【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
10 人里を避けて【地図有】
「ほ、ほ、ほ、ほ、ほ……」
一郎は奇声をあげながら山の斜面を横に走った。
馬鹿馬鹿しいが、エリカが腹を満たしたければやれというのだ。
「ロウ様、いい感じです」
エリカが遠くで声をかけてくれるのが聞こえた。
「エリカ」というのは、エルスラの新しい名である。
これからの逃避行のことを考え、新しい名乗りとして彼女が選んだのが「エリカ」なのだ。
偽名というわけではなく、むしろエリカの生まれながらの名乗りらしい。エリカは、アスカに仕えるにあたり、本名ではなくずっと偽名を使っていたらしいが、これを機会に生まれ持った名に戻すことに決めたようだ。
そして、一郎が決めた新しい名乗りは「ロウ」だ。
“いちろう”の「ロウ」なので安易だが、エリカはどこにでもあるありふれた名であり、アスカの追っ手もわからないだろうと誉めてくれた。
というよりも、一緒に旅をするようになり、エリカはなにをやっても、大袈裟なくらいに誉めてくれる。
ちょっと照れ臭い。
いずれにしても、エリカとロウという名が、ふたりの新しい名だ。
ふたりの関係は、一応は一郎が主人であり、エリカがその性奴隷を兼ねた従者ということになっているが、旅の道を決めるためのことも、食べる物を確保するためのことも、野宿の寝床を整えることも、とにかく、あらゆることで、一郎はなんの指図もできないし、役に立たない。
エリカの指示に従うだけだ。
それでいまやっているのが、間抜けな叫び声をあげながら、山の斜面を横に走るということだ。
一方でエリカは、少し離れた斜面の下側で小弓を構えている。
半ば自棄になって駆けていると、斜面の下側から、降りて来いというエリカの声がした。
一郎は斜面をゆっくりと降りていった。
ルルドの森を脱して半月ほど経っている。
一郎とエリカは、ナタル森林域と呼ばれる森林地帯にいた。
召喚により一郎がこの世界に呼ばれたアスカ城とはかなり離れている。
一郎とエリカは、アスカの追跡を逃れるために、アスカ城に近い地域を避けて道なき道を行き、ケス河と呼ばれる大河を右に見ながら河沿いに東に進んで、いまはハロンドール王国と呼ばれる大きな国の領域近くまでやってきている。
目指しているのは、そのハロンドール王国だ。
この異世界の主体であるらしい人間族、エルフ族、ドワフ族の三種族だけでなく、さまざまな少数亜人族の住む多種族国家であり、「冒険者」や「傭兵」などの多くの移民を受け入れている。
そこに行くつもりだ。
大国であり、人口も多いらしい。
一郎とエリカなど、たちまちに人の海の中に紛れて、アスカの追跡から隠れることができるだろうとエリカは言っている。
もっとも、この半月、予想していたアスカの追手はなにひとつなかった。
そのことについてはほっとしている。
このまま、無事にハロンドールに入国することもできそうな雰囲気だ。
だが、問題がひとつある。
ハロンドールに入るためには、入国税というものを支払わなければならないらしい。
それだけでなく、領域内を進むとなれば、街道沿いにある関所を通過するにも関税が必要であるし、城郭に入るには人頭税がかかる。宿に泊まれば金が要る。移民が手っ取り早く生活費を稼ぐのに適当な「冒険者」になるためには、冒険者ギルドと呼ばれる機関への入会料も必要だ。
とにかく、金が要るのだ。
だが、金などない。
一郎もエリカも、アスカのところから文字通り身ひとつだけで逃げてきたのであり、ルルドの森を去るときにユグドラからもらった服と最小限の装具と武器を持っているだけの無一文だ。
だから、ハロンドール王国に入る前に、なんらかのかたちで金子を手に入れなければならない。
財産らしい財産といえば、エルスラの名乗りとともに、エリカが捨てた長い黄金の髪だ。
エリカは、アスカからの逃避行にあたり、少しでも印象が変わるようにと、腰近くまであった髪を肩の線でばっさりと切断してしまったのだ。
驚いたが、エリカはこっちの方が動きやすいし、さっぱりしたと笑っていた。
髪が短くなったエリカは、印象がかなり変わったが、やはり大変な美貌だ。そして、可愛らしい。
そう言ったら、エリカはこっちがたじろぐくらいに照れ、そして、嬉しそうな表情になった。
とにかく、その切断した髪は商人に売れば、幾らかの値がつくからと、まだ荷の中にある。
しかし、行商人のような者には、まだ誰にも会ってない。
それどころか、ずっと人里を避けて旅をしていたので、いかなる人間にも会ってない。
いままではアスカからの追手を避けることを第一としていたが、これからは人里にも立ち寄り、路銀を手に入れるための算段もしなければならないと思う。
ただ、それについては、エリカにはなにかあてがあるようだ。
一郎は、斜面を降りて、エリカが待っている場所に着いた。そこはわずかに平地になっている場所であり、あまり樹木もない。
