【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
いつもの場所だった。
真っ暗な空間であり、モートレットはそこに立っていた。
モートレットやモードリッドたちは、そこを「心の部屋」と呼んでいるが、実際のところ、ここがモートレットたちの頭の中であり、実際には存在しない特別な場所であることはすでに理解している。
もっとも、他の人たちには、頭の中には部屋などなく、ましてや、自分ではない他人など、頭の中に存在しないということを知ったのは、タリオにある大神殿で神殿兵としての生活を開始してからのことであり。かなり最近のことだ。
モートレットにとって、もうひとりのモードリッドという少年とこの身体を共存しているのは当たり前のことだったが、ひとつの身体に二つの心があるということは、極めて珍しい話だというのは、それまでついぞ知らなかった。
暗闇が薄っすらと晴れて、視界が拡がる。
だが、光があるわけではない。
ただ、見えるようになっただけだ。
この心の部屋において、光というのは特別な意味を持つ。
モートレットとモードリッドのどちらの人格が表に出るのかを決めるときに発生するのであり、光が上から出て、その下に身体を置けば、光に入った人格が表に出るのである。
しかし、その光を操れるのは、もうひとりのモードリッドだけだ。
モートレットもそうだし、まだ人格といえるほどに成長していないほかの無数の「なりそこない」たちも、モードリッドの意思に反して、表に出ることはほとんどできない。
もうひとつの人格であるモードリッドは、この心の部屋の唯一の支配者であり、絶対の存在なのだ。
彼以外は、モードリッドの命令に従う有象無象に過ぎないのである。
どうして、そういうかたちになったのかは覚えてもいないし、それ以外の状態になることは想像することもできない。
モートレットとモードリッドがひとつの身体に二つ以上の人格があるのは本来あり得ないことだと知って以来、モードリッドは、この身体の本来の持ち主はモードリッドなのだと主張する。
ほかは、モートレットを含めて、モードリッドが作った人格だというのだ。
モードリッドの言葉には逆らえないし、もしも、逆らえばとんでもない罰を与えられるのだが、モートレットはひそかに、それは変ではないかと思っている。
なにしろ、モートレットやモードリッドがいるこの身体の性別は女だ。
モードリッドは少年の人格だし、女の身体の本来の人格が女だというのは、不自然な気はするのである。
そういう意味では、モートレットこそ、性別は女なのだから、表の身体に合致する心というのは、モートレットの方ではないのだろうか……。
まあ、いまになっては、モートレットとモードリッドのどちらが本来の人格であるかということを知るのは無意味ではあるが……。
「おう、なりそこない。なんで、ここに呼び出されたかわかっているだろうな?」
目の前に椅子に腰掛けたモードリッドが現れた。
モートレットとは同じ年の十五歳であり、性別が男だということ以外は、モートレットによく似ている。
モートレットから髪を短くして、胸の膨らみをなくせば、そのままモードリッドになる感じだ。
また、モードリッドは、滅多なことでは、ほかの人格たちの名前を呼ぶことはない。
すべて、“なりそこない”だ。
モードリッドに言わせれば、この心の部屋に集まっている人格は、モートレットを含めて、すべて偽者であり、“なりそこない”なのだそうだ。
「昼間のこと?」
「そうだ」
昼間のことというのは、マアから申し渡されたロウからの性愛を受け入れるかどうかということの決心のことだ。
マアの護衛としてロウのそばに侍るにあたって、以前より、マアからは、ロウに寵愛を受け入れて、彼の性支配を受けることを条件にしていた。
モートレットとしては異存などなく、特段に大切にしたい貞操でもないので問題なく受け入れるつもりであったのだが、それに激怒したのは、目の前のもうひとりの人格であるモートレットだ。
モートレットがロウに犯してもらうつもりになったとき、モードリッドはやはり、いまのようにモートレットをこの場所に呼び出して、徹底的にモートレットを虐待して、翻意をさせた。
