【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
廃神殿があると示された場所は、すでに使われなくなった道路の先にあり、馬車で向かうのは無理そうだった。
一郎たちは、五人で歩いて向かった。
途中、里長のイナーフの指示で三、四人の里の者が交代で通行止めの措置をしている場所があった。
話は通じていたのだろう。
一郎たちがやって来ると、すぐに道を開放してくれた。
「ご苦労様です、巫女様」
「よろしくお願いします、スクルズ様」
里の者たちが口々に声をかけてくる。
もちろん、彼らが声をかけるのはスクルズであり、一郎たちなどほとんど一瞥もされない。
一郎は改めて、スクルズの地位の高さと人気を知る思いだ。
また、王都の筆頭巫女がわざわざこんな田舎にやって来るのは、余程に大変なことなのだと悟った。
昨日里にやって来たときも、大勢の里の者が馬車を眺めにきたが、どうやら、あれは王都から王都の第三大神殿の筆頭巫女がやって来るという噂が流れて、それで見物にやってきたようだ。
そんなことを宿の主人が言っていた。
また、一郎たちが選んだ宿屋に、スクルズまでも宿泊するとなって、宿屋の主人は驚愕するとともに、やたらに恐縮していた。
一郎にとっては、毎日のように一郎を慕ってやってくる可愛い女神官のようにしか思えないが、やはり、この王国の一般的な者にとっては、教会の高位神官というのは、それなりの格式の高い存在なのだと肌で感じた。
いずれにしても、人柄のいい美貌の高位魔道遣いのスクルズの噂は、王都から離れた地方まで伝わっているらしい。
このスクルズに、昨夜は五回も生出しし、口にも一回出し、さらに朝に一回精を注いだのだと思うと、ちょっと優越感のようなものを覚える。
スクルズだけでなく、エリカにしろ、コゼにしろ、シャングリアにしろ、一郎にはもったないどころか、前の世界であれば、口もきけないほどの美人であり、才能のある女性たちだ。
それを好きなときに、好きなように抱き、好きなだけ犯しても、女たちに感謝の言葉を返される。
いまだに自分の立場が信じられない。
とはいえ、一郎もまた、やはり自分の身体の異常さに気がつかないではいられなかった。
つまりは、昨夜、宿屋に防音の結界を張って本格的に女たちを抱いたとき、スクルズだけで六回精を放ち、多分、エリカ、コゼ、シャングリアにもまた三、四回は間違いなく精を注いでる。
あわせて十五発は出している。もしかしたら、それ以上だ。
まあ、女たちが絶頂したのは、合わせて何十回になるかは、数えられもしないが……。
そういえば、昨夜の「生き残り式」の結果は、このスクルズとシャングリアの勝ち残りだった。シャングリアはともかく、朝になって、スクルズは魔道を使って体力回復をしていたということがわかった。
コゼがそれを知って怒っていたが、そのコゼと飄々と立ち回るスクルズが面白かった。
とにかく、一郎の身体は、どうやら異常なほどの絶倫体質だ。
我慢しようと思えば我慢できるが、あまり時間が空くと、なんだか具合が悪くなるような感覚まであるのだ。
ちょっと、自分が怖くなる。
まあ、だからといって、なんとかしないといけないとも思わないが……。一郎を慕ってくれ、一郎の鬼畜を悦ぶ女たちを抱くのは愉しいし……。
これが、淫魔師になったということなのだろう。
「だけど、このままなら、無事にクエストを解決しても、全部功績はスクルズ様に持っていかれそうですね。あたしたちなんて、いるのに、まるでいないみたいなんだから」
先頭を歩くコゼが言った。
里の者の前を通過すると、道は獣道のようになり、先頭のコゼとコゼの後ろのエリカが刃物で茂った草を切り拓くようにしながら、ひとり分の経路を作るという感じになっている。
