【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「皇帝陛下、時間になりました」
声をかけたのは、エリカだ。
一郎は、思念をやめて顔をあげた。
「わかった。だが、皇帝なんて呼ぶな。次にそう呼んだら、お仕置きだぞ」
「わかりました、ロウ様」
エリカがくすりと笑った。
控室として準備されている天幕を出る。一緒にいたほかの女たちもだ。
ハロンドールの王都ハロルドの郊外にある軍の練兵場には、温かい日差しと気持ちのいい風が吹いていて、絶好の閲覧式日和といえた。
エリカとともに、遠くにある観閲台に向かうために準備されている台の上に乗る。
臨月に二か月を切っているエリカのお腹は、妊婦であることが誰の眼にも明らかな程度に膨らんでいる。
無理をするなと一応は忠告はしたのだが、今日の行事にはどうしても参加するといってきかなかったのだ。
まあいい。
あんなことがあっても、健やかに育っている子だ。多少のことにはびくともしないのだろう。
「じゃあ、どうぞ、奥さん」
左腕を出す。
エリカがその腕に軽く手を添える。
最初はぎこちなかった「正妻」業務も、随分と自然で精錬された所作ができるようになったものだ。
そのエリカの手を腕に掴まらせ、外に準備されていた真っ赤な絨毯が敷き詰められている平たい台座に立った。
「エリカ、気分が悪くなったら言うのよ」
護衛役のコゼが小さな声で声をかけた。そのコゼは一郎とエリカが並び立つ場所のちょっと左斜め後ろに立つ。
「大丈夫だったら。問題ないって言ってるでしょう」
エリカが言い返す。
「ならいいけどね」
コゼが肩を竦めるのが見えた。
さらに、コゼの反対側にマーズが立つ。そして、ミウ。ミウはコゼの横だ。最後にスクルド。認識阻害の効果を刻んでいる紫色のフード付きのローブを身に着けていて、ミウとは反対側に立つ。
このところ、一郎の護衛態勢は、この四人である場合が多い。
まあ、世界最高級の魔道遣いがふたりに、武芸百般を極めている女戦士のマーズと、超一流のアサシンの能力を持つコゼだ。
この四人をかいくぐって、一郎に近づける暗殺者も皆無だろう。
最高の護衛たちだ。
「では、魔道を注ぎますね」
ミウの言葉に一郎は頷く。
最初に会ったときには十歳にもならない小柄でやせっぽちの童女だったミウも、いまや十四歳だ。少女の身体になり、すでにコゼよりも背が高い。
そう考えると、なんとなく、時の歩みを感じる。
ふわりと身体を浮き上がる感覚が襲う。
足の下の台が浮きあがったのだ。
一郎たちを乗せた平たい台がゆっくりと宙を進む。
こういうことをわざわざする必要があるのだろうかと疑念も覚えるが、まあ、何事も演出というものは必要なのだそうだ。
これもまた、名ばかりの皇帝を引き受けることになった一郎の役目のひとつなのだろう。
大歓声があがる。
統一帝国としての最初の行事ということになる各女王隊の閲兵式を見るために集まったハロンドールの王都周辺から集まってきた市民たち約十万人だ。
一郎たちの姿は、その十万人に投影具も使って大きく映っているはずだが、その十万の観客が一郎たちが登場したことで、一斉に歓喜の声をあげたのだ。
閲兵式の会場となったハロンドール王都の郊外にある練兵場には、各王国の女王たちと、それぞれが率いる大勢の武官、文官たちが並んでいた。
これから、皇帝である一郎が観閲官となって、各女王隊を観閲するのである。
つまりは、皇帝閲覧式典だ。
大陸中の市民たちにどういうかたちで、統一帝国の樹立をしらしめすのかということについて、いくつかの意見が出たようだが、例の女王会議において、結局こういうかたちということになったらしい。
荘厳にして、威厳のある一郎の姿を全世界にお披露目し、その一郎に対して、それぞれの施政地に君臨している女王たちが頭をさげて忠誠を誓う──。
