【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
116 女の敵と女騎士
「パーシバル様、愛してます……。あ、あのう、これが今日の分で……」
目の前の可愛らしい少女、つまりはアーネがおずおずと持ってきた白い袋をパーシバルに差し出した。
「俺も愛しているよ、アーネ」
軽い口づけをしながら、娘が持ってきた袋を受け取ったパーシバルは眉をひそめた。
いつもよりも、かなり袋の大きさが小さいし、軽かったのだ。
開いてみた。
すると、やっぱり、袋に入っていた金子は、パーシバルが指示した額に遥かに少なかった。
いや、まったく少なすぎる。
田舎の城郭とはいえ、この辺りではもっとも裕福な分限者の娘だ。
パーシバルが要求した額が大きすぎるということはなかったはずだ。だが、袋に入っていたのは、その四分の一にも満たないだろう。しかも、大部分は銅貨か、それよりも価値のない白貨であり、銀貨はほとんどない。金貨に至っては一枚も入っていなかった。
「少なすぎるな、アーネ。私の注文している鎧は特別な銀細工のある一流のドワフ職人の仕事なのだ。本来は王軍騎士である私には、それくらいのものでないと引き合わんのでな。しかし、こんなものでは支払額には足らん。お前は私に支払額が足りないために注文品を受け取れないという恥をかかせたいのか」
「で、でも、これがあたしの全財産で……」
アーネはおどおどと言った。
「だから、親父さんに頼めと言っただろう。理由はどうにでもつけろ。まあいい。服を脱げ。抱いてやろう。その代わり、次にやって来るときには、必ず残りを持ってくるんだぞ。どうしても、親父さんに金子を融通してもらう理由を思いつかないときには盗め。同じ家に住んでいるんだ。金子の場所もわかるだろう」
「だったら、今度はお父様にちゃんとお願いします。お父様に騎士様のことをお話してもいいですか? あたしが騎士様の妻になるのだということを説明すれば、騎士様はあたしの旦那様になるお方ですから、お父様は鎧代くらい出してくれると思います」
アーネの言葉にパーシバルは少しだけ慌てた。
このところ、だんだんとやり難くなる。
なにかとえいば、婚約のことを口にするのだ。
世間知らずのアーネには、騎士の結婚には手順が必要であり、正式に申し込みのできないうちは、誰にも言うなと釘を刺している。
それなにの、この娘は最近、なにかと婚約のことを公にしたいとパーシバルに言ってくる。
こんな田舎娘と結婚する気のないパーシバルは、ちょっと困っていた。
「まあ、それは待て。そのうちに正式に申し込みにいくつもりだ。だが、まだ、私とお前が婚約していることは誰にも言うな。いいな──」
とりあえず、それだけを言った。
「でも……」
「いいから……」
パーシバルはアーネを抱き寄せた。
ここは騎士であるパーシバルに与えられている家だ。いつもは小従がいるのだが、今日はアーネがやって来る日なので、小遣いを与えて追い払っている。
「ああっ、騎士様……」
パーシバルがアーネの唇に顔を寄せると、アーネはうっとりとした表情になった。
驚くほどの美男子というのは、むかしからよく言われた。
この顔で甘い言葉をささやき、愛を語れば、大抵の女は落ちた。
この娘もそうだ。
こんな辺境の城郭だけに、王都の美女たちに比べれば見劣りはするが、この辺りでは有名な美少女らしい。
しかも、城郭では一、二を争う商人の娘だ。
いい金づるだと思った。
年齢は十四。
婚約者もいたようだが、この城郭に騎士として赴任したパーシバルが横取りして、こうやって愛人にした。
いまでは、すっかりとパーシバルの虜だ。
もちろん、こんな田舎娘と結婚をするつもりなど皆無だ。
こんな女は使い捨てだ。
どうせ、そのうちに王軍騎士として王都に戻ることになる。
そのときに行先を知らせずに、いなくなればいい。
アーネの口の中を舐め尽くす。
「あ、ああ……」
アーネが甘い声を出し始める。
腕の中のアーネがだんだんと脱力していくのがわかった。
「よし、舐めろ」
パーシバルはアーネを離して、横にある寝台に移動した。
服を脱ぐ。
騎士として鍛え抜いた裸身を仰向けに横たえた。