その後ろを一郎とスクルズが進み、最後尾をシャングリアが警戒をしながら進んでいるという状況である。
コゼが口を開いたのは、完全にさっきの里の者が見えなくかってからだ。
もっとも、不満を口にしているというよりは、軽口の範囲だ。つまりは、スクルズをからかっているのだ。
「申し訳ありません。それについては、改めて神殿側にも、あくまでも、わたしが付き添いであることを後で徹底させます。どうやら、第三神殿の側から、ミラノの地方神殿に、わたしが主体であるというような物言いで伝達がなされてしまったようなんです。すみませんでした」
スクルズが恐縮したように言った。
一郎は後ろを歩く、スクルズに片手で「問題ない」という意味の合図をした。
「いや、むしろ、ありがたい。前にも言いましたけど、俺とエリカは、アスカというとんでもない魔女を怒らせてましてね。だから、スクルズ様が功績を被ってくれてちょうどいいんですよ。実はミランダにも、これまでのクエストの功績もできるだけ、俺たちの記録から削除するように頼んでいるんです。目立つと、俺たちがハロンドールの王都にいることが、あの魔女にばれますから」
「えっ、そうなのか、ロウ?」
すると、最後尾のシャングリアが声をあげた。
「そうだが、知らなかったか? もしかして、言っていなかったか? まあ、できるだけ隠してくれと頼んだだけで、完全に秘密にしてくれとまでは言ってない。そもそも、そんなの無理だしな。しかし、ハロンドールの王都の冒険者の記録は、魔道通信で三公国側のギルドでも共有できる。あの魔女が冒険者ギルドの記録を地道に探そうとするかどうかは知らんが、できるだけ危険は回避したい」
「そういうことか。なら、わたしも気をつけることにしよう」
シャングリアが頷くのがわかった。
そのあいだも、一郎たちは繁みの中を進み続けている。
「ええっと、つまり、ロウ様的には、このままがご都合が宜しいと?」
「そういうことです、スクルズ殿……。名声なんてどうでもいいんですよ」
一郎ははっきりと言った。
しかし、すぐにコゼが続ける。
「でも、クエスト達成の褒賞はどうなるんですか? まさか、あたしたちとスクルズ様で折半ということはないですよねえ。でも、お偉い筆頭巫女様なんだから、やっぱり半分くらいは持っていくのかなあ?」
どうやら、コゼはスクルズをからかう気持ち満々らしい。コゼが依頼料のことを気にかけるなんてことはないから、あれはただただスクルズをちょっと言葉で苛めたいだけだと思う。
「い、依頼料だなんて──。そんなのはいりません。わたしは立場上、教会の指示で来ておりますので、礼金のようなものがあれば、教会から出るはずです。それも、皆さんにさしあげます」
スクルズがちょっと憤慨した口調で言った。
一郎は苦笑した。
「こらっ、コゼ、もう、からかうのはやめろ。とにかく、クエスト成功報酬は、報酬から必要経費を差し引いた五等分だ。スクルズ様、そういうことでよろしくお願いします」
「い、いえ、ロウ様──。先程、申しましたが、わたしは分け前など……」
「いえいえ、そうはいきません」
一郎はスクルズの言葉を途中で遮った。
「……それに、おそらく、ほとんど余りませんよ。もしも、さっさと終われば、折角なんで、ミラノの城郭とやらまで足を延ばしませんか? 宿屋の主人の話によると、ミラノは温泉のある街だそうじゃないですか。だったら、五人で入れる風呂を十日間貸し切って、豪遊しましょう。幸いにもいままでに貯めていた報酬もあるし、多少の贅沢は問題ない。だから、余る予定はないんですよ。もしも、廃神殿に財があり、それでも分ける財が残れば、五等分ということです」
一郎は笑った。
「まあ」
スクルズがちょっと驚いたように声をあげた。
