下心なんてこれっぽっちもないよ、ぐへへっ!
※百合じゃないです。オリ主(男)です。となりの吸血鬼さんの百合が好きという方はご注意ください。
仕事が終わって帰る頃には、時刻はすっかり夜間に突入していた。
上空は闇色に染まっていて、黄色い月が地上に向かって淡い光を届けている。今日の月は、綺麗な円を描いたような満月だった。
僕は月明かりに照らされた夜道を歩いていく。たまに車が横目に通り過ぎるくらいで、この時間帯だともうあまり人は出歩いていない。いくつかの住宅は、既に明かりを消して眠りについていた。
スマホの時間を確かめると、二十二時に入ったばかりだった。今日はいつもより仕事の時間が長かったので、体には疲れが溜まっていた。肩は重いし、家に帰ったら直ぐにベッドで寝てしまいそうだ。
だけど、今日の僕は家に帰ってすぐに寝るつもりは無い。というか、家に帰るつもりは無い。
なぜなら明日から仕事がしばらく休みである。そして今から僕は、あの銀髪の吸血鬼が住まう屋敷に行くからだった。
彼女の家は、館といっても過言ではないくらい大きい。
二階建ての住宅ですら慎ましやかに思えるほど、その館は住宅街の中では一際異彩を放っていた。
どっしりと構えたような風格があって、それでいて外観は気品に溢れている。
最初は、まるで自分がお邪魔するには相応しくないんじゃないかと僕は思い、玄関前まで入るのすら抵抗があった。だけど、今はもう館の主とは仲もよく、彼女も気にせずに遊びに来ていいと言ってくれているので、普通に館にお邪魔している。
僕は大きな館の前に立ち、インタホーンを押す。立派なお屋敷となると、インタホーンの音色まで上品さを感じられた。
すぐにドアの奥から足音が近づいてきて、玄関が開く。
「いらっしゃい。最近来なかったから、ちょっと心配してたぞ」
出迎えてくれたのは、背丈が低い、小柄な少女────ソフィー・トワイライト。
健康的な程に白い肌と、作りの良い小顔をしており、いわゆる美少女というやつだが、彼女こそが正真正銘の吸血鬼だ。
開いた玄関から冷たい空気を孕んだ夜風が入り込み、ソフィーの銀髪が優しく揺らめく。白い光彩を放つ彼女の美しい銀髪は、まるで銀世界のように映えていた。
腰まで伸びた白銀色の髪は、彼女の可愛らしい顔立ちにとても似合っている。
「ちょっと忙しい日が続いてさ。まさか一人で寂しかったとか?」
「別に寂しくはない。冗談を言いに来たのなら閉めるぞ」
「ごめんごめん、拗ねるなって。その代わりに……ほら」
「んっ、これは……なっ!? これは地域限定SS付きの最新巻じゃないか! 最新巻は手に入っても、地域限定SSペーパーはネットじゃ購入できないからな。貰っていいのか! とてもありがたい!」
「喜んでくれたなら良かったよ」
ソフィーは本袋から取り出した中身を新しいおもちゃを貰った子供のように目を輝かせて、嬉しそうに微笑む。
僕は早速彼女に招かれて、館にお邪魔した。リビングに向かう間も、ソフィーは宝物を見つけたかのようなご満悦な瞳で限定版のそれを見つめていた。
「ありがとう。本当にありがとう。まさか私にも地域限定を手に入る日が来るとは……」
ソフィーは吸血鬼ということもあって、日光に弱い。陽射しがある時間帯は外に出れなくもないけど、出たとしてもすぐに身体が弱るため、基本的に夜の散歩の時にしか外に出ないのだ。
僕が買ったのは今話題沸騰中の人気ライトノベルだ。そのためソフィーの特質上、遠出して地域限定SSを手に入れようとしたとしても、とっくに完売している可能性がある。僕は偶然それを購入することができたという訳だ。
「でも、これどうやって購入したんだ? あの地域だと、とても遠い距離という訳では無いが、何かの用事がない限り向かうことは無いだろうに」
「クジで男女ペア旅行のチケットが当たって、僕が同行したんだよ。一泊二日のね」
「……旅行だと?」
玄関ホールとリビングの間。リビングに繋がるドアを開いた途端、ソフィーは訝しむように僕を見つめ、そして力の篭もった声音で呟いた。表情はどこか、不満げに見える。
……あ、もしかして黙って旅行に行ったことに怒ってる? ペアチケットで人数が限られてたから、ソフィーに言わなかっただけとはいえ、確かに彼女への配慮がたりなかったかもしれない。
「ごめん。ソフィーも旅行に連れていきたかったんだけど、ペアチケットだし人数が二人までだったからさ」
本当はソフィーだって、旅行に行きたかったよな。
「いや、なに謝ってるんだ。私は君に謝罪を求めているわけじゃない。そうじゃなくて……」
背筋を伸ばし、ぐいっと顔を前に出すソフィー。僕の視界に張り付きそうな勢いで美少女の顔が近づく。美しい銀色の髪からほのかな甘い匂いが漂ってきて、ドキリとしてしまう。
僕をまじまじと見つめるのは真紅の瞳。美少女ともなれば、瞳すらも魅力的な輝きがあった。怒っている風なのに、それでもソフィーのことを可愛いと思えてしまった。
「その旅行は男女ペアだと言ったな。私が知りたいのはお前とペアを組んだ女性だ。一緒に旅行に行った女は誰だ? 親友か? それとも……お前のその、恋人なのか?」
恋人? ああ、こいびとね。恋人…………てっ!?
「違うよ! 妹だって! 妹が商店街の福引で旅行チケットを当てて、両親も忙しかったから僕が一緒に行ったんだ!」
「そ、そうなのか? 私はてっきり恋人なのかと勘違いしたぞ。紛らわしい!」
そう言って、ソフィーは止めた足をリビングの中へと進めていく。ほっ……彼女の勘違いだったらしい。
あれ。でも、なんでソフィーはそんな勘違いを……。
「君が恋人という存在がいながら、私……つまり他所の女と遊んでいるのだとしたら、注意せねばと思ったんだ。まあ、私の杞憂で良かったよ」
「あ、あー……なんだ。なるほどね」
「君も突っ立てないで入るといい。コーヒーか紅茶、どっちがいい?」
「じゃあ、コーヒーで」
どうやら今度は、僕が勘違いをしてたらしい。
だよなー。僕がソフィーのような魅力的な女の子とこうして遊んでいるだけでも光栄なことなのに、ソフィーが僕をそんなふうに思ってるはずないよな。
はぁ………っ。
■
僕はソフィーが用意したコーヒーを一口飲む。ちなみに、彼女は吸血鬼だから飲んでるのは血液だ。冷蔵庫に血液型とさらに風味を分類した血液を冷蔵庫に保存していて、気分に合わせて、風味を変えたり温めたり冷やしたりして、彼女は吸血鬼らしい食事を楽しむのだ。僕は彼女と過ごす時間の中でそれを見てきた。
「面白かった」
地域限定版のペーパーを読み終わると、彼女は満足そうにして言った。ペーパーなだけあって、購入した文庫本と比べると内容は薄く、本好きのソフィーにとって読む時間は十分もかからなかった。それでも彼女は、まるで好きなものは好きなだけ食べた後のようにご満悦だった。
そんな彼女を見て僕も心の中で満足しながら、自分用に購入したライトノベルの新刊を手に取る。
さあ読もうとしたところで、向かいのソファーに座っていたソフィーがおもむろに立ち上がり、僕の隣へと腰を下ろしてきた。
ん? ん?
