そもそも主人公が串刺しになるシーンを見て安心できるということが変だと言うことに気付きました。
天界から飛び降りて数時間後
ネロは飛び降りたことを後悔していた。
ネロがいるこの世界はどうやら自分が居た世界とは別の、いわゆる異世界という所だということが分かったからだ。
最初に違和感に気付いたのは飛び降りている最中だった。異様に空気中の魔力の濃度が高いのだ。
これ程の魔力が満ちている状況はネロの居た世界では、まずあり得なかった。が、経験したことが無いわけではなかった。
ネロ「どっかで魔界の門が出来てんのか?」
そう、人間界と魔界が繋がっているときはこんな感じに空気が魔力で満ちるのだ。
そして当然、魔界か繋がっているということは悪魔も出てくる。ならばネロがやることは一つだった。
ネロ「手っ取り早く悪魔をぶっ潰して魔界の門を壊さねぇとな。」
そう言ってネロは辺りを見回す。幸いここは遥か上空、何かを探すのには打って付けだ。
自分がかなりのスピードで落下していることなど気にもせず探し出すと、すぐさま原因だと思われるものを発見するのだが、それはネロの予想を遥かに上回っていた。
それは、いやそこだけはまるで夜のように暗かった。
黒と紫とピンクを混ぜ合わせたかのような色をした、半球状のドームのような物体が山一つ向こうの大地に広がっていたのだ。
物体の高さは約400~500㍍といったところだが大地に広がっている円の半径はそれよりも遥かに大きい。
そして、その物体の中心には巨大な城がそびえ立っており、恐らく、あの中に原因があるのだろうと予測できる。
最早、魔界と呼んでも差し支えないほど、魔界の魔力に浸食されているその場所を見たネロはさらに違和感を覚えた。
あれほど派手になっているのをダンテは気付かないのだろうか。
まず、あれほどの大きさの魔界になるのに、どれ程の大きさの門が必要になるのだろうか、何かしらの情報をダンテの同業者であるトリッシュやレディが掴むだろう。
仮に、彼女達に気付かれずに出来たとしても、門が開いてあそこまでの大きさになるのにどれ程の時間がかかるのか、少なくとも一日や2日で出来るものではない。
それだけの時間があれば、流石のダンテも気付くというものだ、特に最近は、雑魚しか出てこないと愚痴っていたダンテなら尚更、嬉々として飛び付くところだ。
だが、そんなことを今考えた所で意味がない、今は魔界となった場所に赴き、そこにいる悪魔を狩り魔界の門を破壊することに集中しなければならない。
ネロはその事を考えながら、次第に迫ってくる地面へと視線を向けるのであった。
そして現在、
ネロは無事、着地したのち、魔界へと向かう途中で出会った農業を営む男と共に移動していた。
ネロは今、男が育てた野菜を詰め込んだ大きな箱の上に寝転がっている。
かなり大きな箱で、ネロが持っている剣が入ったケースと旅に出る為に用意した着替え等が入った荷物を枕代りに置いても十二分に余裕があるほどだ。
勿論、これ等を男が直接運んでいる訳ではない、だが、馬や牛の類いではない、それらよりもより大きく、より禍禍しい姿をした豚が運んでいるのだ。
男と出会った時、正確にはこの豚の姿が目に入った時、ネロはためらいなく銃を引き抜いた。
それほど、この獣の姿が悪魔同然の姿をしていることも理由ではあったが、一番の理由は右腕が反応したからだ。
だが、ネロは引き金を引くことはなかった、
というのも、こんな禍禍しい獣に股がっている男の表情には恐怖でも驚愕でもなく、まるで散歩にでも出掛けているようなそんな呑気な表情だったからだ。
そして男は、銃を下ろし唖然とした表情のネロに近づくと、これまた呑気な口調で
「よう、にいちゃん、一緒に乗っていくかい?」
と、誘ってきたのだった。
ネロ「それにしても、今でも信じらんねえな、悪魔が人を襲わねぇなんてな。」
男「だからさっきから何度も言ってんだろ?魔物娘が人を殺すところなんざ一回も見たことがネェってな。」
ネロが男と一緒に行動し始めて、最初に質問したのはやはり悪魔についてだった。だが、そこでネロと男の認識が大きくずれていることが分かった。
ネロが、悪魔は醜悪な姿をしていると言えば、
男は、全員とびきりの美人だと言い、
ネロが、悪魔は人を殺すと言えば、
男は、そんなことはない全員人助けを積極的にやろうとするいい奴らだと言う。
そんなやり取りをして始めて、ネロはここが自分のいた世界とは別の世界なのではと、疑い始めたのだ。
