【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「つまり、エルフ族にしろ、人間族にしろ、ドワフ族にしろ、もともとは、このナタル森林域を発祥とする三大種族ということですね、ご主人様……。しかし、いつしか人間族もドワフ族も森を去り、いまはナタルの森はエルフ族の国であると……。そして、エルフ族は、この森で“里”と呼ばれる集落をひとつの単位として、この森林各地に数十に分かれて暮らしており、それらは、エルフ族長老を長とする族長会議という権威の支配にある……。そういうことですね、ご主人様……。だいたいのことはわかりました。本当に、ご教授ありがとうざいました、ご主人様」
一郎はわざとらしく、“ご主人様”を繰り返しながら応じた。
エリカと並んで歩く道は、昨日までの道とは異なり、明らかに人による手入れがなされているという感じになっている。
道端には道しるべのようなものもある。
一郎には読めないのだが、エリカによれば、通称“褐色エルフの里”と呼んでいる集落には、もうしばらく歩けば到着しそうであるようだ。また、エリカの説明では、そこに住む者は千人くらいだろうということだ。
すでに遥かな北の地に去ったが、いまでも古い時代からの洞穴生活を続けているという小矩族のドワフとは異なり、エルフ族の里はほぼ人間族の社会と変化はないらしい。
「そ、そうですけど……。さっきからやめてください、ロウ様……。わたしの従者のふりをするのは里の近くになってからでいいんですから……。なんだか、からかわれているようで嫌なんです」
エリカが困惑した口調で言った。
だが、そんな困った表情もまた可愛い。
いや、エリカは、その苦しそうな顔こそ、なによりも色気があるのだ。無論、からかっているだけなのだが、エリカのそんな顔を見ていると、なぜかもっと困らせてやりたくなる。
「でも、慣れておかないといけませんしね。ご主人様も俺のことを“ロウ”と呼び捨てにする練習をしておいた方がいいですよ。そうでないと、思わず、俺の性奴隷であるなどという本音の発言が出てしまって、里を叩きだされるかもしれませんからね」
「もうっ」
やっと、からかい半分なのがわかったのか、エリカは怒ったように頬を膨らませた。
一郎は思わず笑ってしまった。
「まあいいや……。でも、本当に遠慮なく、俺のことは従者扱いしてもらって大丈夫だ。もともと、俺はこの世界で生きていくためのなんの取柄もないことは自覚している。それにも関わらず、空威張りするほど、ずうずうしい性格でもないんでね。俺のことを主人扱いしてくれるのは嬉しいけど、俺としては、エリカに見捨てられなければいいんだ。従者でもなんでもするさ」
一郎は言った。
本心だった。
一郎は、別にエリカのご主人様になりたいわけじゃない。この美少女なエルフ娘のエリカを好きなときに好きなやり方で抱き、そして、ついでに生きるための面倒を看てもらう。
それが望みだ。
その方法が淫魔力によりエリカを支配することだから、そうしている。
望みさえかなうなら、別に日常において、エリカが主人で一郎が従者でも問題ないのだ。
倍近い年齢の差があるが、それが気にならないほどに、エリカは優秀だ。
エリカが主人で十分に納得だ。
何度も繰り返すが、毎晩の相手だけしてもらえればいい。
とにかく、淫魔師という能力は、かなり使い勝手がいいが、性欲だけは有り余っている。
毎日発散できなければ、多分おかしくなると思う。
その点、エリカは体力もあるし、とびきりの美女だ。それなのに、いい歳で外見も能力も凡庸の一郎の相手を喜んでしてくれる。まさに最高の女だと思う。
「でも、納得していただいてありがとうございます。“森エルフ”は、人間社会で暮らして、人間族に仕える“街エルフ”を軽蔑しているところがあるのです。もしも、わたしが本当はロウ様に仕える従者、ましてや、奴隷だとわかれば、その瞬間に恥ずべき者として、里を追い出されてしまうと思います」
「そういうものか?」
「はい、そういうものです。わたしなどそれで済むかもしれませんが、ロウ様が淫魔師であり、エルフ族のわたしを性奴隷にしているなどとばれれば、森エルフの者たちは、ロウ様を殺してしまうかもしれません。絶対に本当のことを言わないでくださいね」
エリカは小声で言った。
「脅かすなよ」
一郎は苦笑した。
「脅かしてません。本当のことです」