「せっかく来てくれたんだ。二人で別々の本を読んで過ごすのもなんだし、二人で遊べることをしないか? 君もそのつもりできたんだろ?」
「二人で遊べるもの……トランプとかは?」
「トランプは大体やったからな。それに二人でやっても、あまり盛り上がらないだろう」
確かに。
「なら、オセロとか将棋とかは」
「それもこの前たくさん遊んだだろう。……うーん、でもテレビゲームも散々したな。この間買ったゲームも二人で最初から進めて最後までプレイしたし……」
何か僕達が二人で遊べるのものはないか考えるが、ソフィーの言う通り、思い浮かぶものは大体遊んできた。
トランプ。オセロ。将棋。テレビゲーム。この辺りは飽きるくらいプレイした。
……思えば、彼女とは室内で遊ぶことは多かったけど、それでも満足できるくらい彼女とは長い時間を過ごした気がする。
そんなことを言ってみると、ソフィーはふふっと口元を微笑ませて言った。
「まだ出会って半年も経ってないのにな。私と君が初めて出会ったのは、人気ゲームの発売日の時だったか」
「あれは大変だった。ソフィーが外で死にかけてたんだもんな」
「笑うなよ。あの時は陽射しがいつもより強かったし、本気で死ぬかと思ったんだぞ。列はなかなか進まないし……お前が強引に私を休ませたから、列には並び直すことになったし。予約はしてあったから、売り切れることはなかったが」
大人気ゲームの発売当日、それを購入するためにたくさん人の行列が外まで出来たわけだけど。外の方の長い列に僕も並んでいて、ちょうど前にいたのが銀髪の小柄な少女、つまりソフィーだった。
明らかに日本人ではない顔つきと銀髪。黒い服を身に包んでいて、更には天気もいいのに彼女だけ傘を差していたから、当時の僕は彼女の姿がとても印象的で、随分浮いてたと思う。
そして、膝を震わせて顔を青ざめた彼女を見て、明らかに体調が悪いのだと感じた僕が、彼女に休憩を促したのだ。
『だ、大丈夫だ。この程度は覚悟していた。気にしなくていい、心配かけてすまない』
最初はそう断られたのだが、倒れる寸前だったので、結局僕は彼女とともに列を外してカフェで休憩をとった。
それが僕と彼女の出会いである。
ゲームを買った後も、念の為彼女を家へと送ると、彼女が自ら吸血鬼であると告げてきた。最初は信じられなかったけど、ソフィーの生活や日光が弱いところを見て、彼女が吸血鬼であると理解したのだ。
今は、アニメやゲーム好きという共通の趣味もあって、種族関係なくこうして遊びに通うくらいにソフィーと仲良くなっている。というか、日中行動できない点を覗いては、生活の方はのんびり過ごす人間のそれと変わらなかったりする。
「君と出会ってからは、世話になりっぱなしだな。日光が強すぎて日傘があっても外に出れない日と、漫画の原作者のサイン会が重なった時は、私の代わりに君が、一人一冊までのサイン本をくれたりということもあったか」
「……本当は、ソフィーも直接サイン本欲しかったよな。今度のサイン会は一緒に行くか」
「もちろんだ。だが、私は君からサイン本を貰えて嬉しかったよ。一人につき一冊という貴重なものをくれた君の優しさが嬉しかったんだ」
……話の途中でそう言われ、思わず僕は返答に困ってしまう。
もちろん不快という意味ではなく、そう言われるのは嬉しいのだが、そこまで言われるとちょっぴり恥ずかしいという意味でだ。
となりの銀髪の少女もそれを理解したのか、彼女も彼女であたふたし始めた。
「へ、変なことを言ってしまったな! すまん。まあつまり、素直に感謝してるってことだ。……それでそうだ。二人で何か遊ぼうって話だったな。ええと、何をして遊ぼうか」
先の発言を無かったかのようにしようと、無理やり本題に戻すソフィー。
恥ずかしそうに顔を俯かせて視線を泳がせていたが、彼女の目がテーブルの置いてあった本に止まった。それは先程、僕がソフィーにプレゼントしたライトノベルだ。
彼女はそれを手に取ると、表紙を僕に見せながら言った。
「これ一緒に読もう。せっかく、君が新しい本買ってきてくれたんだ」
「ライトノベルって言っても、二人一緒は読みにくいような……」
漫画とか絵本なら一緒に読めると思うけど。
「うーむ、そうは言っても、他にやることはもう無さそうだぞ。
二人一緒に同じ本を読むというのは今までしたこと無かったし、私はやってみたいのだが」
……まあ、やってみようかな。
「それに本を読みながら、お互いに直接感想を言ったり、盛り上がったりできるんだ。それはそれで面白いと思わないか」
「ソフィーがどうしても一緒に本を読みたいなら、一緒に読もうか」
「なんか、私を子供扱いしてる口調だな。まあいいが。じゃあ私が音読しよう。よっと……」
そう言って、隣にいたソフィーは、さらに僕の方に寄り添って肩同士をぴたりとくっつけた。
「え」
彼女のその何気ない行為に、僕の心臓は跳ね上がった。友達付き合いではあるが、女の子にこんなことされたら緊張だってしてしまう。
ちょっと不意打ち気味だったため、僕は焦って少し距離をとる。「む」とソフィーは呟いて、直ぐにまた肩を寄せてきた。
「おい、何をしてるんだ」
「そ、ソフィーさんこそ、ナニシテルノカナー?」
「なぜ棒読み……二人で本を読むならこうしないと読みにくいだろう」
「それは、そうだけど……」
「君、妙に身体熱くなってるぞ。まさか熱でもあるのか?」
「大丈夫、熱は無い。無いんだけど……」
吸血鬼のソフィーの体温は冷たかった。だけど、逆に僕の体温はどんどん上昇していく。心臓の音が少し激しくなって、鼓膜に震えて伝わってくる。
僕がどう答えようか迷っていると、ソフィーは察したかのようにきょとんとする。すると、こほんっと咳払いをしてから、
「まさか緊張してるのか? 一応言っておくが、私はこうした方が読みやすいと思っただけで、他意はないぞ。
それと、君のことは信頼しているが、変なことはするなよな」
素っ気ない口調でそう言われた。もうちょっと、意識してくれたっていいんだけどなー、とほほ……。信頼と言われて、喜んでいいのかガッカリしたらいいのか微妙な気分だ。
「特に足は弱いんだ。距離が近いからって隙を見て擽るようなことはするなよ」
「変なことってそっち!?」
でも、それは自らの弱点を公言してるようなものだ。……くすぐったらどんな反応するんだろう。気になるな。
「何かよからぬ事を考えてるようだが、もし変なことするなら今すぐ追い出すぞ」
「何言ってんですか、そんなのするはずないじゃないですか」
「なぜ敬語で返答するんだ、なんだか怪しい。……まあよし。さて、読むとするぞ」
小説のページが開かれる。ライトノベル特有の最初のイラストページを見て僕達は、「このイラストレーターが描くキャラデザは素晴らしい」とかそんなことを言いながら、本文に入る。
僕とソフィーの距離は密着していると表現しても過言ではないほど、とても近い。このまま両腕を前に広げて輪っかを作るようにすれば、彼女を抱きしめることも可能だった。
僕は未だにドキドキしながらも、ソフィーの音読に引っ張られながら文章に目線を流していく。
誰もが眠りにつく深い夜、外からは物音一つしない静かな空気。
大きな屋敷に唯一響きわたるのは、抑揚に乏しい少女の声。だけど、愛おしく感じる声。
酔いしれてしまうような、仕事で疲弊した身体が癒されていくような、そんな心地よい二人だけの読書会が始まった。
■
目を覚ますと、通い慣れた館の天井が見えた。
「寝てたのか。ふぁっ……」
どうやら僕は、ソフィーとの読書会の最中に眠ってしまったらしい。朧気だけど、ソフィーの音読に子守唄のような心地良さを感じながら、徐々に睡魔に呑まれてしまったのを覚えている。
んっ……妙に頭の後ろが柔らかいな。
あの流れ的には僕はそのままソファーで眠ってしまったはずだ。
だけど、首から上の方だけ柔らかな何かに沈んでいる感触があった。それに位置もちょっと高いような……。
「お、やっと起きたか。おはよう。と言っても、吸血鬼の就寝はこれからだが」
僕の視界を覆ってきたのは美少女吸血鬼の顔だった。彼女の長い銀髪が垂れ下がって、サラサラとした感触が僕の顔全体を優しく撫でる。彼女は読みかけの本を置くと、何気ない口調で言った。
ちょっと待って。
僕はソファーで眠っている。彼女も同じソファーに座っている。ソファーで横になっている僕が上を向くと、そこにあったのはソフィーの顔。
どう考えても、僕はソフィーの膝枕でおねんねしていた。
おお……おお、なんて幸せな時間なんだ! もう少し、いやあと一日! いやいや一週間! ああもう、やっぱり一生このままで過ごしたい!
