【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「本当にやるんですか、ロウ様?」
冒険者ギルドに向かう王都内の道をいつもの四人で歩いている最中だが、何度目かの同じ言葉をエリカがかけてきた。
一郎は、エリカのしつこさに、だんだんと呆れてきた。
そんなに、ミランダをレイプまがいに襲うというのは嫌なのだろうか?
別に自分がやられるわけじゃないのに……。
「当たり前だ。それとも、協力しないと言うなら、ミランダの代わりにおしめさせるぞ。しかも、浣腸しておしめの中に粗相させて、歩かせるぞ……。いや、そういうのも愉しいかな? だったら、今日、ギルドを訪問するのはやめて……」
わざとらしく言うと、エリカが焦りだした。
「やらないとは言っていません。でも、ミランダが怒るかと思ってるだけです」
「当たり前だ。怒るに決まってる。ギルドの個室で俺たち四人がかりで襲われ、おむつプレイを強引にさせるんだからな。だけど、俺だって怒ってる。最近、ちっとも来ないし、昨夜の新屋敷お披露目パーティーも、理由もなしに欠席だし」
「り、理由は告げてましたが……。忙しいって……」
エリカが恐る恐るという口調で口を挟む。相変わらず真面目な女だ。
一郎は今度は苦笑してしまった。
「いいから、任せろ。それよりも、おさらいしよう。手抜かりがないようにな。とにかく、俺が適当なことを言って、ミランダを上級冒険者に使用権利がある個室に誘う。エリカ、お前の役割は?」
「す、すぐに防音の結界を……。それと、ミランダが部下を伴った場合は、うまく排除を……」
エリカが渋々という感じで言った。
「そうだ。ミランダが俺たちとの話し合いに余人を交えたことなど一度もないが、あらゆる可能性を想定せねばならん。コゼ、お前の任務は?」
「弛緩剤を針で打ち込みます。ご主人様の淫魔術の補助手段ですが……。それからは、ご主人様が粘性体で動けなくしたところで、ご主人様がミランダをレイプして、一度気をやらせるのに協力します」
「そうだ。俺の淫魔術で瞬時にミランダを無力化させる自信はあるけど、ギルド内の魔道防止の結界に弾かれる可能性も皆無じゃない。でも、毒針の物理的手段の併用なら成功率はさらにあがる。また、一度絶頂すれば、襲われたミランダの怒りも少しは収まる」
「任せてください、ご主人様。コゼは必ずお役に立ちます」
一郎の横をぴったりとくっついて歩くコゼが媚びを売るように元気に言った。
「いいぞ、コゼ。じゃあ、シャングリア。お前の任務は?」
「ミランダに魔道封じの腕輪を嵌める。そうすればミランダから、魔道の指輪を抜く。それからは、ロウの指示でエリカか、コゼの補助に回る。これでいいのだろう?」
シャングリアは、半分呆れたように笑ってる。
なんだかんだで、一箇月半ぶりくらいのギルドだ。
本来、ギルドは成功報酬を獲得するためのクエストを探すための場所なのだが、一郎の場合は、ほとんどのクエストが「強制クエスト」なので、あまり、自ら探すことがなく、呼び出しを受けてから、訪れるということがもともと習慣化しつつあった。
だが、「三巫女事件」以来、ミランダからはしばらく、ギルドには来ないでくれと言われ、さらに出張クエストなども受けたりして、かなり足が遠のいてしまっていた。
しかし、そろそろ限界だ。
今日こそは、どういうわけで、ずっと出入りさせないのか、そろそろ白状させようと思っている。
赤ちゃんプレイの強要は、あくまでついでだ。
本当だ。
そんなことを話しているうちに、冒険者ギルドの前に着いた。
一郎は立ち止まった。
「よし、着いたな。ここから先は戦場だ。みんな、抜かるなよ。題して“ミランダレイプ・おしめ作戦”だ」
「張り切ってるなあ」
シャングリアが笑っている。
「当たり前だ。行こう」
建物に入る。
ギルドは賑わっていた。
相変わらず、あちこちに冒険者の集まりができていて、ごった返している。
「あら、ロウさん、もうご病気はいいんですか?」
