有地将臣くんは出てきます。鷺ノ森透さんは出てきませんというか存在してない世界線です。
それと、現状については朝武の呪いについては一切何もわかっていない、判明していない初期状態ですが一応有地くんが憑代に襲われてから玄十郎に師事し、鍛えて芳乃さんに認めてもらえた?くらいの場所です。
ちなみに後々もちろん千恋万花ですのでムラサメ様も………
最寄り駅からでも車で30分はかかる山奥にその小京都のような町並みが広がるその町は「穂織<ほおり>」と呼ぶそうで。救済措置のような体でバスは走っているが一時間弱はかかってしまう上に昼間の運行しかないようなそんな町なのです。
そんな町に私は引っ越してきました。何故、私が引っ越してきたか?なんてそんな毒を食らわば皿までとまでは流石に言いませんがそれでも人には人の事情があるというものです
「天霧さん……」
しかし、全くもって観光客等の外からの客がいないわけではなく逆で割と多くの外国人の姿が見受けられました。やはり湯治でしょうか?それとも……
「天霧さん?」
「はっ!ひゃぃっ!?」
パチパチと回想から私を助けた人へと目を瞬かせてから見ると想像通り彼女がいました。よく透き通るような、喧騒の中にいても彼女の声だけはスっと耳の中に入るような。そんな声の持ち主だからこそ想像通りということで。
鵜茅<うがや>学院のとある昼休み。何でもない日常に私はいました。いや「何でもない」という括りに入れるのは如何なものかなのですが、それでも「日常」という括りには入るのではないでしょか。そこに溶け込まるだけで私は満足なのです…ただ、代わり映えのない日常に溶け込むことが。
「朝武<ともたけ>さん?」
「大丈夫ですか?今、ぼーっとしていらっしゃったのでついつい声をかけてしまいましたが……何か転校してから眠れないとか……不安とか……あったら……その………」
「芳乃<よしの>様はお友達として心配ですと言いたいのですよ!」
「茉子!余計なことは言わなくていいの!」
ムスっとしながら隣のニヤニヤと笑うショートボブの少女に弄られているのは朝武芳乃<ともたけよしの>さん。外国人がこの山奥の辺境の地を訪れる理由としてあげるのは彼女の舞なのでしょう。建実神社で春祭りや祭祀の時に舞われる舞は私はまだ動画でしか見たことがないけれども、それでも彼女の美しさは画面越しにでも十分伝わり惚れ惚れしてしまいそうでした……。
「すみませんw芳乃様……面白くて。」
そしてニヤニヤと笑う彼女は常盤茉子<ひたちまこ>さん。いつも芳乃さんの横についているような印象があるのですが何か訳でもありそうかと。友達といった仲でもそういう関係でも無さそうで。やっぱり芳乃「様」と呼んでいるあたりあの<巫女姫様>という文言が関係しているのでしょう。私も一度だけしかまだ詳しく聞けてないのですがどうやら「お勤め」を果たす朝武の家系に連なる者?みたいな。そんな認識なんだそうで。それもあってこの穂織の町に住む人は芳乃さんの事を「巫女姫様」と呼んでいるのを身をもって実感している。そして彼女、茉子さんはどうやら訳ありか「芳乃様」と呼んでいるのですが…気になってしまいます。
「あっ。天霧さん!芳乃様のことは是非気になさらずと言いたいところですが友達になってあげても構いませんよ?」
「茉子。」
「っ………すみません、出過ぎた真似を……。」
「いえ…そういうことではなくて…その……」
場の雰囲気が少し変わりそうなのでしたからと私は隣に立ち続けてこの場の雰囲気、具体的には女性に囲まれているという下衆な考えをお持ちであろうお方を引き寄せました。
「あああ天霧さん!?少し強引だとは思うんですよ!?ちょっ…将臣?将臣も何、我関せずみたいに知らんぷりをしているわけ!?曲がりなりにも巫女姫様のおぉぉっっと!?」
