結局、アイテムの口調は超難しいって訳ですよ。にゃあ。
かっこいい麦野も、乙女な麦野も出していきたい。
レベル5。
それは学園都市に僅か7人しかいない超能力者の事。
1位から7位まで順位付けされているが、その順位は能力の強さ、学園都市への活用性で決められている。
一人で軍隊と戦えるほどの力をもつ彼ら彼女らは、一般の人間からすれば脅威でしかないだろう。
しかし、その能力も使い方を少しだけ変えれば、多くの人を助けることができる力になることを、決して忘れてはいけない。
✴︎ オリ主 ✴︎
とある日曜日の午前9時。カビパランドの入場ゲートの前。
休日だからか親子連れやカップルでごった返した空間で、僕は麦野さんを待っていた。
集合時間は10時で、約束の1時間前ではあるが、早めに着いていても損はない。早すぎた気もしなくもないが、待たせてしまうよりは遥かに良いだろう。
それに、今日は無駄に早く起きてしまったのだ。
今回のデートの目的が麦野さんと付き合うかどうかを考えるということもあり、緊張してまともに寝れなかった。遠足前の小学生のようだと1人恥ずかしくなってしまった。
携帯でデートでの男の立ち回りを調べていた時、携帯がリズミカルな着信音を鳴らした。画面に表示されていたのは麦野さんという名前。
最愛や麦野さんたちとお花見をした時に、全員と連絡先を交換していたのだ。
連絡先に女性が増えたことにニヤニヤして、フレンダに煽られたのは良い思い出だ。
「は、はい、■■ですけど。麦野さんですか?」
『え、えぇ。麦野だけど。い、今どこにいる?とりあえず着いたんだけど」
「えっと、入場ゲートの噴水のところにいます」
『わ、わかった。じ、じゃあすぐ行く』
「り、了解です」
『えっと、じゃあ、また』
「は、はい」
めちゃくちゃ緊張したけど、恐らく麦野さんも緊張していたのだろうか。
いつもはもっとハッキリと言うのに、今回はかなり声が震えていたような気がする。やっぱり自分が好きな事を相手が知っているというのは緊張するのだろう。
そんな事を悶々と考えていると、ふと、自分の肩をポンポンと叩かれた。
誰だろうかと後ろを振り向けば、麦野さんがいた。
「お、お待たせ■■」
「い、いえ、そんなに待ってないですよ」
「そ、そう?なら良かった。じ、じゃあ行こうか」
「は、はい、そうですね。い、行きましょうか」
なんだこのぎこちない会話は。
まるで付き合って次の日くらいのカップルみたいだ。
乾いた笑いを両方が浮かべていた時、麦野さんの携帯の着信音が鳴った。
「?こんな時に誰から……っ!?ち、ちょっと電話してくる」
いそいそと僕から少し離れ、声が漏れないように口元を手で隠して話し始める麦野さん。
だがしかし、難聴系鈍感主人公に成らぬために日々耳を特訓している僕には無駄である。
「……はぁ!?お前らどこに……っ!お前ら、後で覚えとけよ」
周囲をキョロキョロと見渡して一箇所を見つめると獲物を見つけたように睨みつける麦野さん。
その視線の先を見てみれば、茂みの辺りに綺麗な金髪と最愛のお気に入りのオレンジパーカーの頭の部分が見えてしまった。
僅かにカタカタと震えているのは何故だろうか。ぼくわかんない。
「……はぁ!?……はぁ……わかったよ、やればいいんだろ……やれば……」
通話が終わったのか疲れた様子でこちらに歩いてくる麦野さん。
心中お察しします。デートに友達とデート相手の彼女が尾行してるってなんかもうカオスとしか言えない。
心なしか顔赤いしやっぱり恥ずかしいんだろうなぁ。
「な、なぁ。これって一応で、デートな訳だろ?だ、だったらさ……その、手とか繋ぎたいな、なんて……」
………顔を赤くさせ、落ち着かないのか長めの髪を指でクルクルと巻いている。
普段少し怖い感じの人がデレるとこんなに可愛くなるのかと少し学習した。
可愛い。
まぁ、初めから手は握るつもりだった。
この人だかりだし、すぐに逸れてしまうだろうから。
そうして、優しく握った麦野さんの手は柔らかくて、ほんのりと温かかった。
✴︎
その後は様々なジェットコースターに乗った。
高さ600メートルのフリーフォールなんて落ちている時に首が空中に置いていかれそうになったし、時速200キロで回転するコーヒーカップの乗り物は乗り終わった後に普通にリバースした。
そんな殺人的なアトラクションでも麦野さんは楽しめているのかずっと楽しそうに笑っている。
少し後ろのベンチには、真っ白に燃え尽きている麦野さんの友人2人がいるが気にしなくていいのだろうか。
「な、なぁ、次はアレ行こう。あのお化け屋敷」
麦野さんが指を指した先を見れば『こわいよ!本当にこわいよ!』と書かれた看板が立て掛けられた廃屋のような館。
建物自体が本当に施設の一部として稼働しているのか不思議になる程に、至るところが崩れかけている。
それでも何人か人が入って行っているのを見るにちゃんとしたお化け屋敷なのだろう。
ままままままぁおおおお化け屋敷とか?怖くないしぃ?超余裕だし?幽霊なんて実在しないからぁ!