その姿を魔道映像を駆使して世界に示すことで、女王たちの上に立つ一郎がそれだけの権威を持っていることをすべての人の心に植え付けようということらしい。
一郎のために一生懸命に考えてくれたことに、不満を言うつもりもなかったし、大人しく従うつもりだったが、正直、柄ではないと思う。
だが、これもまた、一郎を慕ってくれて、尽くしてくれる女たちへの心遣いだ。
今日は、大人しく彼女たちが求める役割を演じると決めている。
台座が七色の光をまき散らしながら一段高い観閲台にゆっくりと降りる。
歓声と拍手がひと際大きくなる。
まるで、嵐のようだ。
一郎はその迫力にちょっと苦笑した。
とりあえず、手をあげる。
それを合図に、会場が静まり返る。
観閲台から見下ろす地上に整列している各女王隊が一斉に姿勢をただした。
そのうち、もっとも中央に位置しているナタル森林王国のエルフ族たちが手に持っている剣や杖、あるいは腕を胸の前に置くなどの仕草で一郎に向かって敬礼をする。
このナタル森林王国隊だけで千人はいるだろう。
あらゆる種族の中でもっとも美しいと称されるエルフ族の美男美女が千人も集まっている光景は壮観だ。
「ナタル森林大王国女王、ガドニエル=サタルス・ナタル──。統一帝国に加わり、全住民とともに皇帝陛下に忠誠を誓いますわ。そして、今後、わたし、ガドニエル=ナタルは、ナタル国副王となり、偉大なるご主人様の奉仕者として尽くします──」
ガドニエルがにこにこして叫ぶ。
その声は風魔道によって会場中に流されている。もちろん、この映像は特別な通信魔道で全土に中継もされてもいる。
また、ガドニエルは副王となることを宣言したが、それによって、女王でなくなるわけではない。
ガドニエルは、ナタル森林大王国の女王にして、統一帝国のナタル地区の副王ということだ。
この二重の地位構造は、ナタル地区ならず、全地域共通だ。
統一帝国といっても、実際に治政をするのは、それぞれの女王たちなどであり、一郎はなにもしない。
するつもりもないし、できるとも思わない。
ただ、一郎は女王たちを性の力で支配し、名目だけで上に立つだけだ。まあ、そんな統一王朝など前代未聞だろうが、これもまた、女たちが求めることに応じただけだ。
それはともかく、ガドニエルめ……。
結局、「ご主人様」と呼びやがった。
だが、続く言葉は「陛下の奉仕者」であったのは、まあよかったか。
最初は、「性奴隷」だの、「雌犬」などの言葉を使おうとして、ラザニエルやエリカに散々に注意されたのだ。
いまだに、この世における最高の美女と評判のままであるエルフ女王のイメージを損なうなと、それこそ一郎まで念を押して説得した。
なんとか、まともでよかった。「ご主人様」呼び程度なら誤魔化せる。
続いて、ナタル王国隊に並んで中央部分に位置するハロンドール隊が姿勢をただす。
ナタル森林隊を凌ぐ三千だ。
色鮮やかな軍旗が並び、その前に総軍司令官のラスカリーナが立ち、さらにその前に幕僚団を率いるイザベラが立つ。
「ハロンドール中央王国女王、イザベラ=サタルス・ハロンドール。全王国臣民とともに、統一帝国に加わり、ハロンドール中央地区副王として、皇帝陛下に忠誠を誓います」
イザベラの宣言が行われる。
続いて、今回の統一帝国成立を機に、正式に分割されることになったハロンドール王国の北西部の列州同盟──。
無論、最前列の指揮は、盟主リィナ=ワイズだ。
彼女は、列州同盟の初代統領として、統一帝国への参加を宣言した。
そして、今度はエルザ──。いまは、エルザ=ハロンドール・アウステル女公爵──。
彼女の宣言が終わり、エルザもまた、南方総督のままハロンドール王国の元南部地区を治政地域として、統一帝国の一員となった。
「デセオ公国大公イザヤ=デセオは、デセオ大公として、そして、デセオ地区副王として、陛下への愛を誓います」
続いて、デセオ公国だ。
