【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
屋敷妖精に案内された広間には、大きな絵が飾られていた。
椅子に座っている男に美しい女が跪いて向かい合っている構図だ。場所はどこかの庭園を思わせる。ただ、それだけの絵なのだが、なんとなく淫靡なものを感じさせる。
シャーラは屋敷妖精に案内された長椅子に腰かけて、ロウという冒険者がやって来るのを待っていた。
それにしても、意外だった。王都内にあるロウの屋敷が隠れ蓑であり、本来の住まいがこっちだということも、そのロウの暮らす屋敷に屋敷妖精がいることもだ。
この場所を教えたのは、王女のイザベラに監禁されているミランダだが、屋敷妖精の存在には言及しなかった。
しかし、シャーラを迎えた童女は、紛れもなく屋敷妖精だ。
事前の調査では、ロウというのは優秀な冒険者には違いないが、魔道の能力はなかった。
屋敷妖精というのは、魔道力の高い魔道遣いにしか仕えないという本能を持った妖精だ。
身分が高いからといって仕えることはせず、シャーラの知る限り、ハロンドールの王族の中で屋敷妖精を住まわせている者は皆無だし、王都内にいる貴族や分限者の中にもいないだろう。
おそらく、このロウの屋敷にいる屋敷妖精は、王都では唯一の存在だと思う。
地方に行けば、屋敷妖精をしもべにしている魔道遣いの話は耳にすることもあるが、ともかく非常に珍しい存在であり、この屋敷に屋敷妖精がいるということは、この屋敷の主人が能力の高い魔道遣いであるという証拠なのだ。
だが、それはロウではない。
ロウは魔道遣いではないからだ。
そうであれば、誰であろう?
エリカとかいうエルフ女か?
しかし、やはり、事前情報によれば、エリカは確かに魔道遣いではあるが、屋敷妖精をしもべにするという能力まではないはずだ。
それに、屋敷妖精は「屋敷の主人」と「屋敷妖精を支配するほどの高い魔力を保持できる魔道遣い」という条件が合致するときのみ、その主人のしもべとなる。
冒険者としてのパーティリーダーがロウであることは確認済みなので、一緒に住んでいるエリカがそれだけの能力があったとしても、エリカが「主人」でなければ、屋敷妖精はエリカには仕えない。
冒険者としてはロウがリーダーであり、屋敷ではエリカが「主人」というのはあり得るが、シャーラの調べでは、エリカは完全にロウに支配されている感じだった。
屋敷妖精は、いかに主人でない者が「主人」のふりをして屋敷妖精を屋敷に繋ぎとめようとしても、すぐにそれを見抜いて離れてしまう。
だから、違うと思う。
つまり、考えられることは、この屋敷の主人は、ロウでもエリカでもないということだ。
ならば、誰だ?
そもそも、ここは長く幽霊屋敷と呼ばれていて、たちの悪いゴーストが棲みついているという幽霊屋敷のはずだ。それが、いつのまにか、ゴーストはいなくなり、ロウたち冒険者が住むようになっていたようだ。
つまり、この主人になった者は、おそらく、そのゴーストを追い出したのだろう。
余程の力を持った者に違いない。
とにかく、屋敷妖精を支配するほどの存在というと、王都の中では、シャーラには神殿の筆頭巫女のスクルズとベルズくらいしか思いつかない。
ならば、この屋敷は、そのふたりのいずれかの所有物……?
それをロウが使っている?
そういうことになるのだろうか。
スクルズたちとロウが懇意だという情報はすでにあるし、それが一番考えられる予測だった。
やはり、スクルズとベルズのどちらかはロウと……?
そのとき、広間の奥の扉が開いた。
入ってきたのは、三十過ぎの人間族の黒髪の男だ。
ロウだ。
直接に接したことはないが、シャーラは調査のために、何度も遠くから垣間見ているので承知している。
不思議な印象の男だ。これといった特徴のない凡庸な男に思えるのだが、それでいて、シャーラを圧倒させるような独特の風格のようなものもある。
ロウを知る冒険者に訊ねたところ、ほぼ例外なく、ロウの印象を全員がそう語った。
こうやって相対すると、シャーラも全く同じ印象を受けた。
そのロウは後ろに屋敷妖精を従えていた。
屋敷妖精は、温かい茶と小皿の盛った菓子を載せた盆を抱えている。
とりあえず、作法に従って、シャーラは立ちあがった。
だが、ロウがシャーラから少し距離を取った位置で立ち止まる。
「ロウです。初めまして。俺にご用件がおありということでしたが……。それにしても、これはどこかの侍女殿のようですね。だが、しっかりと武器もお持ちで……」
シャーラは王宮侍女のいでたちをしていたが、その恰好に剣を吊っていた。
確かに奇妙な恰好に思えるのかもしれない。
「物騒ですから。念のためです」
シャーラは頭をさげた。
すると、ロウも自然な動作で礼をした。
粗野な冒険者を感じさせない好印象をシャーラは受けた。
そして、頭をあげたロウがにっこりと微笑んだ。
「せっかくのあなたのような美しい女性のご訪問ですから、少しでもくつろいでいただきたい。武器はお預かりします」
顔には柔和な微笑みをたたえていて慇懃な態度なのだが、つまりは、武器を寄越せということだ。
いずれにしても、ロウの態度は、シャーラが考えていたロウという男の人物像を考え直さざるを得なかった。
冒険者というのは、大体にして粗野で乱暴な者が多いが、ロウは違うようだ。
また、ロウはシャーラが抱えてきたミランダの服を確認したはずだから、シャーラが決して友好的な客ではないことを承知していると思う。
それにも関わらず、シャーラに対する敵意を片鱗も見せずに、物腰の柔らかい態度を取ってきている。それは、必要以上に自分の力を誇示する者の多い冒険者の中では珍しい部類だと思う。
それだけ自分に自信があるのか……?