「生まれてたの子鹿みたいな足してるけど、本当に大丈夫か?嫌なら辞めとくけど」
カクカクとバグが起きたように震える足を叩きつける。
女性に恥ずかしい姿を見せるなんて男の名が廃る。大丈夫、立て掛けてあった看板は小学生が書いたような文字だったし、小さい子が楽しめるレベルのお化け屋敷なんだろう。
「……大丈夫です、行きましょうか」
「後で叫んだりしないでよ?」
口には出さないが心の中で叫ぼう。そう心に誓った。
ようやく覚悟を決めて大きく開かれた扉の中に足を踏み入れた瞬間、バタンッ!と勢いよく扉が閉まる。
「「えっ」」
ガチャガチャと扉を動かすもビクともしない。
ここがテーマパークの施設じゃなかったら怖くて叫んでいる。今も充分怖いけれど、麦野さんがいる手前叫ぶ訳にもいかない。
扉を開けるのは諦め、振り返ればただひたすらに長い廊下が続き、等間隔でランプが置かれ仄かに明かりを灯している。
「まぁ、とりあえず先に進むしかないよな」
…………すぐに気持ちを切り替えれる麦野さんかっこいい。
そんなこんなで少しずつ歩き始めたが、普通のお化け屋敷なら何かしら飛び出してきたりするのに、何も起きない。
ギシギシと、痛んだ床を踏みつける音がさらに廃屋らしさを出していく。
「麦野さんってこういうの怖くないんですか?」
「1人なら来たいと思わないけど、■■がいるしあんまり怖くは無いな」
…………おかしい。ヒロインが僕になっている気がする。
麦野さんの男らしさにときめいていると、子供がいた。廊下の端で体育座りをして膝に顔を埋めるように泣いている。
静かな空間だからか、泣き声が嫌に響く。
これがこのお化け屋敷のキャストなのか、それともただの迷子なのか。
そんな子供に麦野さんは近寄り、
「なぁ、迷子か?」
と優しく声をかけた。僕も声を掛けてあげたいけど、正直怖くて足がガクガクしていて出来そうにない。
麦野さんの言葉に反応したのか、少女はゆっくりと顔を上げ………
眼球の無い暗闇のような瞳をこちらに向けた。
『 わ た し ま い ご な の 』
頬を裂くように横に広がる口が、三日月のように開き、嗤った。
その顔を見た瞬間、ふっと意識が遠くなるが気合で耐える。
「逃げるぞっ!」
僕よりも麦野さんの方が足が早いのか、繋いだ手を引っ張られるように走り出す。
怖いが確認のため後ろを振り返れば、子供は追いかけてこないのかずっとこちらを見ていた。
その事に安堵した瞬間、耳のすぐ傍からボソリと、声が聞こえた。
『 ま た き て ね 』
………僕はその声を幻聴だと思い込み、もう2度とお化け屋敷に入らないことを固く誓った。
✴︎
その後、僕と麦野さんは先程のお化け屋敷について何も触れず、他のアトラクションを楽しんだ。
高さ200メートル、時速200キロのジェットコースターに乗って叫んで吐いたり、カビパラがモチーフの車に乗って麦野さんと競争したりした。
普通の店よりも少し割高な昼食を食べ、またいろんな所をグルグルと歩き回る。
こういう場所に来るのは初めてなのに、意外と楽しめてしまった。
きっと麦野さんといるからこそ楽しいんだろう。
午後4時頃。ずっと歩いていて疲れてしまい、適当な出店からホットドッグとチュロスを買い、かなり広いステージ広場でゆったりとしていた。
朝は緊張して出来なかった考えも、余裕ができた今なら考える事ができた。
そうして生まれた疑問は、麦野さんの能力についてのことだった。
「そういえば、麦野さんの能力って何ですか?」
「……能力かぁ。言ってもいいけど、進んで言いたいようなものではないな」
言いたくないような能力かぁ。知られると研究者に狙われるとかだろうか。
誰にも言い触らさない自信はあるけど、言いたく無いのであれば別に無理に聞こうとは思わない。少し気になっただけだし、無理に聞いて嫌われる方が嫌だ。
ふとステージを見ればヒーローショーが始まっており、多くの子供達で騒がしくなっていた。
小さい頃は僕もああいうのにハマってたなぁ、と感慨深くなっていた時だった。
ガコンッ!と大きな音を立てて天井から落ちていく巨大な照明。
ステージ上には誘拐された設定の多くの子供達がおり、あのまま落ちてしまえば結果は火を見るより明らかだ。
近くの席なら走れば間に合うかもしれないが、階段状の席の一番高い席に座っていた自分はどう考えても間に合わない。
無能力者の自分に、人を救うだけの力は無い。
その時だった。
ギュガッ!!