最も数が少ない百人で今回の式典に参加してきたが、全員が肌も露わな布地の少ない衣装の娼婦たちだ。
あの国では、娼婦こそが最も尊敬される職業であり、もっとも能力のある者は娼婦・男娼となり、次いで能力の高い者が王侯を名乗ると言われているそうだ。
まあ、変わった国である。
だが、百人の絶世の美女娼婦隊というのも圧巻だ。
もしかしたら、今日の観閲隊の中で一番注目を浴びているかもしれない。
「
そして、恵月国──。ハロンドール側からだと「エルニア王国」と呼ばれているが、彼女たち自身は、自国のことを「恵月」と呼ぶ。
その女王だった翠玉は、婚姻式こそまだであるが、その娘である
恵月国の統治権も、その手続きとともに、一郎に移っている。
つまりは、一郎は現段階で、恵月国の国王でもあるのだ。
だから、さっきの翠玉のような物言いになる。
「エイデン独立府は、皇帝陛下の庇護のもと、自治地区として帝国に加盟いたします」
獣人五百人を率いたアヌビスだ。
居並ぶ施政者たちのうち、唯一の男性である。
「タリオ・カロリック統一地区代表、ロクサーヌ=カロリック・サタルスは、地区の全住民とともに皇帝陛下に忠誠を誓い、皇帝陛下の信じるものを信じ、厭うものを敵とします。また、今後、地区代表の副王として、陛下に尽くします」
最後にロクサーヌだ。
女王たちによる宣言が終了したところで、一郎は軽く右手をあげた。
「イムドリス統一帝国の建国を宣言する──」
一郎は大きな声で叫んだ。
大歓声が発生する。
それとともに、ミウとスクルドによる演出のための光と花火が会場を覆う。
さらに歓声が大きくなる。
また、イムドリスというのは、建国することになる統一帝国の国名を考えてくれというので、安易だが、いまは一郎の居城ということになっている亜空間宮の名称をそのまま使うことにした。
亜空間にしかないイムドリスは、この世界のどこにもなく、また、同時にどこにでも繋がる。
国の名称として悪くないのではないかと思った。
もともとは、ガドニエルの隠し宮の名前なのだが、エルフ族の伝承によれば、クロノス神が女神たちと暮らした場所でもあるらしく、女神を使って世界を作ったという神話に、一郎と女王たちとの関係もなぞらえるのではないかと思う。
結構、いい思い付きなのではないかと一郎は自画自賛してもいた。
派手な花火が周囲を包み、そして、光の雨が降り注ぐ。
その光が拡がり、真っ白な世界に一郎をあざなった。
*
「皇帝陛下、時間になりました」
声をかけたのは、ランだ。
しばらくのあいだ、エルザのいる南方総督府にいたが、今回の統一帝国樹立にあたり呼び寄せて、宰相として働いてもらっている。
南方総督府における業績と評価は高く、もともと無名の女給であり、爵位を持たない平民女であるが、このランが宰相に任じるにあたり反対者はほとんどなかった。
そのランが天幕の中に入ってきた。
一郎は、思念をやめて顔をあげた。
「わかった」
控室として準備されていたその天幕を出た。
ハロンドールの王都ハロルドの郊外にある軍の練兵場には、温かい日差しと気持ちのいい風が吹いていて、絶好の閲覧式日和といえた。
ふと、ここにはいない正妻にしたエリカのことを思った。
もしも、エリカが生きていれば、今日の式典で横に並ぶのは間違いなくエリカだったろう。
めでたい式典だというのに、心の空虚さを感じてしまった。
慌てて、そんな気持ちを追い出す。
エリカを失ったのは、一郎自身のせいだ。
それを悔いて、一時期廃人のようになったのを助けてくれたのは、ほかの女たちだ。
だからこそ、もう死んだエリカのことで落ち込むのは、彼女たちに申し訳ない。
まずは、ひとりで遠くにある観閲台に向かうために準備されている台の上に乗る。
続いて、コゼ、ミウ、スクルド、マーズといったいつもの護衛たちが乗る。
台は閲覧式典の会場である場所に向かって宙を駆けていく。
「いい風だな」