確かに、ロウの態度には、なにか大きな余裕のようなものを感じる。
しかし、一方で目の前のロウには、まったく強さを感じない。
魔道戦士として、魔道遣いとしても、戦士としても一流であるシャーラには、そのいずれについても、ロウが二流以下というのはわかる。
それなのに、この余裕はどこから来るのか……?
それとも、ただの馬鹿か……?
シャーラは、ロウの能力を測りかねていた。
とにかくシャーラは、腰紐を解いて、大人しく剣を差し出した。
「シルキー」
ロウが屋敷妖精に声をかけた。
すると、シルキーと呼ばれた屋敷妖精は、飲み物と菓子を載せた盆をふたつの長椅子に挟まれた卓の上に置き、シャーラが差し出した剣を受け取った。
「お帰りまで大切に保管しろ」
「はい、旦那様」
屋敷妖精が微笑んだ。
シャーラは首を傾げた。
屋敷妖精がロウを「旦那様」と呼んだことだ。
屋敷妖精にとっての「旦那様」は、屋敷の主人である魔力の高い存在であるはずだ。
ロウのことではありえない。
「屋敷妖精、この屋敷に住まうのはこのロウ殿のほかにどなただ?」
シャーラは訊いてみた。
屋敷妖精は自分に直接話しかけられたのが意外そうだったが、すぐに口を開いた。
「旦那様とエリカ様とコゼ様とシャングリア様の四人です」
屋敷妖精ははっきりと言った。
やはり、真の主人の存在が入っていない。
なぜ、隠すのか……?
主人のことを口外しないように念を押されているのか……?
このロウに、隠れた後見人がいるのは間違いないと思うのだが……。
つまりは、目の前のロウなど、ただの小者だ。
しかし、このロウには、その背後に大きな力を持つ存在がいるに違いない。
おそらく、この屋敷の真の持ち主は、ロウという小者を表に出すことで隠れている……?
そう考えれば、なんとなく辻褄が合う。
だが、シャーラの調べでは、どんな人間の存在も、ロウの周りには浮いてこなかった。
「彼女はシルキーです。屋敷妖精が珍しいですか?」
さっきから、かなり露骨に童女姿の屋敷妖精を眺めていることは丸わかりらしい。
ロウがにこにこしながら言った。
「ええ、珍しいですね。屋敷妖精など、高位魔道遣いにしか仕えない非常に稀有な存在ですから。それで、その屋敷妖精の主人はどなたなのです?」
シャーラは単刀直入に言った。
「もちろん、俺ですよ」
ロウはにこにこしたままだ。
「ご冗談を……。屋敷妖精が高位魔道遣いにしか仕えないのは有名な話です。でも、失礼ながら、あなたは魔道遣いですらない」
「だけど、俺には懐きましたね。その理由は俺にもわかりません。この屋敷を知ったなら、隠しても仕方ないから言いますけど、俺にはもうひとつ王都城郭内にも、別屋敷があります。そこにも、別の屋敷妖精がいます。そっちは、ブラニーといいます」
「馬鹿な……。あっ、これは失礼……。でも、あまりに荒唐無稽なことをおっしゃるので」
屋敷妖精をふたりも持っている者などあり得ない。屋敷妖精は同時にひとりの主人に仕えたりはしないのだ。
もっとも、あの王都内の屋敷にもなにかがあるのは確かだ。
実はシャーラは、その屋敷についても調べようとした。
だが、特殊な結界がかかっていて、完全な侵入防止が施されていて調査はできなかった。
わかったのは、あそこはしばらく空き家になっていたが、極最近に持ち主ができたということくらいだ。
名義はロウである。
しかし、管理者と交渉したのはロウではない感じだ。でも、それが誰なのかは不明のままだ。
あの王都内の屋敷は屋敷で謎が多い。
いずれにしても、いまはこの屋敷だ。
誰が真の持ち主だ……?