とても鈍い、アニメで聞くような、レーザーを放つような音が聞こえた。
ステージに向けて落下していた照明が緑色の極太のレーザーに呑み込まれ、消えていった。
「……私は、学園都市に7人しかいないレベル5の第4位、
そう言った彼女の顔は、人を救ったのにも関わらずどこか悲しそうで。
「簡単に人を殺せる力を持った、そういう能力者だ」
✴︎ 麦野 ✴︎
咄嗟に落下していた照明を能力で消してしまった。
彼の前では使わないように気を付けていたつもりだったが、今更そんなことを考えても遅い。
■■は見てしまった。私の能力の恐ろしさを。あれが容易に人を消す事が可能なことも察せるだろう。
私の恋愛もここで終わりかと思うと、悲しくなる。
初恋は叶わないなんて言うけれど、こういう終わり方はしたくなかった。
「僕はさ」
……私の能力を見た後の彼は一体何を言うのだろうか。
嫌味か、嫌悪か、それとも恐怖か。
「麦野さんがあの能力が怖く無いといえば嘘になるから言わない」
あぁ、やっぱり彼も他の人のように私を怖がってーーーー
「けれど、僕が好きになったのは麦野さん自身だ」
「へ?」
「楽しそうに笑う麦野さんが好きだ。フレンダを苛める麦野さんが好きだ。照れ臭そうに手を繋いでくる麦野さんが好きだ。あのお化け屋敷で怖くても手を離さなかった麦野さんが好きだ。かっこいい麦野さんが好きだ」
あっ、えっ、ち、ちょっと待ってほしい。
状況が理解できない。なんで私は彼に好きだと連呼されているんだろうか。
「麦野さんの能力が怖いくらいで麦野さんを嫌いになる訳ない。その能力もさっきみたいに誰かを救えることが出来るから」
「いや、さっきのは本当に咄嗟の行動だし、人を助けるよりも殺す方が楽な力だしーーー」
「それでも、助けられた。麦野さんが簡単に他人をどうこうする人じゃないってのはもう分かってる。もし、誰かを傷つける事があるとしたら、最愛やフレンダに滝壺さん。麦野さんの大切な人が傷つけられた時くらいだと思う。まぁ、無能力者の僕が能力について他人にどうこう言える資格はないけどね」
………不思議だ。今まで誇りも何も持てなかった自分の能力が、彼に言われると良い能力のように思えてしまう。
あぁ、本当に彼を好きになって良かった。
「■■は、本当に変わってるな」
そうやって言えば、恥ずかしそうに彼は笑って、
「自分でも変態だって言う自覚はあるからね。だから、麦野さん」
彼は大きく深呼吸をして、
「僕と、付き合ってください」
先程好き好き言われたからか、突然の告白でも動揺することはなかった。
でも……簡単に返事を出すのは面白くない。
だから、少しだけ、ほんの少しだけ欲を出してみよう。
「私の名前を呼んでくれたら、いいよ」
彼は顔を赤くしながらもう一度、大きな深呼吸をして、
「僕と付き合ってください、沈利」
「……あぁ。こちらこそ、よろしく」
そう答えた瞬間、空気が割れんばかりの歓声が起きた。
驚き、周囲を見て思い出す。
ここがステージ広場で、落下していた照明を消したと思われる人物が告白されているのだ。
私でも外野だったら絶対見るだろうな、と軽く現実逃避。
ステージを見ればヒーロー服を着た人がこちらに向けてサムズアップしていた。撃ち抜きたい。
「し、沈利、に、逃げよっか」
恥ずかしいのか、震えた声を出す■■。
勿論だと、こちらから彼の手を握れば、男らしい硬さで、緊張しているのかとても熱かった。
私は今、世界で一番幸せだ。
〜おまけ〜
最「■■と麦野、あのお化け屋敷から超怖いものを見た感じで出てきたんですけど、そんなに超怖いんですかね」
フ「結局、行ってみるしかないって訳よ」
店「あっすいません、ちょっと待ってください」
最「?超なんですか?」
店「申し訳ないんですけど、今あそこのお化け屋敷使われてないんですよ。5年前くらいから子供の幽霊が見えるとかでクレームが殺到しちゃって」
フ・最「……………」
店「?どうかしました?」
最「いえ、さっき知り合いが入っていったんで超大丈夫かな、と」
店「人が入った、ですか?おかしいなぁ。あの扉開かないようになってるはずなんだけど……」
フ「」
最「おかしいですね。■■達が入る前に他に何人も入っていったはず……いえ、忘れましょう」
長かった。本当に長かった。
ようやっと麦野さんがデレてくれた。後はあんなことやこんなことをさせて麦野編は終わりですかね。
感想、評価等頂ければ励みになりますのでよろしくお願いします。
告白会に酷いものを混ぜてしまった事に謝罪。ごめんなさい。