【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「そりゃあ、あんたらも災難だねえ。それでその艶やかな恰好なんだね。よく似合っているよ」
ゼノビアとシズには悪いが、イライジャは大笑いしてしまった。
どうやら、ゼノビアとシズの破廉恥な恰好は、ロウの悪戯で強要されたもののようだ。
ミランダがロウに言いなりになり、イライジャも立ち寄ったことがあるアッピアの山温泉にいたゼノビアとシズにロウからの脅迫を伝えて、ふたりを強引に呼び戻したことまでは承知していた。
だが、ロウがさらに、王都に帰る直前のふたりに、追加の脅迫を送り届けさせて、目の前のような破廉恥服装を強要したというのは知らなかった。
しかも、このふたりは、どうやら馬鹿正直にも、強要された格好をして、ここまでやってきたようだ。
つまりは、怖ろしく短いスカート丈に、身体の線がはっきりと浮き出るほどの小さめの上衣という恰好だ。
また、胸部分は開襟していて、乳房の谷間ははっきりと見えている。
さらに、胸巻きも、腰の下着も身に着けてないようだ。
ゼノビアの話によれば、最後のゲートの手前で、服を入れた荷とともに、これ以外ものを身につければ、ふたりの破廉恥映像を王都広場で公開するという脅迫を渡されたようである。
だからといって、その脅迫に従ってしまうのは、なんだかんだで、ふたりがロウの悪戯と嗜虐に染まっている証拠なのだろう。
いずれにしても、夜とはいえ、この格好で王都の街を歩くのは恥ずかしかったに違いない。
あれだけ怒っていたのも、よくわかる。
「な、なにがおかしいんだい──」
ゼノビアが真っ赤な顔で怒鳴った。
スカート丈が短いので、座れば股間が露出気味になるため、手で恥ずかしそうに股間を押えている。
こんな仕草が見たくて、ロウもこの服を送り届けたに違いない。
王都を中心とした移動術設備の「ゲート」を事実上管理しているのは、スクルドなので、手紙と服をふたりに手渡されるように手配したのはスクルドなのだろう。
まったく、ミランダといい、スクルドといい、ロウの愛人たちの悪い癖は、なにからなにまで、無条件にロウの言いなりになる傾向があることだ。
「おかしくはないけどねえ……。それにしても、胸の谷間を強調する服を着るには、ちょっと体形が不足するんじゃないの、シズ」
イライジャはシズをからかった。
豊かな胸のゼノビアとは異なり、シズの胸は小さめだ。
シズが真っ赤になった。
「ひ、酷い、イライジャお姉ちゃん──」
怒ってシズが頬を膨らませる。
そんな仕草も可愛いものだ。
「とにかく、じゃあ、ミランダに取り次げばいいのね。まあ、そんな恰好でロウのところに出頭しようものなら、間違いなくロウの悪ふざけの餌食になるわね。さしずめ、明日一日は、その恰好で王都の街を徘徊させられるのかしら。覚悟することね」
イライジャは、くすくすと笑いながら言った。
まあ、間違いなだろう。
すると、ゼノビアはイライジャを絞め殺さんばかりの眼で睨み、シズは不安そうに顔を蒼くした。
イライジャは咳払いした。
「悪いことは言わないわ。あんたらに指名クエストをあげるから、この足で王都を出なさい。ロウにはどうしても、ギルドで必要な緊急クエストが発生したと説明して、とりなしてあげるわ。その代わりに、クエスト報奨は規定の最少額よ。ただ働きとは言わないけど、その恰好で真っ昼間に王都を歩かされるよりはいいでしょう?」
イライジャは言った。
すると、ふたりがぽかんとした表情になる。
「ああ? あのロウ殿をとりなしてくれるのか? 本当に?」
「本当、イライジャお姉ちゃん?」
ゼノビアとシズが信じられないという顔をしている。
「あんたたちが思うよりもずっと、ロウは話もわかるし、理不尽じゃないわよ。いずれかのパーティに指名クエストを与えようとしていたのは事実だしね。これまで、特異点関連のクエストは、ロウたちが引き受けてくれてたんだけど、これからはやってもらえないだろうし、特異点の始末ができるパーティを育てる必要があるのよ。あんたらの実力なら大丈夫よ。受けなさい」
特異点というのは、いわゆる異空間に通じる異相との切れ目のことだ。
かつて、この世界では冥王戦争という魔族と人族との戦いがあり、人族の連合軍に敗れた魔族は魔獣とともに、異相空間に追放されたのであるが、その空間との壁は非常に不安定であり、しばしば、こちら側の空間相との壁にほころびが生じて、異相空間とこちらの空間が繋がることがあるのだ。
それが「特異点」である。
特異点は、地形地相に発生することもあれば、まれに、生物の身体にできることもある。特異点ができれば、そこからかつて異相に追放した魔獣などがこちら側に来てしまうので、特異点の周りには、魔獣などが溢れることになる。
これを放置すれば、魔獣がはびこる人の住めない場所になるだけじゃなく、特異点がさらに広がって、数百年単位ではあろうが、あの冥王がこちらに復活するということもあり得るのだ。
だから、特異点は発見次第に、小さいうちに潰して、空間のほころびをなくしてしまうというのが鉄則だ。
王軍なのでも対応するが、それを軍以外で請け負うのが冒険者ギルドである。
今回の特異点発見の報告は、王軍絡みのものだ。