この男に近い存在で考えられるのははスクルズとベルズだが、このふたりには冒険者を背後で操るような行為をする理由がない。
そんな人物でもない。
とにかく、ロウの背景に誰がいるのかを探り出す前に、イザベラに会わせるわけにはいかない。
シャーラは決心した。
「ところで、あなたはどなたですか? もしも、秘密にしたいのなら、そのとおりに接しさせてもらいますが?」
ロウが言った。
意味ありげに微笑んでいる。
「これは申し遅れました。わたしは、第三王女イザベラ姫付きの侍女のシャーラと申します」
「えっ、イザベラ姫? ギルド長の?」
ロウがびっくりした表情になった。
だが、シャーラはそれが本物の驚愕でないことに気がついた。いまのはわざとだ。おそらく、ロウはシャーラの正体に気がついていたと思う。
ただの勘だが、その勘のよさがシャーラをして、キシダインの暗殺工作からイザベラを守り抜いているのだ。
しかし、意外だ。
侍女という立場なので、貴族界でもシャーラについて知っている者は少ない。シャーラも貴族の端くれと言えないでもないが、シャーラはこの国ではなく、ナタル森林の森エルフ族の貴族の出身だ。この国の貴族でも名は売れてない。
ましてや、ただの冒険者に知られている名じゃない。
やはり、ロウの背後には誰か情報通の存在がいる?
とにかく、腹を探り合いながらでも、手がかりを得るしかないか……。
シャーラは話を続けることにした。
「そうです。第三王女殿下のイザベラ様にお仕えする者です。わたしは姫様のご命令により、ロウ殿に強制クエストをお伝えに来たのです。座ってもよろしいですか?」
「強制クエスト?」
今度はロウは意外そうな表情になる。さすがに、イザベラの気まぐれのクエストにまで情報は伸びてなかったか……。
まあ、当然か……。
知ってたら、シャーラがびっくりだ。
あの仰天する内容は、シャーラも、ここに来る直前に、ミランダの前でイザベラから告げられたばかりだ。
しかし、ロウはすぐに、戸惑いを柔和そうな笑みに隠して、小首を傾げた。
「さあ、どうでしょうか? ところで、俺は弱いですよ。武器なんかなくても、あなたなら片手で俺の首を折れます。ほかの武器もシルキーに渡してください」
ロウがシャーラのスカートに視線をすっと向ける。
今度こそ、シャーラが驚いた。
いまのシャーラは、宮殿にいるときと同じで、膝までの丈の侍女服を身に着けていたが、それはシャーラがイザベラの使いの侍女としてやってきたからだけではない。
スカートの中というのは、暗器の絶好の隠し場所だ。
いまも、スカートの中に小さな刃物を隠している。
しかし、まさか気がつくとは……。
こんなのは初めてだ。
「もう、なにも持っていません、ロウ殿」
しかし、シャーラはそう答えた。
「そうですか。では、そういうことにしましょう」
ロウが屋敷妖精に合図をした。
すると、屋敷妖精が抱えていたシャーラの剣が消滅した。
どこかに隠したのだろう。
屋敷妖精は、卓に乗せていた盆を手に取りなおす。
「……お座りください、シャーラ殿」
ロウが長椅子にシャーラを促した。
シャーラが腰かけると、向かい側の長椅子に座るのかと思っていたロウが、シャーラと同じ長椅子に腰かけた。
これには、シャーラもちょっとびっくりした。
「とりあえず、飲み物でも、どうぞ。シルキー──」
ロウが屋敷妖精に声をかけた。
湯気の立った赤い飲み物と手で摘まむような菓子がシャーラとロウの前に置かれる。
「パール茶です。お口に合えばいいのですがね」
パール茶というのは、どこにでもあるような一般的な嗜好品の飲み物だ。シャーラは手をつけようとして、はっとした。
茶に含まれる香りに、かすかな違和感を覚えたのだ。
なにか薬が含まれている?
シャーラは飲んだふりをして手元の袖に茶を吸い取らせた。
一口分飲んだふりをしたところで、茶の容器を卓に戻す。
「なるほど、さすがは、王女付きのシャーラ殿ですね。眠り薬なんかには引っかからない」
長椅子の反対側に腰かけているロウがにやりと笑った。
シャーラは内心で、この男に対する怖れを初めて抱いた。
第一王女の姫婿のキシダイン卿とイザベラが王太子の地位をめぐって争っているために王宮生活には罠が多い。
そのため、シャーラは不用意に人前で飲み食いしたりせず、どうしても必要な場合でも、いまのように口に入れたふりをして実際には飲食しないことを常にしている。だが、いままで、その手元を見破られたことはなかったのだ。
「わたしに一服盛ろうとしたのですか、ロウ殿?」
シャーラは内心の動揺を隠すために、わざとむっとした表情を装った。
「当然でしょう。ミランダの服をわざわざあんな風に運んできたのは、ミランダを素裸で監禁しているという伝言に違いありません。そうであれば、俺はあなたを敵としてみなすしかありません。ミランダは大切な友人です」
ロウは言った。
シャーラは大きく息を吐いた。
どうも不安な気持ちから逃れられない。
目の前のロウという男になにがあるというのだろう?
どう見ても、大した能力があるとは思えない。
それなのに、こんなにも落ち着かない気持ちになるのはなぜだ?