入口のところで、受付に座っていたマリーが声をかけてきた。
「病気?」
なんのことだと思った。
横を見ると、エリカ、コゼ、シャングリアも怪訝な表情をしている。
すると、ギルドのロビーの掃除みたいなことをしていた若い女がぱたぱたと寄ってきた。
「ロウ様、ご無沙汰してます。とても、心配してました」
顔を向けると首に奴隷の首輪がある。
ランだ。
以前、エリカに操心術をかけたジョナスという男に騙されて奴隷にされた女であり、ジョナスを雇った分限者の手がかりだ。
見つけたのはミランダであり、記憶を抜かれ、奴隷にされて娼館で働いていたところをギルドで身請けをして、引き取ったらしい。
そのとき、ミランダに頼まれて、一郎の精の力で記憶を復活させたので、それ以来は一郎に、とてもよくしてくれる。
残念ながら、分限者に繋がる情報は得られなかったが、なかなか働き者だということで、ミランダがギルドで働く雑用婦にした。
ギルドの金で身請けした女を解放奴隷にしないのはミランダの厳しさだろう。だが、娼館で娼婦をしているよりは、遥かにましな扱いをされているはずだ。
「ランも元気そうだね。よくしてもらってるか?」
「はい、とても」
ランは満面の笑みを浮かべて、なぜか顔を赤らめている。
なんだか、その笑顔に接していると嬉しくなる。
なにしろ、操り術を解くために娼館で抱いたときには、死んだような眼をしていたのだ。
それが、こんなにいきいきとしている。
一郎もそれだけで嬉しくなる。
「ミランダの許可があれば、家にも遊びに来なよ。いないことも多いから、事前に連絡をくれればいい。場所は……」
一応、あそこが家だとなるべく宣伝しなければならないと思って、一郎はスクルズが手に入れてくれた夕べの家の場所を教えた。
屋敷妖精のブラニーがいたり、ウルズがいたりと、いろいろと秘密の多い家だが、一度精を放ったランなら問題ない。
秘密を守るように簡単に処置できる。
「ほ、本当ですか? いいんですか?」
ランはこちらがたじろぐほどに大きく反応した。
「問題ないけど、ご主人様の誘いに応じるというのは、ただですまないわよ。それなりの目に合うと思ってね」
コゼが茶化すように言った。
「やめなさいよ。変な言い方するのは」
エリカがたしなめたが、コゼが返すよりも早く、ランが口を開く。
「そ、そんなこと――。もちろん、なにをされてもいいです。ロウ様なら」
物凄い食い付きだ。
「いつも、ロウさんのことばかり話しているものね。よかったね、ラン」
マリーがからかうように口を挟んだ。
ランが我に返ったようになり、顔をさらに真っ赤にした。
そのときだった。
ひとつの集団を割って、はっきりとこっちに近づいてくるひとりの男の存在に気づいたのだ。
不穏なものを感じて、一郎は思念をそいつに集中させた。
視線を向ける。
あまり、ほかの冒険者に知古のない一郎だったが、おそらく、初めて見る顔だと思った。
背の高い美貌の男だ。
だが、一郎が驚いたのは、その装備だ。
剣にしろ、防具にしろ、一級の材質と凝った意匠のものであり、ひと目で最高級のものだとわかる。
だが、この武具は……。
その男が自信たっぷりの笑みを浮かべながら、一郎たちの前にやって来た。
後ろにふたりの屈強な男を連れている。
このふたりは、美貌の男の従者という感じだ。
もっとも、いかにも金で雇われたという雰囲気を醸し出している。
ただ、後ろのふたりは一郎に気がついて、焦ったような表情をした。
一瞬、一郎にはその理由がわからなかったが、このギルドに出入りするようになって以来、一郎たちのパーティは、いくつもの大きなクエストを完了している。
特に、クエスト成功率、特異点である魔瘴石がらみのクエスト達成率は随一らしく、ミランダもそれはいつも絶賛してくれる。
一郎には面識はないが、どうやら、後ろのふたりは有名なパーティの一郎たちを知っているのだろう。それで、そんな態度になったに違いない。
それに比べれば、目の前の男は、一郎を知っているという感じはない。
誰だろう……?