そして、男の方も、常識はずれな事を聞くネロに対し、最初は怪しんでいたのだが、なにか思い付いたのか、ネロに対し教団から来た人なのか、と質問してきたのだ。
『教団』、ネロはその言葉に反応した、確かにネロは魔剣教団という組織に所属する騎士だった。
だが、その教団は既に壊滅しており、つい最近新しい魔剣教団が出来たばかりなのだ。
その上、ネロの居たフォルトゥナは排他的で外との接触を余り好まないため、魔剣教団の存在を知る外部の人間は余程の物好きだけであり、この男はその類いではない事は明白だった。
魔剣教団とは別だろうと考えたネロだが、ここで否定して事を荒立てれば彼から情報を聞き取りずらくなると思い、ネロは適当に「そんなところだ」と返したのだった。
男「そう言えば、あっちではどんな仕事をしてたんだ?」
ネロ「あ?」
男「いやなに、にいちゃんが見せたカネは使えなさそうだし、あっちに着いたら仕事をするんだろ?」
ネロ「あー、そうだな。」
実はネロ、男に送ってもらうことになった時、お礼と称して自身が持っているお札や硬貨を男に渡したのだ。
感謝の気持ちも込められていたが、もう一つ、自分の持つドル札やセント硬貨が使えるかどうかの確認も含まれていた。
その結果、現在ネロは無一文だということが分かったのだった。
ネロ「……便利屋だ。」
男「んぁ?」
ネロ「俺は向こうじゃ便利屋をやってたのさ。」
デビルハンターをやっていたなどとは言えなかった。
ネロが居た世界の悪魔とこの世界の悪魔はまるっきり別のものだろうと予測がつく。
男「あー、その便利屋ってのはなにをする職業なんだ?」
ネロ「色々だ、荷物運びだの迷子のペットを探してほしいだのっていう感じの依頼をやるのさ。気に食わねぇもんは願い下げだがな。」
デビルハンターをやらない代わりに、ネロは副業で行っていた仕事をしようと考えていた。
この便利屋の仕事は、ネロがダンテの所に居るときに、ダンテからやらされていたものだ。
当時はこんなことが何の役になるのかと文句を言っていたが、人生なにが幸いするのか分かったものではない。
男はネロの答えに対し、何か納得したように頷くと、ぼそりと一言「魔界戦士の嬢ちゃん達みたいだな」と呟いたのだった。
ネロ「何だ?そいつらは?」
男「俺たちが向かってる国に、あんたと似たような仕事をしている魔物娘達が居るのさ、ほら、あの国さ。」
そう言って男が指をさす方向には、ネロが見た魔界と城、さらには空からでは分からなかった、城下に広がる様々な建物が見てとれた。
男「あれが俺たちの目的地、レスカティエ国さ。」
男「にいちゃん、悪りぃが一旦降りてもらえねぇか、レスカティエに入る前に国境検問所で色々しなきゃならねぇからよ。」
あれからまた少しして、ネロ達はレスカティエの国境の目の前に来ていた。
ネロ「ああ、分かった。」
そう言って魔界豚から降りたネロは、再び自分の荷物を背負う。
そして、ネロが前を向けば鎧を着込んだ重装騎士と門が目の前にあり、男と魔界豚は門の奥へと進んでいた。
ネロもその後に続いてと中に入ると、門の内側はちょっとした集落のようになっており、先程の重装騎士達が寝泊まりしているのであろう、いくつかの小屋が建てられていた。
国境の検問所にしてはかなりの大きさと設備ではあるが、ネロが一番驚いたのは、中にいる騎士達だった。
先程、門を守る騎士の側を通りがかった際にもネロは感じていたが、此処に居る騎士達は、妙に露出が多いのだ。
体の関節部分や重量を軽くするために急所以外の部分を薄くあるいは外す事であるのならばまだ分かる。
だが彼女達の鎧は、必要な部分を覆っていなかったり、逆に見せつけるように鎧の隙間を見せていたり、果ては、鎧の体を成していないほどの面積しか覆っていない鎧を着込んだ者もいた。
だが、その理由もネロにはすぐに分かった。
彼女達は皆サキュバスなのだ。
この集落から、もとい彼女達からサキュバス特有の、化粧や香水では出来ない甘い匂いがすること。
彼女達の一人に下着よりも小さい鎧を着た女性にある、角や尻尾、腰にある羽を見て、ネロはその考えに至った。
サキュバスは淫魔だ、例外はあるものの基本的に戦う事よりも人を誘惑する方が得意であり、自身の美しさは何よりも最優先に気にする事である。とダンテのもとに居る同じ淫魔の悪魔からネロはそう聞いていた。
