある意味紳士的なものなのだ。なにせ、必死に彼女への性欲を押し留めているのだから。
「ふふっ、さすがは性欲魔神」
「十割トガちゃんのせいなんですけど」
くすくすと笑う彼女。そんな姿にさえ見惚れてしまうあたり、相当に溺れてるなぁと自覚する。でも、心地いいので抜け出す気は更々ないのだが。
恋愛は、惚れた方が負けとはよく言ったもので。
僕から告白したあの時から、僕は完全に負けてしまっていたのだ。まぁ、その事実に後悔は微塵も無いのだけども。
「まったく、しょうがないですね」
呆れた顔で、彼女は言う。
股を開いて、彼女は告げる。
「良いですよ。来てください、アライブ」
ああ、やっぱり。いつ見ても彼女は最高だ。最高に可愛くて、最高にえっちぃ。
僕の──僕だけの彼女。
「うん。いくよ、トガちゃん」
そうして、いつも通り肉棒を挿入しようとした──所で。
ベッドサイドに置いてあったスマホが、勢いよく着信を告げる音楽を鳴らしたのだった。
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「あのさぁ……ちょっとタイミング悪すぎじゃない? こっちの都合も考えて欲しいなぁ」
「しょうがないだろ。あの主治医サンは気まぐれなんだ、診てもらえるだけでもありがたいと思わないとな」
場所は変わって、今現在僕はとある病院の廃墟跡にやって来ていた。
周囲の壁なんかはボロボロで如何にも廃墟って感じなのだが、目の前にある扉は妙に小綺麗で真新しい。恐らく、この中をアジトとして使っているのだろう。
隣に立つ義蘭に抗議の言葉を送りながら、目の前の"診察中"という掛札が掛けられた、その真新しい扉を見やる。
「まぁ安心しときな。闇の外科医、クリムゾンヒール──裏社会ではちょいと名の知れた医者さ。気まぐれに病人を治療をし、気まぐれに報酬を貰って帰る。ただ、治した数より殺した数の方が多いせいで指名手配されてるんだが」
その説明のどこに安心する要素があるというのか。
「まぁ、そうは言ってもヤツが担当したのは不治の病と呼ばれる病気や、余命あと数週間なんて患者ばっかりだ。むしろ、そういった奴ら相手にあの成功数は相当優秀な気がするがね」
聞くところによると、クリムゾンヒールの施術回数は年に三百回を越えてるらしい。最低でも一日に一人は施術してる計算になる。
それだけやればまぁ、当然……なのか? かといって彼女に何かあったら速攻で殺すけども。
「そんなに焦るなよ。腹ン中のガキが心配なのは分かるけどな」
「焦ってないよ。これはただ……そう、お預けくらってへこんでるだけだから」
「自分で言うか?」
まるで面白いものを見たとでも言うかのように、義蘭は声を潜めてくつくつと笑っている。
何だその顔は。ムカつくな。
と、そんな感じで野郎二人の華も何もない駄弁りあいは、問題のドアが開くことですぐさま中断された。
「お、やっと終わったみたいだな」
開いたドアの奥からは、血だらけの白衣に身を包んだ若い女性と、満面の笑みを浮かべた彼女が出てきた。
ヤバい、僕の奥さんマジ可愛い。あの笑顔とか余裕で人──僕限定だろうけど──殺せるよ。彼女の可愛さは留まるところをしらないのだろうか。
「っと、まだ奥さんじゃなかった……反省反省」
「何一人でブツブツ言ってんだ」
何だか懐疑的な視線を義蘭から向けられたが、そんなことは意に介さず出てきた二人の方へ視線を向ける。
「で、どうでした? お腹の子と、トガちゃんの具合は」
そう僕が話しかければ、クリムゾンヒールはこちらから目を背けてポツポツと言葉発する。シャイなのかな?
「……あぁ。子供、母体、共に異常は見当たらない……経過は妊娠6週目……1ヶ月半だな。このまま行けば……無事に出産は可能だろう。後は──」
「なんと! なんとですよ、アライブ!」
そんな健気に喋るクリムゾンヒールを押し退けて、彼女をが僕の前に躍り出る。
あんなに興奮しちゃって……何かいい事実が発覚したのかな?