顔と同様にこの身体もパーシバルの自慢だ。
アーネは寝台の横で身に着けているものを脱ぎ、パーシバルと同じように生まれたままの姿になる。
「失礼します」
素裸のアーネが寝台にあがり、開脚しているパーシバルの股間の前にうずくまる。
アーネの唇がパーシバルの男根を含んだ。
パーシバルは手を伸ばして、アーネの乳房を掴んで揉みはじめる。
「んんっ」
一瞬、アーネが身悶えして、口を離しそうになった。
だが、すぐに深くまで咥え直し、パーシバルの一物の先端から根元までをまんべん丁寧に舐めあげていく。特に先端についてはたっぷりと唾液を使って擦りあげてくれる。
そのあいだ、指を袋に回して、ふぐりを揉むように手を這わせてもくる。
なにも知らない田舎娘にここまで教え込むのに手間も随分とかかった。
アーネの丁寧な奉仕により、すっかりとパーシバルの一物は硬直した。
「もういいぞ。上に乗れ、アーネ」
「はい、騎士様」
アーネが脚を拡げて、パーシバルの上に膝立ちで跨いだ。
静かに身体を沈めてくる。
アーネの女陰が天井を向いているパーシバルの怒張に挿さっていく。
「あ、ああ……」
挿入の瞬間、アーネが大きく身悶えをした。
「すっかりと濡れているじゃないか、アーネ。よほど、飢えていたか?」
「き、騎士様に会えない日は寂しくて……」
アーネがぽっと頬を染めた。
「ふ、ふううっ、はああっ」
ついにアーネの股間は完全にパーシバルの根元まで咥え込んだ。
アーネはそれだけで感極まったような仕草をした。
うっとりと目を閉じ、顔をのけぞらすようにして大きく息をしている。
「ほらっ、呆けるな。動かんか」
パーシバルは苦笑した。
アーネが喘ぐばかりで、ちっとも動こうとはしないからだ。
「で、でも、騎士様に抱かれていると思うだけで、あたし、いきそうで……」
「可愛いことを言う。とにかく、そろそろ動け」
「はい」
アーネはゆっくりと腰を動かしだした。
「ああっ、いいいっ」
すぐにアーネは大きな嬌声をあげた。
身体の上で淫らで、妖艶で、艶めかしく踊り続けるアーネを眺めながら、パーシバルは半年前のまったくの生娘だったときのアーネを思い出していた。
そういえば、あのときは、パーシバルの誘いに乗って、ここまでやってきたくせに、いざとなると婚約者がどうのこうのと逃げようとした。
結局、強姦するように犯したが、それはそれで愉しかった。
一度犯すと、アーネはもうパーシバルに逆らうことはなく、こうやって通うようになったが……。
やがて、快感が込みあがった。
アーネは相変わらずのゆっくりした動作で腰を動かして、いまだにパーシバルの腰の上でよがっている。
パーシバルは構わず精を放った。
「よし、もういい。おりろ」
射精により欲情が収まったパーシバルは、上に乗っているアーネに怒鳴った。
アーネはまだ物欲しそうな顔をしていたが、すぐにパーシバルから降りた。
「今日は随分と大人しかったな。いつもはもっと乱れるのに」
パーシバルは寝台に膝を揃えて座っているアーネに声をかけた。
「お腹に負担がないようにと思って……」
すると、アーネが言った。
「お腹?」
パーシバルは意外な言葉に上半身を起こして、アーネに向かい合う体勢になる。
「……騎士様、多分、騎士様の子を宿したのだと思います」
アーネがにっこりと微笑んだ。
パーシバルは度肝を抜かれた。
「こ、子供……?」
慌てて、アーネの腹を見る。
そう言われれば心なしか、大きいようにも思える。
「はい。乳母に相談しましたが間違いないそうです」
アーネは頬を赤く染めていた。
しかし、パーシバルにとっては冗談ではない話だ。
「だ、だって、お前、避妊薬を……」
とりあえず言ったのはそれだけだ。
絶対の避妊効果のある「避妊薬」の薬草は安価で安全で確実だ。それを常時服用していれば、絶対に妊娠することはないはずだ。
婚姻前の若い娘は、未婚の女のたしなみとして服用する習慣もある。
アーネもずっと飲んでいるものと思っていた。
「……避妊薬は、騎士様があたしと結婚してくださると言ってくれてから飲んでません。夫になる方の子をたくさん産むのは女の務めですし……」
アーネはにこにこしている。
しかし、パーシバルはそれどころではない。
子を宿した?