すでに、エリカはそこで焚火をおこし終わっていた。
二羽のウサギがさばいてあり、枝で作った串に刺して、すでに火にもかけられている。
魔道も遣っていると思うが、あっという間の手捌きは、さすがは狩猟民族のエルフ族だ。その手際のよさは呆れるばかりである。
また、得物に遣った小弓も、ほかの荷と一緒に焚火のそばに置いてある。
「相変わらず、すごいな、エリカ。今夜はウサギか」
一郎は声をあげてしまった。
「幼い頃から狩猟については、徹底的に仕込まれます。それを通じて、弓でも、剣でも、魔道でも修練するのです。ウサギの狩り方なんて、子供時代に最初に習得させられる狩猟の技のひとつです。今日は、ロウ様がいたので、久しぶりに幼児時代に習った方法で狩りました」
焚火周辺を歩き回っていたエリカが、いったん立ち止まって、やってきた一郎に微笑みを向けた。
エリカは、いまは野獣避けの匂いを周辺一帯に魔道でつけ回っているのだ。夜になれば、人を襲うような獣が襲ってくることもある。それを避けるためだ。
そのほかにも、この周囲一帯に不自然な魔力の動きなどがあれば、事前に警告が入るような仕掛けもしているようだ。
そうでなければ、警戒のために、夜もずっとエリカが起きていなければならない。
とりあえず、どんなかたちであれ、襲撃者や野獣などが近づこうとしても、容易にはやってこれないような魔道の処置をしているらしい。少なくとも、エリカは、停止している状況であれば、アスカであっても、まず、一郎たちを見つけることはできないと自信を持っている。
人避けと獣避けの魔道は、エリカがもっとも得意な魔道なのだそうだ。
まあ、エリカが大丈夫というのであれば、大丈夫なのだろう。
それについて、一郎はまったくエリカを疑っていない。
また、最初こそ、一郎に対して「ため口」を使っていたエリカだが、最近では丁寧な言葉で話しかけるようになった。
別に普通でいいと一郎は言ったのだが、エリカはそれでは落ち着かないし、むしろ丁寧語を使う方が楽らしい。
だから、放っておいている。
「子供時代に、ウサギ狩りなんて習うのか?」
一郎はエリカが支度をした石の椅子に腰を下ろしながら声をかけた。
野宿をするための準備はほかにもあるが、一郎にはなにもできることはない。
食べ物の確保だけでなく、火を絶やさないための薪作りも、飲み水の確保や、寝床の準備ひとつについても、一郎はほとんど役に立たない。できるのは、エリカが準備した薪を焚火の中に放り込むくらいのことだろう。
「ウサギを狩るのは難しくはありません。素早く駆けることのできるウサギも、前脚が短いので斜面を下るときにはうまく駆けられないのです。のろのろしているので、簡単に弓で仕留めることができるというわけです。だから、子供の練習用に具合がいいのです」
周辺の木々を回っているエリカが、少し離れた場所から一郎に声をかけた。
「なるほど、俺が馬鹿みたいに叫んだのは、穴にいるウサギを斜面の下に走らせるためだったのか」
「役に立ちました。ありがとうございます、ロウ様」
エリカが戻ってきて、ウサギを焼いている串をくるりと回した。次いで、今度は枯葉を集めて、火の横に寝床を作り始めた。
いまは焚火の横に置いてある背負い袋に大きな布が入っていて、それを集めた枯葉に被せるのだ。それをもう一枚の布を掛布にしてふたりで並んで寝る。
いまは温かい季節なので、それだけで十分だ。
これが寒い地方を旅する場合だったり、冬の季節の場合は、天幕なども準備しなければならないので大変らしい。
「崖の下に湧水があったので汲んできます。襲撃避けの処置は終わったので大丈夫と思いますが、もしも、なにかが近づくようなことがあれば、大声で叫んでください。お願いします」
エリカはそう言うと、あっという間に視界から消えていった。
一郎には、「魔眼」という特殊能力がある。
ある程度の知性がある存在であれば、人や獣が近づくと、それを正確に察知できる。
この十日の旅において、いまのところ「人」に会ったことは一度もない。
エリカがそういう経路を選んだことと、一郎の魔眼の能力で、人がいれば必ず身を隠してやり過ごしていたからだ。
しかし、昨日の夜に話し合って、いよいよ人里に向かおうということになった。
ここまでくれば、アスカの権威も及ばないはずだ。
アスカ自身が追ってくることとともに、懸賞を懸けられることを懸念したが、アスカ城に近い三公国からも離れてしまえば、さすがにそれを心配する必要もない。
エリカがいなくなると、一郎は今朝、ルルドの森に一枚だけあった羊毛紙に、エリカに描いてもらった簡単なこの世界の地図を拡げた。
しかも、便利なものであり、エリカが魔道を施して、現在地の概ねの場所が移動とともに表示されるようになっているのだ。
◇ ◇ ◇
【エリカの描いた地図】
◇ ◇ ◇
いま、一郎とエリカのいる「ナタル森林域」には、エリカの魔道により表示されている旗がある。それが現在地だ。