ならば、彼女達の鎧に不自然に穴が空いている理由も納得できる。
そんなことを考えていたネロに、一旦別れていた農家の男が話しかけてきた。
男「にいちゃん、一つ聞きたいことがあるんだけどよ。オレと出会う前に変なことが無かったか?」
ネロ「あ?変なこと?」
男「この騎士さんが、俺たちが通ってきた道の近くに変なもんがあるって言ってきてよ。」
ネロ「何だよ、変なもんって。」
騎士「大きな握り拳で地面を殴ったような跡だ。」
そう言って男の後ろから女性の騎士が現れる、彼女もサキュバスのようでかなり際どい鎧を着ている。
騎士「貴方達が通ったルートのすぐ近くにあった。
丁度君とこの男性が出会う少し前の所にあってな、今、私の仲間がそれについて調べている所なんだが、何か知っていることはないか?」
彼女にそう聴かれたネロは、少し考えるそぶりを見せるも、
ネロ「いや、変わったことはなかったな、いつも通りだ。」
そう答えるのだった。
騎士「そうか、変わったことはなかったか…」
ネロ「ああ、そうだ。…ところでおっさん、ここでの用事は済んだのか。」
男「おう!終わってるぜ。」
ネロ「そうか、ならとっとと行こうぜ、アンタも、もう俺達に用は無いよな。」
騎士「そうだな、もう行ってもらって構わない、しっかりレスカティエを楽しんでくれ。」
再び箱の上に寝転がり、段々と遠くなっていく検問所の門を見ながら、ネロは一息つく。
あの様子だと、まだバレていないようだが、あまり長居はしたくなかった。
男「それにしても、俺達が通ってきた道の近くにそんなもんがあったなんてな。誰がやったんだろうな。」
ネロ「案外、近くに居るかもなおっさん。」
男「オイオイ、冗談はよしてくれよにいちゃん、もし居るんだったらすぐに分かるぜ。」
ネロ「……どうしてそう言えるんだ?」
男「あの騎士さんに聞いた話だと、地面の跡からして手の大きさはキングサイズのベットほどの大きさだとよ。手だけでその大きさなら、かなりデカイ図体の奴のはずだぜ。」
ネロ「だが、足跡が無いんだろ?デカイ奴の仕業だとは限らねぇぜ?」
男「だから変なのさ、…ってにいちゃん、足跡が無いなんて誰から聞いたんだ?」
ネロ「…あー、なんだ、さっき小耳に挟んだんだ、他の騎士が話してるのをな。」
男「ああ、成る程。」
ネロは内心舌打ちをする。うっかり自分から口を滑らせたしまったことに。
同然、小耳に挟んだ事は嘘である。なら、何故ネロがこの事を知っているのか、答えは簡単だ。
ネロ(俺が作った跡だしな。)
ネロはその考えを口には出さずに、胸の中へと仕舞い込むのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『魔剣教団』
かつてネロが所属していた教団。
魔剣士スパーダを神として崇め、悪魔を退治する宗教。
しかし、その裏では、上層部のもの達による悪魔の力を人間の物にする研究がされており、研究に使用するためにわざと悪魔がフォルトゥナに現れやすいようにしていた。
その上、教団の教皇は、悪魔を人間界にけしかけ、地上を地獄に変えた後、悪魔の力を身につけた自分達が神として人々を救い新たな楽園を築き上げようとしていた。
そんな彼らが崇めるスパーダの、息子と孫によって野望を砕かれ壊滅するとか凄い皮肉。
『魔剣士スパーダ』
魔界に並び立つものはいないと称されるほどの剣術を持つ伝説の魔剣士。
ネロが産まれる二千年ほど昔に、人間界を支配しようとした魔界の軍勢を一人で返り討ちにした上、魔界を支配していた魔帝を封印し、人間界と魔界の間に結界を作った凄い悪魔。
元々、魔帝から一番信用されている魔帝の右腕であり、力がすべての魔界にいる数多くの悪魔から尊敬されていた悪魔であったため、魔界を裏切ったことで凄まじく恨まれている。
ネロは知らないが、ネロのお爺ちゃんである。
『魔界豚』
図鑑世界の魔界に住む豚、豚というよりも猪に近く、かなりの大きさである。
ネロが銃を瞬時に引き抜いたように、外見は禍禍しいがとても心優しく子供達の遊び相手になっていることもしばしばある。
見た目とは裏腹に、肉はとても柔らかく蕩けるような食感で美味しいものの、図鑑世界の動物や植物は基本的に性的な効果があり、魔界豚の肉を食べると三日三晩ヤり続けられるほどの体力と精力がつくが、これでも他の魔界由来のものに比べれば軽い方である。
スパーダ「同じ魔界出身なのに豚の方が子供の扱いに馴れている件について。」