【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「なあ、ミランダ、ロウはどういう反応をするだろうかなあ。愉しみじゃ。お前を助けるために命を張って、王宮に忍び込んでくるのだろうか。それとも、やはり恐れをなして諦めるのかのう。わたしはロウの義侠心を試したいのだ」
イザベラは言った。
すると、魔道で作った白い光の檻の中のミランダは、何度目かの溜息をついた。
「あたしは、諦めて欲しいと思いますけどね。言っておきますが、それは姫様のためですよ。ロウを試すようなことをして、なにをされても、もう知りませんからね」
ミランダは言った。
檻の中にいるミランダは素裸であり、いまは胡坐をかいている。
また、横にはイザベラが差し入れた食事を載せていた皿があり、いまは一緒に渡した飲み物とともに空になっている。
「ところで、厠はいいのか、ミランダ? 別にわたしは、お前を苦しめるつもりはないのだ。そこに監禁する以外のことはするつもりはないから、なんでも言え」
「だったら、ロウになにをされても、あとで怒らないと約束してください。ロウを処罰しないでください。あたしは嫌な予感がしますけどね」
「嫌な予感というのは、ロウがここにやってくるということか? 心配はいらん。実は、衛兵には命までは取らんように事前に達しておる。魔道士隊はもともと、捕縛はしても、その場で殺害まではせん連中だから問題はなかろう。ロウが捕らえられたとしても、わたしはすぐに解放する。わたしは、ただロウがどんな男なのか試したかっただけなのだ」
「夜這いをしろとおっしゃったでしょう。ロウは好色ですからね。多分、来るんじゃないかと思いますよ。あのロウは、魔道を遣えるわけでもないし、腕利きなわけでもない。でも不思議な力を持っています。なによりも、勘がよく、頭がいいのです。姫様の思惑を超えたやり方であっさりと、やってくるような気がするんですけどね」
「ミランダがそこまで冒険者を褒めるのは珍しいのう。ますます、愉しみじゃ」
イザベラは笑った。
すると、ミランダが再び大きな溜息をついた。
「……それにしても、シャーラは遅いのう……。ミランダが言った幽霊屋敷とやらに、わたしが出掛けさせたのは夕方だぞ。もう、夜中だ」
イザベラは思い出して言った。
すぐに戻って来いと厳命したわけでもないが、あのシャーラに限って、命じたことを済ませてから、どこかに寄り道をするわけもないと思う。
「あたしはシャーラをひとりで行かせるのは危険だと、何度も忠告しましたよ。あたしから剥ぎ取った衣類を持って行かせるなんて、ある意味、ロウに喧嘩を売りに行かせたようなものです。ロウは冒険者です。敵対する者同士であろうとも、使者は無事に返さなければならないなどという貴族の約束事は通用しませんからね」
「なにを言っておる。シャーラが冒険者風情に負けると言っておるのか? それなら、わたしは、それこそ身体を許してでも、ロウに家人になるように頼むわ」
イザベラは笑った。
ミランダはそれ以上は語りかけようとはせず、小さく肩を竦めて、口の中でぶつぶつとなにかを呟いただけで終わった。
なんとなく、「自業自得」というような言葉を口にしたような気がした……。
そのとき、部屋の外から声がかけられた。
シャーラの声だ。
「戻って来たようじゃぞ、ミランダ。ほら、無事ではないか」
イザベラはミランダににやりと笑いかけ、入れと声をあげた。
「……姫様……」
シャーラが入って来た。
しかし、シャーラはなんとなく疲れているようだ。
しかも、出ていったときの侍女の服ではなく、身体を包む黒いマントですっぱりと身体を包んでいる。
イザベラは訝しんだ。
「随分と遅かったが、ちゃんとロウにはわたしの言葉は伝わったのか? それに、その恰好はなんじゃ?」
そして、イザベラは、シャーラの首になにか嵌まっていることにさらに気がついた。
「首にしているのはなんじゃ、シャーラ?」
さらに訊ねた。
「……これは首輪です、姫様……。雌犬の……」
シャーラは静かに言った。
その口調が自然だったので、一瞬、なにを言われたのかわからなかった。
雌犬の首輪……?