「やあ、シャングリア嬢、お迎えにあがりましたよ」
男が言った。
「パ、パーシバル──。な、なんでここに──?」
シャングリアが動転したような声をあげた。
「知り合い?」
コゼが声をかけた。
「ま、まあな」
シャングリアは困惑した様子で答えた。
「一日、女として付き合うという約束ですよ、シャングリア嬢。貴族の名誉を賭けた正式の賭けによって成立した誓いだからね。ちゃんと守ってもらうよ。とにかく、あなたを捉まえるには、ここで待つしかないと聞いて、何日でも待つつもりだったのに、初日に会えるとは、やはり運命だな。冒険者登録までしたんだ。この俺がここまであなたに熱をあげていることをわかって欲しいよ」
パーシバルという男が笑みを浮かべながら、シャングリアに向かって、大袈裟な身振りで一礼をした。
何者かは知らないが、パーシバルが、シャングリアに言い寄っているというのは間違いないようだ。
このギルドに出入りする者であれば、すでにシャングリアが一郎にぞっこんで、一郎を追いかけて冒険者になったというのは有名な話なので、シャングリアにこんな風に言い寄る者はいない。
ましてや、一郎の目の前だ。
一郎は不快になった。
「なんだ、あんた?」
一郎は言った。
「ねえ、シャングリア、とりあえず座ろう。テーブルをひとつ確保している」
パーシバルは一郎の呼びかけなど、聞こえなかったかのように完全に無視した。
「は、話などない。昨日の話はきっちりと断ったはずだ」
シャングリアが怒鳴った。
あの話?
一郎は怪訝に思った。
「なんの話だ、シャングリア?」
一郎は言った。
すると、パーシバルが初めて一郎に気がついたかのように顔を向けた。
「作法も知らない冒険者だから、一度だけは大目に見てやる。だが、いまは、貴族同士が会話している最中だ。そこに割り込むのは礼儀知らずというだけじゃない。貴族に対する非礼行為だ。分をわきまえろ」
パーシバルが犬でも見るような目つきで一郎を睨んだ。
だが、今度は一郎が無視する番だ。
「答えろ、シャングリア──。こいつは誰だ──?」
一郎はシャングリアを睨んだ。
「き、貴様──」
横でパーシバルが気分を害したような声をあげた。
「こ、こいつは、パーシバルというダウス侯爵家の一門の男だ。王軍騎士団に新しく入って来た男で……」
「そんなことはどうでもいい。お前とこいつとの関係を言え」
一郎は腹立たしさを隠すことなく、シャングリアに言った。
シャングリアは見るからに、気後れしたような表情になった。
一郎はシャングリアの感情を覗いてみた。
シャングリアにあったのは、「当惑」だ。しかし、一郎に対する「焦り」や「怖れ」のような感情も大きい。
なにかを隠していた……。
一郎にはそれがわかった。
それでシャングリアは、一郎がシャングリアが隠していたことを知ったということで、困ってしまっているようだ。
同時に一郎に対する「後ろめたさ」のようなものが、シャングリアの心の中で一気に上昇して膨れた。
「ロ、ロウ、別に隠していたわけじゃないのだ……。どうということもないことだし、解決したことだったのだ。まさか、ここに来るとは……」
「いいから、言え──」
怒鳴った。
「おい、貴様、さっきから誰に向かって、口をきいている。その人は、モーリア男爵家のシャングリア嬢だぞ──」
憤慨した様子のパーシバルが、腰の剣を掴む気配を示した。
しかし、一郎がその剣の柄を押さえる方が早かった。
ただの勘だが、パーシバルが剣を抜いて、脅すような行為をする予感があった。
パーシバルが抜こうとした剣を一郎が押さえるかたちになった。
「き、貴様──」
一郎が剣に触ったことで、さらにパーシバルが激昂した。
だが、怒っていることでは一郎も同じだ。
パーシバルが一郎の手を振りほどくように数歩退がる。
再び剣に触れようとした。
一郎は上着の内側の短銃に手をかけた。
二発入りだが、いつでも射撃できるようにしてある。
しかし、エリカとコゼがあいだに入った。
一郎に斬りかかるような素振りのパーシバルを防ぐようなかたちになった。
「な、なんだ、お前たちは?」
今度はパーシバルが驚くような口調だ。
「ロウ様はシャングリアと話しています。離れてください」
「それとも、ここで騒動を起こしたいの? あたしたちは、いつでもあんたと戦えるわよ」
エリカとコゼがそれぞれに言った。
ふたりは、まだ武器に手をかけてはいないが、パーシバルが動けば、すぐに反応できる態勢だ。