これは面倒なことになったと思った。
こうなったら、任期を早めて、すぐにでも王都に戻してもらうように、伯父に泣きつくか……。
もともとパーシバルは王都の出身であり、所属は王軍にあるのだが、若いうちに地方勤務も経験すべきだという一族の長の伯父の考えで、数年間に限った地方赴任をしていたのだ。
その任期を早めてもらう……。
アーネは捨てていく。
それしかない……。
だが、これは慎重にやった方がいいだろう。
アーネは乳母と相談したと言っているから、すでにアーネの両親の耳に入っている可能性もある。
田舎商人など怖くはないが、領主でも告げ口をされてしまえば、パーシバルの立場は困ったことになる可能性もある。
「そ、それはいいな……。じゃあ、正式に挨拶に行くことにする。だが、騎士の私は私で、婚姻には国王陛下の認可が必要なのだ。その手続きが終わるまで待ってくれ。それまでは、黙っているのだぞ。まあ、そんなに先のことではないはずだ」
嘘ではない。
騎士は貴族の一員だ。
貴族の婚姻は必ず国王の認可が必要だ。
ただ、パーシバルは、このアーネを追い返したら、その足でこの城郭を脱し、まずは、今回のことをうまく処理してもらえるように伯父にお願いするつもりだ。
「は、はい……。あ、ありがとうございます、騎士様。嬉しいです。本当に嬉しいです」
アーネは心からの安堵の顔をしている。
一方で、パーシバルは田舎娘を孕ませたということで、伯父から強い叱責をされることを想像して、いやな気分になった。
*
パーシバルは、ほかの騎士とともに、五十騎と五十騎に分かれた騎士隊が並ぶのを見物していた。
数年間の地方勤務を終えて、初めて参加した王軍騎士団の演習だ。
ここは王都郊外にある演習場であり、王軍騎士団に属する騎士のほとんどが参加するこの演習には、もちろん王軍騎士団に復帰したパーシバルも参加している。
いまやっているのは、数を限定した実戦形式の対抗訓練だ。
ただ、パーシバルはまだ王軍に戻って間もないということで、まだ集団演習には参加させてもらえない。
いまは集団行動を学ぶという名目で、ふたつの隊に分かれた五十騎ずつが、ぶつかり演習するのを見学しているところだ。
ほかにもすでに演練の終わった隊もいて、彼らもパーシバルたちと同様に馬を降りて丘の斜面に並んでいる。
パーシバルの見ている左側の隊は青色の薄布を鎧の上につけ、右側は赤布をつけている。
練兵場に白布が投げ込まれる。
それを合図に二隊が動き出す。
「ほう」
パーシバルは思わず感嘆の声をあげた。
赤色の隊の動きがいいのだ。
指揮官役をしている騎士を先頭に一目散に青隊に突っ込んでいく。
青隊も動いていたが、まだ隊形を作り終える前に、先頭の騎士が青隊に到達してしまった。
赤隊の先頭の騎士が青隊の騎士を三騎ほど一度にひっくり返した。
青隊の応戦も始まり、ぶつかり合いが始まる。
演習用の刃のない剣と槍だが、激しくそれらが当たる金属音がここまで聞こえてくる。
やがて、すれ違うようにして両隊が離れた。
赤隊と青隊が位置を交換したときには、青隊の騎士の数は半分になっていた。それに比べれば、赤隊はほとんど失っていない。
「勝負あったな。やはり女の騎士が先頭に行くのでは、男の騎士は遅れるわけにはいかんからな。勢いが違った」
「いやいや、シャングリアがいいですよ、隊長。少し前までは、あんな風に集団の中で動くということができなかったのですがね。それがいまや、ああやって指揮ができるのです。変われば変わるものですよ。なにが、シャングリアを変えたのかは知りませんけどね」
話し声は、王軍騎士団の騎士隊長と副隊長だ。
たまたま、パーシバルの立っている場所の近くで練兵を見物をしているのだ。
むろん、ふたりとも立派な家柄の貴族であり、騎士隊長など王家に属する家系でもある。
しかし、それよりもパーシバルは、赤隊の指揮官が女だということに驚いた。
「申し訳ありません。隊長。いま、あの赤隊の長が女だと言われましたか?」
パーシバルは声をかけてみた。