そう言ったのか?
イザベラが疑念の言葉を口にしようとしたとき、シャーラが身体を包んでいたマントを両手でがばりと開いた。
「あっ」
イザベラは思わず声をあげた。
シャーラはマントの下は完全な素裸だった。
しかも、シャーラの股間は完全に無毛になっていて、下腹部になにかが刺青のような感じで文字が書かれている。
「……雌犬……一号……?」
イザベラはそれを読んだ。
どういうことだ?
「な、なんだそれは、シャーラ? 雌犬一号とはなんじゃ?」
イザベラは怒鳴った。
「わたしが魔道で自分の身体に刻みました。ご主人様の命で」
「ご主人様?」
イザベラは唖然とした。
そのとき、部屋の扉が再び開いた。
入って来たのは黒い髪をしたひとりの男だ。
「な、なんじゃ、お前?」
イザベラはびっくりして声をあげた。
「なんだとは心外だね。あんたが俺を呼びつけたんじゃないのかい、お姫様」
その男が言った。
「姫様……。申し訳ありません……」
シャーラが項垂れたまま言った。
「……ロウ、やっぱり来たのね……」
そのときミランダが、半分呆れたような、それでいて、少し嬉しそうな声をあげた。
「さあ、お姫様、言われたとおりにやって来ましたよ。クエストの内容は、あんたの処女を犯すことでしたっけ? それはどうでしょうか? 報酬の話もしてもらっていませんしね。そもそも、あなたの処女には報酬なしで奪うに値するほど、価値があるのですか?」
ロウという冒険者が、小馬鹿にしたような口調で長椅子に腰かけた。
「な、なんじゃ、お前──。わたしに無断で椅子に座るとは何事じゃ。許しも得ずに座るでないわ──」
イザベラはかっとして怒鳴った。
しかし、ロウはイザベラを無視して、持っていた包みをミランダに向かって放り投げた。
イザベラの施した光の帯は、ミランダ自身は完全に封じ込めるが、逆にミランダ以外については、人でも物でも出入りは自由だ。
ロウの投げた包みは光の格子をすり抜けて、ミランダの手元に落ちた。
「シャーラが持って来たミランダの服だ。助けにきた礼は、明日の夜にでも、屋敷に遊びに来ることでいい。とっときのプレイがあってね。延び延びになっていたが、明日やろう。それで許してやるよ」
「馬鹿ね」
ミランダが苦笑しながら包みを開いて、服を身に着け始めた。
ロウの失礼な物言いに満更でもなさそうなミランダの態度には少し驚いた。
だが、いまはシャーラのことだ。
なぜ、シャーラがこんな格好になっているのか──?
そもそも、ロウはどうやってここに来たのか──?
「ロウ、答えんか──。シャーラになにをしたのだ? そもそも、どうやってここに来たんだ──」
イザベラは激昂して立ちあがった。
「うるさいなあ。シャーラがどんな目に遭ったのか知りたいのか?」
ロウが手を伸ばして、ロウの座る長椅子の横に突っ立った状態だったシャーラから黒いマントを取りあげた。
シャーラは別に抵抗しなかったが、首輪ひとつの素裸にされると、恥ずかしそうに両手で乳房と股間を隠す仕草をした。
「勝手に隠すな、雌犬。それとも、ここで死にたいか」
すると、ロウが大きな声をあげた。
「は、はい。申し訳ありません、ご主人様」
シャーラが慌てたように手をさっと背中側に回して手を組んだ。
陰毛を剃られたばかりのようなシャーラの無毛の股間と、そこに書かれた“雌犬一号”の刺青が露わになる。
ロウの怒鳴り声は、乱暴そのものの粗野なものだ。
事前の調査では、冒険者には珍しく行儀はいいと耳にしていただけに意外な感じがした。
いずれにしても、イザベラの侍女であるシャーラを相手にそんな言葉を遣うのは不快だ。
それに、殺すぞという脅しにもむっとした。
生意気な……。
ここをどこだと思っているのだ……。
「ロウ、わたしの問いに答えんか」
イザベラは声をあげた。
すると、やっとロウが真っ直ぐにイザベラを見た。
「わかったよ。どうやって、ここにやって来たかという問いであれば、このシャーラに案内させた。“王家の道”とかいう経路を辿ってね。この建物に入ってからも、シャーラの先導なら大して面倒なことはなかったな。ついでに、隣室に控えている侍女と女衛兵については、シャーラが人払いしてくれたよ」
「なにいっ?」
王家の道?