「こっちの話が終わったら、あんたとも話す。だから、少し待てよ」
一郎は振り返って、パーシバルを一度だけ見た。
パーシバルは真っ赤な顔で怒っていたが、エリカとコゼに威嚇されて動けない様子でもある。パーシバルの後ろのふたりは、あえて前に出てくる様子はない。むしろ、一郎たちとパーシバルが険悪になったことで、距離を置いてさがっていく気配を示している。
一方で、ここでのちょっとした騒動に、ギルドにいた冒険者たちが注目し始めている。一郎とパーシバルたちのいる一帯を囲むような人壁ができようとしていた。
「だ、だから、終わったことなのだ、ロウ。別に隠していたわけじゃない。信じてくれ」
シャングリアは語りだした。
どうやら、昨日、王軍騎士団の錬成に参加したときの話らしい。
シャングリアは、このパーシバルに一騎打ちを臨まれ、シャングリアが負けたら、このパーシバルと一日、女として付き合うという条件を突き付けられたようだ。
そして、負けた。
だが、シャングリアは、そんな賭けは無効だと無視した。
そういえば、夕べは戻るのが少し遅かったが、そんなことをやっていたらしい。
それでいま、こうやって、この男がのこのこと冒険者ギルドまで追いかけてきたということのようだ。
「正式な立ち合いによる約束だ。一方的な破棄は許されることじゃないですよ、シャングリア嬢」
エリカとコゼに阻まれているパーシバルがその位置から言った。
「知ったことではない。わたしには、ロウがいると言ったはずだ。わたしは、ロウに惚れている。身も心も捧げているのだ。お前と付き合うことなどできん」
シャングリアが声を張りあげた。
貴族であり、王軍騎士団の一員でもあるシャングリアが、堂々と一郎への愛の告白を口にしたことに、周囲からどよめきが起きた。
「そんなことは信じられないね。れっきとしたモーリア男爵家の家柄のあなたが、こんな冒険者風情と……」
「うるさい男だなあ……」
一郎の不愉快さは頂点に達しかけていた。
シャングリアのスカートの中に、前側から手を突っ込んだ。
「う、うわあっ、な、なにをするのだ、ロウ──。こ、こんなところで」
動転したシャングリアが一郎の淫らな手を両手で防ごうとした。
「俺に隠し事をした罰だ。手を後ろで組め──。それとも、俺をまた裏切るのか?」
「お、お前を裏切ったことなどない。と、とんでもないことだ」
シャングリアが驚愕したような声をあげる。
もちろん、一郎もシャングリアが裏切ったとは思ってはいない。
そう言った方が強烈だから、そう表現しただけだ。
「ね、ねえ、本当なのだ、ロウ……。隠すつもりはなかったんだ。そ、そりゃあ、結果的にそういうことになったかもしれないけど、どうということはないと考えたし……。ましてや、お前を裏切るだなんて……」
シャングリアは泣きそうな顔になっている。
こんな顔は初めてかもしれない。
もう、一郎からは不快さは消えていた。
やっぱり、万が一にもシャングリアが一郎以外の相手に「男」を意識するということなどないということを確信できたからだ。
ただ、いまは鬼畜の虫が疼いてきた。
これだけの万座の中で、シャングリアを辱めてやりたい。
そんな気持ちになった。
そのパーシバルという貴族のお坊ちゃんに、シャングリアは一郎のものであるという強烈な引導を渡してやりたくもなった。
「な、なにをしているか、貴様──」
パーシバルがエリカとコゼが阻んだ向こうで喚いている。
シャングリアが両手を後ろに回した。
一郎はスカートの下でシャングリアの下着の中に指を入れた。
「あっ……」
悲鳴をあげかけたシャングリアが、慌てたように唇を噛みしめた。
一郎は無遠慮にシャングリアの肉芽を摘み、肉襞を擦り、女陰に指を挿入して敏感な部分に刺激を与えていく。
「ゆ、許してくれ……。こ、こんな、ところで……」
シャングリアは膝を小刻みに震わせながら、すがるような口調で言った。
パーシバルだけでなく、ギルド中の者が騒ぎ始めた。
入口の受付の目の前だったので、受付係の場所にいたマリーやランなど、唖然とした顔をしている。
「……だったら、両手を離して阻止するなり、逃げるなりすればいいだろう。もちろん、それは俺への裏切りとみなすぞ、シャングリア」
一郎は意地悪く言った。
「そ、そんな……」
シャングリアは必死になって声を耐えているようだ。
いま、一郎はシャングリアに呪術をかけていない。
淫魔師のあらゆる縛りもしていない。