「ロウは風呂が好きだな。屋敷でも毎日入るものな。おかげで、わたしも毎日入るようになったが、多分、王侯でも毎日の風呂などという贅沢はしないぞ」
シャングリアが笑いながら言った。
この国に毎日の入浴の習慣がないというのは、すでに知っている。この国の人々にとっては、入浴というのは魔道を必要とするものであり、家の中に水を集め、湯を沸かすというのは、複数の魔道遣いを必要とする行為であるらしい。必然的に入浴は贅沢な習慣ということになる。
一郎の屋敷には屋敷妖精のシルキーがいるので、一日中いつでも入浴できる施設があるが、あんなものは王宮にもないのだそうだ。
「おう、好きだぞ。ミラノの街でも愉しみたいな。お前たちの全身は俺が隅々まで洗ってやるぞ。いまから覚悟しとけ。穴という穴を全部指で掃除してやる。いや、珍棒かな」
一郎は笑った。
四人の女が一斉に動揺して息を吸うのが聞こえた。
一郎は笑った。
「ロ、ロウ様、お下品です──」
そして、エリカがたしなめるように声をあげる。
「お前は嫌か、エリカ?」
「い、嫌では……ないですけど……」
後ろからだが、エリカの首が真っ赤になっているのがわかる。
一郎は後ろでにっこりと微笑んだ。
すると、やっと草が茂っている場所がなくなり、少しだけ開けた場所になった。もっとも、まだ廃神殿までは距離があるようだ。ただ、樹木と樹木のあいだに、辛うじて蔦の蔓延る建物らしいものが覗いているのが視界に入る。
「あれがそうですね」
エリカがその建物を指さした。
「この辺りに、一応、移動術のための結界を刻んでおきますね」
スクルズが一本の樹木に寄っていき、魔道を刻む仕草をする。
一郎は知らなかったが、スクルズが多用する移動術というのは、あくまでも、移動術用の魔道紋と魔道紋を亜空間越しに繋いで魔力を注ぐことにより、一瞬にして身体を転送させるという魔道だそうだ。
眼に見える場所であれば、一瞬にして移動術のための魔道紋を刻めるが、見えない場所となると、あらかじめ事前に刻んでおいて、それを亜空間を通じて辿り、目的の位置の魔道紋と目の前に改めて刻んだ魔道紋を繋ぐことによりやっと移動術で跳躍できるようになるらしい。
つまりは、今日のように、いままで向かったことのない場所に移動術で跳躍するのは不可能らしく、こうやって歩いて移動しなければならないということだ。
スクルズが王都を好きなように、移動術で跳躍しているのは、あらかじめ王都内のあちこちの樹木や石や建物の壁などに魔道紋を刻んでいるので、それを使っているのだそうだ。
もちろん、一郎の屋敷にも刻んでいるとのことだ。
だが、一郎の屋敷には、シルキーがいるので、シルキーにその都度、結界を緩めてもらわなければ、移動術は駆使できないとのことだ。
また、それとは別に、スクルズは一郎の屋敷にある姿見とスクルズの神殿内の私室の寝室にある姿見間を自在に移動できる「移動ポッド」を作っていて、これを使えば、魔道の遣えない一郎でも、屋敷と第三神殿間を跳躍できる。ただ、これも、原理は一緒であり、魔道師の介入なしで、必要な魔力の集積と魔道紋への魔力の注入ができるようにしているだけであるそうだ。
とにかく、スクルズがいまやっているのは、万が一にも、廃神殿から逃亡の必要があったときに、魔道紋を辿って一気に逃亡することが可能にするための処置だ。
同じような移動術用の魔道紋を里の要所や宿屋の中などに、刻んできたようである。
とにかく、王都内の魔道遣いで、移動術が扱えるのを知られているのは、スクルズとベルズを除けば、王宮魔道師長だけのようだ。
つまり、スクルズとベルズは、王都三大魔道遣いのうちのふたりなのだ。
そのふたりとも、一郎の性奴隷という名の愛人にしているというのはすごいことのような気がする。
「終わりました」
スクルズが頭をさげた。
