【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「助けてくれてありがとうございます、エリカさん……。そ、それと、従者の方にも失礼しました……」
小屋の中からユイナの声がする。
ただ、明らかに言葉の前半と後半に感情の入れ方の違いがあった。人間族が嫌いなのはわかるが、少しくらい気持ちを隠せと言いたい。
とにかく、しばらく興奮状態にあったユイナだったが、やっと普通に会話ができるまで落ち着いてきたようだ。
一郎は、エリカとユイナが話をしている猟師小屋の扉の外で、小屋の壁にもたれるように座っていた。扉は開け放たれているので、ふたりの話し声は十分に聞くことはできる。
ユイナに殴打された鼻には、まだ痺れのようなものがあったが、エリカの簡易な治癒で鼻血は完全に止まっているし、特段の外傷もない。
三人の暴漢者を片づけたあと、助けたはずの被害者のユイナにいきなり顔面を殴られたのは不本意だったが、凌辱されたばかりのユイナの裸身を無遠慮にじろじろと見てしまったというのは、一郎も反省している。
それにしても、大変に気の強いエルフ娘だと思った。
生娘で強姦により処女を散らされて、それですぐに怒れるのだから、なかなかの根性だ。
心が潰れて呆けてしまうよりはずっといい。
さすがに最初はかなりのヒステリー状態だったが、いまは少しは気分も落ち着いてきたようだ。
おそらく、あれから二ノスほど経っていると思う。一郎の元の世界の時間では、約一時間半というところだ。
その時間のあいだに、小屋の中にあった死んだエルフ男の死骸も含めて、三人の暴漢者の遺体は、エリカとふたりで少し離れた森の中に移動させた。
一郎が驚いたのは、その三人の遺体から、エリカが当たり前のように身ぐるみを剥がし始めたことだ。
武器や装具、金子はもちろん、エリカは連中が着ていたものの中で、血で汚れていないものはすべて脱がせていた。さすがに下着までは奪わなかったが、それ以外のものは、いまは、すべて一郎が座っている場所の横に置いてある。
躊躇の姿勢を見せる一郎に対して、エリカは殺した悪人から物を奪うことが、なぜ駄目なのか、さっぱりとわからないという感じだった。
また、一度、置き捨ててきた元々の荷もここに持ってきている。
そのとき、三人の暴漢者に殺されたユイナの連れの男がいたが、彼については、獣や虫などが近づかないようにエリカが魔道で処置をしてから、路傍に魔道で穴を掘り、その身体をその穴の中に横たえた。
土は被せなかったが、それは後で遺族に確認をしてもらう必要があるかもしれないためだ。
エリカによれば、エルフ族には、墓を作るという習慣はないらしい。死ねば、その場で土に埋める。土の上になにかを置いたり、飾ったりということはないようだ。
ただ、埋めるだけなのだ。それがエルフ族のやり方だそうだ。
エルフ族は大地から作られたと考えられていて、大地に埋めるというのは、元の大地に戻り、そして、新しい命に生まれ変わるという意味があるようだ。
それがエルフ族の死生観らしい。
だから、死んで土に埋められないというのは、大変な罰になるようだ。
三人の暴漢者に対しては、エリカは木の枝を敷き詰めて、直接に身体が土に触れないようにしてから遺体を置いていた。
土に戻さないということは、その魂をエルフには戻さないということであり、それが悪事を行った同族に対する処置なのだ。
とにかく、思わぬところで路銀をつくることができた。
一郎にはこの世界の金銭価値はわからないが、死んだ三人の暴漢者は、かなりの大金を持っていたらしい。