幸せすぎて、このまま溶けて消えてしまいそうな気分だった。
「こら、二度寝するな。起きろ!」
頬をペちっと叩かれる。僕は彼女の太ももの感触を惜しいと思いながらも、体を起き上がらせた。
「おはようソフィー。もう少し、このままでいたかったなぁ」
「変態か! そうなったら私が眠れないだろう。まったく、君はたまに調子乗るから困る。本当に困る!」
「そんなに言うなら、なんで膝枕を……」
いや、膝枕は嬉しいに決まってるんだけどね。
「客人をソファーに寝かせたままにはできんだろう。私なら君をベッドまで運ぶのは容易だが、あまりにも気持ちよさそうに寝ていたからな。動かすと起きる可能性があるから、そのまま寝かせただけだよ」
「それで、膝枕?」
「ああ。それで、君は今日休みだったな。予定はあるのか?」
「とくには。とりあえず、一旦家に帰るよ」
「そうか。……なら、今日の夜またうちに来ないか」
それを聞いて、僕はちょっと驚く。
いつもはソフィーの体調を考えて、僕が彼女の家に遊びに行ったり誘ったりするわけだけど、彼女の方からこうやって遊びに誘ってくれたのは少なかったからだ。
僕のことを拒むどころか親友として受け入れてくれてはいるが、ソフィーの方から積極的に遊ぶ予定を立てることは珍しい。
「もちろん! ソフィーが積極的に僕に会いたがってくれるとはなあ、男として嬉しいなあ」
「その言い方やめろ。気が変わった。やっぱり来なくていいぞ」
「じょ、冗談だって。それで、夜にどこか一緒に行きたいところでもあるの?」
「いや、私たちが楽しみにしていた新アニメが今日始まるだろう? どうせなら、リアルタイムで一緒に見たいと思ったんだ。夕飯……は私は料理出来ないから用意できないが、お菓子とジュースもこちらで用意するよ」
「なるほどね。分かった。家で夕飯食べてまた来るよ」
「決まりだな。ふあぁ……私は眠いからもう寝るとするよ。君との時間にも備えないといけないからな。じゃ、おやすみなさい」
「うん、おやすみ。一旦お邪魔しました」
家に帰って、ソフィーとまた会う約束が来る時間を楽しみにしながら待つ。
昼過ぎ辺りからだろうか。約束の時間まで部屋でゴロゴロしていた僕は、それとなく窓の方を見ると空が曇り始めていることに気がついた。
後からソフィーの家に行くから雨は降らないで欲しいと思ったものの、十六時を迎えると、空を完全に覆い隠した雲から大量の雨が降り出した。
さらには何度も空が光り、激しい雷鳴が外に響きわたる。
雨は止むどころか次第に勢いを増し、上空から滝のように豪雨が降り注いでいった。
……今日、遊びに行く予定なんだけどなあ。どうしてこういう時に限って、突然天気は悪くなるのだろう。
近所とはいえこの雨の中、あの屋敷に行くのは苦労しそうだ。それでも諦めるつもりは無いのは、僕がそれだけソフィーからのお誘いを楽しみにしていたからだ。
そして、料理が得意な妹から夕食に呼び出された直後。
食卓に行く前に、ズボンのポケットに入れていたスマホが揺れた。着信相手はソフィー・トワイライト。
……この時間はあとすこし寝てるはずだったよな? とにかく出てみよう。
「お、おい君!? 今すぐうちに来れるか!?」
「ど、どうしたソフィー!?」
ソフィーの声は随分取り乱していた。彼女の何か脅えている様子が、電話越しにヒシヒシと伝わってくる。
「な、なんか外っ、やばいのが来てて! 今は棺に隠れてるんだが!? う、うわあっ、またきた!? や、やばい!!」
「ソフィー!? 一旦落ち着いて状況を説明して!」
「む、無理だ!! わ、私にも何がなんだがうわあああ!? ま、また強烈なのが!! そ、それでいつ来れる!? も、もう無理だ、怖い!!」
恐怖のせいで、いくつもの言いたい言葉が絡み合ってそのままに口を飛び出しているようだった。
いまいち要領を得ないが、断片的な言葉から察するに彼女の元に危険な何かが近づいてきている。それはわかった。
そして、ソフィーが僕の助けを必要としていることも。
「分かった! 今すぐ行くからソフィーは棺に身を隠してて!」
「あ、ああ! 急にすまないが頼んだぞ!!」
電話を切る。
……いったいどんな存在が彼女をここまで脅かしているのだろう。
まさか、ヴァンパイアハンターか? もしそうなら、そんなやつ相手に僕が助けに向かったところで勝ち目あるのか?
一番の方法は、ソフィーが館から飛んで逃げることだけど、運が悪いことに外は大雨だ。今外に出るのは、流水が弱点の吸血鬼にとって自殺に等しい。
ひとまず、妹に一言説明したあとにソフィーの所へ向かおう。そう思っていると、妹の方から僕の元へとやってきた。
「お兄ちゃん、うるさいよ。あと、今日カレーだけど、どれくらい食べる?」
「すまん灯、僕の分は無しで頼む! 今さっき友達が電話で早く来て欲しいって言われたんだ。今から行ってくる」
「え、ええ! そ、そんなあ……せっかく作ったのに」
「ごめん。帰ってきた時に食べるから! 今は友達の所に急がないと!」
言ってから、玄関に向かい靴を履き始める僕。
「うーん、分かったよ。なんだか本気みたいだし。……それにしても、友達のためにねえ。最近、お兄ちゃんってばその友達に熱心だよね」
「なんだよ」
「ふふふ、なーんでもない。じゃあ頑張ってきてね。雨酷いから転ばないように気をつけてね」
なにやら意味ありげに微笑む僕の妹、灯。普段からメルヘンな彼女の頭の中でどんな想像がされているのか……確かめてみたいけど、そんな暇はない。
僕は玄関を飛び出し、豪雨の中を走って行った。
■
洋館の中は静寂に包まれていた。
管理主が夜の眷属だから、この時間に静かなのは不思議でもないし、そもそもソフィーも落ち着いた人物だからいつもの洋館の雰囲気であることには変わりないんだけど……。
今回ばかりはその静けさが、僕に焦りと警戒を与えていた。
雨でびしょ濡れになったまま僕は、ソフィーの寝室へと足を進めていく。衣服や肌に吸い付いた水分が落ちて床を濡らすが、気にしてはいられない。
やがて、ソフィーの寝室の前にたどり着く。
ソフィーがこの部屋にいることは確実。でも、それと同時に彼女を脅やかす存在もここにいる可能性が高い。
……まずは、一旦深呼吸。
そして、僕は意を決してドアノブを捻り────部屋に突入。
瞬間、それと同時に外で一際大きい雷鳴が轟いた。
「ぎゃあああああ!? ま、またやばいのが!! ────て、おお!! きみ! や、やっと来てくれたか!!」
「そ、ソフィー!?」
一室にあった棺の蓋が飛び上がるように勢いよく開くと、そこからソフィーが現れて、すぐさま僕に抱きついてきた。
抱きつくというか、飛びついてきて彼女の頭部が僕の顎に容赦なくヒット!!