彼はどうやら私に引っ張られてにやけているのが少々入っているようなので遠慮はいらないと会った時から判断できますね…と、くせっ毛の茶髪の人に向けて目配せをします。もちろん何も意味はないですけど。
「天霧さん!?その目配せはもしかして…もしかしてですか!?」
「廉兄、調子に乗りすぎじゃない?」
的確な指示と判断を下してくださっているのはこの茶髪のムードメーカー兼女たらしの鞍馬廉太郎<くらまれんたろう>で、それを諌めている…というよりもいつものように隙があれば兄をいびっているのほうが正しいような気がしますが。ともあれ鞍馬さんの妹の鞍馬小春<くらまこはる>とお聞きしました。学年が違う為にあまり話したことはないのですがどうにもこの鞍馬さんといるとこれからも小春さんにはお手伝いをしてもらいそうな予感がしてなりません。
「廉太郎。そうやって調子に乗るから女たらしの異名が七十五日経ってもまだ消えないんじゃないか?」
「婚約者持ちに言われてもなぁ…。」
そして廉太郎と呼び捨てで彼の事を呼ぶのは有地将臣<ありちまさおみ>さん。巫女姫様―芳乃さんの婚約者だそうで?ちょっと学生の私には婚約者という意味が詳しく理解出来ない…理解し難いところではあるのですが。本来公表されていないところなのですがどうにもこの鞍馬さんが漏らしたのを聞いてしまったのが原因で。今では「婚約者」ということは既にこの穂織の町全体にとどいているのではないでしょうか?別段隠すようなことでもなく、ただ芳乃さんの方が恥ずかしいから隠している。そんな印象を受けたのはさておき有地さんは何やらつかみどころが無さそうで、かと言ってわかりにくいかと言われればそうでもないような。なんとも言えない人かなと思ってしまいます。
「廉兄そうだよ?巫女姫様の婚約者だからって嫉妬してるの?うわ~ダメだね。廉兄は一生童貞のままって決まっているんだから。」
「あ?そういうお前だって彼氏のひとりだって出来ないじゃないのか?胸の大きさと心の大きさは比例するか?」
「あ~~!!そんなデリカシーのないことを堂々と人前で言うなんてどうなんじゃないの!?」
「うるさいぺったん!貧乳!まな板!」
「ぐぬぬぬぬ……いいもん!去年から0,2mmは大きくなったから!」
「誤差。そんなの誤差のうちです~」
仲のいい兄弟のいつもの光景。さしもの私ももう慣れてしまいましたがいつも誰かが適宜な場所で止めているようで。今日は差し出がましいようなのですが…私が失礼しますね♪
「鞍馬さん。小春さん。」
「天霧さんも何か言ってよ!この駄兄に!」
「天霧さんはこのぺったんの口の悪さを……」
「鞍馬さん……小春さん……。」
チラリと彼彼女を笑みを浮かべてニコニコ見る。どうにも私が静かな笑みを浮かべると黙るというのは前の空島からの教訓……教訓と言っていいものなのかとはなのですが、これが一番効果的だそうで。
「お……おう。そうだよな!小春!俺たちは仲良しだよな!」
「う…うん!私、廉兄のこと大好きだよ!!」
「それは仲いい兄弟で素晴らしいと思いますよ♪」
手の指を合わせてニコッと微笑めば兄弟は仲良しになってます。うふふ…そんな引きつった笑みを浮かべていると内なる嗜虐心で心が満たされてしまいそうです……
「茉子。天霧さんって時たま茉子みたいになる…んじゃ?」
「そうですか?」
「あの何とも言い難い笑みを浮かべれる彼女はやはり茉子と同類では?」
「う~ん……私としましては何も言えませんね。」
朝武さんや、常盤さんが何やら論議をしている喧騒の昼休み。私は不安と期待の転校してきてから五日目でした。まさかここまで皆さんと仲良くなれるとは思ってもみませんでしたが、良きも悪くも閉ざされた穂織の地ですので。仲良く出来る人がいるとはいつ何時でも良いものですね♪