さらに、不要な持ち物などを近傍の里で売り捌けば、それだけで、ハロンドール王国に入れそうだとエリカは言っている。
「まあ、いいのよ……。ただし、ロウ……に対しては、直接謝ってくれると嬉しいわね」
エリカの声だ。少し口調に棘がある。
一郎がユイナに殴られて半ば気を失ったとき、エリカはかなり激昂してくれていた。それをなだめて、問題ないから怒るなとエリカを納得させたのは一郎だ。あの感じだと、まだ少し腹をたててくれているようだ。
「は、はあ……」
ユイナの気が進まなそうな返事が聞こえた。
まあ、一郎としては、もうなんとも思っていないから、どうでもいいことであるのだが……。
「ところで、死んだ三人には、見覚えはないのね?」
エリカだ。
死んだ三人の暴漢者は顔を隠す覆面をしていたが、それを剥がして、ユイナに顔を確認してもらっていた。
ユイナと殺された連れの男の荷のうち、無事だったものはすべて回収して、ここまで持ってきている。いまは小屋の中にある。
一郎たちに助けられたときには、ユイナは完全な素裸だったが、三人の暴漢者の顔を確認してもらうために、エリカと一緒に小屋から出てきたときには、その荷にあった服を身に着けていた。
「初めて見る顔です。里の者じゃないです……。で、でも、あいつらダルカンの手先に違いないです」
「ダルカン?」
「褐色エルフの村の
「えっ、里長が?」
いきなり、首謀者は里長だと言い出したユイナに、エリカが驚いた声をあげた。
「そうです。間違いありません。里の者もすごく窮迫してるんです。でも里長だから、大人しく従っているけど、でも、みんな怨嗟の気持ちでいっぱいです。そして、疲れてます。でも、黙っている者たちだけじゃあ、ありません。真剣に思いつめている者もいるんです。だから、その者たちと力を合わせて、ダルカンを始末しようと──。でも、そうするよりも、ダルカンの悪事を暴く証拠を握り、ガドニエル様に告発した方がいいと諭されて……」
「ガドニエルって?」
思わず口を挟んだ。
すると、明らかにユイナがむっとした顔になる。
エリカが慌てたように、エルフ族の女長老だと短く言った。
そういえば、そんな説明を受けたことを思い出した。
ユイナが一郎を睨みつけている。
しかし、すぐに、無視して、再びエリカだけに向かって口を開く。
「……それで告発状を運んでいたんですけど、その告発状をあの三人が襲って奪ったんです。それをやらせたのは、ダルカンに違いないんです──」
ユイナがまくしたてた。
しかし、一郎は少し驚いた。
彼女は褐色エルフの村の者のようだ──?
そうだとすれば、そこの里長は、エリカの昔馴染みであるイライジャが嫁いだ先の義父のことではなかったのだろうか……?
「えっ、あなた、褐色エルフ村の人? だったら、里長って、トーラス様という方じゃないの? そのご家族にはトードさんという人がいて、その奥様はイライジャよね?」
「トーラスというのは、わたしのお祖父さんです。イライジャというのは、死んだトード兄さんの奥さんです。叔母になります。わたしは、トード兄さんの姪になるんです。両親が早世したんでトード兄さんのところで育てられたんですけど……。もしかして、エリカさんは、イライジャ姉さんの知り合いなのですか?」
「死んだ? トードさんが死んだ? それはどういうことなの? イライジャはどうしているの?」
エリカとユイナがそれぞれに困惑の声をあげた。
開かれている扉から聞こえる声に耳を傾けている一郎も少しびっくりした。