エリカは真顔のままだった。
どうやら大袈裟に語っているのではないようだ。急に恐怖を感じてきた。
「そんなに悪いことか? 淫魔の力でお前を支配しているというのが……」
「あ、当たり前じゃないですか──。冷静に考えてください。わたしはもう心がそれを受け入れているし、ロウ様を召喚という名の誘拐をしてしまったという負い目もあるからいまの境遇に納得もしていますが、森エルフは“誇り高き種族”という別称もあるくらいで、人間社会に溶け込んだエルフ族を軽蔑しているのですよ」
「同じエルフ族でか? なんか付き合いつらそうだな」
一郎は率直な感想を口にした。
「森エルフは、エルフ族こそ、あらゆる種族の最高であると思っているのです。それを人間族が呪術で支配して、性奴隷にするなど……。あっ、わたしは、なんとも思っていませんよ。まったく問題ないと思っています。本音です。それが操られて生まれた意識であったとしてもです。でも、大部分の森エルフはそうは考えないのです。森エルフにとっては、人間族というのは短命の下等種族なのです。わたしではないですよ……。一般的な森エルフの価値観がそうだというのであって……。」
「わかった、わかった」
一郎はくどくどと続きそうなエリカの言い訳を笑いながら遮った。
このエリカが完全に一郎のことも、淫魔力のことも受け入れてくれているのは事実であり、一郎の性奴隷であることにも、すっかりと順応してくれているのは、内心でもこそばゆい限りである。
それが呪術により作られたものであり、彼女本来の心ではないことは承知しているし、そんなことをしているのは卑怯極まりないというのも十分に理解しているつもりだ。
これほどの女傑の美女が、本気で一郎の相手をしてくれるなどと自惚れるつもりもない。
だが、一郎はこれからなにがあろうとも、もうエリカに刻んだ性奴隷の呪術を解くつもりはない。
呪術を解くことで、エリカが離れていってしまうのであれば、一郎はこの異世界最大の卑怯者でちっとも構わない。
とにかく、これから向かおうとしているのは、「褐色エルフの里」という数十ある同じような森エルフ族の集落のひとつであり、そこにはイライジャというエリカの昔馴染みの女エルフが集落の族長の息子に嫁いで暮らしているのだそうだ。
その彼女を頼って、しばらく里の仕事をさせてもらい、それによりハロンドールに入る路銀を稼ぐというのが目的だ。
ただ、そのためには、同じ森エルフの出身であるエリカは問題はないが、人間族である一郎は問題があるらしい。エリカは、朝からの道中で何度も説明してくれたが、森エルフは、同じエルフ族でありながら、ナタルの森を捨てて人間族の社会に混じった「街エルフ」の一派を軽蔑しており、ましてや、人間族はもっと嫌っているというのだ。
だから、一郎については、エリカの「従者」ということにしようということになっている。
人間族である一郎が、森エルフ出身のエリカを従者にしているなど、里のエルフの烈火の怒りを買うだろうが、逆に人間族を従者にしているのであれば、里に受け入れてくれるだろうとエリカは考えている。
だからこそ、エリカも森を出て三公国と称されている人間族の国で生きるにあたり、エルスラという偽名を名乗ったのだそうだ。
万が一にも、森エルフの知り人に、エリカが森を出たことがばれないためだ。
しかし、もういいらしい。
人間族の一郎がエルフの森で生きることはできないので、エリカもまた、もう森に戻らない決心がつき、これからは本名でいくという。
エリカの名はアスカは知らないし、その点でも都合がいいそうだ。
ただし、里にいるあいだ、エリカは一郎の「主人」であるふるまいをしなければならないし、一郎は大変居心地が悪い思いをすることは間違いないという。
エリカは、それでも「褐色エルフの里」を訪ねてもいいかと一郎に判断を求めたのだ。
一郎はそれは問題ないと即答した。
いずれにしても、路銀を得なければ、旅はできない。
その路銀を得るために、エリカの友人であるというイライジャを頼るというのは、いい方策だと思う。
「……それから、何度も同じことをいうようですが、淫魔師であるとか、他人の能力が見える力があるとか、あるいは、外界人であるというのも絶対に秘密にしてくださいね。そういうのは全部、軽蔑と怒りの対象ですから」
「肝に銘じているよ、エリカご主人様」
一郎はおどけて言った。