万座の中の辱めという羞恥に甘んじているのは、紛れもないシャングリアの自由意思によるものだ。
だが、哀願はしても、シャングリアは逃げようとはしなかった。
そして、一郎に与える刺激に耐えられなくなったかのように、胸が小さく揺れだし、閉じ合わせている膝の震えも大きくなった。
「あううううっ」
シャングリアがいきなり声をあげて、その場でがくりと腰を落とす。
一郎はすかさず、シャングリアの身体を抱いて、しゃがみ込むのを支えた。
周囲が騒然となった。
シャングリアがこの場で達してしまったのは、誰の目にも明らかだったからだ。
「もう、手を離していいぞ、シャングリア。やっぱり、お前は俺の女だったな」
一郎は笑った。
シャングリアは、力が抜けて倒れかけても、一郎が命じた手を後ろで組むということをやめようとはしなかったのだ。
「あ、当たり前だ……。わ、わたしはお前の女だ……」
シャングリアが息のあがった赤ら顔で言った。
そのとき、なにかが飛んで来た。
一郎の顔に当たったのはハンカチのようだ。
顔をあげる。
投げたのはパーシバルだった。
「い、いまのは許せん……。シャ、シャングリア嬢に対して……。ゆ、許せん……。ぜ、全貴族への冒涜だ……」
怒りで声が震えている。
一郎は口惜しそうなこの男の顔を見ていると、それだけで溜飲がさがったような気がした。
「いまのを見ていたろう、パーシバル。シャングリアは自ら求めて、逃げなかったんだぞ」
「そ、そんなのは信じられん。信じられるか……。いずれにしても、お前は俺を侮辱した。俺が交際を申し込んだシャングリアに、いまのような破廉恥なふるまいは俺への侮辱だ」
「知ったことか。こいつは、俺の女だぞ。そもそも、俺の女を呼び捨てするなよ、パーシバル」
一郎は鼻で笑った。
ついでに、この生意気な坊やを呼び捨てにした。
「パ、パーシバル、ロウへの決闘はわたしが代理人で受けて立つ。ロウには指一本触れさせんぞ」
シャングリアだ。
決闘?
なんのことだと思った。
一郎はその疑問を口にした。
「……ロ、ロウ様、身に着けているものを顔に投げるというのは、決闘の申し込みです。このハロンドール王国でも、それは決闘法に認められた正式な作法のはずです」
パーシバルと一郎のあいだに入っていたエリカが戸惑った口調で言った。
「拒否する。馬鹿馬鹿しい」
一郎はすぐに言った。
「拒否は無効だ。貴族に与えられている特権により、庶民ロウの決闘の拒否を無効にする。これでもう逃げられんぞ」
パーシバルは言った。
「そうなのか?」
一郎はシャングリアを見た。
「そ、そうだ。確かに……。貴族には身分の低い者に対して、決闘を強要できるという決まりがあるのだ……。パ、パーシバル、さっきも言ったが、ロウの代理人はわたしだ。わたしが相手になる」
シャングリアが言った。
「負ければ俺と付き合うという、魔道の誓いでもしてくれたら、代理人を認めましょう、シャングリア。それに、俺に一度負けていることを忘れているんじゃないですか。やめときなさい」
パーシバルがせせら笑うように言った。
「なにをしているの、あんたたち──」
そのとき、大きな声がした。
声の主はミランダだ。
コゼが早口で事情を説明した。
ミランダは目を丸くした。
「ギルド内では王国の法は無効よ。ここでの私闘は許しません。パーシバル殿もロウも冒険者に名を連ねる者のひとりです。冒険者同士の殺し合いは、ギルド法に反するわ……。それとロウ、あなたは家に戻って──。そもそも、ギルドに来ないでと頼んだのに、なにしてんの、あんた? とにかく、あたしの別命があるまで、ギルドには顔を出さないで」
ミランダが言った。
「だったら、この瞬間に、俺は冒険者をやめる。それで文句はあるまい、ドワフ女」
パーシバルが返す。
ミランダはいやな顔をした。
「わかった。受けて立ってやるよ、貴族のお坊ちゃん。だが、ここでは迷惑だ。表に出ようか」
一郎は言った。
「駄目です、ロウ様──」
驚愕したような声で叫んだのはエリカだ。
「問題ない。だが、俺は短銃しか持っていなくてな……。だから、お前の剣を貸してくれ、エリカ」
「いいえ……。だったら、代理人を指定してください。わたしが相手をします。決闘を申し込まれた側には、代理人選定の権利があるんです。それに、条件もありますが、時期と手段を限定できる権利も……」
「心配ない。俺が受ける」
一郎はギルド本部の外に出ていった。
ギルド内にいた者がわっと声をあげて追いかけてくるのがわかった。