「わたしは、イライジャと同じ里で育った昔馴染みよ。旅の途中で久しぶりに顔を見たいと思って、あなた方の里を訪ねようとしていたところだったの。一体全体どういうことになっているの? わたしは、わたしたちの故郷の里にやってきて、幸せそうにイライジャを連れて去っていったトードさんをよく覚えているわ。イライジャの旦那様のあのトードさんが死んだなんて……」
エリカは呆然としているようだ。
「もう二年になります……。事故死だとされましたが、わたしは殺されたんだと思ってます。多分、あれもダルカンだったんです──」
ユイナは憤慨した口調で語り始めた。
それによれば、トードというイライジャの夫が死んだのは二年前のことであるそうだ。同じ時期に褐色エルフの村で、ある不正の存在が発覚していたらしい。よくはわからないが、それは「クリスタル石」と呼ばれる結晶に関するもののことのようで、それはエルフ族の禁制品であり、売買をするのは禁止されているものなのだそうだ。
それが大量に褐色エルフの村というユイナたちの村から密売されているのがわかったらしい。
それの調査にあたったのが、当時里長だったトーラスの息子のトードだったらしい。
だが、トードはその調査の途中で崖崩れに巻き込まれて死んでしまったのだ。そして、驚いたことに、そのトードが遺した調査記録によって、禁制品のクリスタル石を売り捌いていたのはトード自身だったことがわかったのだ。
それに責任を感じた里長のトーラスは、里長を引退して半ば追放されたかたちで、未亡人となったイライジャとともに、里外れに引っ込んだのだそうだ。
エリカは明らかに動揺している。
一郎もイライジャ夫婦に会うのをエリカが愉しみにしていたのを知っているので当惑する思いだ。
「クリスタル石とはなんなのですか?」
一郎は部屋の中に声をかけた。
「いい加減にしてよ、お前。さっきから、口を挟むんじゃないわよ。ちょっと、向こうに行ってなさい──」
すると、小屋側からユイナが怒ったような口調で強い声をあげた。
「ま、待って、ユイナ──。教えるわ、ロウさ……、いえ、ロウ……。クリスタル石というのは、森エルフ族だけが作れるとされる魔力が充満した結晶石よ。エルフ族の貴重な財産でもあり、その売買は族長会議と呼ばれるエルフ族の最高権威の絶対の管理下にされていて、各里が勝手に売買することは禁止されているのよ」
エリカの慌てたような声がした。
ユイナがいるので一郎はエリカの従者ということにしてある。
一郎もエリカも、いままでユイナの前ではそのようにふるまっていた。
「つまり、エルフ族のご禁制の品ということですね」
「そういうことね……、ロ、ロウ」
エリカが言った。
口調が不自然なのは、一郎に対してぞんざいな言葉を遣うことには、相当の心の抵抗があるようだ。
「でも、そのクリスタル石を横流しすれば、大変な富になるということですね?」
「はあ? お前、馬鹿じゃないの──。そんなの当たり前でしょう」
ユイナが口を挟んできた。
「あなたは黙っていて……。そ、そうよ、ロウ……。確かに、大きな富になるわ。実際、人間族の城郭では森エルフ族から正式に流れるクリスタル石以上の量のクリスタル石が取り引きされているわ。闇で売買されているような粗悪品を含めてね……」
「それは、大きな罪なのでしょうね、ご主人様?」
ご主人様というのは、無論エリカのことだ。
「も、もちろんよ。もしも発覚すれば、顔に魔道で消すことのできない入れ墨をして、森エルフの世界から追放されるのが決まりよ。それがエルフ族の最高の処分なの……。でも、大抵はそれよりも、死を選ぶわね。自裁すれば、このナタル森林の土に埋まることを許されるから……。入れ墨をされると土が魂を拒否するの……。それは、わたしたちにとっては死以上の罪なのよ」