「ありがとうございます、ロウ様……。その代わり、できるだけ早く里を出立できるようにしますから。なんとか、イライジャに頼んでみます」
「そのイライジャというエルフとは親しかったのか?」
一郎は言った。
「とても親しいと言ってもいいと思います。わたしたちがすごしていた自由エルフの里で、孤児として同じ施設で暮らしました。イライジャは、わたしよりも二歳上で、わたしにとっては、本当のお姉さんと同じです」
「二歳上ということは、二十歳か」
「はい。ただ、旅に出て人間社会に入ろうとしたわたしに対して、イライジャはこのナタルの森に残ることを選びました。それで、偶然に故郷の里を訪れたいまの旦那様に見初められて結婚することになったのです。ところが、その旦那様はなんと、これから向かう森エルフの里の族長の息子さんだったんですよ。ロマンチックですよねえ」
エリカは当時のことを思いだすようにうっとりとしている。
それのどこかロマンチックなのかは一郎にはわからないが、察するに孤児でしかないイライジャというエリカの昔馴染みの少女が、ひとつのエルフ族の集落の族長の息子に見初められたというのがすごいことだと言っているのだろう。
「それはともかく、お前も、その人間嫌いの誇り高き森エルフのひとりなんだろう? そのエリカがなんで人間社会で暮らしてみようと思ったんだ?」
一郎は言った。
アスカに仕える前のエリカは、ローム三公国と呼ばれるデセオ、タリオ、カロリックという国々を短い期間転々としたことがあるようだ。
それで、カロリック公国の公都を旅しているとき、そこにやってきていたアスカの手の者と出逢い傭兵として雇われて、アスカの宮殿に連れて行かれたらしい。そして、彼女の愛人兼部下となったらしい。
「ううん……。まあ、好奇心が人一倍強かったのかもしれません。わたしはもともと人間族に対するおかしな偏見もわだかまりもありませんし、ただ、いろいろな経験を積みたかったのです。それだけです」
エリカは笑った。
「なるほどね……。ところで、エリカ、里に入ったら、俺だけじゃなくて、お前もいろいろと我慢しなきゃだめだぞ。俺たちの本当の関係がばれないようにね」
一郎は軽い口調で言った。
「も、もちろんです。絶対に口外しません。でも、これも繰り返すみたいですが、わたしが冷たい態度になっても、それは演技ですからね。それだけはわかってください」
エリカはあくまでも真面目だ。
まあ、その真面目なエリカが、性的な刺激に弱いのが大きな魅力なのだが……。
「そういう意味じゃないんだなあ……」
一郎は淫魔の力をちょっと込めた。
「うっ」
エリカが一瞬たちすくんでから、がくりと膝をくの字に曲げた。
淫魔の操りの力で、エリカのクリトリスに昨夜と同じ「筆」でくすぐる刺激を送ったのだ。
「も、もう……。ロ、ロウ様──」
エリカが股間を両手で押さえながら、真っ赤な顔で抗議した。
しかし、その顔は困惑しているが怒ってはいない。
「俺の鬱憤が溜まれば、いまみたいに容赦なく、淫魔力でエリカの身体を刺激して、うさを晴らす。そのとき、いまのようにわかりやすく感じないでくれと言ってるのさ」
「だ、だったら、そんなこと、しなければいいでしょう……」
エリカが腰をもじつかせながら声をあげた。
ただ、絶対にそんなことをするなとも言わないし、いまも一郎に苛められるのが満更でもない表情だ。
そんな風に一郎の悪戯を受け入れてくれるのがエリカのいいところだ。
そのときだった──。
ふたりで歩いている道の先から、突然に誰かの悲鳴が聞こえた気がした。
ここはナタルの大森林を縦横に貫く道だが、向かっている里まではしばらくあり、人気などまったくない地域だ。
「エリカ──」
一郎は悪戯を即座にやめて声をかけるとともに、瞬時に魔眼を使った。
“ユイナ
エルフ族(褐色)、女
年齢16歳
ジョブ
魔道遣い(レベル10)
戦士(レベル1)
***(**)
生命力:100
攻撃力:1(拘束状態)
魔道力:100(凍結)
経験人数:なし
淫乱レベル:D
快感値:500(通常)
状態
魔力凍結”
まず、頭に飛び込んできたのがそれだった。
次いで、四人ほどの褐色エルフの男の情報も入ってきた。
しかし、その四人のうちのひとりについては、すぐに情報が消滅してしまった。
残りの三人のエルフ男たちは、いずれも剣を持っていて、戦士レベルは、“5”、“2”、“2”だ。戦闘力はひとりが“600”で、残りふたりは“50”と“60”──。