「ところで、強制クエストという話ですが、それはミランダが監禁されていることとなにか関係があるのですか?」
ロウは言った。
「ミランダ様は問題ありません。姫様が大切に保護をされております。ただ、姫様は、ロウ殿が今回のクエストに拒否したりすれば、ミランダ様を酷い目に遭わせると言っております。ただ、これは姫様のいつもの気まぐれです。姫様はミランダ様を信頼なされているし、姫様がミランダ様に最終的に危害を加えるなどということはあり得ません」
とにかく、シャーラのやることは、イザベラの言葉をロウに正確に伝えることと同時に、イザベラに夜這いをかけるなどという馬鹿なことはしないように忠告することだ。
いや、王宮に潜入するなどという無謀なことをやっても、途中で失敗することはわかっている。
だが、あのイザベラのことだ。
ロウが潜入に失敗して、衛兵などに捕らえられたとしても、手を回して解放してしまうのだろうと思う。
そして、そのときの解放の代償として、ロウがイザベラ仕えるという条件を出すような気がする。
いかにも、小細工好きのイザベラの考えそうなことだ。
二年半の付き合いのあるシャーラには、いまや、イザベラがなにを考えているかということくらいわかる。
だからこそ、ロウとは会わせたくない。
イザベラは、たとえ衛兵にロウが捕らわれたとしても、挑戦したということだけで、ロウのことを評価すると思う。
そして、そのときの気分次第で、ただの好奇心で平気でロウに身体を許しかねない。
イザベラというのは、そんな姫なのだ。
だからこそ、クエストを受けるというような愚かなことは、ロウには最初から断念させねばならない。
そのときには、イザベラは、ロウなどという冒険者には歯牙にもかけない。
イザベラは、なによりも臆病な男が大嫌いなのだ。
逆にいえば、多少無謀でも、イザベラは勇気のある男に惹かれるところがある。
「危害を加えないといっても、実際には加えているでしょう? ミランダはその姫様という人のところで素裸でいるわけでしょう?」
ロウがいささかむっとした顔で言った。
「ただの悪戯です。別にむごいことをされているわけじゃありません」
「素裸で監禁されるということは、十分にむごいことだと思いますけどね。ところで、ギルド長自らの強制クエストとはなんです?」
ロウが言った。
シャーラは躊躇ったが、こればかりは伝えないわけにはいかない。
必要なのは、ロウがイザベラの言葉を伝えられながらも、ミランダを見捨てて王宮に助けには来なかったという「事実」だ。
そうでなければ、イザベラにロウという冒険者に興味を失わせることはできない気がする。
「……姫様のお出しになったクエストは、王宮内におられるご自分を夜這いなさることです。それが成功すれば、ミランダ様は解放されます」
シャーラは言った。
さすがにロウの目が驚きで丸くなった。
シャーラは、さらにそれがいかに無謀なことであるかということを急いでつけ足した。
王宮は衛兵で守られており、侵入者は容赦なく殺されるだろうということ──。
それだけでなく、魔道士隊が魔道避けの印を刻み込んでいるため、魔道による潜入も不可能だということ──。
さらに、魔道をかけようとした者は、失敗して逃げたとしても、誰であろうとそれを見つけられて、魔道を辿って追跡され、最終的には捕縛されることなどを次々に説明した。
「なるほど、クエストの内容は、俺の友人のミランダを不当に扱った世間知らずの姫様のところにいき、生尻の二、三発も叩いて、お仕置きするということですね。面白い。これまでいくつかのクエストを受けましたが、飛び切りに愉快なクエストです。受けましょう。ミランダにはすぐに助けに来るからと伝えてください」
ロウはさらりと言った。
シャーラは焦った。
シャーラの説明が悪かったのか、このロウは王宮への潜入を大して難しいことと考えていない気配である。
こうなったら、奥の手を使ってでも……。
「ロウ殿、これは脅しじゃありませんよ。忠告です。王宮に潜入など、無謀なことはやめなさい。ましてや、姫様に手を出すなど、姫様自身がなんと言おうと、このシャーラが許しません」
シャーラはさっとスカートを腿までまくり上げた。
殺すまでのことをするつもりはないが、手首の一本くらいはもらう。
それで、ロウは冒険者を続けられなくなるし、イザベラに夜這いなどという馬鹿なこともできなくなる……。
可哀想だが、これも愚か者への忠告だ……。
そして、腿に巻き付けた革帯で吊っている刃物を右手で抜く──。
いや、抜こうとした。
しかし、できなかった。
その瞬間、椅子の表面に突然に浮きあがった「糊」のようなものに右腕がくっついたのだ。
右手だけでなく、左手も……。
いや、腕だけでなく、スカートそのものや背もたれに接した背中まで密着してとれなくなっている。
「な、なに?」
シャーラは愕然とした。
ロウがくすくすと笑った。
ふと見ると、ロウが手を触れている長椅子の表面から、粘性のなにかがシャーラに向かって伸びている。どうやら、それがシャーラの背中や腕の下に拡がっているようだ。
「……実は、俺はこういう特殊能力の持ち主でしてね。身体に接するものに、粘着性の高い物質を発生させることができるんです。椅子を通じて、あなたの身体の下にそれを発生させてもらいましたよ。いつもできるというわけじゃないんですけど、この能力を遣って、あなたを犯すのだというようなことを考えると、それができるんです……。シルキー、天井に繋がった革枷付きの鎖を出せ。魔女拘束用のものだ」