「ぐえっ……」と僕は潰されたカエルのような声を上げ、ソフィーに押し倒されるように後ろに倒れ込む。その際、今度は後頭部が硬い床に直撃した。い、痛い……。
「うぅ、一体何があったんだよ……」
僕は泣きすがるソフィーの背中をぽんぽんと優しく叩いて、上半身を起き上がらせる。部屋を見渡すが、なにもいない。部屋にいるのは、脅えるソフィーと、何に脅えているのか把握できない僕だけ。
また、外で大きな雷が落ちる。ソフィーの身体がビクリと震えた。
……もしかして。
「なあ、ソフィーって雷怖いのか?」
「お、恐ろしいに決まってるだろう! 君はよくあの音を聞いて平然としていられるな!」
「はぁ……。ガキの頃は怖かったけど、今はそれほどでも」
「……す、すごいな君は。それとも人間は、雷が平気なのか……」
平気ではないけど、別にソフィーのように脅える程でも無い。家の中にいれば、直撃することも無いだろうし。
てかソフィー、雷苦手なのか。そう言えば、お化けも苦手だったな。
「い、いつまで鳴り続けるんだ? 天上に住まう鬼が雷を落とすと聞いたが、そいつらは性格もよっぽど鬼なんだな。こんな恐ろしいことを平気でする神経を理解できん! ほんとうに鬼だ!」
吸血鬼のソフィーが言いますか。
ソフィーが早く来て欲しいと脅えるもんだから、夕食を抜いて、豪雨の中を傘もささずに駆け出して来たのに、雷が怖かっただけとは。心配しすぎてちょっと損した気分だ。
……でも、彼女の身に何も無くて本当に良かった。
しばらくしてソフィーはなんとか落ち着きを取り戻すと、あれだけ酷かった天気も小雨程度には落ち着いた。どうやら突発的に天気が悪くなっただけのようだ。悪くなりすぎだと思うけど。
「ほら、これで拭くといい」
「ありがとう」
ソフィーからタオルを渡されて、僕は濡れた箇所を拭いていく。
全体を拭き終えてからタオルを首にかけると、ベッドの端に座っていたソフィーの隣に腰を下ろした。
隣にいたソフィーが顔を見ないまま、申し訳なさそうな声音で言った。
「すまん。君には、また迷惑をかけてしまったな」
「まあまあ。僕としては、ソフィーの可愛い面を見れてよかったよ」
普段はクールな女の子が、女の子らしく怖がってキャーって可愛い叫び声を上げる。これより萌えるギャップは存在しないと思う。僕の持論だが。
「……だが、それだけではなくてだな。私は君の数倍以上は生きてるんだ。最初は耐えようとしたが、耐えられなくてつい君に電話をしてしまったのは、情けないとしか言いようが……」
「だから気にしないでいいって。まあ、ちょっと面白かったけど、ソフィーが僕を頼ってくれて嬉しかったよ」
「……」
そう言うと、真っ赤な顔を恥ずかしそうに俯かせていたソフィーの肩がぴくりと動いて、正面を向くように顔を起こす。
「……君は本当にずるいな」
ぽつりと、ソフィーは呟く。
長い銀髪が見え隠れしてて、彼女がどんな表情をしているのかよく分からない。美しく艷めく銀髪の間から、一瞬だけ彼女の瞳が見えた。
僕を横目に見る、彼女の瞳はどうしてかとても切なそうに見える。
だけど、美少女がそんな雰囲気を醸し出すだけでも、とても絵になるもので……僕は彼女にドキリとしてしまう。
「は、はくしゅっ!」
と、突然のくしゃみ。発信源はもちろん僕。
何か彼女を元気付ける言葉をかけようとしたのに、こういう時に限ってしまらないよなあ、僕……。
おかげで空気ぶち壊しだ。
「か、風邪か? 雨強かったし、やはり体冷えているんじゃないか。今、何か温かくなるものを持ってくるよ」
「平気だよ平気。もう身体も拭いたし、ちょっと身震いしただけだから」
「だが、しかし……」
「それに、身体を温めるんだったらソフィーが僕を抱きしめて欲しいなあ。そしたら、身も心も温まりそうだ」
「……」
……ん。……あれー? 僕がこういう冗談を言えば、決まってソフィーはツッコミだの罵倒だのしてくれるんだけどなあ。
今回はそれがなかった。
「……すまない。吸血鬼は生者じゃないから、体温が無いんだ。そんな私が、君を抱きしめても余計に風邪ひかせるだけだろう」
心底申し訳なさそうな声で、そう言われた。
………………あっ。
あ、あほー!! 僕のバカ! ソフィーを元気づけるために言ったはずが、逆に落ち込ませてどうするんだ!
いや、でも……ソフィーに一度くらい抱きしめられたいと思ったことは間違いない。今もそう思ってる。さっき押し倒された時に抱きしめられたけど、ノーカウント。あれをカウントするのはちょっと違う。
「そんなことないよ。ソフィーの体温が温かくてもそうじゃなくても、美少女に抱きしめられるなんてめっちゃ嬉しいし」
「……そこまで言うなら、試してみるか?」
「え!?」
予想外の返答。だけど、僕は頭の中で確実に舞い上がっていた。
「き、君がそれを望むならしてあげよう……。しかし、私の体が冷たくても構わないのならな」
感極まったまま、僕は首を横に振る。
すると、ソフィーがベッドの端で隣合ったまま、横からゆっくりと両手を伸ばしてきて僕を抱きしめる。
細い両腕が僕の腰を包み込む。小さな身体がぴっとりとくっ付いて、柔らかな感触と甘い匂いが同時に襲いかかってくる。
正直、ちょっとクラっとしてしまった。
「今の君は、ドキドキしているのか?」
「う、うん。まあ……」
「そうか。実は私もなんだ」
「そ、そう……え?」
僕は遅れてその意味に気づく。それはつまり、ソフィーは僕を意識してくれているということだろうか?
「私もドキドキしているんだ。吸血鬼として生きてきて、こんなふうに感じるのは初めてだよ」
「……」
「君に対する想いが日に日に強まっていってるんだ。……君とはいつか切れる縁だと思って、君が私との付き合いを望む限りそれに応じるつもりだったのに……なのに、今度は私の方から求めるようになってしまった」
ソフィーは突然に、だけどゆっくりと言葉をつむぎながら、胸の内を明かしていく。
「本当はな。雷は苦手だが、いつもは棺に隠れるだけで、君を呼び出す程でも無かったんだ。それでも呼び出したのは、私が君を無性に欲していたからだと思う……。
なあ、どうしてくれるんだ。君が悪いんだぞ。今までは、君と出会う前はこんなふうに感じることもなかったのに……っ。吸血鬼が、人間を好きになるなんて、こんなことは……っ」
抱きしめる力が弱まり、ソフィーが顔を上げ僕と視線を合わせる。
その瞳には、潤いがにじんでいた。
……多分、彼女なりに悩んでいるんだと思う。吸血鬼として長年生きてきた彼女は、人間達に距離を置いてたんだと思う。その中には僕も含まれてたんだと思う。
だけど、その距離を飛び越え僕とソフィーが近づきすぎたことで、彼女はどうすればいいのか、分からなかったのかもしれない。気持ちの整理ができていないのかもしれない。
だから、僕は。
「んっ……」
自分でも気づかないうちに、僕は態度で示そうとソフィーに唇を重ね合わせていた。
柔らかな感触が唇にふんわりと伝わってきて、一瞬してすぐに唇が離れた。
ソフィーと見つめ合い、一拍置いて僕は口を開く。
「ソフィー。これがソフィーに対する僕の気持ちだよ」
「な、何を言って…………き、君は、いいのか? 私は吸血鬼だぞ? こんな私とそういう関係になっても、いいのか?」
「むしろ僕がそうしたいんだ。ソフィーの方は、どうしたい?」
「わ、私は……。……てっ! お、おい君、もしかして口から血でてないか!!」
「え?」
急に目を大きく開くソフィー。僕は口元を指で拭って確かめると、指先には赤い液体が僅かに付着していた。
ソフィーの頭が僕の顎にぶつかった時に、口内が切れてしまったのだろう。さっきから我慢してたけど結構ヒリヒリしてるし、それで血が口元まで漏れ出てしまったのだ。
本当なら、そこまで慌てる事態でもないはず。