「うん、まずは落ち着いてトガちゃん」
「落ち着いてます!」
「落ち着いてないじゃん」
未だに興奮冷めやらぬといった感じで、彼女は腕を上下に振っている。可愛い。
おまけに手の部分は若干萌え袖みたいになっており、その光景は僕の可愛いゲージを振り切るには充分な可愛さだった。
あと、腕を振る度にそのおっきなおっぱいも上下に揺れてるのは何とかしてほしいかな。こっち見てると性欲ゲージの方が振り切れそうだ。
「よっぽど嬉しいんだね……で、なんでそんなに嬉しそうなの?」
「あのね、あのね──お腹の赤ちゃん、双子なんだって!」
なんと。
「本当ですか?」
「……ああ、本当だ」
内心驚いたまま、クリムゾンヒールに向けて確認を取る。そうして、帰ってきた返答はイエス。
マジか……そりゃあ、彼女も興奮するよなぁ。何せ一気に二人だなんて。
「これは名前決めるのが大変そうだね」
「二人で一人づつ考えましょっか」
「そうだね、それがいい」
とは言え、彼女に全部任せたらとんでもない名前つけそうだから、最終検閲くらいはさせてもらうけども。
「まぁ……出産までお大事に……あまり……体を冷やさないようにしてね……」
「それじゃあ、しばらく露出プレイはお預けだね」
「えー」
クリムゾンヒールの忠告に同意した僕に対して、彼女は心底不服だという表情を向けてくる。何気に露出プレイ好きだよね。いや、他人の姿で露出プレイするのが好きなのかな?
さっきだって、茜ちゃんのメイキングビデオ三本目撮る時はかなりノリノリだったし。
ちなみに、題名は『ドキドキ! 路地裏に出現した露出狂!!』です。うん、なんの個性もないね。無個性なタイトルだわぁ。
「ありがとうございました、クリムゾンヒール」
「っ……! べ、別に……大したことは……していない」
僕が告げたの言葉に、クリムゾンヒールは頬を少しだけ朱に染めて再びそっぽを向いてしまった。
どうしたんだろうか。お礼言ったらそっぽ向かれるって……僕なんか嫌われるようなことしたかな。一応初対面のはずだけど。
「……ねぇ義蘭、彼女どうしたの」
そんなクリムゾンヒールの様子の謎を解明するため、僕は隣に立つ義蘭にこっそりと質問をする。
「ああ、なんかお前のファンみたいだぜ」
「ファン?」
なんか、僕とは一番縁遠い言葉が出てきたんだけども。
「お前、たまに民間人のこと助けてるだろ。それ関係のファンらしい」
「助けてるって……あれ助けてる内に入るのかなぁ」
個性である超再生の影響なのか、僕の血──血じゃなくても肉とか──には摂取した人間の傷を即座に再生させる効能があるらしい。
最近は彼女との
昔は『自然治癒の効果を高める』ぐらいの効果しか無かったのに、最近では『一口飲んだら全身についた裂傷があっという間に元通りになる』なんてレベルにまで進化していた。
個性は使えば使うほどに伸びるというけれど、もっと別のベクトルに伸びてほしかったなぁ。
まぁ、さっきの事例で出た全身の裂傷というのは、もちろん彼女の仕業だ。彼女がズタズタに切り裂いた人を、僕の個性で治してる訳で……マッチポンプもいいところだね。
それとは別に、裏路地とかで怪我してる人見つけたらちょくちょく飲ませてはいるけども。それだけでファンってのも大袈裟じゃない?