モードリッドとしては従うしかなく、翌日には、ロウとマアには、まだ決心がつかないからと断った。
それから、いまに至っている。
「でも、そろそろ、引き延ばしは困難だと思う……。ロウ殿のそばにいるのは、彼の精を受け入れるのが絶対条件……。モードリッドの考えの通りに、アーサー様に認めてもらうために、ロウ殿のそばにいることを望むのであれば、やはり、彼の性支配を受け入れて、性奴隷になるしか……」
モートレットは淡々と言った。
ロウという独裁官は、かなりの大らかな性質だ。だから、いまだに性支配を受けていないモートレットのことを気にしていない雰囲気はあるが、彼の周りにいる女性たちは別である。
彼女たちは、毎日のようにロウに性的悪戯を受けたり、嗜虐的に愛されながらも、性奴隷ではなく、優秀な女傑として彼の周りを守っている。
モートレットの存在についても、近いうちにロウの性支配を受けるという前提で、存在を認めてくれているが、これが最終的にモートレットが支配を拒めば、その瞬間に、モートレットがロウに近寄ることを許さない気がする。
少なくとも、これまでのように同じ屋敷で暮らすということは認めないだろうし、近習としても置かれることはないはずだ。
結果的に、モードリッドが望むようなことができなくなり、彼が心の底から望んでいる父親のアーサーに認めてもらえる手柄を土産に、タリオに戻るということは不可能になると思う。
「あがあああ──」
その瞬間、腹に凄まじい殴打が叩きつけられた。
瞬間跳躍のように、モートレットの前に出てきたモードリッドがモートレットを殴りつけたのだ。
身に着けていた服は消滅し、完全な全裸になった。それでけではく、モートレットは四肢を大きく拡げた格好になり、その状態から動けなくなっていた。
ここはモードリッドが支配する世界だ。
彼の思うままに、すべてが作られる。
モードリッドの一部であるモートレットについても、あらゆるものが彼の思考の通りになるのである。
「お前に口答えする権利など与えてねえ──。このできそこないの分際で──」
憤怒の表情のモードリッドが手に短い鞭を持っている。
横からモートレットの臀部を打ち据えた。
「ひゃうっ」
ただの鞭ではない。
先端に鉄の重りがつけられた特別なものだ。
さらに、前から股間に向かって縦に鉄の重りのついた鞭が喰い込む。
灼けつくような激痛が走り、モートレットは拡げた四肢を揺すって泣き悶えた。
これが外の世界であれば、痛みにも苦痛にもいくらでも耐え抜く自身はある。だが、ここはモードリッドが支配する心の部屋だ。
モートレットの痛覚は、表に出ているときの十倍くらいに引きあげられている。
死ぬような痛みが走る。
でも、死ぬことはない。
たとえ、ここで死んでも、モードリッドがモートレットを生き返らせる。
「お前が外に出てても、これは俺の身体なんだよ──。俺にあの腐れ男の精液を受けろと言ってんのかよ──。あいつは、俺たちの親父の敵なんだぞ──」
間髪入れずに、乳房に鞭が喰い込んだ。
大きくはないが、それでも多少は膨らんでいる。そこに鞭を叩きつけられて、絶息するような衝撃が走る。
「お前が表に出ているからと言って、これは俺の身体だあ──。男に、ましてや、親父の敵に犯されるなんて冗談じゃねえぞ──」
鞭を投げ捨てたモードリッドがモートレットの頬を拳でぶん殴った。
「ふがっ」
口の中に鉄に味が拡がった。口の中が裂けて血が出たのだろう。
モートレットは唾液とともに血を吐いてしまったが、もちろん、モードリッドの暴力はそれで終わらない。
ほとんど感情の動かないモートレットとは異なり、モードリッドは癇癪持ちだ。滅多に外に出ることはないが、一度、大神殿で神殿兵として訓練を受けている時期に、モードリッドが外に出て、たまたま接触してきたほかの神殿兵見習いの男たちの数名を半殺しにしたことがある。
激昂して我を忘れたモードリッドが頭に血が昇りすぎて意識を失い、モートレットが急遽人格を交代することにならなければ、おそらく、あのまま殺していたと思う。
考えてみれば、モードリッドの命令なしに、モートレットが表に出たのは、あれが最初で最後かもしれない。
ただ、モードリッドも馬鹿ではない。