だけど、ソフィーにとってはそうでもなかった。
「そんなもの……見せるなよ。君のことが、もっと欲しくなっちゃうじゃないか……っ!」
ソフィーの喉元からゴクリと、唾を飲む音が聞こえた。キスで僕の血が彼女の方へと行き渡り、そして味を覚えたのだろう。
唇をわなわなと震わせ、僕から徐々に離れようと下がるソフィー。でも、僕は逃がさない。
「ソフィーが欲しいなら、僕の血もっとあげようか?」
「な、何を言ってるんだ!? そんなこと言われたら、私……」
「ほら、ソフィー……」
「────っ、どうなっても知らんからな!!」
僕の視界が反転し、背中がベッドにダイブする。ソフィーが正面から抱きついて、そのまま僕をベッドに押し倒してきたのだ。
すぐさま、ソフィーの小さな唇が僕の唇に密着する。
ちゅうちゅうっ、と激しい音をたてながらソフィーは僕の唇を吸い付き始めた。
「んっ、きみの血、美味しい……っ! ごく、ごくごくっ……」
少しくすぐったくて身をよじらせるが、ソフィーは獲物を捕らえるが如く、僕の体を強く抱き締めて身動きを封じてくる。
その間にも、ソフィーは僕の唇に付着した血液を吸い付き舐めとっていく。
「んんっ、ちゅるっ……ぷはっ。すごく、美味しい……」
ソフィーの声音はどこか蕩けているように感じた。
「そ、そんなに?」
「ああ。冷蔵庫をご覧の通り、血の味にも様々な種類があってだな。私たち吸血鬼にとってもっとも極上だと感じる血は、気に入った人間の血液なんだよ」
ソフィーは僕に馬乗りなったままそう言うと、自らの唇にキスの際にまとわりついた涎を指で拭いとる。それはまるで、まだ欲求を満たし足りないかのように見えた。
自分の血を好まれて嬉しい、という酔狂な感情を抱いたのはこの世の人間でも僕くらいだろう。
僕はほっとしてソフィーの瞳を良く見つめると、とろんとした目付きでこちらを覗いているのが分かった。
口もだらしなく半開きでちろりと見えた舌が、僕という獲物を捕らえようと今か今かと待ちわびているようだった。
「もしかして、もっと飲んでみたいとか思ってる?」
「むっ。だが、これ以上血は出ないぞ」
「出ないなら僕の唇を歯で切るとかすれば、少しくらいなら出てくると思うよ」
「ま、待て! そんなことしたら、君が痛い思いをしてしまう。大事な君がそうなるのは私も不本意だ」
「ちょっと痛いくらいなら平気だって」
それこそ、唇辺りならあまり痛みを感じなくて済むだろう。
「……くっ、君はやっぱりずるいな。分かったよ。そこまで誘惑したら、我慢できなくなるだろ。ただ痛かったなら言ってくれよ」
ソフィーは口を開いて鋭い歯を僕の唇にあてがう。ガリッと咀嚼して切られる痛みが唇を走るが、これくらいなら我慢できるレベルだ。
「それじゃあ、君の血、またもらうよ……」とソフィーは甘い声で呟く。口元からこぼれる湿った吐息が、僕の顔にあたってじわりと溶けていく。
ソフィーの口付けがふたたび始まり、唇から血を吸われていく快感に僕は身を委ねる。
「んくっ、美味しっ、おいしいよ……んっ」
ごくごくっと喉を鳴らしながら、ソフィーは僕の唇に粘りつくように吸い付き、時折口元からこぼれる血を舐りとる。彼女の声は完全に蕩けており、容赦のない口付けを繰り返していく。
欲求にありのままに従い、タカが外れたソフィーの吸血があまりにも気持ちよすぎて、僕は背筋を震え上がらせてしまう。
ちゅぱちゅぱっと唇を交わし続け、そこでようやくソフィーが唇を離す。彼女の唇は二人の混じりあった涎で艶かしい光を放っていた。
「ごちそうさま。愛おしい者の血とは、こんなにも甘美なものなのだな。君は大丈夫か?」
「何ともないよ。結構、気持ちよかったし」
「ふふ、二人して気持ちよくなっていたというわけか。……ところで、さっきから気になっていたことがあるのだが。
君の下半身の一部が……硬くなってないか?」
僕の体に乗ったまま、彼女は口元を手で隠し、頬を朱色に染め上げながらそう口にした。
事実、さっきのキスのせいですっかり膨れ上がった股間が、ソフィーのお尻にぐいぐいと押し当たっていた。
普段の僕なら羞恥心に悶えていただろう。だけど、未だに口付けの余韻が残っていた僕の思考は、ふわふわと浮いたように心地よくて、上手く働かないでいる。
正常に動かない思考は羞恥心を抱くことも無く、素直に気持ちを吐露させた。
「まあソフィーとあんなことしたからね。興奮しないのが、無理というか……」
「私に興奮してくれたのか、そうか……。なあ、私はいいぞ。君とならこのまま、もっとしても……」
「え」
「だって、さっきしたキスの意味は……君は、私に好意を抱いてくれてるんだろ? それは私も同じだ。
君は私の欲望に答えてくれた。ならば、今度は私が君の欲望に答えたいんだ。君の想いを受け止めたい……」
ソフィーの言葉が、まるで金属バットで叩かれたように脳に強く響きわたる。
彼女への愛おしい想いが、さらに急激に膨れ上がって、僕は欲求を抑えることができなかった。
「くっ────ソフィー!」
「えっ、うわっ、きゃあっ……!」
理性を失い、衝動的に突き動かされてしまった僕は、こちらに跨ったソフィーを押し倒し、そのままベッドに横にさせる。彼女のきらめく銀髪がカーペットのようにベッド上に広がった。
そうなると予測していなかったであろうソフィーは驚いて声を上げるが、だからといって逃げることもせずに、真紅の瞳で僕を見上げていた。
「び、びっくりするじゃないか。急に押し倒すなんて、意外と大胆なことするんだな」
「ごめん。でも、我慢できそうにない」
「ああ、いいよ。理解してるさ。君も私が欲しいんだろ? それなら本望だ。
……なあ、きみ、もういちど口付けしないか? 今度はちゃんとした正式なキス、お互いを愛しあうキスをしたいんだ」
もちろん、彼女の言葉を否定する気は僕にサラサラなく。
僕はコクリと頷いて、ソフィーの唇と自身の唇を重ねあう。
「んっ、ちゅうっ……」
だが、今度は血を吸われながらするキスではなく、唇を擦り合わせついばみ合うノーマルなキス。
お互いの唇の感触を感じ、味を楽しむ口付けだ。ふわふわの唇が何度も僕の唇に擦りついて、どんどん口全体が心地よい痺れに覆われていく。
ちゅぱっ、ちゅぱっ、ちゅるっ……
「そんなにキスが気持ちいいなら……れろっ、もっと、奥深くまで……えろっ、れるるっ」
ソフィーの銀色の髪を撫でながら柔らかい唇を堪能していると、彼女の方から僕の唇を割るようにして舌を口内へと侵入させてきた。彼女はすぐさま挿入した舌を辺りを舐め尽くすように暴れさせ、僕の口内を犯してくる。
僕が彼女を押し倒す形になっているというのに、ソフィーはそれを劣勢と捉えることもなく、むしろ彼女の激しい口付けに僕は舌をされるがままになった。
「ちゅるるっ、ちゅぷっ……。れるるっ、じゅるっ、んくっ、れろろ……っ」
さすがは吸血鬼といったところか。苦しくなるくらいの乱暴なキスを、ソフィーはお望みのようだった。だが、僕もソフィーの大胆さに負けじと抵抗。
口内で好き勝手に乱れ舞うソフィーの舌をこちらの舌で絡めとり、お互いを舌で激しく舐めつくし、口内で二つの唾液をかき混ぜていく。
ソフィーの舌の熱と感触に僕はゾクゾクとした快感を覚え、興奮が高まっていくばかりだった。
「くふっ、んんっ……ふはっ。……はぁ、はぁ。これは、すごく気持ちいいな。君の血も美味しいが、キスも最高だ」
僕も同意見だった。ソフィーとのキスは気持ちよすぎるあまり、まるで快楽作用がある麻薬みたいで、いくら口付けをしても飽きる気配がなかった。
だが、いつまでもキスばかりでは先に続かない。
僕は「心の準備はいい?」と言って彼女の服の裾を掴むと、ソフィーは黙ってこくりと頷いた。
了承を得てすぐにソフィーの服……温かみのある青色のパジャマを捲りあげていく。