「エリカ、この先で三人のエルフ族の男がユイナという褐色エルフの少女を襲っていると思う──。三人のうちひとりは手練れだ。もうひとりいたんだが、その情報は消えた」
一郎は素早く情報を伝えた。
エリカは荷から弓と矢を取り出すと、残りの荷を横の茂みに投げ捨てた。
エリカが駆け始める──。
速い──。
一郎も慌てて後を追う。
だが、駆けているうちに、エルフ族の少女についても、襲撃者らしき三人の男の情報も途絶えた。
魔眼で感知できる距離から離れてしまったのかもしれない。
やがて、道に倒れているひとりの男を見つけた。胸から大量の血が流れ出ている。
「しっかり──」
エリカが男に声をかけて、男の身体にしゃがみ込んだ。
しかし、すぐに一郎に向かって首を横に振った。
その男が死んでいるのは一郎の目にも明らかだ。男の胸にはたくさんの刺し傷がある。よってたかって殺されたのだろう。最初に一郎の魔眼から情報が消滅した男が彼だったに違いない。
死んでいる男は旅姿であり、そばには旅支度の荷袋があるが、それは荒らされている。そして、なにかを取り出したような感じに荷袋の中身が道端に散乱していた。
一郎は生まれて初めて見る本物の死骸に身体が竦む思いだ。
ここは異世界だ……。
死は常にそばにある……。
一郎は懸命に自分に言い聞かせた。
だが、次の瞬間、一郎の頭にもう一度、さっきの男と女の情報が入ってきた。
「エリカ、この近くにまだいる……。その場所もわかる……。それから……」
一郎はささやいた。
そして、そこでなにが起こっているかもわかってしまっていた。
ついさっきまで、「経験人数:なし」と表現されていた見知らぬユイナというエルフ娘のステータスが、いまは「経験人数:男1」に変化していた。
「……俺が誘導する……。その弓で最初に手練れを射るんだ。残りはお前が負ける相手じゃないと思う、エリカ……」
とにかく一郎は、まずはそれを言った。
*
「ち、畜生、噛みやがった、兄貴──。痛ててて──」
口と眼の部分だけをくり抜いた覆面で顔全体を被った三人の男のひとりがユイナに手を噛まれて悲鳴をあげた。
そのまま食い破ってやろうと思ったが、もうひとりの男に強引に顎を掴まれて口を開かされる。
その口にユイナから引き千切った服の切れ端を突っ込まれ、さらに上から紐をかけられて猿ぐつわをされた。
すでに魔道の杖はへし折られた。魔力も凍結させられ、いまは、この身体だけが抵抗手段だ。
「んんんん──」
ユイナはまだ拘束されていない脚で、力いっぱいユイナの口に布を突っ込んだ男の脛を蹴ってやろうした。
すでにびりびりに破かれているユイナの服は、いまや服というよりは単なる布きれだ。
暴れれば、隠したい場所が露出するのだが、そんなことはどうでもいい。
ユイナは力いっぱい蹴りあげる。
「ひがっ」
その男が足を抱えて、その場に倒れた。
「こいつ──」
さっき手を噛んだ男がユイナの頬を力いっぱい張り飛ばした。
後ろ手に縄で拘束されているユイナには、それを防ぐ方法などない。意識も飛ぶような衝撃とともに横倒しに地面に倒れた。
すぐに身体を起こそうと思ったが、身体が痺れて動けない。
情けない──。
涙が出てきた。
畜生──。
口惜しい──。
こんな連中に──。
すると、いままでふたりの男がユイナを襲うのを見守っていた三人の襲撃者のリーダー格の男が笑い出した。
「お前ら、手を縛った小娘相手になにを手こずってるんだ。いいから、とりあえず足を揃えて縛ってしまえ。それと、ここじゃあ人目につくかもしれねえ。少し道から外れたところに、誰も使ってねえ猟師小屋があったろう。そこに連れ込め。犯すのはそれからだ」
そのリーダーが言った。
ユイナの身体をさっきのふたりの男がのしかかるように押さえつけた。ひとりが両脚を揃えて上に乗り、もうひとりが足首と膝に縄を掛けていく。
「んぐうう──」
ユイナは暴れたが、さすがにどうしようもない。
改めて腕を胴体に縛りつけられたユイナは、地面の上で芋虫のように動くだけで、今度は起きあがることすらできなくなった。
助けを求めて、一緒にいた里の男を見た。
しかし、少し離れた場所で倒れているその里の男は身動きひとつしない。
ここまで血の匂いがするから死んでしまったのだろうか……?
やっぱり、死んだのか?
本当に死んだのか……?