「おう、パーシバルか。あれは、モーリア男爵家のシャングリアだ。わけあって、いまは騎士団を休養中なのだがな。しかし、ああやって、月に一度、数日だけ演習に参加することになっている。いまは、まるで人が変わったように生き生きとしているが。あれでも、しばらく前までは騎士団のお荷物だったのだがな」
隊長が笑いながら言った。
「もともと、素質はあったのですが、気の強さが災いして、動きがひとりよがりで、うまくいっていなかったのです。だが今日はよく周りを見ておりますね。先頭に立っても突出はしない」
副長も続けた。
モーリア家のシャングリア嬢──。
会うのは初めてだが、評判は耳にする。
美貌だが男勝りのお転婆だという話だ。とにかく、気が強いという噂だ。男嫌いでもあり、絶対に自分に男を寄せ付けないとも聞く。
パーシバルの男としての血が騒いだ。
そんな女を落としてみたいと思ったのだ。
アーネの一件では、家長である伯父にも迷惑をかけたが、なんとか片をつけてもらった。
ただし、今回面倒を看る条件として、パーシバルは早く身を固めろという条件もつきつけられた。
いつまでも独身で遊んでいるから、こんな騒動を引き起こすのだと、さんざんに説教ももらった。
そう考えると、シャングリアといえば、パーシバルの結婚の相手としては申し分もないのではないかと思った。
男嫌いだということは、変に男に染まっていないということであるだろう。
相手のモーリア男爵家としても、侯爵家の一族であるパーシバルとの婚姻に不服はないはずだ。
なによりもシャングリアは大変な美貌だという。
そんな女を妻にするのは、パーシバルの男しての箔がつくというものだ。
もっとも、シャングリアの美しさが話半分としてもの話だが。
やはり、パーシバルほどの男が妻にするのだ。
それなりの美貌でなければ困る。
眼下では二度目の馳せ違いが行われていた。
やはり、シャングリアだと思われる騎士が先頭で赤隊が先に突っ込み、青隊を蹴散らした。
それで終わりだ。
青隊は完全に分断して、まだ馬に残っている騎士も数騎単位になっている。
隊長が横の部下に指示をして、騎士隊がぶつかっている練兵場に白い布が繋がった石を投げ入れさせた。
錬成の終了を告げる合図だ。
それぞれの隊がこっちに引きあげてくる。
シャングリアと思われる騎士もこっちに来た。
ただ、まだ兜を被っているので顔は見えない。
「シャングリア、素晴らしい動きだった。よかったぞ」
近づいてきた赤隊の指揮官に、隊長が大きな声で言った。
すると、シャングリアと思われる指揮官がさっと馬から降りて、兜を取った。
パーシバルは、思わず小さく声をあげてしまった。
白銀の髪──。
端正な顔立ち──。
すらりとした体形──。
どれをとっても、パーシバルの想像を遥かに越えた美しさだ。
なによりも、醸し出す不思議な色香に心を奪われた。
先日別れた田舎娘にはない艶やかさごある。
「どうだ、シャングリア。騎士団に正式に戻らんか? いまのお前なら、喜んで一個隊を預けたい」
隊長が言った。
「わたしは戻らん。伯父との約束だから一応は騎士団に席を置き、月に数日だけは演練にも参加をするが、もう冒険者として身を成すことは決めている。まあ、そう言ってくれるのはありがたいが」
シャングリアがにっこりと笑った。
笑った顔もいい。
パーシバルは呆然と見とれてしまっていた。
「いや、俺も隊長と同意見だ。こう言っては怒るかもしれんが、少し前のお前は、誰に対しても反骨心が強くて、変に気構えだけが空回りするところがあった。だが、いまのお前には、なにか心の余裕のようなものを感じる。おかしな功名心のようなものがない。本当に騎士として成長した。是非、戻って欲しいな」
副長だ。
「わたしはもう冒険者だ。仲間もいる。悪いが騎士団には戻らん」
「そうか。まあ、気が変わったら言ってくれ。騎士団はいつでも、お前を迎え入れるからな──。いまのシャングリアなら、多くの騎士たちも喜んでお前の指揮に従うだろう」
隊長が続けた。
冒険者?