興奮して激しく暴力を振るったあとは、少し冷静になれるのだ。
自分が外に出るとなにをするかわからないということもわかっていて、いまではほぼ外に出ることはない。
その代わりに、こうやってモートレットを心の部屋で支配して、表における行動を制御するということを専らとしている。
反対側の頬にモードリッドの殴打が喰い込む。
「へべっ」
顔だけが横に跳ぶ。
すると、そっちの方向からまた拳──。
鼻が潰れて、鼻血が跳ぶ。
また、反対側の顔を殴打──。
今度は逆──。
十発ほど殴られてからだろうか。
やっと拳の嵐がなくなる。
意識が薄れてきたモートレットの前に立って、殴り疲れて肩で息をするモードリッドが顔を血だらけにして項垂れているモートレットの髪を掴んで顔をあげさせた。
「支配を受けるわけにはいかねえ……。あの男が鑑定術の達人であることはもうわかっている。特に、支配した女については、単なる能力だけでなく、感情まで読むことはもうわかってんだ……。もしも、お前が支配を受ければ、この身体にある本物の人格が俺であることがばれてしまう……」
モードリッドが言った。
その懸念は、前々からここでふたりで話し合っていたことだ。
ロウに出会う前までは知らなかったが、はっきりと明確にはしないものの、ロウが接する者の能力などをかなりの精度で見破っているのはわかってきていた。
特に、女に対する能力の見破りは神がかりですらある。
最初の段階で、ロウのその能力を知らなかったので、それを知ったとき、もしかしたら、ひとつの身体に二つの心があるモートレットたちの正体を知られたのではないかと思ったが、いまのところ、それはないようだ。
ロウがモートレットの能力を読み、性経験のことまで見破ったのは確かだが、現段階では、表に出ていたモートレットのことは鑑定したものの、隠れているモードリッドの存在まで読んだ気配はない。
凄まじい能力の鑑定術だが、やはり、表に出ていない人格まで読み取るのことはなかったのである。
だからこそ、モードリッドは怖れている。
一度、モートレットがロウに、いつでも性支配を受けると口にしたときも、あとでこうやって激怒したのだが、モードリッドは性支配を受けることで、自分の存在を暴露される懸念を感じているようだ。
だから、なんとかしろと、モートレットに詰め寄るのだ。
すると、モードリッドの膝がモートレットの股間に叩きつけられた。
「んがあああっ」
さすがに絶叫した。
股間付近の骨が砕けた感触がモートレットに伝わってきたのだ。
そこに、もう一度、膝──。
「はがあああっ」
さらに骨が砕ける。
モートレットの股間からじょろじょろと放尿がしたたり落ちていく。
「汚ねえなあ」
身体の拘束がなくなり、モートレットはその場に崩れ落ちた。
いまだに放尿は続いていて、自分の小便溜まりの上に座り込んだかたちになったが、熱いものに包まれて、折れた鼻の骨や口の中の怪我、さらに股間の骨も元通りになったのがわかった。
殴られた痛みも、すっと消えていく。
「……思い知ったか……。表の身体でどうするのかを決めるのは俺だ……。まあ、もっとも、お前の言うことも一理ある。親父に認めてもらえるようなロウの弱みに関する情報を握るのは、あいつのそばにいる立場を守らなければならないのは確かだ」
座り込んでしまったモートレットを見下ろすような体勢で、モードリッドが半分、独り言のように呟く。
こんな風に、暴力を振るったあとで、モードリッドは冷静さを取り戻すのである。
だから、気に喰わないことであり、モードリッドが激怒するとわかっても、口にした方がいいのだ。
「あいつのそばにいるためには、支配を受けるしかねえな……。これまでのまま、中途半端なまま位置づけるというわけにはいかねえわなあ……」
「無理と思う……。おマア様は頑固……。ロウ殿が許しても、おマア様はもう許さない。今日も置いていかれた」
モートレットは言った。
もともと、明日を期限として、マアからはモートレットが支配を受けなければ、護衛の任務を解くと告げられたのが、今日、南方総督府から王都に戻るにあたり、ガドニエルというエルフ族の女王の手配で構成したらしい「イムドリスの門」を使って、ロウたちと戻ったマアだったが、まだロウの支配を受けてないという理由で、モートレットについては容赦なく置いていかれ、人数が変化したことで、改めて調整する必要になった移動術設備の「ゲート」で一日遅れで戻るように言い渡されてしまった。
