今回は7話と8話の間で語られなかった裏側のお話だよ!
「風見幽香、お前に取り憑いたヤミの正体は───」
そこまで言って、止まった。
「あらぁ、もしかして分からないのかしらぁ?」
だって闇と病みを勘違いしてるだなんて思わなかったんだもの、ヤミにタイプが有るだなんて知らなかったんだもの、会ってそんなに時間経ってないんだもの。
解決法は浮かばず、言い訳ばかりが浮かんでくる。
幽香の行動、言葉、所作、断片を紡ぎ、見逃している事はないか思考を巡らせ、気が付けば幽香が目の前にいた。
「な───」
認識し、逃げようとした瞬間、思考と呼吸が停止する。
硬い物が突き刺さる感触とずぶりと腹に何かがゆっくり食い込む音が広がり、足が衝撃を殺し切れず身体が宙を舞い、地面に叩きつけられる。
「な、なんで、はなれて」
「全く、奴隷の癖に口の利き方がなってないわね」
吹き飛ばされ、距離が離れたはずの幽香。気が付けば目の前に立っていた。
離れた筈なのに目の前に居る。そんな現実から目を逸らし、幽香の攻撃によって乱された息を整え、冷静に幽香を観察し、何によって吹き飛ばされたのか考える。
拳による殴打、しかし幽香が殴るには距離が足りない。次に足での蹴りも考えられる。だがそのような動きは見えなかったので却下。思いつく限りの可能性を消去し終わった後、かの有名な探偵の言葉は正解だったようで
「傘?」
絞り出すような声で最後に残った答えを幽香に問い掛ける。外れていて欲しい、そんな事は無い筈だ、もっとよく考えろ。希望の混じった否定だらけの質問は
「そうよ、何かおかしい事でも有るかしら?」
羽虫が人に勝てない様に、妖怪がこの程度の力を持っていて当たり前だという様に、当たり前の事を聞かれて呆れた顔をしている目の前のバケモノの肯定で絶望に変わる。
「確かにこの傘は私の特別製だけれど、人間と妖怪には力の差があるってまだ分かってないのかしら?」
格の違いを認識する。ポンの言った事を思い出す、あいつが戦うなと言ったのは身を案じて言ったんじゃない。奇跡でも起こらないと、仮に起こったとしても決して勝てないから。そんな事を今更理解する、拒否しようとしてもしてしまう。辛うじて立っていた身体から力が抜け、膝から崩れ落ちる。
「これは……調教してあげなきゃね?」
その言葉で背筋に悪寒が走った。
力はもう入らない。心は折れ、身体は傷付き、力の差を見せ付けられ、後は諦めるしかない。しかし何かが言っている。逃げろ、身体を動かせ、命を燃やせ、捕まってはいけない。崩れ落ちた体を強引に立ち直らせる。惨めでも、泥に塗れても、這いつくばってでもこの場から離れなくては───!
「そうね、まず一つ教えてあげましょう」
半ば獣の様な走り方で、手足をもつれさせながらあるかどうか分からない安全な場所を探す。
だが、それは間違いだったようで
「お花や植物を大切にする事、分かったわね?」
植物が足首に絡み、再び地面に叩きつけられる。
「あら、土下座かしら?そうねぇ……その態度に免じて少し優しくしてあげようかしら」
偶然が功を奏し、最悪の展開は避けられたようだ。
捕まっても隙を見て逃げれば───
「まず足を折って逃げられないようにするのは絶対としてその後はどうしようかしら体にムチも良いし鎖骨なんかも折れやすい割に痛みが大きいらしいからそっちも良いわね逃げ出したらもっと教え込めば支配できるかしら・・・」
やはりさっきの悪寒は勘違いじゃなかった。
幽香は完璧に狂っている。
捕まってはいけない、抵抗しなければ。一度捕まれば二度と逃げ出せないだろう。
「悪いな、幽香っ!」
幽香の腹部にパンチを繰り出す。
呼吸困難による行動不能、あわよくば追撃をすることを狙う。
「良いのよ、躾が少し増えるだけだから」
余裕を浮かべながら拳を受け止められ、手を後ろに捻られ再び倒される。
「腕、折るわね」
「がっ、んぐっ!」
淡々と左腕の骨が折られる。
漏れそうになった声を噛み殺し右手で口を塞いだ。
「声、我慢しなくても良いのよ?もっと聞かせて?」
嗜虐的な笑みを浮かべながら折られたばかりの腕を執拗に刺激される。
声は噛み殺せても体が痛みに反応してしまい、背中を仰け反らせ涎が滴り落ちる。
「あらあら、そんなに涎を垂らして犬みたいね」
腕は折られ反撃は出来ない。それでも逃げなければ、まだ足が残っている。足を踏みつけてその隙に───!