「おい、お前は、小娘の連れの荷を調べろ。こいつの荷には告発書はなかった。もうひとりの男が持っているに違いないぜ」
リーダの言葉でひとりが弾かれたように駆けていった。
ユイナはそれで、この三人が誰の指示で動き、なんのためにユイナたちを襲ったのかわかった。
さらに口惜しさが拡がる。
こいつらの狙いは、ユイナたちがこれからエルフ族の長老に、新しい里長(さとおさ)の悪事を告発するための証拠を添えた文書だったのだ。それを奪われては、ユイナたちのやろうとしていることは無になる。
「さあ、死ぬまでの短い時間、おじさんたちが遊んでやるからな。元気のいいお嬢ちゃんだが、男遊びの経験はあるか?」
すると、リーダーの男が地面に寝ているユイナの身体の横に屈みこんできた。
ユイナの顔の前で、意味ありげに右手を拡げる。
その右手に魔力が集中するのがユイナにはわかった。
「んんっ」
びっくりした。
リーダーの男の指が魔道であり得ないほどに細かく小刻みに振動をし始めたのだ。しかも、五本の指の全部がだ。
その指が破かれて露出していたユイナの乳房にそっと触れた。
「んんん──」
ユイナは口に突っ込まれた布の下から悲鳴をあげた。振動をしている指が乳房の頂点に乗せられて、得体の知れない感触がユイナを襲ったのだ。
「どうだ、なかなかいいだろう? その感じだと生娘か? 死ぬ前になんの経験もなく死ぬのは可哀想だからな。俺たちがきっちりと女にしてから、冥界におくってやろう」
リーダー男の振動する指が破かれた衣服の隙間から入り込み、背筋から腰のくびれのあたりを這い始める。
こんな男になぶられて、反応を示すなど血が凍るほどの屈辱なのだが、おかしな振動をする指に剥き出しになっている皮膚を刺激されると、ぞわぞわとした感覚が込みあがり、ユイナから全身の力を奪っていく。
「おう、なかなかの好き者か? じゃあ、ここはどうだ?」
男の指が破れたスカートの内側に入り込み、下腹部に指を這わせる。
「んんああ──」
ユイナは身体をばたつかせた。
しかし、それをふたりがかりで押さえられる。
振動する指が股間のあちこちをそっと触れて動く。ユイナは激しく拘束された身体をもがかせた。
ユイナの反応を愉しむかのように、ふたりが大笑いした。
口惜しさでまた涙が出る。
そのとき、さっき駆けていった男が戻ってきた。
「おう、兄貴たちばかり、狡いじゃねえか──」
その男が開口一番声をあげた。
「そう言うな。それよりも、見つかったか?」
リーダー男がやっとユイナの身体から指を離した。とりあえずほっとした。
だが、戻ってきた男が掴んでいたものを見て、ユイナは愕然とした。
紛れもなく、告発書だ。
ついに、見つけられてしまった……。
これで、ユイナの運命も定まった。
告発書を奪った以上、この三人が告発の使者であるユイナを殺すことは間違いない。
すでに、ユイナの連れは殺された。いま、ユイナが生きているのは、この三人がユイナを殺す前に、身体を犯そうとしているからにほかならない。
凌辱するだけ凌辱すれば、やはり、この三人はユイナも殺すと思う。
仮にも里長のダルカンがこんな思い切った策を取るとは夢にも思わなかっただけに、たったふたりだけで重要な告発書を運ぼうとしたことが甘かったかもしれないと思った。
それにしても、顔を隠しているのでよくわからないが、ユイナにはこの三人に記憶がない。同じエルフ族のようだが、おそらく別の里から派遣されたものだろう。ダルカンの手の者だと思うが、さすがに、人殺しなどという仕事を里の者にさせるのは躊躇ったに違いない。
「おう、それか?」
リーダー男も、戻ってきた男が持っていた告発書に気がついた。それを受け取ると、すぐに中身を確認し、やがて、満足そうにうなずいた。
「間違いねえ──。よくやったぞ」
リーダー男が大きくうなずいた。
「荷袋の内側が二重になっていて、内側が魔道で巧みに隠してあったんだ。もう少しで見逃すところだった」
「わかってるぜ。ご褒美に、最初にこの娘っ子を犯させてやるぜ」
次の瞬間、リーダー男が持っていた告発書が大きな炎に包まれた。
魔道だ──。
ユイナの目の前で完全に書類が灰になる。
「本当か、兄貴? 俺が一番でいいのか?」
男が奇声をあげた。
「ああ、俺の見たところ、この娘っ子は生娘だ。ちゃんと可愛がってから犯してやんな。よし、連れていけ」
ユイナの身体をふたりの男が持ちあげた。
もはや、ユイナにはなすすべもない。
暴れるユイナの身体を軽々と運んで三人は道から離れていき、やがて森の中の猟師小屋に着いた。