「少し、休憩にするか。いまのうちに操り系の魔道への抵抗魔道を強化しておこう。とりあえず、スクルズ殿、お願いします」
一郎は言った。
これまでのうち、手がかりらしいものは、最初に廃神殿に入り込み、数日後に記憶を失って全裸で放り出されたという盗賊たちのことだ。
手配されている盗賊だったため、すでに連行されていて、一郎たちは直接に確認できなかったが、大きな外傷もなかったようであり、わかっている状況から類推して、魔道か毒か不明だが、なんらかの方法で精神に影響を与えられたのは間違いない。
だから、とりあえず、それに備えることにした。
「
スクルズが杖を出し、さっと振った。
キラキラと光る塵のようなものが一郎たちに降りかかる。魔道の杖なしでも、スクルズは魔道をかけられるが、本当に強い魔道をかけるときには、杖を使った方が効率がいいらしい。
「一ノス(※)に一度は重ね掛けしますが、わたしに異常が発生する場合も考えられます。一応、魔道紋をエリカさんにも開放しておきますので、万が一の場合にはお願いします」
スクルズがエリカに向かって杖を出す。
エリカも服の内側から魔道の杖を出して、先端同士を触れさせた。よくわからないが、魔道遣い同士でお互いの魔道を補填し合うための行為なのだと思う。
「スクルズ様の魔道を、エリカの魔道で補完なんかできるの?」
横からコゼがからかうように言う。
すると、エリカがむっとした表情になる。
「これでも、ロウ様の淫魔師の恩恵の能力向上のおかげで、そこそこの魔道遣いではあるのよ。まったく通用しないということはないわ」
エリカがむきになって言い返す。
半分冗談の軽口なのに気がつかずに、なんでもまともに反応してしまうから、コゼにからかわれるのだと思ったが、一郎はただ微笑んでいた。
すると、スクルズがにこにこと微笑みながらコゼに視線を向ける。
「以前のエリカさんは知りませんが、いまのエリカさんは、間違いなく、王都でも十傑には入る魔道力をお持ちです。上級魔道遣いです」
スクルズがきっぱりと言った。
一郎もそう思う。
もともと、能力が低かったので、魔道遣いとしての鍛錬をほとんど受けていないらしいが、一郎の魔眼によるステータスには、エリカの魔道遣いレベルは“10”だ。
どんなジョブであれ、王都ですれ違う者の中には、“10”を超える者など滅多にいない。いれば必ず、その能力の第一人者と評価され、それなりの立場についている。レベル10というのは、そういうレベルなのだ。
そもそも、大半の人間は、ジョブが1どころか、ジョブそのものがない者も多いほどだ。
もっとも、ジョブというものも、レベルというのも、一郎以外にはまったくわからない概念らしい。だから、能力向上といっても、一郎以外には漠然としかわからない。
それもあり、いままで、一郎の持つ「淫魔師の恩恵」という能力については黙っていたのだが、昨夜、女たちに改めて質問されたので、他言無用を条件に教えた。
一郎としては、どうせステータスのことはわからないのだから、教えなくても問題ないと思ったし、一郎が精を注ぐことで、人が一生かけた経験や鍛錬で到達する境地を一瞬にして到達したり、さらに凌駕したりするということが知られれば、とんでもない騒動になるのは目に見えていたので、可能な限り内緒にしたかったのだ。
しかし、さすがに女たちも気がついていた。
まあ、考えてみれば当然だろう。
エリカもコゼもシャングリアも、一郎の性支配の影響で軒並み能力向上をしていたが、一郎がスクルズたちを支配することで、淫魔師レベルが“75”にまでなったことで、さらに能力が向上している。
“エリカ
…………
ジョブ
戦士(レベル11→20)
魔道遣い(レベル2→10)
…………”
“コゼ
…………
ジョブ
アサシン(レベル10→22)
戦士(レベル10→18)