「犬なら、立とうとするのはおかしいわよね?」
「がっ、あああああああ!!」
傘で両足の骨を折られ、声が耐え切れず溢れる。
痛みで涙と涎に溢れ、顔をぐちゃぐちゃに汚している中───
幽香は、恍惚とした表情でこちらを見ていた。
「ああ、貴方はやっぱり奴隷にしたいわ・・・
もう一度聞いてあげる、私の奴隷になりなさい?」
ここで頷けば楽になれるのだろう。
だが、頷いてしまったら全てが終わる。何よりも負けたくない。
「嫌、だね。誰がお前の奴隷になるか!」
「なら、私の家でゆっくり立場を教えてあげるわ」
幽香の家に着いた途端、乱雑にベッドの上に寝かされ、拘束された。
右腕以外折れてるので拘束具で締め付けられて声が漏れ出しそうになる。
「待ったかしら?」
「いや、全く?それで、どんな拷問で楽しませてくれるんだ?」
逃げるのに失敗すれば二度と脱出の機会は訪れないだろう。少しでも優位性を保つために強気な言葉と態度を取ってみる。
「痛みの恐怖で支配するのも良かったけど・・・趣向を変えて・・・」
幽香が上に覆い被さり抱き締められる。鼻と口に胸が当たって呼吸が阻害される。
「どう?こう言うのも好きよね?」
悔しいけど大好物です。視界が覆い尽くされ、他の感覚が鋭くなる。
良い匂いなのだが、呼吸が出来ず意識が薄れ、視界が暗転する。
「気絶なんか出来ると思ってるの?」
朦朧とする中痛みが走る。
胸で視界が塞がれ見えないが、折れた部分を掴んだのだろう。
酸素不足で意識が遠のき、痛みで起こされる。遠のき、起こされる。ぼんやりしては、痛みで覚醒させられる。快楽に浸かったまま、延々と終わらない拷問が繰り返される。
「どう?私の物になるって言うならやめてあげるけど?」
「そえは……そえらけはいえない……」
幽香の匂いに包まれ、痛みが走り自分の体の境界も快楽と痛みの境目も時間も日付も何もかもが曖昧になる。もう呂律も回らなくなってきた。
自分の体の変化に気付いたのはその時だった。
「反応が鈍くなって来たわね、感覚が壊れちゃったのかしら」
痛みに慣れたのか、体を弄られても声が出なくなっていた。このままやり過ごせば脱出の機会が伺える、絶望の中に希望が垣間見え、目に光を取り戻す。
しかし、それは希望なんかでは無かった。
「あら、貴方この腕……もう治ってるじゃない!また折ってあげるわね!」
嬉しそうな幽香さんの言葉は、僕を一気に絶望へと突き落とし、また目の前が真っ暗になった。
あれから、いくらかじかんがすぎた。
ゆうかさんが、ぼくにきいた。
「ねぇ、私の奴隷になる?」
なんどもなんどもくりかえされたそのことばは
「私の奴隷になればもう痛い事されないわよ?」
だんだんやさしいききかたにかわった。
「貴方が私の奴隷になるなら、ずっと面倒を見てあげる。食事も娯楽も、貴方の性欲さえも」
ていこうしても、なにをしてもくるしいなら。
「だから、ね?私の奴隷になりなさい?」
もう、おれちゃってもいいよね?
「はい、なります・・ゆーかさんのどれいになります・・・」
18/26 lost hea「r」t Rエンド
今回は18個目のEND。精神崩壊エンドでしたー!
うーむヤンデレ、恐るべし・・・
これからもこんな感じの話を語っていくからお楽しみにー!