ロウが立ちあがった。
「はい、旦那様」
すぐに、シャーラの前に突然に一本の鎖が降りてきた。その先には革枷がついている。
「さあ、せっかくのご訪問ですから、ここで遊んでいくといい、シャーラ。とりあえず、魔道戦士殿がどんな下着をはいているか見物させてもらおうかな」
ロウはそう言うと、鎖の先の革枷をシャーラの右足首に嵌めた。
蹴り飛ばそうと思ったが、いつの間にか足が接している床にも、おかしな粘性の物体がある。
とることができない。
「これは預かりますね」
ロウがまくりあがったままのスカートから刃物を呆気なく取りあげた。
それだけでなく、上衣の裾に隠している魔道の杖もさっと抜く。
まるで、どこになにを隠しているかを最初からわかっていたみたいだ。
シャーラは、このロウが恐ろしくなった。
これは絶対に、イザベラの前に連れていってはならない……。
裏にいる人物どころじゃない。
この男自身が危険すぎる……。
そのとき、突然に右足首の革枷に繋がっている鎖がからからと天井にあがり始めた。
当然にシャーラの右足が大きく上にあがる。
「くうっ」
シャーラは思わず声をあげて前につんのめった。
いつの間にか、椅子にくっついていた粘着物が消滅していて、それで、それから脱しようとしていたシャーラが前に飛びだすようになったのだ。
だが、すでにロウも屋敷妖精も十分に距離をとって離れている。
手を伸ばしても届かない。
なんとか魔道で……。
杖がなくても、少しは……。
しかし、駄目だ。
すぐに悟った。
魔力が凍結されているのだ。
どうやら、足首に巻かれていある革枷──。
これはただの枷ではない。
おそらく、魔道使いの魔力を封じる魔道の枷──。
「くそっ」
シャーラは自由になった両手で革枷を引き千切ろうとした。
しかし、ロウのせせら笑うような声がした。
「無駄ですよ。それは外れません。王都でも、一番と二番の魔道遣いが魔道を刻んだ枷ですからね。それをシルキーに転送させたんです。それよりも、いいんですか? もうすぐスカートがめくりあがりますよ」
ロウがからかうように言った。
王都でも一番と二番の魔道遣い──?
「あっ」
しかし、はっとした。
すでに肩に近い高さまで引き上げられている右足のために、スカートがまくれて、太腿の付け根まで露出しかけている。
「いやあっ」
シャーラは慌てて手でスカートの裾を押さえる。
「いいですねえ。能力の高い魔道戦士殿のそんなに焦った姿なんて」
ロウが笑った。
またしてもシャーラはびっくりした。
このロウはすでにシャーラのことをただの侍女ではなく、魔道戦士であることまで見抜いている。
それは王宮でも滅多に知る者の少ない事実であるのに……。
だが、考えているうちにも、さらに鎖がどんどんと上に引きあがる……。
「ああっ」
ついに、床についていた反対の左足が宙に浮いた。
体勢を崩したシャーラは、両手を床について頭を打つのを防いだ。
その代わり、スカートが一気にまくれあがる。
今度は慌てて、両手でスカートの裾を押さえた。
しかし、身体全体が浮きあがるに従い、押さえている股間の部分以外の全部が露わになってしまう。
「や、やめろ──。やめないか」
シャーラは落ちていくスカートを支えるために、左足を吊られている右足にぴったりとくっつけた。
だが、それはかなりのつらい姿勢だ。
「みんな、いいぞ」
そのとき、ロウが大きな声をあげた。
その瞬間、奥の扉が勢いよく開かれた。
「ロウ様、お怪我は?」
最初に飛び出してきたのは、エリカというエルフ族の女だ。
剣をすでに抜いている。
「案外に呆気なかったわね。魔道戦士とかご主人様がいうから、緊張したけど……」
「確かにな……。このところ、ロウはすごく強くなった気もする。なによりも、冷静で動じない」
「まったくね。さすがはご主人様」
続いて入ってきたのは、人間族の女のコゼとシャングリアだ。
「わたしたちの出番もなかったようですね」
「さすがはロウ殿だ」
驚いたことに、スクルズとベルズも出てきた。
ふたりが魔道の杖を持っているところを見ると、なにかがあったときには、魔道で対応するつもりだったのだろうか。
王都でも一、二を争う魔道遣いが待機していたのだと思うとぞっとする。
だが、これで判明した。
やはり、このロウの背後にいるのは、スクルズとベルズだ。
「ス、スクルズ様、ベルズ様、助けてください。わたしはイザベラ姫付きの侍女で、シャーラといいます。姫様の指示でここに来たのです」
シャーラは叫んだ。
しかし、ふたりはまるでシャーラの声など聞こえなかったかのように、ロウを見ている。
その様子には、このふたりがロウの上に立つという雰囲気は皆無だ。
やはり、このロウがこの女たちに指示している?
シャーラは混乱した。
「シルキー、指示したものを出してくれ」
ロウが言った。
「はい」
シルキーの言葉が終わると同時に、逆さ吊りになっているシャーラの鼻に、急につんとした刺激臭が襲ってきた。
驚いて床に視線を向けると、香炉に乗せられた薬草から白い煙が立ち込めている。
その煙にシャーラはいぶされているのだ。
たちまちに、全身の力が抜けてくるような感じになった。
しかし、これは……?