だんだんと大きくなる各女王隊の姿を空から眺めながら、一郎はなんとなく独り言を呟いた。
日差しが強くなる。
一郎は真っ白い光に包まれた気がした。
*
「時間だ」
地下牢の鉄格子の外から声をかけたのは、アーサーだ。
一郎は、思念をやめて顔をあげた。
連日の拷問と苛酷な牢生活のために、一郎の身体は心身ともにぼろぼろだったが、この男を相手に弱みを見せたくなかった。
残っている力を振り絞って、床に座ったまま背筋をただして顔をあげる。
「これはこれは、皇帝陛下、自らが今日の拷問係か? ローム帝国の皇帝というのは結構、暇なのか?」
一郎は言葉に嘲笑を込めて言った。
「いや、それほど暇でもない。だが、これだけは直接に教えておいてやりたくてな、淫魔師」
アーサーがなにかを企んでいる表情で顔に笑みを浮かべている。
一郎はその言葉に返すことなく、アーサーを睨んだ。
また、そのアーサーの周りには、アーサーの護衛と、いつもの拷問士が並んでいる。
拷問といっても、何かを一郎に白状させるための拷問ではない。
すでに、ハロンドール王国全体がアーサーの傘下になったいまでは、一郎の存在など大した価値はないだろう。
アーサーは、長年にわたり、アーサーと敵対してきた一郎に、その処刑執行までの日々のあいだ、屈辱と苦悶を与えたくて、部下に一郎への拷問を命じているのである。
相変わらず、考えることが下種な男だ。
「逃亡していたエリカを捕まえた。それを教えたくてな。これで、お前を慕って集まっていた女は最後だな。随分と時間がかかったが、やっとお前の元恋人たちとの追いかけっこも終わりだ」
アーサーが言った。
一郎は静かに目を閉じた。
馬鹿な女だ。
一郎のことは諦めて逃亡しろと、あんなに言い聞かせていたのに……。
そうやって、一郎を助け出そうと無理をして、一人一人殺されたり、捕えられたりする。
コゼ……。
シャングリア……。
ミランダ……。
みんな死んだ。
そして、ついにエリカもか……。
逃げろと言ったのに……。
すべての支配を外してやっていたし、淫魔師としての縛りもない。だから、もはや一郎に対する思慕など残っていないはずなのに……。
だが、その判断が正しかったのか……。
一郎のことを諦めさせるために、全ての淫魔師としての刻みを消滅させた。その結果として、能力の低下を招くことになったが、それで一郎のことを見限ってくれると思ったのだ。
しかし、実際には、淫魔師の恩恵を失った彼女たちは、ひとりふたりとアーサーによる一郎の愛人狩りに捕らわれてしまっている。
「そして、なかなかにいい女だった。それを伝えたくてな。だけど、あの股間と乳首のおかしな飾りは、お前の趣味か? あれを触ると、狂ったようによがるから面白かったぞ。俺が味見をした後は、兵士たちに回して相手をさせている。いまでもさぞやいい声で鳴いていることだろう。それを教えたくてな」
アーサーは大笑いした。
一郎は鉄格子に向かって突進し、鉄格子から手を伸ばして、アーサーの胸ぐらを掴もうとした。
「あがああああっ」
その瞬間、全身に電撃が走り、一郎は絶叫してその場に倒れた。
装着されている能力封じの首輪から電撃が流れたのだ。
「明日、また来る。そのときに、どんな風にエリカが堕ちたか教えてやろう。あの女もお前同様に、いまさら奪いたい情報もないから、手っ取り早く薬でも何でも使って毀せと命令してある……。あっ、そうだ。言っておくが、俺がエリカを抱いたのは強姦じゃないぞ。あのエルフ女が自ら股を開いたんだ。お前の命を助けてやれるかもしれないと仄めかしたら、自分で服を脱いだ。健気な女じゃないか」
いまだに電撃のために痺れている一郎に、さらにアーサーの笑い声が聞こえた。
「ぐああああ──」
そこにまた首輪から電撃──。
あまりの衝撃の強さに、一郎の意識は途切れ、真っ白い光の中に包まれた。
*
「えっ」
はっとした。
なにが起きた?
まったくわからない。
いまのはなんだったのか?