それにしても、最初に、エリカが地図と地名を書き込んだものを見たときには驚いたものだった。
文字として書かれたものがまったくわからなかったのだ。
この異世界に召喚されて以来、話し言葉が普通に理解できていたので、あまり感じてはいなかったが、そのことで改めて、一郎は実際にはまったく習ったことのない異世界の言葉を自分が話しているということを悟った。それが理解できたり、話したりできるのは、召喚術によりこの世界にやってきたときの、なんらかの能力覚醒の影響なのだろう。
しかし、書き言葉となると、そうはいかないようだ。
エリカが地図に書いた地名は、一郎には理解不能の記号でしかなかった。いま地図にあるのは、一郎が耳で聞いたものを元の世界の文字で書き直したものだ。
それを見たとき、エリカは「これが異世界の文字なのか」と感心していた。
いずれにしても、このナタル森林域、あるいは、ナタル地方と呼ばれる一帯は、エリカの故郷でもあるらしい。
このナタル森林域には、エルフ族の里がたくさんあり、エリカはその中のひとつで生まれたそうだ。
ナタル森林域を統治しているのは、エルフ族の長老である人物であり、いまはガドニエルという女長老がナタルの森の支配をしているそうだ。ただ、支配といっても緩やかなものであり、実際にはほとんどの里は自治により、各里で選んだ
一方で、ガドニエル女長老がいるのが、エルフ族の都と称される「エランド」であり、彼女はエルフ族長老としては珍しい女長老なので、「女王」とも呼ばれているそうだ。
エリカも会ったことはないが、とにかく美しく尊い人物なのだと言っていた。
エルフ族の都のエランドは魔道で管理される美しい都市であるのに比べれば、ナタル森林域に点在している里は、どこも昔ながらの自然を保っているのどかな場所だということだ。
エリカが生まれ育ったのは、その里のうち「自由エルフの里」というここよりも、ずっと西側にある三公国地域に近い場所とのことだ。
ただし、エリカの両親は早世している。
そして、孤児として里の施設で教育と訓練を受けて育った。
十五になって里を離れて旅に出て、三公国と呼ばれている「ローム帝国地方」を転々と流れているうちに、縁があってアスカに拾われたそうだ。
そして、アスカに気に入られて愛人になり、特別な訓練も受けてアスカに次ぐ召喚師にまで抜擢されたが、最初の召喚だった一郎に捕えられて、ここまで一郎とともに逃亡するはめになったということだ。
一方で、実は一郎もふた親をもう失くしている。
交通事故だ。
兄弟はいない。
親が死んだのは中学一年のときであり、引き取ってくれたのは伯父だった。
実の子供でもないのに、伯父は、十分すぎるほど大事にしてくれたと思う。一郎を養い、高校に進学もさせてくれた。
だが、高校は寄宿舎のある遠方の高校を選んだ。
やはり、実の親ではない親戚の家で過ごすというのは、窮屈な思いがあったからだ。
それからはほとんどひとりの力ですごし、もちろん大学にいく金もなく、人材派遣のような会社に所属して、いろいろな職務を経験しながら、数年前から介護員として、いくつかの介護施設を掛け持ちするような仕事をしていた。
もちろん、結婚をするような金もなく、それどころか、三十五歳に至るまで一度も特定の恋人がいたことはなく、たまに休みがあれば、ネット端末型のゲームで遊んだり、ひそかにエロゲーと呼ばれるものをするのがなによりの趣味だ。
ひそかな性癖は、SMであるが、それ系の雑誌や本を眺めるだけで、実際にはやったことはない。
男としては、かなり寂しい人生を送っていたと思う。
それが、ある日突然に、この世界に召喚されてしまったのだ。
元の世界で、突然に行方不明になっていると思う自分がどういうことになっているのかについては、いまは知りようもないが、大して心配する者もいないのが幸いだ。
「戻りました、ロウ様」
エリカだ。
水筒を二つ抱えるとともに、大きな革袋に水を汲んできている。
一郎に水筒を渡すとともに、一郎の隣に準備してあった石にちょこんと座った。そして、革袋の水を背負い袋にあった土鍋に移した。
エリカによれば、これは明日の朝にウサギ汁を作るということだ。
そのエリカのはいているスカートは、太股の半分ほどの丈しかない短いものだ。
座る石は低いので、座るとエリカの大部分の脚はスカートの外に出る。そして、かいがいしくエリカが動くたびに、スカートの下の白い下着もちらちらと見える。
洞窟で服を選ぶとき、たくさんの衣類があったのだが、一郎がエリカには、いまはいているスカートよりも長い丈のものを身に着けるのを禁止したのだ。
エリカの脚は本当に綺麗でかたちがいい。
その脚を隠すのはもったいないというのが理由だ。
エリカは、そんな短いスカートなどはいている旅の女などいないと不満を言ったが結局は従った。
一郎の命令に、最終的に逆らうのは不可能なのだ。