シャーラは自分の身体に襲った変化に戸惑った。
「エルフ女を発情させるように特別に調合した香だ。たっぷりと吸ってくれ。訊ねたいことはあるが、それはゆっくりと身体に訊いてやる」
ロウが言った。
シャーラは愕然とした。
「ええっ?」
エリカというエルフ族のロウの女が悲鳴のような声をあげて飛びのいた。
*
「はあ、はあ、はあ……」
シャーラは口を薄く開いて荒い息をしながら、必死になって吊られている右足に左足を添わせている。
そうすることで、落ちてくるスカートを押さえているのだ。
だが、片脚で逆さ吊りされた状態で拘束されていない片脚を自分の力であげ続けるというのは、イザベラ付きの護衛侍女として鍛えているシャーラにとっても、思った以上につらいことだった。
しかも、頭の下からは、一刻ごとにシャーラの力を奪っていく香が焚かれ続けている。
この煙が強烈な媚薬効果を持ったものであることは、自分の身体にすぐに起こった変化により悟った。
両手で押さえているスカートの内側にある下着に包まれているシャーラの股間からは、すでにびっしょりと淫らな蜜が溢れ出している。
だから、保持している手足につるような痛みが走ろうとも、スカートを押さえるのを続けなければならないのだ。ほんの少しでも気を緩めれば、スカートは垂れ落ち、淫らな汁で汚れた恥ずかしい下着を露わにすることになる……。
シャーラは歯を喰い縛って、痙攣する脚と手に力を入れる。
一度、気を緩めれば終わりだ……。
その自覚がシャーラにはある。
だが、いつまで我慢すればいいのか……。
逆さ吊りのシャーラに向かい合うように長椅子に腰かけているロウという鬼畜男は、いつまでもシャーラが力尽きるのを待つことができる。
それに比べて、シャーラはこのままこの香を吸い続ければ、ついには身体が弛緩しきって動かなくなってしまうということもわかっていた。
そうなってしまえば、もう抵抗の手段はないかもしれない。
かといって、この状態で香を吸わないようにするということは、息をしないというのと同じだった。
そんなことができるわけがない。
「結構、頑張りますねえ。我慢できなくなったら、遠慮なく自慰をしていいですよ。イザベラ姫様付きの魔道戦士殿が自ら恥をさらす姿というのも一見の価値があるというものです。おや? さっそく始めましたか?」
ロウがからかうような声をあげた。
その言葉で、シャーラは自分が無意識のうちに腰を動かすとともに、股間を押さえている両手で強く股間を押していたことに気づいた。
慌てて、自分を抑える。
それにしても、なんという凄まじい媚薬の香だろう。
股間だけでなく、乳房からもびりびりという疼きが溢れ出る。
全身から流れる汗は、いまや逆さになっている顔からぽたぽたと床に向かって垂れ流れていた。それがさっきから香が焚かれている香炉に当たって、じゅうじゅうという音を立てている。
「ス、スクルズ様、ベルズ様──。こ、こんなことは許されません……。わ、わたしは、イザベラ姫様付きの侍女のシャーラなんです。わ、わたしに、こんなことをしたのがわかれば、宮廷から神殿に対して強い抗議が……」
シャーラは何度目かになる抗議の言葉をロウのそばで困惑顔でこの状況を静観している感じのふたりの巫女に叫んだ。
だが、ふたりとも当惑した顔でロウの顔を見るだけで、なにもしようとはしない。
ここに集まっている者の中で、裏でロウという男を操る能力を持っているのは、このふたりしかいないに違いないのだが、いまのところ、この場を支配しているのはロウであり、ほかの女たちは、スクルズたちを含めて、ただ盲目的に従っているという感じだ。
「ねえ、ご主人様、この女はさっきから、どうして、スクルズたちに喋っているんですか? ご主人様のことだから、わざわざ喧嘩を売りにやってきたようなこの女を許さないと思いますけど、哀願するならご主人様にすればいいのに」
ロウの横を陣取るように長椅子に座り、ロウの腕に寄り添っているコゼという人間族の小柄な女が言った。
その反対側からロウに寄り添っているのはシャングリアだ。
エルフ族のエリカは、シャーラに浴びせられている香の影響を受けるのが嫌だといい、すぐに部屋から逃げていった。
いまは、この部屋にはいない。
スクルズとベルズは椅子には腰かけずに、ロウの足元で床に直接座っている。
それも奇妙な光景だ。
神殿の筆頭巫女であるこのふたりは、巫女ということで、正式には貴族ではないが、人の格からすれば、この王都では地位の高い高級貴族に匹敵する立場になる。
それなのに、そのふたりが床に座り、ただの冒険者たちが椅子に座るというのはおかしなことだ。
だが、どう見ても、スクルズもベルズも、それに対して不満など微塵も持っていない感じである。
「おそらく、このシャーラは、自分にこんなことをさせているのは、俺ではなく、スクルズかベルズ殿だと思っているのさ。なにせ、俺は一介の冒険者であり、爵位もない庶民どころか、ただの移民者だし、それに比べれば、神殿の筆頭巫女のスクルズたちは、雲上人で、しかも、魔道遣いとしても超一級だ。だから、俺がこの場を支配しているはずがない。そう考えているんだろう」
ロウが言った。
「えっ? わたしたちが?」
だが、それを聞いてスクルズがびっくりした声をあげた。
ベルズも当惑の表情をしている。
その様子に、なにかを隠しているという感じはない。
純粋に驚いているようにしか見えない。
やっぱり、ロウが支配者?