シャングリアは冒険者なのか?
よくわからないが、そう言った気もする。
まあいい……。
パーシバルはシャングリアの前に出ていった。
シャングリアがそれに気づいて、パーシバルに視線を向けた。
「シャングリア殿、数日前に王軍騎士団に加わったパーシバルです。ダウス侯爵家の一門の者です。一騎討ちでお手合わせ願いたい」
パーシバルは言った。
「手合わせ?」
シャングリアが怪訝な顔をした。
だが、パーシバルには思惑がある。
男勝りの女というものは、一度、本当の男の力というものを見せつければいい。
特に、シャングリアのように男よりも強い武芸を身に着けた女というのは、自分よりも強い男というものに強く惹かれる。
そういうものだ。
それで落ちる。
「そうです。ここで見ていて、シャングリア殿の騎士ぶりには感服いたしました。それで是非とも、稽古をしてみたいと思ったのです。ご心配せずとも、手加減をいたします。絶対に女のあなたに怪我などさせませんから、どうかお願いします」
「手加減だと?」
シャングリアが明らかにむっとした顔になった。
「それとも、怖いですか?」
パーシバルはさらに挑発する。
「まさか」
シャングリアの表情が明らかに変わった。
どうやら激怒しているようだ。
しかし、怒った顔もいい。
シャングリアは、すぐにすぐそばにあった馬に乗り直した。
「おい、シャングリアは強いぞ。一対一であれば、この隊では勝てるものもそうはおらん。あまり怒らせると、腕の骨を折られるくらいでは済まんかもしれんぞ、パーシバル」
そのとき、副長が冷やかすような口調で言った。
「まあ、見ててください」
パーシバルはそれだけを言って、自分の馬を寄せて跨った。
そのまま馬を駆けさせて、練兵場におりていく。
すると、すぐにシャングリアが追ってきたのがわかった。
ちょうどさっきの演練が終わったばかりで、練兵場にはほかの騎士はまばらだった。
降りてきたシャングリアとパーシバルの二騎に周囲の騎士の注目が集まるのを感じる。
練兵場で向かい合ったときには、ほかの騎士たちも近くで見物するためにおりてきて、二騎を囲む格好になった。
「おい、お前──。では、一騎討ちをしてやる。その代わり、負ければわたしを女だと侮ったことを皆の前で謝るのだ」
馬上のシャングリアが大きな声で怒鳴った。
「ならば私が勝ったら、一日、お付き合いください。女としてね、シャングリア嬢」
パーシバルは言った。
「な、なに?」
シャングリアは目を丸くしている。
しかし、そのときにはパーシバルは馬腹を蹴って、剣を抜いている。
シャングリアが持っている訓練用の剣ではなく、パージバル自身の剣だ。
距離が縮まる。
シャングリアが戦士の顔になったのがわかった。
向こうも剣を抜く。
馳せ違う。
剣と剣がぶつかった。
激しく剣が鳴る。
だが、次の瞬間には、一本の剣が大きく宙を舞っていた。
飛んでいったのは、シャングリアの持つ剣だ。
パーシバルの剣はシャングリアの喉元に突き付けられている。
「参った……ですね、シャングリア嬢?」
パーシバルは呆然としているシャングリアに会心の笑みを向けた。