「でも、トードというイライジャ……さんの旦那がその闇でクリスタル石を売り捌いていたと……」
「な、なに言ってんのよ、お前──。トード兄さんは、ダルカンに嵌められたのよ──。トード兄さんはやっぱりなにもしてなかった。本当に悪いのは、ダルカンなのよ。あいつは自分の罪をトード兄さんのせいにして、しかも、トーラスお祖父さんを糾弾して引退させ、余所者の自分が里長になったのだわ。とにかく、さっきから話に入ってくるんじゃない──。エリカさんの従者だから、わたしも大人しくしているけど、あまり失礼なら、ただで置かないわよ」
ユイナが小屋から怒鳴った。
やっぱり、相当に気が強いのだ。
さっき、犯されたばかりで、あれほどに怒れるなら心配ないだろう。
それにしても、三人を片づけたのはエリカだが、一応は一郎も命懸けだったのだ。もう少し感謝の気持ちを持ってくれてもいいとは思うのだが……。
「ユ、ユイナ──、わ、わたしの従者よ──。あなたこそ、手を出したら承知しないわよ──。イライジャの姪でも、ロウさ……ロウに手を出したら、わたしが許さないわ──」
今度はエリカが怒鳴りあげた。
「エ、エリカさん……。す、すみません……。わ、わたしも興奮して……。で、でも、ロウがあまりに失礼だから……」
ユイナの不満そうな声がした。
そのとき、床を叩く大きな音がした。
「エ、エリカさん……」
ユイナの困惑した声がした。
一郎も驚いてちらりと覗くと、激昂の表情のエリカがいまにもユイナに掴みかからんとするばかりに顔を真っ赤にして腰をあげている。
いかん……。
真っ正直で素直なのはエリカのいいところだが、あまりに、なんでも真剣にとりすぎる。
一郎は、落ち着けと言葉でなだめる代わりに、淫魔の力でエリカのアヌスを舌で舐める刺激を送った。
「やんっ」
また、どんと音がした。
今度は、腰をあげたエリカが尻もちをつく音だ。
一郎は刺激を送るのをやめた。
「ど、どうかしました……?」
ユイナの不思議そうな声がした。
「な、なんでもないわよ……。と、とにかく、ロウの話にも答えてくれない?」
エリカの取り繕うような口調に一郎はほくそ笑んだ。
「わ、わかりました……。なにか、訊きたいことがあるの、ロウ?」
ユイナの気乗りのしない口調がした。
従者ということになっているのだから、あまりふたりの話に割り込むのは不自然だということは承知している。
しかし、一郎はユイナの話から、少し気になることが浮かんでいた。
心にざわめきを感じるのだ。
勘というやつだろう。
この異世界にやってきてから、一郎の勘はよく冴えていると思う。
それで、エリカなど、一郎の考えに一目も二目も置くようになっているところがあるが、とにかく、いまのユイナの話で一郎の心に触れるものがあった。
「……少し気になることがあるのです……。いずれにしても、壁越しでは話し難いので、そちらにいってもよろしいですか?」
一郎はそう言うと、返事を待たずに、ずかずかと小屋に入っていった。
ユイナはあからさまに嫌な顔をしたが、エリカの手前なにも言わなかった。
一郎は、ふたりが座っている場所から離れた入口に近い床に胡坐で座った。
「そのダルカンという現在の里長はどんな男なのです? そもそも、トーラス様というユイナ様のお祖父さんが里長を引退したとしても、ダルカンという男が悪人であれば、里長には選ばれないのではないですか?」
一郎は訊ねた。
エルフ村の里長というのは、それぞれの里に住む者の全員の合意で選ばれるとエリカに教えられていた。つまりは、選挙のようなものだ。ユイナは、ダルカンという男が悪徳非道の男のように言うが、そんな男が里長に選ばれるというのはどうしてだろう?