そうであれば、この男は本当に何者?
それにしても、そろそろ脚も手も限界に達してきた。
最初の頃は無理して丸めていた背も、いまは完全に伸び切っている。
その分、スカートを押さえている手の場所は下にさがり、辛うじて股間を押さえているだけになっている。
スカートの裾がいまだに落ちて来ないのは、自由になっている左膝でスカートの裾を押さえているからなのだが、だんだんと力が入らなくなってきている。
「無駄よ、シャーラとかいう女──。鬼畜に切り替わったご主人様はとても陰湿よ。あんたが完全に屈服するまで、じっくりと腰を据えて、あんたを調教なさるわ。どうせ犯されるんだから、さっさと観念した方がいいわ」
コゼが言った。
「そうだな。それに、こう見えてもロウは優しいぞ。ロウはクロノスだ。お前を犯した後は、きっと大切にすると思うぞ」
シャングリアが続けた。
「それはどうかな。ただ、こいつはミランダを監禁して服を脱がせ、その服をここに運んでくるというような挑戦状を持ってきたんだからな。少なくとも同じ目に遭わせてはやらんと、ミランダに悪い。無論、イザベラとかいう姫君も、しっかりとお仕置きする」
「ひ、姫様になにかをすると承知せんぞ。それだけは許さん」
シャーラは歯を食い縛りながら言った。
「他人のことよりも、自分のことを心配した方がいいぞ……。ところで、コゼ、あの侍女殿がスカートを押さえる手にもっと気合が入るように、後ろから下着を取り去ってやれ。ついでに、これを股間にかけてやるんだ。これは股間から出る体液と混ざれば、猛烈な痒みを引き起こす魔道の液体だ。あの侍女殿が逆さ吊りのまま、自慰を始めるのに、そんなに時間はかからんだろう」
ロウが少し前に屋敷妖精に準備をさせて卓に置いていた小瓶をコゼに手渡した。
「本当にご主人様は鬼畜ですねえ……。まあ、それも魅力なんですけど」
コゼが苦笑しながら、小瓶を持って立ちあがった。
「や、やめろ、やめんか」
シャーラはそれを聞いて叫んだ。
もう身体は限界なのだ。
これ以上なにかをされたら、醜態を晒してしまうことから免れなくなる。
「ねえ、ロウ様、ミランダ殿のことなら、わたしたちがイザベラ姫様に掛け合って、なんとかすることはできると思いますわ。もちろん、気難しいお姫様とは伺っておりますから、てこずるかもしれませんけど……」
初めてスクルズがシャーラを庇うような言葉を口にした。
シャーラは絶望の中に一瞬の光を見た気がした。
「いや、これは、その姫様の挑戦状だろう。なんのつもりか知らないけど、俺の大切な友人のミランダにひどい目に遭わせているのは気に入らない。それに、そのシャーラは、きっと宮殿に出入りする秘密の通路くらいの場所は知っているさ。それをじっくりと白状させるよ」
ロウが言った。
はっとした。
ロウの言葉はあてずっぽうのような感じだったが、実は宮殿には王族の一部しか知らない地下道が連接している。それは魔道士隊にも衛兵にも知られてはおらず、王族だけに代々受け継がれている。なにしろ、この地下道は万が一、衛兵隊などが反乱のときに城外に逃亡するための経路なのだ。
シャーラがそれを知っているのは、シャーラが王族付きの護衛であるからだが、ロウが無造作にそれに言及したのは内心で度肝を抜かれた。
「ほら、気を散らしちゃだめよ。自分のことに集中しなさい」
不意に声が背後からかけられた。
コゼだ。
だが、シャーラには、首を曲げて、コゼの姿を確かめる余裕はない。
「あっ──きゃあああ」
そのとき、突然にひんやりとした風が股間を襲って、シャーラは悲鳴をあげた。
下着が本当に切り取られたのだ。
「これはおまけよ」
コゼの声がした。
すると、コゼが手にしている刃物らしきものが、背後からシャーラの侍女服の上衣の表面を動きだした。
すぐに背中側が完全に左右に裂かれたのがわかった。
シャーラは戦闘の邪魔にならないように、服の下に乳房を押さえる布の胸当てをしていたが、コゼによりそれを切断して抜き取られる。
「ほら、押さえないと、おっぱいも出ちゃうわよ」
コゼがからかいの言葉をかけてきた。
さらに刃物が袖の部分に回って来て、両側とも完全に切断される。
左右と前後の四つに切断された上衣がぱさぱさと床に落ちていく。
シャーラは慌てて、両手で押さえていた手の片方を胸の前の服の切れ端を押さえるために移動させた。
「さあ、片手が空いたから、かけやすくなったわ。多分、これは、あんたが股間からいやらしい汁を出すと、それに反応して痒みが沸き起こる薬液だと思うわよ。痒みで苦しくなりたくなかったら、頑張って感じないようにするのね……。だけど、もう遅いか。これだものね」
コゼがなにかの布を顔にぱさりとかけた。
「いやっ」