…………”
“シャングリア
…………
ジョブ
戦士(レベル15→25)
…………”
これだけ自分の能力が跳ねあがれば、気がつかないというのがどうかしているだろう。単純なジョブやレベルだけでなく、魔道遣いにとっての「魔道力」や、戦士系ジョブにとっての得物を持ったときの「直接攻撃力」などもあがっているのだ。
また、スクルズなど魔道遣いの関係能力が跳ねあがっている。
“スクルズ
…………
ジョブ
魔道遣い(レベル30→60)
…………
魔道力:400→800
…………”
スクルズの魔道遣いの能力上昇は、ほかの三人に比しても著しい。なんとなく、女たちの得意分野の能力が向上しているのはわかるが、三人娘とスクルズの能力向上の違いがどうして現れたのかはわからない。
ただ、スクルズとしては、一郎と愛を交わすことで、上級魔道である移動術も楽にできるようになったし、収納魔道のような伝説級のさらなる上位魔道もできるようになった。
一郎のところに足繁く通う理由は、魔道力向上の打算だけではないだろうが、かなり早い段階で、一郎の支配による能力向上のことは気がついていた気配だ。
「あとはポーションですね。もう配りますか?」
スクルズが一郎を見た。
異常状態回復のためのポーションは、スクルズに収納魔道でまとめて持ってきてもらっている。これも、スクルズが異常状態になれば、出せなくなるために、事前に分けることにしていた。
異常状態になれば、ポーションの液を頭からかければ、正気に返るということになっている。
「頼む」
一郎の指示でスクルズが二本ずつ渡しだす。
「じゃあ、最後に俺があらゆる呪術を防止する処置を重ね掛けするな」
一郎がそう言うと、四人がきょとんとしている。
これは事前には説明していなかったからだ。
だが、スクルズの魔道がレベル60としての魔道であれば、一郎はレベル75の淫魔師だ。
以前、ルルドの森で出会ったユグドラという女精霊は、操り系の魔道は、ジョブの種類に関係なく、最大レベルの数値が下の者が上の数値を持つ相手を操ることはできないと言っていた。
そうであれば、一郎の淫魔術こそ、最大の呪術防止だ。
本当は、精を注ぐ方がいいのだが、唾液だって強化を施すことはできる。
とりあえず、そばのエリカを手を引き、唇を重ねて唾液を注ぎ込む。
「んんっ」
いきなり口づけをされて、エリカが目を白黒させた。
しかし、一郎が口の中の性感帯を舐められまくると、すぐに脱力して一郎のもたれかかるようにしてくる。ただ唾液を注いでも面白くないので、淫魔術で確認できるエリカの口の中の性感帯を徹底的に愛撫しているのだ。
「終わりだ」
一郎はエリカから口を離した。
「ひ、ひっ」
エリカががくりを腰を落とししゃがみ込みそうになった。
「大袈裟だなあ」
一郎は笑いながら、次にコゼを引き寄せた。
「お、大袈裟なんかじゃ……」
エリカは息を荒げながら、なんとか足を踏ん張るようにして身体を支えたようだ。
「あん、ご主人様……」
コゼは一郎の首に両手を回して、ぎゅっと抱きついてきた。
そのコゼに、一郎はエリカと同じように、強い淫魔術を込めた唾液を注ぎ込みつつ、舌でコゼの中を蹂躙した。
やはり、コゼも脱力したようになった。
シャングリア、スクルズと同じようにする。
「あ、ありがとうざいます、ロウ様……、はあ、はあ、はあ……」
四人に口づけが終わったときには、四人ともぐったりとなってしまった。
一郎は思わずにやついてしまう。
まあ、考えてみれば、一郎は女の身体に浮かぶ、性感帯のもやの位置と色をもとに愛撫をするのだから、一郎から快感を免れるのは不可能だ。
はっきり言って、いまや一郎は口づけだけでも、相手を昇天させる自信がある。