「すまない。こういう時はもっと色気のある服を着て男を喜ばせるべきだと分かっているんだが、こうなるとは予想もしてなくてだな」
今のままでも十分満足だよ、と僕はソフィーに返答する。パジャマを彼女の胸元まで捲りあげると、そのまま頭と両腕を通してパジャマを完全に脱がす。
ソフィーの雪のように真っ白な肌と細い体付きが露わになり、その美しさに僕は思わず息を呑む。彼女の胸はフリル付きの黒いブラに覆われており、女性らしい膨らみはあまり無かった。
それでも劣情してしまうほどの魅惑的な身体であることに変わりはなく、僕は興奮を禁じえないでいた。
「……そんなに、あまりじろじろ見られると恥ずかしいだろ。か、感想を言え」
「うん、すごく綺麗だよ。正直、めちゃくちゃ興奮してる」
「興奮……良かった。私は胸も小さいし背も低い。自分のスタイルには自信が無かったんだが、君が興奮してくれるなら喜ばしいよ。
好きなところ、触っていいぞ」
そう言われ、僕はソフィーの背中に手を回してブラのホックを外す。ブラを取り外すと、頂点に可愛らしい桃色のつぼみをつけた小ぶりの胸が露わになる。
恥ずかしそうに肩を縮こませるソフィー。頬から首筋にかけて、白い肌が熱を含んで紅く染まっている。瞳は不安を帯びた潤いをにじませ、だが期待しているような眼差しを僕に向けていた。
「ひゃっ、んん……っ」
その期待に応えるためにも、僕はソフィーの胸に手を被せて、ゆっくりと力を加えて揉み始める。
起伏に乏しいといえど、女性特有の膨らみがない訳ではなく、手のひらにはかすかに柔らかい感触が伝わってきた。僕は全神経を手のひらに集中させ、わずかなふわっとした弾みを感じとり、夢中に揉み続けていく。
「あんっ、やあっ、そんな激しくっ、揉まれたら……っ、へ、へんなこえ、出るだろっ……!」
ソフィーは体を捻らせて必死に声を抑えようとしているが、可愛らしい嬌声がしっかりと漏れ出ていた。キリッと僕をにらむ紅い瞳がすぐに蕩けたように形を変え、胸に伝わる刺激によって、声は出さまいと噤んだ口がゆるんでしまい、そこから艶めいた吐息が溢れでる。体を震わせるものだから、美しい銀髪が陸に打ち上げられた魚のようにバタバタと何度も飛び跳ねる。
こんないじらしい姿をされると、もっと虐めたくなってしまうものだ。僕は胸を揉んだり捏ねるだけでなく、ソフィーの正中線にそって指を滑らかな肌をなぞったり、乳首を摘んで刺激を連続的に与えていく。
「くあぁぅっ、んううっ……。ふあっ、あっ……! くっ、さてはきみ、私をいじめて楽しんでるな……っ」
あえてその問いには答えない。
僕は追求をさけようと、膨らみの薄い胸についた乳首を口内に含み、舌先で舐め転がしていく。
ソフィーは肩をぷるぷると震わせ、僕の期待に応じた可愛らしい反応をみせる。刺激を与えるたびに、ソフィーの口は噤む時間よりもゆるんで開く時間の方が増え、そのぶん甘い声を部屋に響かせた。
ソフィーの甘ったるい嬌声は聞くだけでも堪能できるほど味深くて、僕の鼓膜に濃厚な快感をあたえてくれる。
そろそろつぎに進もうとして、僕はソフィーのパジャマズボンに手をかけておろしていく。「あっ……そこはっ」とソフィーが消え入りそうな声で呟くが、気にせずに脱がしていく。
ブラと同じ黒色の下着があらわれる。僕は黒の下着とソフィーの肌の間に手を突っこんで、彼女の秘部を下から上へとなぞりあげる。
「あっ、やあ……っ、そこっ、いじられると、ぞ、ぞくぞくして……んんぅ……っ!」
快感を得て、体を反らせるソフィー。秘部は既にわずかに湿り気を帯びており、僕は続けて指で愛撫を続ける。
もう片方の空いた手でソフィーの黒の下着を下ろしていき、ついにはソフィーは完全に産まれたままの姿になった。
銀髪美少女の美しい裸体に対する劣情は収まるどころか、どんどん膨れあがってしまい、指を彼女の秘部へと挿入させる。指先が膣肉を押しあげて奥へと進み、それに呼応してソフィーは色っぽい吐息を宙にまき散らす。
「きみっ、このまま、されたらっ……! わ、わたしっ、イってしまう……ひあぁっ、んやあぁっ、きもちいい…っ」
ならばもっと強くしようと、膣内に潜ませた指で膣壁に擦りつけて彼女を興奮の高みへと上らせていく。
「あああっ、やぁっ、あっ、すごっ、君の指がっ、わたしのなか、ぐちゅぐちゅって、ああっ、んんんーっ……んあぁぁっ!」
ソフィーはベッドのシーツをぎゅっと両手で掴んで喘ぎながら、膣内の快感に身を震わせる。
やがて彼女はさらに大きな喘ぎ声を空間に響かせると、ビクンビクンと痙攣をおこしながら、膣内から愛液を溢れださせる。膣から指を引き抜くと、愛液でぐしょぐしょに濡れてしまっており、痙攣が終わるとソフィーは身体をぐったりとさせた。両手をだらりと伸ばし、左足も力が抜けたように伸ばしたままで、右足は中途半端に膝を立てて曲がっていた。
ソフィーは快楽によって、完全に骨抜きにされていた。
「ソフィー、大丈夫?」
「ふはっ、はあっ……なにが大丈夫だ。君が私をこんな目にしたんだろ。まさか人間にここまでしてやられる、とは……」
上半身をなんとか起きあがらせ、ソフィーは息切れ切れにそうぼやく。その様子をみていると、彼女は続けて「ふふっ」と不敵な笑みをこぼす。
「さて、次は私の番だな。君も裸になって横になるんだ。私だけ裸のままだと不公平じゃないか」
「わ、分かった」
僕は言われるがままに服を脱ぐ。
上を脱ぎ、ズボンを脱ぎ捨てる。最後にパンツを脱ぎ終えると、膨れ上がった愚息がぴんと宙に向かって反りだった。それを見て、ソフィーは少し驚いたように声を出した。
「お、思ったより大きいな……。知識でしか知らないが、これを気持ちよくすると男は嬉しいんだろう? さあ早く横になるといい。今度は存分に私が君を攻めてやる」
やり返すつもりでソフィーは言ったのかもしれないが、彼女に攻められるのなら、むしろ歓迎だった。
僕は素直にベッドに横になり、ソフィーは僕の正面に移動すると、顔をいきり立つ股間へと近づけていく。
ソフィーの興奮気味に震える吐息が敏感な亀頭にじんわりと触れてきて、それだけで僕は微弱な快楽を感じ取る。
「じゃあ、はじめるぞ……」
ソフィーの湿った舌先が、僕の股間の先を優しく撫で始める。
ぺろっ……ちゅるっ、れるるっ、ちゅるるっ
可愛らしい小さな舌が亀頭をぺろぺろと舐め上げ、生あたたかい快感が股間を通じて背筋に痺れるように流れてくる。
だが、ソフィーは自身の長い銀髪が、口と僕の股間のあいだを邪魔して、ちょっとうっとうしそうにしていた。
ソフィーは一旦、正面を揺らめく長い銀髪を頬あたりにたくしあげ、ふたたび亀頭を舐め始める。れろっ、れろっと……慣れなさそうにしながらも、懸命に僕の股間を舐める彼女のそんな姿がとても愛おしく感じた。
舌先の湿ったザラザラとした感触に、僕はつい声を漏らしてしまう。
「れろっ……我慢しないで、もっと声出していいぞ」
「くっ……ソフィーもさっき我慢してただろ」
「そうじゃなくて、私が君の声を聴きたいんだ。だが、どうしても我慢するというならいいだろ。維持でも声出させてやる」
言うと、ソフィーは舌先で舐め続けるだけの行為をやめると、次にやわらかな唇で亀頭をぱくりと覆い隠してしまう。ふんわりと潤いのある唇が亀頭全体を刺激してきて、これにはたまらず僕は声を上げる。
それを聞いて、目だけでニヤッと微笑むソフィー。好機とばかりに唇を前後させ、舌を使って肉棒を舐めてくる。
快感を受けてさらに大きくなった肉棒の根元を掴み、ソフィーはじゅるしゅるっと嫌らしい水音を上げながら口内で愛撫を続ける。
「じゅるっ、れろろっ、ちゅるっ……君の、だんだん大きくなってるな。ふふっ、気分はどうだ? まったく声を抑えきれてないぞ。このまま、倍返しにしてやる」
う……っ!