小屋の床に放り捨てられる。
逃げようとした。
なんとしても、逃げなければ……。
ユイナは拘束された身体を転がして、必死に小屋の外に向かう戸に向かった。
「操れ、身体──」
しかし、リーダー格の男が笑いながら叫んで、ユイナに向かって杖から魔道を放つ。
ユイナの全身に強い魔力の縛りが加わったのがわかった。
身体が動かなくなった。
「さすがに、もう抵抗できねえはずだ。俺が魔道で縛りつけてやるから拘束も解いていい。約束通り、最初はお前からだ」
リーダー男が杖をユイナに向けたまま言った。
再び、ふたりがかりで押さえつけられる。
しかし、今度は縄を解かれていく。だが、まったく身体は動かない。縄を解かれても見えない縄で全身が拘束されているかのようだ。
そして、全身にまとわりついていた衣服の切れ端が次々に剥ぎ取られる。ユイナは完全な素裸になった。
「いやああ──、誰か、助けてええ──」
やっと口の中の布を抜き取られ、ユイナは力の限り悲鳴をあげた。
「いくらでも叫びな──。こんなところに助けなんかくるかよ──」
だが、三人の男たちは嘲笑うばかりだ。
やがて、ひとりの男がおもむろにユイナの前に進み出て、ズボンを下げた。
醜悪な男の下半身が目の前にやってきた。
勃起した男の性器にユイナの全身が強張る。
すると、ユイナの身体は、まるで操り人形のように勝手に動いて、床に腰をつけて座る体勢になった。しかも、両脚の膝が立ち、大きく左右に開く。
「い、いやだああ──本当にいやああ──いやああ──」
絶叫した。
すでに拘束はないが、身体は動かない。
しかし、顔は動く。
ユイナは激しく頭を振り立てて悲鳴をあげた。
身体が押し倒されて、男にのしかかられる。
「や、やめろおお──。やめてええ──」
叫んだ。
眼の前にユイナを犯そうとしている男の頭がある。
ユイナは唯一動く頭を男の頭に叩きつけた。
「ぐあっ」
男が頭を抱えて、一度ユイナから離れた。
「ち、畜生、さっきからなんてお転婆だ──」
その男が今度は拳を振りあげた。
殴られる──。
ユイナは目をつぶって、歯を食い縛った。
しかし、あのリーダー男の笑い声が響き渡った。
「やっぱり、駄目だな……。どけ、交代だ──」
リーダー男がその男を押し避けると、すっと魔道の杖をユイナの股間に伸ばしてきた。
ぎょっとした。
その杖の先が、さっきのこの男の指のように魔道で小刻みに振動をしていたのだ。
「な、なにする気よ──。やめなさい──やめるのよ──」
絶叫した。
「いいねえ……。最後まで、そんな風に抵抗してくれると愉しいんだがな……。すっかりと、諦めて人形のようになった娘を犯しても愉しくないしな」
杖の先が大きく開かされているユイナの亀裂の上側にとんと当たった。
「や、やめええ──」
ユイナは甲高い悲鳴をあげてしまった。
杖の先が当たったのは、ユイナの一番敏感な肉の蕾の部分だ。そこに的確に振動する杖の先が触れたのだ。
ユイナはもがいた。
だが、さらに強い魔道がユイナの身体を縛るのがわかった。ユイナは今度は凍りつくように全身を動かなくされた。
「ああっ、だ、だめ……」
喉が引きつる。
なにかが身体の内側から込みあがる……。
おかしな感覚に身体が揺さぶられる……。
必死になって、杖から逃げようともがいた。
でも、やはり動かない。
大きく開いている脚もぴくりともできない。
「感じてきたか? じゃあ、振動をあげるぞ……」
「や、やめ……ろ───」
ユイナは歯を食い縛った。
股間に加えられる杖の先の振動が強くなったのだ。
痺れるような衝撃が刺激を受けているところから全身に広がる……。
「腰が動き出したな……。腰だけ金縛りを解いてやるぞ」
男が言った。
腰を凍りつかせている魔道の力がなくなったが、それだけだ。手足は動かせない。
それでも杖の先から逃げようと、ユイナは腰を捻ったり、左右に振ったりするのだが、杖は張りついたかのようにクリトリスの上の一点に乗ったままだ。
狂おしい刺激だ。
ユイナはだんだんと自分の身体を支配しようとしているものに恐怖した。
「兄貴、感じてきたようだぜ。濡らしてきたぜ」
「おう、いくらなんでも、あのままぶっさしたら、こっちも痛いだけだからな。少しくらい潤わせておかねえとな。どうだ、小娘? 感じてきたか?」
杖の振動でユイナの股間をなぶっている男が笑った。
「か、感じる……もんか──。じょ、冗談……じゃない……あ、ああっ……」
悪態をつこうと思って口を開いたら、自分でも思いがけずに甘い声が迸った。
ユイナは慌てて口をつぐんだ。