「さて、じゃあ行こうか、みんな。さっきのとおりの順番で……。基本的には神殿に入ることができても一緒だ。スクルズ殿は、俺の後ろをお願いします」
一郎は言った。
すると、スクルズが眉を寄せているのがわかった。ちょっと不機嫌そうで、なにか物を言いたげな表情になっている。
「どうかしましたか、スクルズ殿?」
一郎は訊ねた。
「それです、それ……。ロウ様、いい加減にもっと砕けた感じで話していただくわけにはいかないでしょうか。スクルズは、皆さんと同じように扱われたいです。どうか、呼び捨てでお願いします」
スクルズが一郎にはっきりと言った。
まあ、確かにそうかと思った。
これだけ、毎日のように身体を抱いているのだ。
他人行儀のような壁があるだけ馬鹿馬鹿しい。
「それもそうですね……。いや、そうだな。じゃあ、スクルズ、俺の後ろを行け」
「はい──」
スクルズが心の底から嬉しそうな表情で破顔した。
*
神殿の敷地内に着いた。
おそらく、前庭だろう。
ここに人里があったのは、二百年前ということであり、すっかりと神殿は蔦が絡みまくっていて、かつて庭だったと思うような場所も、ほとんど周囲の林と同化して植物が生い茂っている。
ただ、ここに近づく途中から、草が刈られて道が作られたようになっているところにぶつかり、途中からはそこを通ってきた。
これは先日に一度城郭兵が調査にやって来たとあったから、そのときの痕だろう。
しかし、その一隊は、古神殿の前庭に近づこうとしても、突然に霧のようなものに覆われて、どうしてもここまでは辿り着かなかったようだ。
だが、いま一郎たちは神殿の敷地内といえる場所まで辿り着いたのだから、その調査隊よりも先には進めたことになる。
「特になにもなかったな。なにか気がついたことはあるか、スクルズ?」
なんとなく、ずっと丁寧語で喋っていたから、急に砕けると、むしろ緊張する気がする。まあ、そのうち慣れるだろうが……。
それに、一郎がため口で話しかけたときの、あのスクルズの顔を思い出すと、もう丁寧語では語りかけるわけにはいかない気もする。
「結界のようなものはなかったと思います。エリカさんは、なにか感じましたか?」
「ないわ。もしかしたら、調査隊が結界に阻まれたというなら、一定の人数以上で接近すると、自動的に結界がかかる仕掛けになっているんじゃないでしょうか。実際のところ、それはそんなに複雑な魔道じゃありません。わたし程度でも扱える魔道です」
エリカも一郎に合わせて、それなりに砕けた口調になっている。
また、確かに、盗賊避け、野獣避けの結界は、昨夜の露営でも使ったし、エリカとの旅でも度々施してもらった。さもないと、エリカたちを抱き潰して、悠々と野宿するというわけにはいかない。
「……いずれにしても、ここまで来られたということは、神殿に入ることはできそうだな。じゃあ、コゼ、先頭を頼む。みんなも気をつけてくれ。なにか気がついたことがあったら、些細なことでも教え合おう」
一郎は言った。
古神殿の玄関まですぐそこだ。
石造りの神殿であり、外観でわかる限り、屋根裏部屋を含めて三階まである。大抵は地下もあるということなので、最大探索場所は四階分ということになるだろうか。
一郎の魔眼では、いまのところなにも感じない。
「ロウ様──」
しかし、歩き出してすぐにスクルズが声を出した。
「どうした?」
「先ほど刻んだ移動術の魔道紋との繋がりが遮断されました。ここから、移動術で跳躍はできません。移動術を妨害する阻害波が張りめぐされています」
「どうしますか、ロウ様?」
エリカが一郎を見た。
一郎は息を吐いた。
「このまま行こう。ところで、スクルズ、人避けの警戒魔道や、こういう移動術を阻害する阻止魔道というのは、術者がいなくなっても自動的に建物自体に掛かり続けるということはあるか?」