ソフィーは肉棒を舐めているうちに相手を気持ちよくさせるコツを得たようで、さらに激しく舌を肉棒に絡めて快感をぶつけてくる。ざらざらした舌触りが何度も肉棒を刺激して、口内で熱くなった唾液をまとわりつかせてくる。
そのフェラはまるで快楽の熱を奥から引き出させているようで、実際に腰からゾクゾクと震え上がるものが込み上がってくる。根元から先にかけて肉棒が震え始め、それを咥えていたソフィーも痙攣に気づく。
「ちゅぱっ……んっ、遠慮せずに、このままの口に出して構わんぞ。れろっ、ちゅるるっ、べちゅるっ、れるれるっ……」
ソフィーは柔らかな唇で肉棒を扱きあげ、そして根本に添えた手を上下に動かして刺激を与えてくる。口内ではただひたすら激しく肉棒の先を舐め続け、僕はひときわ強い快楽に背筋を大きくのけ反らせてしまう。
同時に、熱いものが勢いよく奥底からせり上がり、僕はそのままソフィーの口内に精液を迸らせた。
どびゅっ、どくどくっ、どぷんっ……びゅくるっ
「んんっ、ごくっ……っ! ごくごくっ、んくっ……ごくりっ、ごくっ」
口内に吐き出された精液を、ソフィーは驚愕の反応を示すも喉を鳴らしながら受け止める。大量の精液をごくごくと喉奥に流し込み、その途中でソフィーは「……けほっ」と小さく咳き込むが、それでも肉棒から送られる精液を必死に肉棒を咥えている。
「そ、ソフィー、苦しいなら無理しなくても……」
だが、彼女は僕を右手で制して、精液を飲み干そうと喉音を何度も鳴らす。
精液が吐き出される勢いが弱まると、ソフィーは残った精液をゆっくりと飲み続け、肉棒を舐めとって綺麗にする。
出来る限りの精液を喉奥へと流し込んで、ようやく咥えていた肉棒を口から離した。
「問題ない。それに、これは君が気持ちよくなってくれた証だろ。私もその証にちゃんと最後まで、答えてあげたかったのさ」
「大丈夫ならいいんだけど……もう苦しくない?」
「心配性だなきみは。私は吸血鬼だぞ。君が思ったよりも、私の体は頑丈だよ」
「日光に当たっただけでめちゃくちゃ弱ったりしてるのに? 雷怖いのに?」
「おい、そこは普通スルーしろ」
ソフィーのツッコミに僕は思わず小さく笑う。彼女もつられて頬を緩ませると、視線を下に向ける。徐々に硬さを取り戻しつつある愚息が、そこにはあった。
「あれだけ出して、まだ物足りないのか。……それとも、やはり私と最後までしたいから、すぐに大きくなったのか?」
「両方かな。なあソフィー、ソフィーはこのまま続けても……」
「いいよ。いいに決まってるじゃないか」
ソフィーは優しく温かみのある物言いで呟いて、ベッドに横になる。
彼女の瞳はこちらをじっと見つめて、僕が行動に出るのを待っているようだった。
「あ、でも私、こういうことするのは初めてなんだ。初めては痛みが伴うものだときく。……だから、優しくしてくれよ?」
彼女の言葉を肝に銘じて、僕はうなずく。彼女を大事にしてあげたいという気持ちは初めからある。
だけど、彼女と繋がりたいという思いも抑えることはできなくて。
僕はベッドに寝そべるソフィーに覆いかぶさるようにして、顔を近づけて優しくキスすると、「はじめるよ」と一言だけ告げる。
「きてくれ……っ、私も君がほしい」
顔を上げて、僕はソフィーに向かい合う位置に移動。
彼女のすらっとした両足をゆっくりと開かせ、僕は晒された秘部へと肉棒を近づける。
秘部と亀頭の先が軽く触れ合うようなキスをして、そのまま膣内へと肉棒を挿入していく。
「んっ、くあ……っ」
早くも肉棒の先端が膣肉と擦れ合う堪らない感触を感じ取り、僕は快楽に誘われるがままに自身の分身を膣奥へと押し込んでいく。
異物が挿入される感覚に引き締まった声を漏らすソフィーだったが、僕がそれを気にすると彼女は首を横に振って「気にするな」と促してくる。
肉棒が膣内を進んでいくと、薄い膜のようなものと接触する。僕はそれを腰に勢いをつけて破り、肉棒を最奥まで前進させた。
「ああっ、痛っ……!」
僕が純潔を奪ったことにより、ソフィーは痛みに悶えて苦しそうに息を吐く。処女膜を失った痛みに耐えかねて、体が強ばっている。
「お、奥まで入ったのかっ……? いつでも、うごいても、いいぞっ……」
「ソフィーが苦しそうにしてるのにできないよ。痛みが引くまで待つから、まだ動かないで」
「うっ、ははは……。君ときたら、こんなときも心配してくれるのだな」
「むしろ、こういう大事なときだからだよ。それにソフィーも優しくって言ってたじゃないか」
「……なら、キスしてくれないか? キスすると痛みが和らぎそうなんだ」
もちろん、と僕は言って、繋がったままの状態で上半身を前に倒し、ソフィーが前に小さく尖らせた唇にキスをする。
ソフィーは待ってたとばかりに、大量の水が穴に勢いよく吸い込まれていくかの如く、すぐに僕の口内へと舌をねじ込むと辺りを舐り回してくる。
じゅる、じゅるるっ、ちゅぷっ。ちゅぱ、ちゅぱちゅぱっ、れろろっ……と、舌が激しく絡み合い、お互いに濃厚な刺激を共有する。
痛がってるはずのソフィーは軽く首を起きあがらせ、僕の唇を夢中になって貪ってくる。僕の唇に勢いよく口付けしてくる度に、彼女の銀髪が激しく揺らめく。
お互いの口内を味わい尽くすキスに没頭していると、ソフィーの全身から力が抜けていくのが分かる。
ちゅぱちゅぱっと舐りあう二つの舌が離れると、ソフィーの表情から苦痛が消えていた。
「ふふ、君のキスは私を想ってくれているのが伝わってくるな。……痛みはもう引いたから大丈夫だぞ。私を好きなようにしてくれていい」
言われて、僕はゆっくりと腰を前後し始める。肉棒をおおう膣壁がぎゅうぎゅうと締め付けてきて、思わず全身が震えてしまう。ソフィーの小柄な身体と同じく、膣内もかなりの狭さであり、そのぶん締め付けも強烈だった。
肉棒全体から伝わってくる膣壁と混ざり合う快感がとても心地よくて、僕はそれを味わうために何度も膣奥へと肉棒を突きつけていく。
ずりゅっ、ずんっ、ぐちゅっ、ぬちゅっ、ずぷっ
「はぁっ、あ、ああっ……いいっ、きもちいっ、あっ、やぁ……っ」
ぎゅっと収縮してくる膣壁を押し返して肉棒を前後させる度に、ソフィーは体をぴくぴく震わせ、可愛らしい喘ぎをこぼす。
普段クールな声音が、いまは淫らな声を上げているギャップが堪らなくて、僕はさらに興奮してしまう。その興奮に合わせて、ずぼずぼっと肉棒を膣奥につき入れるスピードが早まっていく。
「やああっ、すごいっ、はげしっ、そんなに激しくされたらっ、んううっ、ああっ、あっ……あぅっ、こんなのっ、初めてなのにっ、気持ちよすぎてっ、あんっ、やぁっ」
震えてしまうほどの濃密な快楽が全神経を駆け巡ってきて、僕はもうソフィーとともに気持ちよくなることだけしか考えられなくなる。
じわじわと熱が高まっていく膣肉が激しく肉棒を締め付けてきて、僕は快楽の渦へと導かれていく。