それに、エリカが言ったことは嘘だと思う。
この世界で「ミニスカート」というのがあり得ないのであれば、あの洞窟に、このミニスカートが存在したわけがないのだ。
あそこには、不幸にもルルドの森に入り込んでしまって、死霊たちに襲われて死んだ者が遺した物しかないからだ。
エリカは、しばらくウサギ肉の焼き加減を調整していたが、やがて、焼きあがったらしく、火から出して、平たい石をまな板にして、小刀で肉を切り分けてくれた。
「うまいな」
渡されたウサギの肉は脂が乗っていて美味だった。
また、魔道で施したのか、軽く塩も振ってある。
塩はエリカの魔道で簡単に大地から採集することができるようだ。
よくわからないが、エリカによれば、一郎の性奴隷になったことで、なぜか魔道の能力も、武術の腕も日に日にあがっているらしい。
一郎の魔眼で感じることのできるエリカの「ステータス」に、「淫魔の恩恵」という能力向上の文字がある。確かに、ルルドの森にいたときに比べても、魔術遣いのレベルも、ほかの数字もあがっている。
どうやら、一郎がエリカを毎夜のように抱くことで、それがエリカの魔道向上をもたらしている気がするのだが、どういう関係になっているのかはまったく不明だ。
「ところで、ロウ様がよければ、明日には、わたしの知り人のいるエルフの里に立ち寄ろうと思います。通称“褐色エルフ”の里と呼ばれています。その名の通り、肌の黒いエルフ族の里です。もしかしたら、そこでなにかの仕事を世話してくれるかもしれません。その里で旅費をいくらか工面して、それからハロンドール王国に入るというのはどうでしょう。わたしの髪もそこで売れるかもしれません。信用のできる行商人でも探し出せれば、売っても足がつかないと思うのです」
一羽分の肉をふたりで平らげた頃にエリカが言った。
もう一羽のウサギは、すでに必要分を解体して土鍋の中に浸けている。食べない分については煙で燻していたから、それは保存用として持っていくつもりだと思う。
「褐色エルフの里か……。まあ、エリカに任せるけど、お前の知り人ということは、アスカも立ち寄ることは予想しているんじゃないか? 大丈夫か?」
あの魔女をこっぴどくとっちめてから、ルルドの森から逃亡してきた。
きっと怒っているだろう。
随分としつこそうな性格をしていたような気もするし、こうやって人里を避けて転々としている分には、居場所を見つけられないと思うが、エリカの知人などということになれば、アスカも立ち寄りを予想して追手を事前に送っている可能性がある。
だが、エリカは首を横に振った。
「その可能性は低いと思います。なにしろ、わたしの故郷について、アスカ様には一度も語ったことはないのです。本当の名も隠していましたし……。ましてや、褐色エルフの里は、わたしも初めて向かう場所です。ただ、イライジャがいるというだけで……」
「イライジャ?」
初めて耳にする名に、何気なく一郎は訊ねた。
「故郷のエルフの施設で同じように育った幼馴染です……。あっ──」
説明しかけていたエリカが真っ赤な顔をして、慌てたように両手を身体の前で左右に振った。
「イ、イライジャは人妻です──。人妻ですよ……。とても美人の褐色エルフですが人妻なのです──。里長の息子様という方に見初められて嫁いでいったのです。でも、人の奥さんで……」
「わかっているよ──」
エリカがなにを慌てたのかがわかって、一郎はにやりと笑って、エリカの言葉を遮った。
「人妻には手を出さない……。淫魔師は色情狂の代名詞じゃないんだよ。むしろ、性欲はちゃんと制御できるから心配しなくていい……。ましてや、エリカの幼馴染に酷いことなどしないよ」
一郎は言った。
エリカはほっとした表情になった。
「す、すみません……。そんなつもりはなかったのですが……」
じゃあ、どんなつもりだったんだと突っ込もうとしたがやめた。
その代わりに、手を伸ばしてエリカを引き寄せて、エリカに身体を向けた一郎の正面に立たせるようにした。
「……その代わり、俺の性欲をしっかりとエリカが解消させるように頑張るんだね。そうすれば、俺もエリカの友達に手を出さなくて済む……」
一郎はうそぶいた。
「そ、そんな……」
エリカが困ったような顔になった。
「さあ、食事は終わりだ。寝るにはまだ早い──。いつもの調教の時間だ。この半月で随分と感じる身体になったからな。エリカをどこの誰よりも敏感で、あっという間に俺の愛撫で達してしまう玩具のような身体にするつもりなんだ……。さあ、いつもの調教の格好になれ」
一郎はエリカの手首から手を離して言った。
「で、でも、まだ、お話が……。その里に入るときに、ひとつだけ問題が……。それをロウ様に判断していただきたくて……」
「いいから脱ぐんだ。話は調教のあとに聞いてあげるよ」
「は、はい……」
エリカは面白いくらいに顔を真っ赤にすると、大きく息をして、諦めたようにその場で服を脱ぎ始める。