「聞いたことはありません。わたしの知識の限り、それらの魔道はどんなに長く保つ処置をしても、一箇月が限界のはずです。例えば、王宮には同じような魔道避けの結界が張られていますが、王宮魔道師が常に魔力を注ぎつけています」
「つまりは、少なくとも、一箇月以内には、ここに魔道遣いが入ったということだ。おそらく、いまもいるのだろうな。つまりは、俺たちのことも、すでに確認していると思っていい」
一郎は女たちに言った。
全員が改めて緊張を走らせる。
だが、特になにもなく、古神殿の玄関に着いた。
「扉ね……。だけど……、壁?」
エリカがコゼとともに、木製の扉の前に立って言った。
扉の前に立つのはエリカとコゼで、一郎たちほかの三人はその後ろに立っている。
それはともかく、扉は扉なのだが、一見にしてただの壁のようにしか見えない。つまりは、扉であればあるはずの壁とのあいだの隙間がない。まるで、壁に扉の絵が描いているだけの感じなのだ。
扉を開くための取っ手のようなものもないし、扉のノブのようなものもない。
「なにかの仕掛けがある感じね……。まあ、なんらかの罠であることは確かね。だけど、あたしにはわからない。物理的なものじゃないわ。魔道かも」
コゼが扉の前で腕組みをしながら言った。
「開錠の魔道をしてみます」
スクルズが言った。
すぐに魔道が発動したような揺らぎが扉の前に発生する。
だが、なにも起きない。
「跳ね返されます。術を跳ね返すなんらかの魔道がかかっています。おそらく、ある条件のもとに開く、特殊な魔道の仕掛けではないかと……」
スクルズが困惑して言った。
一郎は驚いた。
スクルズの魔道で開けられないとなれば、相当のものだろう。
「とりあえず、押してみるか?」
とめる間もなく、一番後ろに立っていたシャングリアが手を伸ばして無造作に扉に手を触れた。
そのときだった。
「うわっ」
次の瞬間、扉が光り、シャングリアが吸い込まれるように消滅した。
「シャングリア──」
「待って──」
「シャングリアさん──」
一郎は慌てて扉に手を伸ばして、自分も触った。どこかに跳ばされたなら、一緒に行こうと思ったのだ。
だが、なにも起きない。
ただの扉だ。
すると、突如として笑い声が周囲に響き渡った。
「ふわはははははは──。ようこそ、我こそは、淫神ビビデバブー──。君たちを我が淫乱の館に招待しよう。まずは、第一の関門だ。そこにある扉を開いて、中に入って来い。さもなくば、帰ることだ。ただし、お前たちが来ぬなら、いまの人間族の女には、一生会えぬと思え」
ビビデバブーと名乗った声が笑い声を高らかに響かせる。
エリカとコゼが武器を抜いたのがわかった。
スクルズもすぐに魔道を遣えるように身構えている。
一郎は魔眼を使った。
だが、なにも発見できない。
おそらく、声の主は近くにはいない。
一郎たちを遠隔で見ながら、声だけを飛ばしているのだ。
「わかった。入る。だが、どうやったら入れる?」
怒鳴った。
「簡単だ。その扉から中に入るには、一糸まとわぬ裸でなければ入れない。一切の武器と衣類を身体から外せば、中に入ることができる。だから、これは返す」
扉の前の床になにかが現われた。
驚いたことに、たったいままでシャングリアが身に着けていた衣類と武器だ。一郎は念のために手に取って確認したが、まだぬくもりもあるくらいであり、かすかにシャングリアの体臭もした。
ご丁寧に下着まである。
そして、さらに、なにかが床に現れた。
一枚の金貨だ。
「この神殿の最奥には、この金貨に万倍する財貨が眠っている。取りに来い、欲張りども。さあ、入って来るのだ。ここには、あらゆる快感があるぞ。愉しむがよい。そして、余を愉しませよ。人族ども──」
淫神ビビデバブーと名乗った謎の声が甲高い笑いを響き渡らせた。
(※)1ノス=約50分。一日は30ノス