そんなわけで、表にあるモートレットの身体は、まだ南方総督府であり、明日の朝を待って、改めてゲートでひとり王都に向かうことになっている。
つまりは、最後通告といっていいだろう。
王都に戻っても、もうマアは、モートレットがロウに抱かれることなく、マアの護衛を続けることを許さないと思う。
「だけど、親父に認めてもらうには、あれの弱点を手土産にするのがいいんだ……。できれば、あいつの首を持って……」
ふと、モートレットが見上げると、モードリッドは思案をするように右の爪を噛んでいる。
それは、モードリッドの癖なのだ。
そして、モートレットは心底どうでもいいが、モードリッドは血縁上の父親であるアーサー大公……いまは、アーサー皇帝だが、彼に認められて、息子として受け入れていもらうことを心の底から夢見ている。
モートレットからすれば、会ったこともなく、そもそも、相手も存在を知らないような父親に愛してもらいたいというのは、ほとんど理解の外なのだが、とにかく、モードリッドの行動理念は、どうにかして、父親であるアーサーに手柄を持っていき、いつか認められて、子として褒められのだという彼の想いから成り立っている。
だが、そんな機会などなかったのだが、紆余曲折あり、モートレットがマアという女豪商の護衛になって、ロウのそばに近づくことができたのを最大の好機として捉え、なんとかこれをものにするのだと息巻いている。
モードリッドは必死であり、モートレットが少しでもそれに外れるようなことをしようとすれば、いまのように暴力で支配を加えようとするのである。
「わたしの腕では、ロウ殿の首を取るのは不可能……。彼のそばにいる女性たちの存在だけでなく、彼自身がかなりの腕を持っている」
冷静になったときのモードリッドはある程度の聞く耳を持っている。
モートレットからすれば、ロウを暗殺することもそうだし、それで逃げおおせて、タリオまで向かい、さらにアーサーに認めてもらうなど、絵空事としか思えないが、モードリッドは頑張ればそれができると考えているようだ。
それで、いつか成功だのと虎視眈々と機会を狙っている。
まあ、モートレットを使ってだが……。
モートレットとしては、それがいかに無謀なことなのかを、少しずつ悟らせるしかない。
その気になれば、モードリッドは、いつでもモートレットに変わって、この身体を使ってロウに斬りかかることができるのだ。
「わかってんだよ……。まあ、そうなれば、お前があれの女になるというのも、ひとつの得策か……。問題は、性支配を受けることで、中に隠れている俺の存在に気がつかれるかどうかだ……。気が付かれなければ問題ねえか……。閨で寝首を掻くと言うことも可能かもしれねえな……。だが気付かれれば……」
モードリッドはまたもや爪を噛んだ。
かなりの時間、モードリッドは熟考していたが、やがて、指を口から離して、モートレットに視線を落とした。
「要は、あれと性交しても、支配に陥らなければいいんじゃねえか? そうなら、ただ支配に入った振りをすればいい。お前は支配に入らないんだから、俺のことを見破られる心配は薄い。なにしろ、いまと一緒だ。いまの時点では、あれは俺の存在に気が付いてないんだから、お前が支配されなければ、俺のことが読まれることは絶対にない」
モードリッドが納得したように破顔した。
モートレットとしては馬鹿じゃないかと思ったが、黙っていた。そんなことはありえないなどと、ここで告げれば、またもや興奮する気がしたし、無謀なことさえしなければ、モートレットとしては静観できる。
「そうとなれば、特訓するぞ。最終的には、精を受けろ。だが、それまでに支配を受けないための特訓をする。お前が快感に強くなれば、精を受けても大丈夫だ。そうなるまで、あれと愛し合うことは許さないが、俺が許可したら精を受けに行き、元通りにそばにいる立場を取り戻せ」
「はっ?」
素で呆れた。
もともと、感情的な男だが、快感に強くなる特訓?