腰をぶつける度に、ぐちゅ、ずちゅっ、と性器どうしが擦れ合う嫌らしい音が部屋に響きわたる。
ソフィーは遠慮のない喘ぎ声をあげながら口元をだらしなく開いて、瞳をとろんとさせる。彼女の頬は興奮して酔ったように赤くなっていた。
「んふっ、ああっ、あんっ……て、てぇ、にぎってほしいっ……」
僕が彼女の腰をがっちり掴んで腰を振り続けていると、ソフィーが身震いする手を伸ばして僕の手を握りしめてくる。
僕もそれに応えてソフィーの両手を取って、指を絡めてしっかりと握り合う。まるでお互いの愛を確かめているようで、僕はそれが嬉しくてソフィーの膣奥にまで激しく愛をぶつけていく。
ぱんっ、ぱんぱんっ、ずぷっ、ずぷぷっ、ぐちゅっ、ずぷっ、ぱんっ、ぱんっぱんっ、ずぷっずぷっ
「も、もう、むりぃ、だ……っ! あんっ、これ以上、はげしっ、くっ、されたらっ……い、イくっ、あっ、やあああっ……!」
吐息の艶が増していることから、ソフィーの限界が近いことが分かる。擦れ合う性器も、肉棒はビクビクと震えて膣はひくつきながら熱が上昇していく。
僕も僕で頭が沸騰してしまいそうで、視界がぼんやりしつつある。
僕もソフィーも、これ以上腰をぶつけて快楽を貪るには限界を迎えようとしていた。
「ふああっ、あんっ、やっ、やあぁぁぁ、ぁっ……!」
膣内がきゅっと強く収縮し、それを受けて肉棒が強く震え上がり、凄まじい快感が下半身を支配する。
もう耐えるのは無理だった。
びゅくっ、びゅくくっ、どびゅっ、どびゅるるっ、びゅくびゅくっ、どぷっ、どぷぷ
「やぁっ、熱いのが、どろどろって……なかにっ、たくさん……っ! ああっ、熱っ、君の熱くてっ、気持ちいい……っ、はぁっ、ふぁぁっ……」
煮えたぎるような熱の塊が腰の奥から込み上げて、ソフィーの小さな膣内にどくどくっと流し込む。
ソフィーは僕の手を爪で押すほど強くにぎってきて、細い体躯を反らしてぴくぴくと痙攣させた。膣内は最後の一滴まで精液を絞りつくそうと肉棒をきつく引き締めてきて、僕は精液をほとばしらせる強い快楽と、膣肉が追い打ちをかけて叩きつけてくる快感を受けとめるので精一杯だった。
全身が興奮しすぎて熱くなり、それでもなんとか精液をたっぷりとソフィーの膣内に出し切ると、二人して疲れ果てたようにベッドに倒れ込む。肉棒を抜くと幼さの残る膣内からは、白濁液が溢れ出て淫靡に染め上げていった。
■
ソフィー・トワイライトは、吸血鬼である。
美しい銀色の髪に、降ったばかりの雪のように光がこもった白い肌。細めの小柄な体型で、まぶたを少しジトっとさせた真紅の瞳。
吸血鬼らしく、僕より長いこと生きてきて、日光や流水が苦手で、血液を好んで食する。
吸血鬼だけど、僕と同じくアニメ・ゲーム・マンガが好きで、人間らしい趣味を持ち合わせている。
僕とソフィーは親友で、そして今日、僕達は晴れて恋人となった。
「今さらだが、本当に私とこんな関係になって良かったのか?」
僕の腕を枕代わりにして裸で寝ていたソフィーが言った。彼女のひんやりとした銀髪と肌がぴったりとくっついて、ほとぼりが残った身体にはとても心地良かった。
「いいんだよ。僕がソフィーとそうなりたかったんだ」
「そうなりたいって……私は吸血鬼だぞ。君とは趣味や気が合うことも多いが、私をおそろしく感じることは無いのか?」
「無いよ。最初は吸血鬼ってどんなだろうって気になったけど、こうして仲良くやれてるわけだし」
「だが、子供だって作れないんだぞ? 私が日光が苦手である以上、普通の恋人らしいこともできない。生活サイクルもまったく逆だ。君はそれでも、そんな私を………っ」
「ソフィー」
僕はソフィーの細い体を抱きしめると、彼女はそれ以上何も言わなかった。その代わり、小さな額を僕の胸に押し当てて、彼女の方からも身体を寄せてくる。
暗い部屋の中で僅かに光を放つ銀色の髪を撫でながら、僕は呟く。
「何度も言うけど、僕はソフィーがいいんだよ。僕は人間で、ソフィーは吸血鬼……たしかに世間一般で言う恋人同士とは違うけど、僕は気にしないよ」
「そう、か。そうだな、君はそういうやつだったな。……うむ、私たちはこれから恋人だな。これから、よろしく頼むよ」
「こちらこそ、よろしく」
そう言ったところで、僕は大きな欠伸をする。快楽の余韻が抜けた後の脱力感はどこか心地よくて、このまま気持ちよく眠れてしまいそうだ。
「ほら、もう寝なさい。私も一緒に眠ってやるから」
「僕は嬉しいけど、ソフィーはベッドで眠れるの?」
「慣れないことをして少し疲れてしまったからな。少しくらいなら眠れるよ」
「……そう言えば、ソフィーって初めてだったんだね」
慣れないことと聞いて、彼女が初めてだったのを思い出したので何となくポツリと呟いた。
ソフィーが眠たそうな瞳でぎろりと僕を睨みつける。布団の中で僕のお腹をつねってきて痛い。
「……悪いか?」
「そんなことないです。ソフィーとああいうことできて、僕はとても幸せですだからやめて抓らないでっ」
そう言いながら、僕は爪を食い込ませてくるソフィーの手をゆっくりと退ける。
そのまま退けようとしたが、僕は彼女の腕を優しく引いて彼女の背中に両手を回して抱き寄せた。抵抗する様子はないが、ソフィーはちょっとびっくりた感じで僕を見ていた。
「吸血鬼が棺で眠るのって、窮屈で眠りやすいって理由もあるんだよね」
「そうだが、それがどうしたんだ?」
「こうやって抱きしめたほうが、ちょっと窮屈になって眠りやすいんじゃないかなって」
「裸の私を抱きしめるのが気持ちいいだけじゃないのか?」
「……」
否定できなかった。だが、ソフィーはお腹をつねってくることは無くなく、彼女の方も僕の背中に手を回して抱きついてきた。
「ま、まあ君はまだ若いからな。恋人として、君のじょっ……情欲くらいには付き合ってやるとしようじゃないか」
「え!? マジ! じゃあ忙しい日でも毎日ソフィーに会いに来るよ!」
「言っておくが、毎日というわけじゃないぞ! たまにっ、たまにだぞ! 調子乗るんじゃない!!」
舞い上がると、今度は背中を抓られてしまった。痛い痛い!?
「まったく、吸血鬼に欲情するとは変わった人間もいたものだ」
「ははは……」
「変な事言ってないで、さっさと寝るんだ。アニメは見忘れてしまったが、ちゃんと録画してあるからな。起きたら、アニメ鑑賞にたっぷりと付き合ってもらうぞ」
「そうだね。……それじゃあ、おやすみ」
「ああ、おやすみ」
僕は彼女の言う通りに、大人しく睡魔に誘われるように目を閉じる。
「……ありがとうな。吸血鬼の私を好きになってくれて」
耳元で彼女の優しい囁きが聞こえる。
僕はそれを嬉しく思いながら微睡みに沈んでいく。最後に、柔らかい感触がチュッと頬に触れるのを感じながら、心地よい眠りについた。