しかし、ユイナは不満そうに鼻を鳴らした。
「ふん──。あいつは商人で余所者よ。五年前にやってきたときには羽振りが良くて、たくさんの富をばらまいて、周りに人を集めたのよ。それに、里長になる前は、いまのように無知陋劣のふるまいをすることはなかったわ。それなりに抑えていたのよ。いまのように里に収める税を重くして、里の者から搾取するようになったのは里長になってからよ──。いまでは、里の者のほとんどがあいつを里長に選んでしまったことを後悔しているわ」
ユイナが吐き捨てた。
「そんなひどい里長だったら、みんなで追い出してしまえばいいのでは? いや、ユイナ様の言うとおり、そいつがそんなに悪い里長ならばの話ですよ。どうして、里の者たちは、ダルカンという悪い里長に対して立ちあがらないのです」
「あ、わたしが嘘を言っている言い方をするのね、人間? ええ、もちろん、わたしたちは立ちあがるところだった──。罪を被されて死んでしまったトード兄さんの名誉を回復するためにも、わたしたちは立ちあがるつもりだった──。決起をするところだったのよ──。わたしやイライジャ姉さん……。ほかにも五人のエルフ族の若者がいる。その五人がリーダーになって、それぞれ十人ずつを率いて立つことになっていたわ。わたしを含めてね──」
「えっ、イライジャも?」
エリカが驚いている。
「ええ……。そして、ダルカンとその一派を殺してしまう──。その直前だったのよ。その持ち場だって決めて、事を起こすところだった──。ダルカンが死ねば、あれでも里長だからという理由だけで従っているほかの者たちも目が覚める。わたしたちは決起の直前だったの──」
ユイナが大きな声をあげた。
「でも決起しなかったんですね……? なぜです?」
「そ、それは、お祖父さんがとめたから……。もっとも、そんなに詳しいことを知っていたとも思えないわ。だけど、なにかを感づいたのでしょうね……。わたしとイライジャ姉さんは、お祖父さんに呼ばれて、同じ里の者同士で争うことはしてはならないと諭されたの……」
「お祖父さんというのは、つまり、前里長」
「そうよ。お祖父さんは、決起の代わりに、族長会議に訴えろと。お祖父さんは、トード兄さんが死んでから、ずっとひそかにひとりでダルカンの悪事の証拠を集めていたのよ。すでに証拠も揃っていて、告発状のかたちにもしてあった……。それで、イライジャ姉さんと話し合って、わたしがそれを持っていくところだったの。信用のできるトーラス家の元家人をひとり連れて……」
「なるほど、それで話がわかりました……。ところが、その道中に出たところを狙われたということですね……。そうであれば、少しばかり、まずいかもしれませんね。まあ、俺の想像が杞憂であればいいんですけど……」
「まずい? なんのこと?」
「つまりは、ダルカンという男はやっぱり悪い男であり、かつて、自分たちの罪をトードというあなたの叔父の罪にして、自分たちが罰せられるのを免れた……。同じことを連中はもう一度やるんではないかということですよ……。いまの状況は、俺からみれば、二年前にトードという方が罪をなすりつけられて“事故”で死んだのと同じ状況に思えます」
「ど、どういうこと、お前?」
ユイナは眉をひそめた。
「かつて、連中の悪事を暴こうとしたのはトード様という人で、その人は死に、その後で見つかった証拠により、クリスタル石を横流しにしていたという濡れ衣を着せられた……。それがダルカンという男とその一派のやったことなら、連中は同じことができるということです……。いま、連中の悪事は、再びトーラス様の努力により露見としようとしている。そうであれば、そのダルカンは、今度もそのトーラス様を殺して濡れ衣を着せることができるのでは?」
一郎の言葉にユイナがはっとしたように顔色を変えた。
そして、黙って話を聞いていたエリカも険しい表情になった。
「ね、ねえ、ユイナ、話によれば、イライジャは里の外れに移り住んでいるトーラス様のそばにいるようだったけど、ほかに頼りになるような者は家にいるのかしら?」
エリカがユイナを見た。
「……お、お祖父さんの身の回りの世話は、イライジャ姉さんとわたしがしていたのです。ほかには、小用をこなしてくれる者がいるだけで……」
ユイナが初めて、一郎の言葉をまともに反応する顔になった。
一郎はさらに口を開いた。
「もちろん、杞憂なんですけどね。ただの勘にすぎないし、ふと、思っただけなんです……。何事もなければ、それでいいんですが……」
しかし、この異世界にやってきてから、随分と物事がはっきりとわかるようになった気もする。
それが勘が働くということなのだろうか……。
一郎は、魔眼保持者は、怖ろしいほどに勘が鋭くなると言ったルルドの女精のユグドラの言葉を思い出していた。