すると、身体の上のロクサーヌがまるで夢遊病者のように、ふらふらと身体を起こした。
「ひゃっ」
そして、そのロクサーヌが甘い声をあげて身体をびくんと竦ませる。
一郎に挿入されていた男根が抜けたのだが、そのときについ刺激を受けてしまったらしい。
それはともかく、一郎はロクサーヌを仰向けになった身体の上に載せて犯して精を放ったはずだが、いまだ性器さえも抜いていなかったのだと思った。
また、そのロクサーヌは自ら動いたものの、まだ意識を戻したという感じではない。
虚ろな表情のまま、ぺたんと一郎の腹の上に跨ったままでいる。
「もしかして、ロウ様も見た? 予知夢を」
そのとき、ルカリナが声をかけてきた。
一郎と一緒になって、ロクサーヌに二穴責めをしていて、アナル責めを担任していたがロクサーヌを責めていたディルドタイプの「アナルビーズ」の淫具を手にしたままだ。
とりあえず、抜きはしたようだが……。
「予知夢? いまのは予知夢なのか?」
そういえば、ロクサーヌのステータスには、「予知夢」という能力が存在していた。
いまは、一郎が精を注いだことで、なぜか「予知力」と変わっていたが……。
それはともかく、いまの白昼夢のようなのが予知夢だと?
でも、随分と風変わりな夢だった。
最初と二番目は、一郎が皇帝になった夢だった。そして、そのふたつは同じ情景のようでもあったが、二度目の夢ではエリカが存在してなかった。
三番目に至っては悪夢だ。
もっとも、深いところまでは覚えてない。いまも、思い出そうとすると、ぼんやりとする。
だから、どういう状況になると、ああいう場面になるのか想像もつかない。
とにかく、あれを予知夢だと思いたくはない。
「ロクサーヌ様は、幸せなセックスをすると、予知夢を自分と相手に見させる。でも、これまで予知夢を起こせたのは、あたしだけ。でも、これからは、ロウ様になる」
まだ少しばかりたどたどしいが、随分と流暢な口調になったルカリナが言った。
だが、幸せなセックスで予知夢?
つまりは、エクスタシーに達すると、予知夢を起こすということか?
一郎は首を傾げた。
そのときだった。
心ここにあらずという感じでぼんやりとなっていたロクサーヌが不意に口を開いた。
しかし、まだ意識が戻ったという感じではない。
表情は虚ろのままだし、眼は閉じている。
「世界でひとりの君主が現れる……」
だが、そのロクサーヌの口から、まるで詩歌のような言葉が不思議な旋律とともに流れてきた。
「ロクサーヌ?」
「ローヌ?」
一郎とルカリナは同時に、ロクサーヌに声をかけた。
しかし、返事はない。
その代わりに、不思議な歌が続く。
「……だが、平和は長くはない……。憎悪と復讐と狂気が英雄を襲うだろう……。ああ、導きの巫女の声に耳を傾けさえすれば……」
ロクサーヌが口を閉じる。
すると、再び力を失ったロクサーヌの身体が一郎に向かって倒れてきた。
一郎はとりあえず、彼女の身体を支えた。
「えっ、なになに?」
「なんですか、いまの?」
「強い魔道波のようなものが流れましたわ? いま、なにか起きましたか?」
コゼとエリカが寄ってきた。
ふたりは、ロクサーヌの不思議な歌が聴こえたのだろう。
また、スクルドも来た。
魔道の波が流れた?
いまのロクサーヌのことか?
だが、ステータスを読む限り、いまのは「予知」なのだろう。
彼女の新たに覚醒した能力に、「予知力」の言葉があるのだ。
もっとも、残念ながら、さっぱり意味がわからない。
「いまのはなんだ、ルカリナ?」
念のために訊ねた。
後でロクサーヌに訊くが、わからない可能性も高い。もしかして、さっきの記憶さえないかもしれない。
「いえ、さっぱり。こんなのは初めてで……」
ルカリナも当惑している。
まあいいか……。
考えても仕方がない。
それにしても、一郎の支配を受け入れた女たちの中で、「使徒」の言葉がステータスにある者がこれで三人か……。
ひとり目は、使徒にして「勇者」の文字があるイット──。ただし、未覚醒。
二人目は、「魔女」と表示されているラザニエル──。彼女もまた能力は未覚醒──。
ロクサーヌは三人目だ。使徒にして「巫女」。能力は予知か……。
ラザニエルからすれば、「使徒」というのは、かつてクロノス神に仕えた女神たちを指す言葉だという。
一郎は、いまステータスに「クロノス」という表示があるが、そこに集まった獣人のイット、エルフ族のラザニエル、そして、今度は、人間族のロクサーヌか……。
これはどういうことなのだろう?
