暗部とかそういう暗いものはいっっっっっさいありません。
麦野沈利。
学園都市レベル5の第4位で『原子崩し(メルトダウナー)』の能力者。
仲良し4人組の中で最年長ということでリーダーのような存在。
少しウェーブのかかった髪でモデル体型だが、脚が少し太めなのを気にしていてストッキングを履いている。
意外にも和食を好み、特にシャケ弁を愛している。
✴︎ 麦野視点 ✴︎
「次はこの映画見たいですね〜♪」
鼻歌を歌いながら映画のパンフレットを眺める絹旗。
最近というかここ1年、絹旗がとても楽しそうにしている。
いや、まぁ、理由は分かってるんだけど。
「絹旗はまた彼氏と熱々デートって訳よ。いーなーうらやましーなー」
「……」
足をジタバタするなフレンダ。埃が出るからやめて欲しい。
でも、フレンダの言う通り少し羨ましい気持ちもある。
私達4人組は長い付き合いだけど、今までは誰かに彼氏ができるなんて無かった。
だからこそ絹旗が『私彼氏できました』と言った時には私もフレンダも、更には滝壺まで愕然としていた。
けれど、絹旗が幸せならいいか、と思う。
私はこの4人組の中だと一番年上だから彼女達の保護者のような事をしている。
しかし、私にも好きな人ができて、彼氏が出来れば彼女達を見守るなんて事も出来なくなる。
だからこそ、彼女達には早いとこ彼氏を作って貰わないと困るのよね。
「今月は超ピンチって言ってましたし、そろそろ何か作りに行ってあげましょうかねぇ♪」
ただ、自分のお眼鏡に適うような男性がいればの話だけど。
別に白馬の王子様を求めている訳じゃないけど、優しい人がいいわよね。
「今日の夜はスーパーのお弁当を買って済ますって言ってましたし、明日行きましょうか」
あー、急にシャケ弁食いたくなってきたな。
買いに行こうか。
「麦野買い物行くの〜?」
「えぇ」
「ついでに鯖缶買ってきてほしい訳よ」
「嫌よ」
そのくらい自分で買いに行きなさいよ。
✴︎ オリ主視点 ✴︎
最愛といろんな映画を見ていたら気付けば財布がすっからかん。
親からの仕送りも力尽き、学園都市からの支給も力尽き。
もう死ぬしかない気もしていたが明日は最愛がご飯を作ってくれると聞き、年下にお世話をされるなんて申し訳なさすぎて逆に死にそうに気がしてきた。
時計を見れば午後7時。
そろそろスーパーの弁当が値引きされる頃だろうし、買いに行こう。
値引き弁当が安易に手に入ると思っていた数分前の僕を殴ってやりたい。
店内に入った瞬間に値引き弁当を求めた飢えた学生が争い始め、数分経った今では気を失った学生の山が出来上がっている。
値引き弁当……恐ろしい子ッ!
流石にもう弁当はないだろう、と商品棚を見れば奇跡的にシャケ弁当が1つだけ余っていた。
良かった……これで明日まで生き残れる…雑草を食べなくて済む。
ホッとしながらシャケ弁当に手を伸ばすが、同じタイミングでシャケ弁に伸ばされた手がもう1つ。
「えっ」
「は?」
手を辿り顔を見て、少しドキッとした。
モデルのような整った顔、嫌でも視界に入る大きなお胸。
うん、眼福。
「……あ、あぁ、僕はいいんでどうぞ」
「え、えぇ。どうも」
男の子だしね。可愛い女性がいたら譲っちゃうよね……。
大丈夫、昨日から何も食べてないけど、2日くらいなら……最悪その辺の雑草でも……。
まぁ、今考えても仕方ない。
お腹が鳴るのが止まらないが、とりあえず家に帰って草取りでもしよう。
「ね、ねぇ」
「…えっ、あ、はい?」
え、な、なんかしちゃった?お尻とか触っちゃった?無意識にやっちゃった?
「ほんと、ありがとね」
……彼女がいる身で言ってはいけないと分かった上で言う。
恥ずかしそうにニコッと笑った彼女は、素直に可愛いと思った。
「じゃ、じゃあね」
軽快に走っていく彼女との出会いは、最愛との出会いよりも少し幸せなものだった。
まぁ、最愛との出会い以上に衝撃的なものなんて中々ないだろうが。
そう思いながら、ぐぎゅるるるるる、と鳴り止まない己の腹に向けて力強いパンチを入れた。
✴︎ 麦野視点 ✴︎
気付けば家に着いていて、ガチャリとドアを開ける。
「……ただいま」
「お帰りなさいって訳よ。鯖缶買ってきてくれた?」
……別にあの男にときめいた訳ではない。ただ、シャケ弁を譲ってくれたのが嬉しかっただけ。
この心臓の高鳴りも、気のせいだろう。
顔は少しタイプだったし、服の上からでも体を鍛えているのはわかった。
けれど一目惚れなんて、自分がする訳ないし、シャケ弁を譲ってくれただけで惚れるなんて自分はそこまでチョロい女じゃないはずだ。
「ねー麦野ー、鯖缶はー?」
今までいろんな人を見てきた。
私を性的な目でしか見てこない男も、研究目当てで近寄ってくる研究者も。どいつもこいつも信用してはいけなかった。信じられるのはいつだってフレンダや絹旗、滝壺だけだ。
だから、今日のことはたまたま優しい人と会っただけ。そういうことにしておこう。
「むーぎーのーサーバーかーんーはー?
「……あっ」
「……えーー!鯖缶買ってないの!?嫌だ嫌だ鯖缶が食ーべーたーいー!」
そういえば頼まれてたな。私が何も言わなかったら好き放題言いやがって。
まぁ、今回は私が悪いし明日買ってくるから許してほしい。
「悪い、明日買ってくるわ」
「……」
シャケ弁食べよ。
「…えっえっ…怒ってこないし麦野が普通に謝る……?明日は天変地異が起きるって訳よ……」
おまけ
✴︎ 最愛視点 ✴︎
ピンポンピンポーン。
チャイムを鳴らしても彼が出てこない。いつもなら起きている時間なのに。
「■■〜?勝手に入りますよ?」
ガチャリとドアを開けて中に入れば、雑草を片手にモッシャモッシャと咀嚼している彼がいた。
「えっ」
急いで近寄り肩を揺らしても何の反応もしない。
「えっ、ちょ、■■!?しっかりしてください!?」
「シャケ弁おいし〜い♪」
「あぁぁもう!しっかりしてくださいよぉぉおおお!」
END
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