顔に張り付いた布を首を振って外す。
コゼが顔に乗せたのは、シャーラの股間から剥ぎ取ったシャーラ自身の下着だ。
それには、べっとりとシャーラの愛液が染み込んでいた。
「さあ、かけるわよ。ご主人様の準備なさる薬剤は強烈よ。きっとのたうち回るわね」
コゼが笑った。
次の瞬間、手で押さえているスカートの中の股間に、コゼの持っている瓶が差し入れられて股間にどぼどぼと注がれてしまった。
「ああっ、や、やめてえっ」
液体が股間に触れた瞬間に、液体が粘性に変化するのを感じた。
ロウやコゼが言ったとおり、シャーラの愛液と液体が反応して、なにかの成分に変化しているようだ。
シャーラの愛液は、股間の亀裂の内側とその周りにたっぷりと溢れ出ていた。だから、その気持ちの悪い粘性の物体も、亀裂の内側に浮きあがり、亀裂の外側にぺったりと張りつくような感じになった。
「さあ、じゃあ、侍女殿が脚をぱっかりと開くのが先か、それとも自慰を始めるのが先か……。とにかく、しばらく見物だ。じゃあ、時間つぶしに、スクルズ殿とベルズ殿は、舐め舐めの特訓をしましょうか。おふたりともかなり上手になってきましたからね。あとは実践あるのみです。俺を感じさせるように舐めてください」
ロウがそう言って、突然にズボンから性器を露出させた。
「えっ?」
「な、なに?」
スクルズとベルズは困った顔でちらりとシャーラを見た。
「大丈夫だ。こいつはすぐに落ちる。あなたたちが俺の性奴隷という秘密はちゃんと守られる」
ロウが言った。
性奴隷?
そう聞こえたが、なにかの聞き間違いか?
だが、次に起こった光景は、シャーラの度肝を抜かせるのに十分な衝撃だった。
床に座っていたスクルズとベルズが恥ずかしそうに顔を赤らめると、くるりとロウに向き直り、ロウが剥き出しにした性器を両側から舌で舐め始めたのだ。
シャーラは目の前の出来事が信じられなかった。
「さあ、おふたりとも両手を後ろに回してくださいね。練習のときには手を縛るのが約束ですから、あたしが括ってあげます。あたしもシャングリアも、みんなそうやって、ご主人様に躾けられたんですよ」
卓に戻ったコゼが言った。
「そうだったな」
シャングリアもただ笑って泰然としているだけだ。
その様子は、この状況が大して珍しくもないということを物語っていた。
これは、ロウや女たちにとって普通のことなのだ。
シャーラは悟った。
そしてそれは、やはりこの場を仕切っているのは、紛れもなくロウだという事実と、ロウがこの全員の「主人」役をしているということに間違いないということを示している。
いずれにしても、スクルズもベルズも、コゼがさっき言ったことに逆らわなかった。
舌を動かしながら、自ら手を背中に回していく。
コゼは糸のようなもので、ふたりの左右の親指同士を重ね合わさせて根元を縛っていく。
「ついでです。少し余ったんで、おすそ分けです」
今度はコゼが卓に置いていたさっきの瓶の残りをふたりの巫女服の裾をめくってそれぞれの股間にかけるような仕草をし始めた。
ロウばかりでなく、コゼまでもが神殿の筆頭巫女のスクルズたちに淫らな悪戯をするということに、シャーラは目を丸くした。
「ちょ、ちょっと」
「コ、コゼ」
スクルズとベルズはさすがに抵抗しようとしたが、ロウに一喝されると大人しくなり、あとはコゼがふたりの股間に小瓶を差し入れるのに任せた。
スクルズとベルズは、ロウの女にまで支配されている。
シャーラは唖然とするしかなかった。
「……まあ、俺の一物を舐めて、淫らな気持ちにならなければ、液剤は反応しません。こんなので痒みが起きれば、おふたりが紛れもないマゾということの証でしょうがね」
ロウが笑った。
スクルズとベルズのふたりは、恥ずかしそうな横顔で腰をもじつかせながら、懸命にロウの性器に舌を動かしている。
すでにロウの性器が勃起してたくましく天井を向いている。
だが、シャーラの思念はそこまでだ。
それ以上、もうスクルズたちのことを観察する余裕がなくなってしまっていた。
股間の痒みが猛烈なものに変わっていた。
「か、痒いい……ああ、か、痒い……」
両手と脚の疲労も忘れて、シャーラは全身を揺すった。
そのとき、ついに左足が力を失い吊られている右足から離れた。
一度離れたら、もう戻すのは不可能だ。
左足が完全に真横に向いたのはあっという間だ。
それにより、スカートが完全にめくれて、片手で押さえている股間を残して垂れ落ちた。
「ああ、だめええっ」
それが限界だった。
シャーラはすべてを諦め、いまや恐ろしい痒みが襲われている股間をスカートの布越しに、ごしごしと擦りだした。
「もう自慰を始めたな。案外、呆気なく堕ちそうだな」
ロウがそれを見て、嘲笑するような声をかけてきた。