だが、……。
まあ、いいか──。
「よし、それについては後で考えよう。いずれにしても、ロクサーヌに訊ねてみないと話もわからん──。ルカリナ、ロクサーヌを休ませてやってくれ。適当な寝椅子に横にしてやるといい」
一郎は言った。
ルカリナが頷き、ロクサーヌの身体を抱きあげた。
それにしても、いちいち、深い絶頂をするたびに、おかしな夢を見させられたり、呪文のような詩歌を聞かされるのも面倒だ。
しばらくは封印しておいてやるか。
なによりも、さっきの三番目のような悪夢もどきの予知夢など冗談じゃない。
そもそも、予知など必要ない。
“ロクサーヌ=カロリック
元カロリック大公
人間族、女
……
導きの巫女(使徒)
治政力(レベル52)
……
……
特殊能力
予知力(覚醒・封印)”
結びついた淫魔力を使って、能力を塞ぐ。
これで、抱くたびに白昼夢に襲われなくて済むか……。
それはともかく、さっきの白昼夢……。
あのときの一郎は、面白いことを思考していた。
皇帝の居城は「イムドリス」──。
イムドリスというのは、ガドニエルがいたエルフ女王の隠し宮だ。予知なのか、なんなのかはわからないが、あの中の一郎は、皇帝はイムドリスを宮殿にしていると思念していた。
イムドリスか……。
そのとき、どんと一郎の身体に誰かがしがみついてきた。
「ロウ様──。終わりましたよね──。だったら、あたしたちの番ですよ。まだ可愛がってもらっていません。お姉さまたちが終わったなら、あたしたちです──」
跳びあがって抱きついてきたのは、全裸のミウだ。
一郎は抱き支えながら微笑んだ。
「仕方のないミウだな。じゃあ、今日は厳しいのをいくぞ。たったいま、ロクサーヌをいたぶったアナル用の淫具だ。それで可愛がってやろう。しかも、一度アナルを犯したら明日の朝まで尻の穴に淫具を入れっぱなしにする。こってりといくぞ」
「あん、よろしくお願いします。すっごく楽しみです。怖いですけど」
「病みつきにしてやろう。四つん這いになって尻を向けろ」
一郎は、ミウに一郎に向かって尻を向けさせると、亜空間から淫具を出した。たったいま、ロクサーヌをいたぶったのと同じ金属玉が八連繋がったディルド状のアナルビーズだ。
そして、それを片手で持ったまま、まずは右手の人差し指でミウの小さなアナルをすっと撫であげる。
「んんんっ、あんっ、ああっ」
ミウがぶるりと身体を震わせた、
「まあ、よかったですね、ミウ。淫乱になればなるほど、魔道遣いとして成長します。励みなさい」
まだ横にいたスクルドが声をかけてきた。
「馬鹿みたいなことを、大真面目に言うんじゃないわよ。じゃあ、行くわよ……。ねえ、ご主人様、ミウの後はまたあたしを可愛がって欲しいです」
コゼだ。
「おう、どんどん来い。今日はおねだりの上手な者を優先して抱くからな」
一郎は言った。
淫魔術で指の表面を潤滑油でいっぱいにする。
すっと指をミウのアナルに挿し入れる。
また、一方で集まってきていたコゼやスクルド、エリカなども一度離れていく。
ほかの女たちもまた、めいめいに食事をしたり、寝椅子で休んだりしている。
そんな感じだ。
「ああん、ひんっ」
ミウが四つん這いになっている身体を跳ねさせる。
一郎はミウの尻穴をゆっくりと解しながら、残った指を使って亀裂やクリトリスを刺激する。
「ひゃあああ」
ミウが激しく小さな裸身を反応させ、甘い声を浴場に響かせた。
(第20話『導きの巫女』終わり、第21話『クロノスの女たち』に続く。)