なんと阿呆げたことをと思った。
そもそも、観察している限り、ロウと愛を交わした女性は、全員がロウのとりこになっているように感じる。
多分、ロウには女を支配することに関しても、不可思議な能力を持っていると思う。
モートレットがそばにいるときには、マアやほかの女もはっきりとしたことを口にはしないが、多分間違いない。
冷静さがとりえのモートレットには、おそらく、なにをしても、ロウの支配を受けずに性愛を交わすことは不可能だと思うし、ましてや、特訓したところで性経験も皆無のモートレットに可能とも思わない。
まあ、感情的なモードリッドには、彼の想い込みが間違っている説明しても、受け入れるとはないだろうが……。
「どうせ、親父に劣る程度の女たらしだ。本物の女たらしの親父ほどじゃないはずだ。見せかけだけ、支配された振りをしろ。あれがそれなりに、女扱いが上手なのは見ていてわかるが、お前にはそれに抵抗する力を身に着けてもらう」
モードリッドがひとりで納得したように大きく頷く。
しかし、モートレットは逆に白けていた。
そういう問題ではないと思うのだが……。
「そうとなれば、早速特訓だ。今夜から毎晩やるぞ。俺が合格を出したら、そのときには、あれに抱かれにいくんだ。そのときまでは、少しのあいだ、あれから離れるのもやむを得ないだろう」
モードリッドが言った。
すると、次の瞬間、モートレットの両手は背中にまわって、身体全体が仰向けに倒れ、膝が曲がって脚を胸につけた格好で動かなくなった。
「うわっ」
股間を上に晒した屈辱的な体勢だ。
感情を動かすことのないモートレットも、これにはさすがに羞恥に顔が赤くなる。
「確か、あれのよくやる調教は痒み責めだったな……。とりあえず、痒みに強くなれ。要は慣れだな」
モードリッドが機嫌よく大笑いした。
まるで子供のような笑い声だが、それこそがモードリッドの本質であることをモートレットは知っている。
会ったことがない父親を求め続ける幼子の心のままの人格──。それでいて、モートレットを支配し、ほかの人格未満の“なりそこない”を支配し、感情を剥き出しにして振る舞う少年──。
それが、このモードリッドだ──。
「えっ? うわっ──」
だが、次の瞬間、モートレットの思考は吹き飛んだ。
股間の中と表面がとんでもなく痒くなったのだ。
いや、乳首も痒い──。
お尻の中もだ──。
「か、痒いいい──」
モートレットは絶叫した。
身体の芯まで届くような凄まじい痒みだ──。
それがモートレットに襲い掛かる。
「ひいいっ、なにこれええ──。んぎいいいっ」
「ははは、まんぐり返しだな。しばらくもがいてろや」
モートレットは動かない身体を捩らせ、必死に身体を暴れさせた。
だが、モードリッドの力により硬直させられた身体は自由になならない。ただ、まんぐり返しとやらの身体がゆらゆらと揺れるだけだ。
下腹部から突きあげるような狂おしい痒みは、どんどんと大きくなっていく。
モートレットは眼を剥いた。
「そんなことでどうすんだよ──。確か、女を痒みで追い詰めるのは、あれの得意技だろう? このくらい平然と受け取れるようになりやがれ。なりそこないどもを呼んでやる。あれは、痒みで狂う女の股を刷毛でくすぐってたな。じゃあ、それにも耐える特訓だ」
モードリッドが言い終わると同時に、顔のないのっぺらぼうの三歳児のような存在が十人ほど沸くように現れた。
それぞれに、両手に柔らかい刷毛を持っている。
「いけ──」
そして、モードリッドの指示で一斉にモートレットに群がって、全身をくすぐり始める。
「ひああああっ、やめてえええ──」
モートレットは絶叫して暴れまわった。