“全裸になって一郎の前で手を背中に組んで跪く”
それが、日頃命じている「調教の姿勢」だ。
ルルドの森から脱して数日は、夜の襲撃を警戒して、このようなことは慎んでいたが、三日を過ぎたくらいから、遠慮なく夜はエリカを抱かせてもらっている。
それに、エリカは事前に可能な限りの警戒と防護措置はするが、一郎がエリカを「調教」すること、そのものは駄目だとは言ってない。
むしろ、それができるように、野宿の場所などを気を遣っているようだ。
エリカは一郎の目の前で、一枚一枚服を脱ぎ、その場にきれいに畳んでいく。
やがて、エリカは下着だけの姿になる。
この世界の下着は、乳房については「胸巻き」とも称する布を巻いて揺れを防ぐ感じのものだ。一方で下着は、一郎の元の世界とほとんど同じであり、薄くて腰にぴったりと密着して股間を覆うだけのものだ。その下着も外し、エリカは一糸まとわぬ格好になっていく。
一郎は焚火に照らされるエリカの裸身を愉しみながら、自分が背負っている袋から一本の道具を取り出した。
柔らかい小禽の羽根で作った特製の「筆」だ。
エリカに対する調教道具だ。
「今夜は、またこれでなぶってやるぞ……。そして、今夜はちょっと調教の段階をあげるからね」
一郎はもうほとんど素裸になっているエリカの膝の後ろあたりをその柔らかい「筆」でほんの少しくすぐってやった。
「あっ、ひっ」
エリカが小さな悲鳴をあげて、さっと脚を筆から避けるような仕草をした。
本当に可愛らしい……。
「あ、あのう……。こ、今夜もよろしくお願いします……」
きれいに畳まれた衣類の横に、素裸になったエリカが跪いた。
両手を後ろに回して背中側で組み、脚は肩幅に開いている。
一郎が命じている「調教」の姿勢そのものだ。
拘束具は使っていないが、一郎の「命令」は拘束具と同じ効果がある。始まってしまえば、エリカは一郎の許可なく、この姿勢を崩せない。
一郎は目の前のエリカをじっと見た。
嫌がってはない……。
むしろ、これからのことに期待してすっかりと欲情している……。
魔眼を使うまでもなく、それはすでに息をあげているエリカの様子を見ればわかる。
「じゃあ、始めるよ」
一郎は準備していたものを荷から出して、エリカの顔に近づけた。
「きゃ、な、なんです?」
エリカが思わず、顔を後ろに避けて声をあげた。
「目隠しだよ──。調教の段階をあげると言っただろう」
一郎はそう言うと、当惑した表情のエリカの顔にしっかりと目隠しを施した。
「んんんっ」
特製の「筆」でエリカの無防備な乳房をすっと撫ぜると、エリカの喰い縛った口からは、我慢しようとしているらしい嬌声がこぼれ出た。
すでに陽は落ちている。
焚火の光だけが、この一帯の唯一の明かりだ。
赤い炎に照らされているエリカの真っ白い肌は本当にエロチックだ。
このエルフ族の美少女を好きなように弄ぶことができる……。
もしかしたら、元の世界にいたのでは、あり得ない幸せを手に入れたのかもしれない……。
そんなことを思いながら、今度は右の内腿を撫でるように筆でくすぐった。
「あんっ」
エリカは布で目隠しをされた顔を大きくのけ反らせて歯を噛み鳴らした
もちろん、筆など使わなくても、念じるだけで、同じ刺激をエリカの身体に送り込むことができる。
それが淫魔力に支配された性奴隷と淫魔師の関係なのだ。
だが、実際に「筆」でなぶるというのが風情があっていいのだ。
いかにも、「調教」している感じがするので、一郎はこの「筆」責めが大好きだ。
もちろん、表では嫌がる素振りのエリカが、実際では満更でもないのは魔眼の力でわかっている。
“エリカ
エルフ族、女
年齢18歳
ジョブ
戦士(レベル20)
魔道遣い(レベル10)
生命力:100
攻撃力(目隠し状態):20↓
魔道力:100
経験人数:男1、女3
淫乱レベル:S
快感値27↓
状態
一郎の性奴隷
淫魔師の恩恵”
絶頂への指標を表す「快感値」は、数回筆で擦るだけで、すでに“27”だ。
この数字の示す意味は、いまや完全にわかっている。この数字が“0”になれば絶頂する。“30”を下回れば、すでに挿入可能なくらいに濡れているという状態だ。初期値は女の身体の敏感さに関係があり、いまは“100”くらいがエリカの初期値だ。おそらく、初期値の数値が低いほど、感じやすい身体ということになると思う。つまり、初期値の数値が低ければ低いほど、あっという間に絶頂に達してしまう快楽に弱い身体ということだ。
また、淫乱レベルの記号も、その女体がどれだけ性的刺激に弱い身体をしているのかという指標だ。
エリカは最初は「B」だったが、一郎が性奴隷にした直後に「A」になり、いまは「S」だ。Sになってからのエリカは、目に見えていままでと一変するくらいに敏感でいやらしい。
「はああ──」
エリカが大きな声をあげて身体を震わせた。
