今回めちゃめちゃ短めです。すみません。
それでは、ピュアッピュアな麦野さんを、どうぞ。
友達。
それは酷く曖昧なもので、強い有情の上に成り立つ関係もあれば、上部だけの酷く脆いものもある。
友達になるための条件などなく、お金、権力、暴力などで友達を作るなど絶対に出来ないだろう。
そういう意味では、本当の友達というのは長いようで短い人生の中ではとても貴重な存在だ。
ならば本当に強く結ばれた友人同士で同じ相手を好きになったのなら。
それはどういう結果を迎えるのだろうか。
✴︎ 麦野 ✴︎
午後7時ごろ。
絹旗と2人きりの拠点は酷く居心地が悪いものだった。
いつもなら鼻歌を歌いながら彼氏と見る映画を考えているというのに、今日は机を挟んで真剣な顔でこちらを見つめてくる。
フレンダと滝壺は絹旗に何か言われて出て行ったし、この状況をどうすればいいか私にはわからない。
正直なところ、絹旗がこういう状況を作ってまで私に話したいことなど分かっている。
恐らく、絹旗の彼氏に絹旗に何も言わずに接触してしまっただろう。女同士の諍いなんて面倒くさいと分かっていたはずなのに、失敗した。
やはり人を助けるなんて柄でもないことをするもんじゃない。
こんな状況を作り出してしまった自分自身に向けて心の中でため息をつく。
どちらも言葉を発さない空間の中で、時計の秒針が動く音だけが響く。
そんな空間を壊したのは、絹旗だった。
「私は今、超怒っています」
「……でしょうね」
まぁそりゃ怒るわよね。許可なしに彼氏に接触した挙句彼氏の部屋に入った訳だし。
ここまでしてしまって逆に怒られないと思う奴はフレンダのような能天気か、フレンダのようなお花畑か、フレンダなのだろう。
普通の女なら今頃一発や二発殴られてもおかしくない。窒素を纏った一撃はさすがに避けるが、普通の拳なら甘んじて受ける覚悟はしてきている。
「なら、何に怒っているか、わかりますよね?」
「……そりゃ、絹旗に何も言わずに彼氏に接触したことでしょ?」
「は?超違いますけど」
は?
「貴女は、いつまで自分の気持ちに見て見ぬ振りをするのか、ということですよっ!」
「????」
話の内容がガラリと変わった気がする。
というか、自分の気持ちって……私自身がよく分かっていると思うんだが。
「はぁ…私の彼氏と接触してやっと気付いたかな、とか超甘えたこと考えていた自分が情けないです。やっぱり麦野は私の彼氏と同じで、言わないと分からない人間なんですね。はぁ全くやれやれです」
大きなため息をつき、両手を肩まで上げて首を振る最愛。
なんで私は年下の友人に馬鹿にされているのだろうか。わからない。
「貴方と彼の出会いは彼から聞きましたけど、腹を空かせた貧乏そうな学生にシャケ弁を譲ってもらって、貴女はどう思ったんですか?」
「どうって……そりゃあーー」
あんなに腹が鳴っていたということは下手をすれば何日もまともなご飯を食べていないだろうしそんな状態で他人に唯一残ったシャケ弁当を他人に譲るなんて人が良すぎるし自分でもモデル体型だと思っているがそんな体を他の男のように舐め回すような気持ち悪い目で見てこなかったし顔も別にイケメンではなかったけど体は十分に鍛えられているように見えたしそう考えると顔の良し悪しなんて正直どうでもいいというかそもそもシャケ弁を譲ってくれた時点で高評価だし要はーーーーん?………要は?
「おや、超気付きましたか?自分が彼に『惚れていた』ということに」
何故だろうか。本来ならその言葉を聞いて慌てなければならないのに、不思議と納得できてしまった。
いつも胸のあたりに蟠っていたモヤモヤが消えていくような気がした。
「いや、でもそれは…」
「…そうですね、麦野はあろうことか、私の彼氏に恋をしました」
「いやいやいや!それ結構問題でしょ!」
「そうですよ、問題ですよ。普通はそんなこと超認められないです」
「貴女が私の友人でもなんでもなければ、の話ですが」
「は?」
意味がわからない。
自分が一目惚れをしていたのも不思議と納得できたが、何故その対象が自分の彼氏であることを認められる?
「私だって悩みました。ただでさえ恋をすることが初めてだというのに、その相手が友人と一緒はどうなのかと」
「ですが」と絹旗は続けて、
「彼を見ているとそれもいいんじゃないか、と思ったんですよ。真面目で変態で無駄に頑固な彼ですが、私1人じゃ手綱を操りきれないです。実際、彼の悩みを見抜けたのも解決したのも麦野です」
「いや、それはそうだけど…」
たしかに私はあの男の悩みを聞いて、結果的には解決できたのだろう。
でも実際は彼に少し言っただけだ。そのあとは寝かせたまま放置してしたし。
「彼にとってはそれだけで充分なんですよ。貴女に超感謝してましたし」
「そ、そう?」
「ま、ぶっちゃければ友人と一緒に同じ人に恋をする、ということが超魅力的なんですよね。青春してるみたいで」
いつから絹旗はこんなに恋愛に対してオープンになってしまったのだろう。
まぁ、一目惚れもどきをしてしまった私はあまり強く言えないが。
「あ、忘れてましたけど、これ彼には許可取ってないですからね。もし麦野が付き合いたいと思うのなら、しっかりとポイントを稼いで告白してください。浮気とかほざいたら私が説得するので安心してください」
告白……か。数日前とは言わず、数時間前の私なら思いつかなかっただろうな。
「というか、本当にいいの?もし本当に私とあの男が付き合うことになっても」
「いいんですよ。それが彼の不幸になるなら嫌ですけど、■■ならきっと大丈夫です。彼女の私が言うんです。自信持ってください」
そう、か。
私が恋をした、か。
絹旗はともかく、フレンダや滝壺に彼氏ができたらいいやと思っていたんだがなぁ。
まさか、自分が……恋か。
「人生わからないものね」
「えぇ、私も■■に良い意味で人生を狂わされてますよ」
小さいようで、大きな目標ができた。
人生をつまらないと思っていたわけではない。ないが、ほんの少しだけ、人生が色づいた気がするのは気のせいだろうか。
とある拠点の扉を挟んだ先。
「……ふーん、いい話を聞いちゃったって訳よ」
文字数少ないしもっと書かないといけない部分も多いと思うんですが、これが作者の限界ですね。
女性の恋愛感情、もっと言えば同じ人を好きになった親友とも言える友達の心なんて難しすぎます。
麦野の口調も分からないしで大変でした。
次回は時期を逃してしまったエイプリルフールネタを書こうかな。
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