王都に近いさびれた山村の近くのことであり、魔獣が発生していたことから、冒険者ギルドでも調査クエストをかけていたが、その山村に理由があって、王軍が出動したことで付近の調査が行われ、特異点の発見が確認された。
ただ、王軍そのものは別任務があって対応できないため、正式に冒険者ギルドに対して、特異点処置の依頼が王国から入った。
イライジャは、どのパーティにやらせようかと悩んでいたが、ゼノビアとシズなら問題ないだろう。
失敗すれば大変なことになるため、不安があるパーティには任せられない。
その点、このふたりなら大丈夫と思う。
「特異点って……。あたしらは、特異点処理はやったことがないんだけどねえ」
ゼノビアが当惑した表情で応じる。
イライジャくすりと笑った。
一生懸命に隠していたスカートの裾から手を離したため、下着を身に着けていない股がちょっと見えたのだ。
エルフ族であるイライジャは、人間族とは比べ物にならないくらいに夜目も利く。だから、はっきりと陰毛の形まで見えてしまった。
「油断しないことね。見えるわよ」
「わっ」
ゼノビアが慌てて、必死にスカートの上から手で股間を隠す。
やっぱり、その恰好は破廉恥すぎるようだ。
「それでも、
イライジャの言葉に、ゼノビアとシズが顔を見合わせた。
そして、ふたりで小さな声で話し合いを始めた。
イライジャは、それを見守ることにした。
やがて、ふたりがイライジャに顔を向け直す。
「ほ、本当に……ロウ殿をとりなしてくれるんだね? 信じていいんだね?」
ゼノビアが真剣な表情で言った。
イライジャは頷いた。
「問題ないわ。ただし、とりなすのは今回のことだけよ。クエストが優先されるからね。それから先のことは知らないわよ」
「わかった。受ける。詳しく教えてくれ」
「了解よ。頼むわね」
イライジャは、今回の特異点クエストの詳しいことを説明していく。
ゼノビアとシズが神妙にそれを聞き入る態度になる。
報酬については、かなり削ったので、不満げな顔にはなったが、明日まで王都に残っていたら、間違いなくロウの悪戯の餌食になると仄めかすと、それも了承した。
よかった。
おかげでかなり経費を節約することができそうだ。
イライジャはほくそ笑んだ。
そして、場所の詳細を言ったとき、シズが小さく首を縦に振る。
「ああ、あそこの山村の奥なのね。王軍が出動したところね」
シズが思い出したらしい。
「へえ、よく知っているわねえ。王軍が出動したのは一昨日のことよ。しかも、一応は極秘出動らしいんだけどね」
イライジャは言った。
ゼノビアがにやりと微笑んだ。
「情報は冒険者の命だよ。色々と情報の網は伸ばしているさ。その山村を初めとして、五か所ほどに王軍が突然に出動しただろう。なにかの大掛かりな捕り物があったというのは耳にしてるよ」
「へえ……」
イライジャ正直、感嘆した。
確かに、冒険者の独自の情報網というのは、生き延びるための大切な要素だ。
情報をおろそかにするパーティは、まず信頼できない。
その点、やはり、ゼノビアは頼りになる。
また、極秘情報なので、ここで話すわけにはいかないが、王軍が王都周辺の山村や過疎の里などに、一斉に出動したのは、王国に新たに編成された諜報機関からの情報によるものだ。
イライジャはそれほどの面識はないが、その諜報組織を束ねるのも、ロウの女であり、ノルズという女性だ。
彼女の情報により、おそらくタリオの工作員であると思われる獣人部隊の拠点の場所の情報がもたらされたらしい。王軍の出動は、それを一斉に摘発するものだ。
イライジャは、冒険者ギルドへの内密の提供ということで、その情報に触れたが、現時点でゼノビアが王軍が出動したところまで知っていたのは、大したものといえる。
「じゃあ、こんなものかしら。仕事の話はここまでにしましょう。いずれにしても、明日の朝早くに王都を出るとしても、この時間じゃあ、宿屋を探すのも大変じゃないの? 同じロウを愛人にしているもの同士、あたしの部屋でよければ泊めるわよ」
イライジャは言った。
「いいや、ありがたいけど、この足で王都を抜けるよ。間違って朝まで残って、あの独裁官様に捕まりたくないんでね……。いくよ、シズ」
ゼノビアがシズを促して立ちあがる。
余程にロウに捕まりたくないようだ。
イライジャは、それを制した。
「まあ、待ちなさいよ。あんたらをご機嫌にする話があるわ。実は、そのあたしの部屋に、あと五日後に独裁官閣下の正妻になる予定のエルフ美女が待っているのよ。素っ裸で寝台に拘束されてね。さらに、媚薬をたっぷりと塗って放置したままなの。興味はない?」
「えっ、それって、エリカのこと?」
シズが声をあげた。
「はっ? あんた、エリカを部屋に監禁しているのかい?」
ゼノビアも驚いている。
「せっかくだから、遊んでいかないかしら? ロウへの仕返しは無理でも、それをエリカにたっぷりと引き受けてもらえばいいじゃない。あんたらが百合の関係なのは知っているけど、あたしもまた、そうなのよ。そして、知っていると思うけど、あたしとエリカとシズは、少女時代はそういう関係だったのよ。クエスト報酬を最小限にする見返りに、エリカにはなにをしてもいいわ」
イライジャは微笑んだ。
「へえ、なにをしてもねえ……」
ゼノビアが興味深そうに、イライジャに視線を向け直した。