一郎は筆で胸の谷間から局部にかけて、すっと掃くように筆を動かしたのだ。一郎にはエリカのどこを責めれば欲情を誘うかがひと目でわかる。性交のとき、一郎には相手の「感じる場所」というのが、桃色や赤色のもやのようなもので示されるからだ。
一郎はただ、そこを責めるだけだ。
とにかく、それを指標にして、エリカの身体のあちこちに筆を動かし続けた。
これがなければ、三十五歳になるまで、性経験のなかった一郎が、女を悦ばせる抱き方をするなど無理だ。
毎夜の営みのたびに、エリカが狂ったように愉しんでくれるので、本当にこの淫魔師の能力には感謝している。
もっともっと、エリカに感じてもらいたい。
一郎は魔眼によるステータスと、淫魔師の能力による数値や色を確認したがら、エリカの身体を筆で愛撫し続けた。
それにしても……と思う。
性交とは関係ないが、エリカのステータスにある「直接攻撃力」については、通常の武器を持たない状態であれば、いまは「100」くらいの数値を示しているが目隠しをしたことで「20」になった。
だが、「20」というのは、一郎の普通の状態と同じ数字なのだ。
つまり、男の一郎だが、身体の細い女エルフのエリカに目隠しをさせて、初めて対等になるということだ。
「直接攻撃力」というのは、文字通り、魔道などによらない身体や武器を遣った戦闘能力のことであり、その人物が素手であるのか、武器であるのか、あるいは拘束などをされているかによって数値は変わっている。極端にいえば、その日の体調によっても数字は変化する。
そういうものなのだ。
例えば、エリカの場合は素手のときの戦闘力は、いまは「100」だが、小弓を持たせれば「500」に跳ねあがる。短剣の場合は「400」だ。つまり、エリカは、短剣などの武器よりも、弓の方が得意なのだ。
しかしながら、同じように一郎が武器を持っても、直接攻撃力の数字はそれほどは影響しない。
素手のときの戦闘力が「20」の一郎だが、エリカの扱う小弓を持っても数値はやはり「20」のままだ。一郎は弓の扱いができないからだ。また、短剣を持っても、「20」が「21」に変わるだけだ。
およそ、まともな戦闘には役に立たないということが自分でもわかる。
「はあ、はあ、はあ……、こ、怖いです、ロウ様……。怖いです……」
いくらか筆で刺激を加えてから、今は焦らすようにしばらく間を置いているところだった。
しかし、目隠しをされているエリカは、どこを責められるかわからない不安で、この待っている時間からも、強い欲情を誘ってしまうようだ。
なにもしなくても、快感値が少しずつさがり続けていることでそれがわかる。
今度は乳房の横のあたりをすっと筆で擦った。
その辺りはエリカの性感帯であることを示す桃色のもやのぎりぎり外側くらいだ。
「はあっ」
エリカが驚くくらいの反応を示すとともに、もうこれだけで身体がくたくたと力が抜けたような状態になった。
また、筆の当たった場所に、ぱっと赤いもやが拡がり、その一帯周辺が桃色に包まれる。新たに快感の場所が増えたのだ。
本当に反応が著しくて面白い。
“エリカ
快感値:15↓”
すでに喘ぎの声が熱っぽい。
股間からは滴るくらいに蜜も垂れ始めている。
この瞬間でも挿入が可能なのだが、いまはもう少しエリカを苛めてみたかった。
一郎は、同じように、乳房周辺のもやのぎりぎり外側を筆で刺激することで、さらにエリカの身体の上の赤色と桃色のもやを拡げながら、今度は淫魔の力で、アヌスの表面と茂みの奥にやはり筆の感触を送り込む。
そこはすでにもやが真っ赤になっていた部分だ。
「あはあっ」
エリカがたまらず後ろ手に組んだ身体を跳ねあげた。
そこを刺激されたことで、徐々に下がっているだけだった耐久度数が一気に一桁になった。だが、これからはそんなに下がらない。
筆程度の弱い刺激ではなかなか零に到達するほどの最終的な快感は集められないようなのだ。それでいて、一郎が赤い場所を拡げるように全身に刺激を加えているので、どんどんを身体を染めるもやの色と場所が濃く、そして、広くなる。
しばらく、それを続けた。
しかも、責めに慣れないように、一箇所の責めを長く続けることなく、巧みに短い時間で場所を変えていく。視界が隠されているエリカは、翻弄されてあられもない声をあげるようになった。
乳房や局部や股間といった当たり前の場所だけではなく、頭の先からつま先まで考えられる部分のすべてに、「筆」と淫魔力で刺激を加えていく。
「あっ、あっ、あっ、く、苦しいです……。も、もう、狂いそう……ああ──」
エリカがついに動転したような声をあげた。
すでに、快感値は“2”と“3”の数値をいったりきたりするまでになっている。
ここで強い刺激を与えれば、あっという間に数値は零になり、身体は絶頂に達するだろう。
毎晩のようにエリカを抱かせてもらっている一郎にはそれがわかる。
一郎は始まってからの時間を知るために空を見あげた。
大きさの異なる三個の月が空に浮かんでいる。その位置の変化で時間の経過がわかるのだ。