「感じているくせに、あてつけがましく、しらけた顔をしてんじゃねえよ……。おい、そろそろ、いいだろう。いけ──」
やっと杖がどかされた。
ほっとすることはできなかった。
それは、最初にユイナを犯そうとした男と入れ替わっただけだ。
身体が倒されて仰向けにされた。
脚は左右に開いて固定されたままだ。
股間に覆いかぶさってきた男の勃起した性器の先端が当たるのがわかった。
ユイナは絶叫した。
股が引き裂かれる──。
それを思わせる激痛がユイナに襲いかかった。
股間になにかがめり込む──。
ユイナはあまりの激痛にわけもわからずに悲鳴だけをあげ続けた。
そんなユイナを見おろしながら、男ふたりが笑っている。
ユイナの上に乗っている男が獣のような声をあげた……。
*
二人目の男がユイナの股間に精を放ったのがわかった。
ユイナは泣く代わりに、自分を犯した男を睨みつけた。
「なかなか気の強い娘だな、兄貴──。まだ、こんな顔ができるんだからな───。殺すのは惜しいぜ。せめて、奴隷商に売っぱらっちまおうぜ」
その男がユイナから離れながら言った。
「駄目だ──。必ず殺すというのが契約だ。可愛そうだが、こいつには死んでもらう」
三人目はリーダー男だ。
「あ、あんたらの……雇い主は……ダルカンでしょう……」
ユイナは口惜しさで歯噛みしながら言った。
ダルカンというのは、里長だった祖父に替わって、一年前にユイナたちのエルフ村の里長になった男だ。もともとは余所者だったのだが、五年ほど前にユイナたちの里にやってきて里で商売をするようになり、そして、ある事件をきっかけに、祖父を引退させて、新たな里長になった男だ。
つまり、いまの里の里長なのだ。
「さあな……。それを知ってもどうしようもないだろう」
リーダー男はそう言うと、猟師小屋の床に仰向けになっているユイナの脚のあいだに立った。
おもむろにズボンをおろし始める。
そうかもしれない……。
確かに、いまここでユイナがそれを知っても仕方がない……。
おそらく、この男に犯されたあとで、ユイナは連れの男同様に殺される。
せめて、この口惜しさだけでも、祖父やイライジャに伝えられたら……。
そのときだった。
突然に、ばたんと猟師小屋が開いたのだ。
ユイナは驚いて視線をやったが、それは三人の男たちも同様だった。
「なんだ、お前──?」
ひとりが叫んで、三人の持つ杖が一斉に突然の闖入者に向く。
人間族?
そこにいたのは、黒い髪をした人間族の男のように思えた。
その男がなにかを投げたのがわかった。
「うわっ」
ユイナの前にいたリーダー男が声をあげた。
人間族の男が投げたのは、真っ赤に熟れた木の実だった。それが破れて、リーダー男の全身が赤い汁で染まったのだ。
「悪い──。取り込み中か──。じゃあな……」
そして、あっという間にその人間族の男は逃げていった。
「いかん──。捕まえろ──。お前はここにいろ──」
リーダー男はひとりを指名すると、小屋に残るように指示し、もうひとりの男とともに、杖をしっかりと握り直して、小屋の外に飛び出していった。
*
ふたりの男たちが小屋から飛び出してくるのがわかった。
一郎はなにも考えずに地面にひれ伏した。
「いたぞ──」
叫んだのは、三人の強姦魔のうち一番の手練れだ。
よかった。
その男が一番強い。
“名前:****
エルフ族、男
年齢:45歳
ジョブ
魔道遣い(レベル19)
戦士(レベル5)
生命力:100
攻撃力:600(必撃の剣)
魔道力:500”
それに比べれば、エリカは、戦士としてのレベルは格段に上だが、ほかの能力では劣る。それがどういうことなのかわからないが、とにかく、こいつを最初に討つべきだと思う。あとは雑魚だ。
それには奇襲だ。
どの男が手練れかは、一郎が印をつけてきた。
エリカには、それで十分だろう。
「殺せ」
その男が地面に伏せている一郎を認めて、もうひとりの男に短く言った。
一郎には、手練れが用心深く杖を構え、もうひとりが杖を腰に差して剣を抜くのがわかった。
そのとき、風の鳴る音がしたと思った。
「がっ」
手練れの首に矢が突き刺さった。
一郎には一瞬にして、手練れの生命力が消失するのがわかった。
さらにもう一矢──。
今度は頭に刺さった。
一郎の頭から手練れの情報が消失した。
ただの死骸に変わったということだ。
手練れの身体が音を立てて倒れる。
「な、なんだあ──?」
一郎に剣を向けていた男が異変に気がついて、声をあげた。
そして、矢が刺さって死んでいる手練れの姿に悲鳴をあげた。
風の音──。