「お前がそういうつもりじゃなくても、助けられたほうは感謝してるって事だよ。とある界隈では不死身のアライブを信仰してる宗教まであるんだぜ?」
「え、なにそれ怖い」
初耳なんだけど? なんでそんなのがあるんですかねぇ……それってつまり、僕が教祖なわけ? いや、崇められてるんだから神様とかそっち系なのかな。
どっちにしても怖い。人の知らないところで人を崇めないでほしい。
「いいじゃねぇか、不死身のアライブ様」
「やめて、死にたくなるから」
主にその響きがダサすぎて。せめて不死鳥のアライブとかならさぁ……え、そんなに変わらない? そっかぁ。
「ま、とにかくだ。これで借り一つ帳消しだぜ」
「あー……うん。ありがと、義蘭」
近づけていた顔を離し、人差し指を立てる義蘭。正直さっきの話が衝撃的すぎて、貸し借りの返済とかどーでも良いんだけど。
そんな内心複雑な僕をよそに、義蘭は振り向いてその場から立ち去ろうとする。
「出産祝いは持ってこないからなー」
「ドケチか」
そんなみみっちぃセリフと共に、義蘭は廃病院の闇に消えていった。
義蘭ってばケチくさいんだから。出産祝いぐらい奮発してもってきてほしいよね、ベビーカーとか。
「これ……臨月になったら……電話して、ほしい」
「はーい。臨月っていつですか?」
「…………」
そんな僕らのやり取りを尻目に、女子二人はなにやら電話番号を交換しているらしかった。その他にも、ラインやらメアドやら色々と。
「お腹が痛くなったらですか?」
「それは破水。臨月ってのは確か……妊娠10ヶ月ぐらいの事を言うんだっけ」
「そうだ……博識だな、不死身の……アライブ」
「それほどでもないですよ」
「なんでトガちゃんが得意気なの?」
なんか、むふーっとした表情を浮かべてるけども。今まで見たことない表情だ。めっちゃ可愛い。
っていうか、僕は別に博識じゃないよ。彼女の妊娠が発覚してから色々と調べただけだし。なるべく流産してほしくないし。
まぁ、その中でもセックスしちゃいけない期間があるって知ったときは発狂しそうになったけども。
彼女を抱けない日が一日でもあるってだけで、相当にヤバい。どうやって発散しようか……今から色々と考えておかなくては。
「今、あなたは現在妊娠1ヶ月半……つまり、あと8ヶ月半後……という訳だ」
「ふーん……なるほど、分かりました!」
にぱっと笑って返事をする彼女。ああ眩しい。正面から直視してないのに浄化されそうになるわ。
彼女の可愛さがオーバーフローして、僕の肉棒がリミットオーバーなんだけど? うん、自分でも何言ってるかわかんなくなってきた。
「じゃあこれからもよろしくお願いします、クリムゾンヒール」
「……ああ。よろしく……頼む。不死身の……アライブ」
「アライブだけでいいですよ。むしろそれだけでお願いします」
「そうか……アライブ」
うんうん、そうそう。その方がフルで呼ばれるより全然マシだからね。
そうして僕たちはクリムゾンヒールに別れを告げ、廃病院を後にする。
その最中、出口から外に出た所で彼女がおもむろに口を開いた。
「チハヤ、なんてどうでしょう」
「……何の話?」
「子供の名前ですよー」
ああ、なるほど。って、今までずっと考えてたってこと? 変なところでマメなんだから。
でもチハヤ──チハヤ、ね。響きは良いけど……良いんだけども。
「念のため聞いとくけどさ、それどんな漢字にするつもりなの?」
「え? んーとねー……こんな漢字です!」
スマホを取り出し、キーを打つ彼女。それを変換して、僕の目の前にスマホの画面を差し出してくる。
そこに書かれていた漢字は。
「……血早って」
「いい名前でしょー? 血を早く流す、でチハヤです!」
「却下」
「えー! カッコいいじゃないですかー!」
カッコよくはないと思うけどなー。
「まぁ、そんなすぐに決めないでさ、じっくり考えようよ。産まれるまでまだ時間あるんだしさ」
「うー……」
「そんな膨れっ面しないでさ、トガちゃん」
服の上から、彼女のお腹に手を添える。少しだけ膨らんだ温かなそこは、触れているだけで小さな鼓動が感じられるようだった。
未だに信じられないなぁ、この中に僕と彼女の子供が居るだなんて。
「……だったら、セックスしてください」
「え、どしたのいきなり」
不機嫌なままの彼女の口から、そんな言葉が飛び出してきた。いやほんと、どうしたんだろうね、いきなり。
「さっきの続きも兼ねて勝負しましょう。私が勝ったら、私の案を採用させます」
「あー、そういうこと? いいじゃん、面白そう」
そういうことなら僕も大歓迎だ。いや、そういう勝負目的じゃなくても、彼女とのセックスならばいつでも大歓迎なんだけどね。
「じゃあ早速行きましょう」
「うん」
そうして、僕らは近場のラブホに足を運ぶのだった。ちなみに、勝負の結果は──まぁ後程ということで。