それにしても、こうやって複数の月が空に浮かんでいるのを眺めていると、やはり、ここは異世界なのだということを改めて自覚する。
この世界に月は全部で五個あるらしい。五個の全部が夜空に浮かぶのは数年単位で起きるらしいが、逆に全部の月が隠れるというのは、エリカも聞いたことはないようだ。だから、この世界では、空が雲で覆われて月明かりがないときはあるが、空に月がない「闇夜」という概念はない。
いずれにしても、それらの月の動きで時間を知る方法はエリカに教わっている。
今夜の「調教」を始めてから、約「一ノス」というところだろうか。
こっちの世界では、「ノス」というのが時刻の単位であり、一日は三十ノスだ。つまり、一ノスというのは、一郎の知っている時間の単位では、約四十八分に相当するらしい。ちなみに、一ノスは、五十「タルノス」であり、一タルノスは一分弱になる。また、一日の長さは、一郎のいた元の世界とほぼ同じのようだ。
一ノスのあいだ、筆責めを受け続けているエリカは、すでに太腿の痙攣がとまらなくなっていて、目隠しをした顔は完全に上気している。
筆を引きあげた一郎は、前々から試してみようと思っていた淫魔力をエリカにやってみることにした。
じっとエリカの下腹部を凝視する……。
膀胱のある辺り……。
そこに水分が溜まっているイメージを膨らませる……。
「はううっ──。な、なにをしたんですか、ロウ様──。あ、ああっ、こんなの──」
エリカの腰が前側にがくりと曲がった。
「おお……。うまくいったな……」
一郎は我ながら感嘆の声をあげた。
多分、できると思った。
一郎がやったのは、奴隷化した相手の身体を操れるという淫魔の力でエリカの膀胱を水分でいっぱいにすることだった。
いま、エリカは急激に襲った尿意に激しく狼狽しているところだろう。
そのエリカをすでに準備されている「寝床」に横たわらせた。
「だ、だめえ──。で、出ちゃう……も、漏れます──。漏れちゃいます──」
悲鳴をあげるエリカを無視して、下だけ裸になると、一郎は尿意に苦しむエリカの脚を開かせ、エリカの股間に怒張を埋めていった。
「あ、あふうっ、だ、だめえ──」
エリカが悲鳴をあげた。
構わず、一郎は勃起した男根をエリカの中に沈めていく。
エリカは激しすぎる尿意と快感にどうしていいかわからないという感じで、顔を左右に振って狼狽えた声を出し続けている。
“エリカ
快感値:2……3……↓↑”
いつもなら、挿入と同時に絶頂してしまうのに、今夜は尿意のためにそうはならないようだ。
快楽に流れていくエリカを見ていると、強い愛情が生まれてくるのと同時に、もっと苛めてやりたいと思う気持ちも芽生えるのが不思議だ。
いずれにしても、本当に寝床を汚されては困るので、一郎はこっそりとエリカの膀胱を封鎖してしまった。
淫魔力で身体を操るということにも慣れてきた。
エリカを毎晩のように抱くことでわかったのは、手にした性奴隷を操れるようになるには、ただ呪術で縛るだけではなく、相手の奴隷の身体を深く知ることが必要だということだ。
淫魔力で尿意を生んだり、あるいは尿管を封鎖したりということは、最初はできなかった。
しかし、毎晩、エリカの身体を観察し、調べ、犯すことにより、いまはできるようになった。身体の感覚を操るには、頭にはっきりとしたイメージを浮かべることが必要だからだ。
もっとも、こうやって、命令を与えて身体を自在に操ったり、拘束したりするというのは、「性交」に関するときの場合だけなのだ。性交以外のこととなれば、まったく淫魔の力は働かない。
たとえば、「嘘をつくな」という命令は、性行為をしているときや、性交に関する内容のときには有効であるが、そうでないときには、まったく効力を失う。
まあ、そういうものなのだろう。
「あっ、あっ、あっ、ああ……」
エリカは懸命に尿意の苦痛に必死に耐えながら一郎を受け入れている。
一郎はそんなエリカを愉しみながら抽送を開始した。
毎晩抱いていることでわかったのは、俺とエリカは性の相性が最高だということだ。
エリカの身体は信じられないくらいに気持ちがいい。
滑らかで豊かな粘膜の感触──。
熱くて豊潤な愛蜜の果汁──。
それらが鍛えられた股間の筋肉でぐいぐいと締めつけてくる……。
いまもそうだ。
たっぷりと味わいたいという気持ちと、すぐに放出したいという気持ちが交差する。
出したいと思えばいつでも出せる。
逆もそうだ。
そんな風に、思うままに射精がコントロールできるのは、淫魔師となった一郎に備わった力のようだ。
「い、いきますう──」
エリカが下から一郎の背中に抱きついてきた。
快感値がは“0”──。
エリカは達したようだ。
「ああっ、だ、だめえ……」
絶頂の瞬間、股間が完全に緩んだのか、エリカが慌てたような声を出した。
緊張を解いてしまったので、尿が漏れてしまうと思ったに違いない。
だが、すぐに漏れ出ない尿に困惑の表情を見せ始めた。