同じように首に矢が刺さり、男が倒れた。
「ロウ様──」
少し離れた草の中からエリカが顔を出した。
駆けてくる。
一郎は立ちあがった。
「ぶ、無事ですか?」
駆けてきたエリカは心配そうに一郎を声をかけてきた。
「問題ない……。もうひとりいる。小屋だ」
一郎は小屋を指さした。
中にいるのは、残った男ひとりと、ユイナという襲われていたエルフの少女だ。
ただ、一郎たちが襲撃する直前に、魔眼で見えるそのユイナの「経験人数」というのが、「男1」から「男2」に変化した。
小屋がどういう状況にあるのかを考えると暗い気持ちになる。
だが、一郎は首を横に振った。
せめて、助けるのだ……。
命だけでも……。
一郎は、エリカに小声で指示して、一郎自身は真っ直ぐに小屋に向かって歩いていった。
近づく前に死んだエルフ男が持っていた剣を拾う。
こんなものを一郎が持っても、大して役には立たないだろうが、相手はそうは思わないかもしれない。
三人目の男はまだ小屋の中だ。
小屋の外における異変には気がついていないようだ。
その男がユイナというエルフ少女をからかう声が聞こえてくる。
怖い……。
足の震えが止まらない。
しかし、さっきもそうだったが、襲われているのだと思うユイナという少女のことを考えると、なぜか勇気が出た。
がくがくと恐怖に襲われながらでも、魔道の遣える三人の殺人エルフ男たちの前に飛び込むことができた。怖さで身体が凍りそうなのに、エリカに告げたとおり、しっかりとエリカが最初に殺すべき手練れに、果実の汁で印をつけることもできた。
そんなことができた自分が不思議だ。
なにも考えず、襲われている少女を助けようと思うことができた自分が信じられない。
初めてエリカを抱いたときもそうだったが、どうも女が絡むと度胸も根性もどこからか生まれ出てくる気もする。
淫魔力により強化されたすけべ心のなせる技か……?
一郎は扉を蹴飛ばした。
そして、さっと小屋の中を見た。
「お、お前、さっきの──。兄貴たちはどうした──?」
全裸のエルフ少女の上に覆いかぶさるようにしていたその男が、ぎょっとした顔をこっちに向けた。
だが、一郎の眼は、そのエルフ少女の姿を捉えている。
股間に明らかに犯された痕がある。しかも、薄っすらと血の痕まで……。
そのとき、その男の杖がこっちを真っ直ぐに向くのが見えた。
「やべえ──」
ほとんどなにも考えずに、身体を引っ込めた。
その次の瞬間、なにかの光線のようなものが一郎の身体すれすれを通り過ぎていった。
一郎は度肝を抜かれた。
「近づくな、こいつを殺すぜ──」
小屋から男の声がするとともに、少女の悲鳴がした。
「ふ、ふたりは死んだぞ──。観念して出てこい──」
一郎は叫んだ。
だが、内心で本当にこっち側に出てきたらどうしようという思いがある。そのときは、一目散に逃げるしかない。
エリカには、剣の届く範囲内に絶対に近づくなと、念を押されている。
「来るな──。来たら、こいつを殺す──」
男が叫び、次に反対側の小屋の壁にどんと身体を当てる音がした。
しめた──。
一郎の読み通り、そいつは反対側の壁に背をつけたようだ。
「ぐああああ──」
叫び声がした。
一郎は部屋にもう一度飛び込んだ。
男が背をつけた壁の向こうから剣が貫かれ、男の胸から飛び出している。
エリカだ──。
男が呻いていたが、すぐに一郎の頭からその男の情報も消えた。
死んだ。
「だ、大丈夫か……?」
呆然としているユイナという少女に一郎は声をかけた。
そして、見ては失礼だとは思いながら、その少女の裸からなぜか眼を離せないでいた。
褐色エルフという言葉の通り、そのエルフ少女の肌は美しい褐色の肌をしていた。顔には幼さが残っている可愛らしい顔立ちだが、身体は完全な大人だ。
胸は小ぶりだが品のいいかたちをしている。髪も陰毛も一郎と同じ黒色。身体全体はほっそりとしているのに、妙に腰回りだけは肉付きあり、色っぽい。
一郎は、一瞬もその裸身から目を離せない自分を感じていた。
その少女が震える身体で立ちあがった。
一郎ははっとして、少女に駆け寄った。
魔眼によって、ついさっきまでその少女に、魔道で身体が拘束されていたのはわかっていた。それが術者が命を失うことにより、魔力がやっと途切れて、たったいまやっと解除されたのだ。
一郎はエルフ少女の身体を支えようとした。
「さ、さっきから、なにじろじろと見てんのよ──。触るんじゃない、人間──」
だが、いきなりその少女から顔面に向かって拳が飛んできた。
眼の前で火花が弾け、それでなにもわからなくなった。