昇天しながら、そんな複雑な感情に襲われているエリカを抱きしめながら、一郎は最後の抽送をしていた。
今夜はこのまま精を出す。
そう決めた。
エリカがまだ絶頂状態にあることを確認しながら、一郎は歓喜の白濁の汁をエリカの子宮にぶちまけた。
*
「ああ、な、なにしたんですか……。こ、こんなの酷いです、ロウ様」
余韻にひたりかけていたエリカが、がばりと身体を起こして両手で股間を覆って立ちあがった。
尿意がすでに限界を越しているはずだ。
それなのに排尿ができない苦痛にエリカは顔を歪めている。
「ちょっと、やってみたかったんだ……。悪いな……」
一郎は、エリカの目隠しを外してから、そのエリカの右の手首を引っ張っていくと、寝床から離して、まだ燃えている焚火の明かりのそばに連れていった。
「な、なんですか?」
エリカは抵抗はしなかったが、ぎょっとした表情になった。
一郎は食事のときに使った石の椅子に座っている。
エリカはその前に立たされている態勢である。
強い尿意のために、かなり前屈みの姿勢になっていた。
エリカは完全な素裸であり、一郎は下だけなにもはいていないという格好だ。
「一度、女がおしっこするところを目の前で見てみたかったんだ。やってくれよ」
一郎はできるだけ、なんでもない口調で言った。
「な、なに言ってんですか──。そ、そんなことできませんよ──」
しかし、エリカはびっくりして、眼を大きく見開いた。
「できないって言っても、無理矢理やらされるのは知っているだろう? いい加減に慣れろよ。さあ、腕を後ろに回して、脚を開け」
一郎は言った。
命令に逆らえない淫魔の力がエリカの身体に刻まれている。
拒否の言葉を訴えて身悶えするエリカだったが、その手足は一郎の命令のままに動いてしまう。
たちまちに、エリカは一郎の目の前で指示したとおりの格好になった。
「ああ、や、やあっ……。む、無理です……。わ、わたしは、誇り高き……、お、女エルフで……た、た、立ったまま用を足すなんて……」
エリカは恥辱に顔を真っ赤にして声を震わせた。
しかし、恥ずかしいことをさせると、それがエリカの淫らな内心の興奮を誘うのも事実のようだ。
余韻状態だったエリカの「快感値」が再びじわじわと下がりだす。
「じゃあ、我慢してみたら? できるものならね……」
一郎は冷酷に言い放つと、止めていたエリカの尿管を解放した。
次の瞬間、しゅっという大きな音とともに、激しい放水がエリカの股間から飛び出した。
「あっ、あっ」
エリカが羞恥に打ちひしがれたような表情になった。
「へえ、これが誇り高きエルフ女の立小便ということか。いいもの見たな」
わざとエリカを追い詰めるような言葉を使って、まだ放尿を続けるエリカをからかう。
果たして、エリカは恥ずかしさで全身を真っ赤に染めている。
一方で、エリカの快感値が、一気に“5”にまでなっていた。
これは、もう一度できそうだな……。
すっかりと、元気を取り戻した一郎自身の股間と、まるで気をやっているように頬を火照らせているエリカの姿を見て、一郎は思った。
*
三個あった空の月は、いまは一個になっている。
一郎は服を着たが、エリカは疲労のあまり素裸のまま寝入ってしまった。いまは、仰向けの一郎に裸身を寄せるようにして、静かな寝息を立てている。一郎は、そんなエリカを片手で抱くような体勢で横になっていた。
無理もない……。
快感の限界まで引き出すような性交を結局三回やった。
最後には、エリカもまともに意識を保っていないような状態だった。
三回とも中出しだ──。
本当に気持ちよかった。
ところで、この世界には、“サビナ草”と呼ばれる完璧な避妊効果と堕胎作用を持つ薬草が知られており、それを月に一度服用としておけば、どんなに精を注がれても受胎はしないらしい。
エリカも戦闘エルフとして、平素から服用していたらしいが、この旅の途中でもそれを見つけて、エリカは魔道で丸薬を作っていた。全世界のどこにでもあるありふれた薬草であり、大抵の女はそれを使って妊娠をコントロールしているとも言っていた。
一郎もサビナ草を見たが、確かにどこにでもありそうな小さな紫色の花の雑草だった。
だが、そんなものがなくても、おそらく一郎には、女体を孕ませたり、あるいは、それを防いだりすることは自在にできる気がする。
女体の身体に精を放つとき、心の一部にその選択を促すなにかが生まれるのだ。だから、一郎は自分が望まない限り女体を妊娠させることはないし、逆に、望めば確実に受胎させることができるのではないか……。
なんとなく、そんなことを考えていたら眠くなった。
一郎は睡魔に身をゆだねることにした。
明日は、褐色エルフの里というところにいくはずだ。
そういえば、なにか懸念事項があるとエリカが言っていたが、それを訊ねるのを忘れていた。
まあいい……。
明日のことだ……。
一郎は、短くなったエリカの金色の髪に顔をつけながら、そのまま眠りに陥っていった。