イザベラは絶句した。
いかに脅迫されたといえ、王族絶対の秘密を一介の冒険者に教え、あまつさえ、案内をしてきた?
「まあ、大きな声を出しても、駆けつけてくることはないと思うけど、一応は防音でもしておくか……。シャーラ、お前はこの宮殿内でも、魔道を遣うことを許可されている存在だったな。命令だ。この部屋から音が洩れないようにしろ」
ロウが魔道の杖を取り出して、シャーラに渡した。
「承知しました……」
手を後ろに回していたシャーラが魔道の杖を持ち、さっと振った。
部屋に防音の魔道の刻みが施されるのがわかった。
魔道をかけ終わると、シャーラはロウの求めに応じて、素直に杖をロウに戻した。
イザベラは唖然としてしまった。
「か、勝手なことをするな、シャーラ。どういう了見だ。そもそも、ロウに王家の道を使わせるとは何事だ。わたしはそんなことさせるつもりはなかった。それでは、なんの試しにもならんではないか。だいたい、王家の道は王家一族の秘中の秘ぞ。それを一介の冒険者に教えるなど……」
「うるさいなあ……。少しでもシャーラを大切に思う気持ちがあるなら、大きな声は出さんことだ。シャーラは必死であんたを守ろうとしているんだぞ。もちろん、自分自身の命もそうだがな」
「わ、わたしの命?」
イザベラは訝しんだ。
すると、ロウが左手をすっとイザベラにかざした。
そこには赤ん坊の拳ほどの薄桃色の球体があった。
気がつかなかったが、ロウはそれをずっと左手に握っていたようだ。
「な、なんだ、それは?」
イザベラは眉をひそめた。
「シャーラの首に嵌まっている爆裂の首輪を作動させる球体だ。我が家の作法で、招かざる客は、躾として、その爆裂の首輪を嵌めて雌犬として扱うことにしている。俺がこの球体から手を離せば、首輪が爆発することになっている。だから、シャーラは俺の言いなりだ……。おっと、その杖を俺に向けるなよ。どんな魔道であれ、俺に魔道をかければ、球体が反応をするように細工をしているんだ」
「なっ」
イザベラは愕然とした。
シャーラの首にあるのは、ただの首輪ではなく、爆裂の首輪だと聞いて、とっさに服の内側から魔道の杖を抜いたのだが、それがロウの脅迫で途中で止まった。
「さあ、冒険者を相手に試しをするようなお転婆姫様、その杖をこっちに寄越すんだ。それとも、シャーラの首輪にある爆裂の首輪を作動させるか?」
ロウが右手をすっと伸ばした。
「ば、馬鹿な──」
イザベラは驚愕して、もう一度、シャーラを見た。
このロウに爆裂の首輪を嵌められ、脅されて仕方なくシャーラは王家の道からロウを宮殿内に連れ込んだということなのか……。
魔道戦士の戦闘エルフのシャーラが、どういうわけでそんな罠に陥ったのかはわからないが、一応はそれで理由もつく。
爆裂の首輪というのは目にするのは初めてだが、どんな機能があるのかくらいは知っている。
首輪の革の内側に埋められているのは、炸裂砂という鉱山用の魔道の粉だ。魔道により炸裂し、硬い岩盤を吹っ飛ばす恐ろしい砂なのだ。
「爆裂の首輪」というのは、それを首輪の革の内側に充填している首輪だ。
「ロウとやら、そんなものでシャーラを脅すのは卑怯であろう。すぐに外すのだ」
イザベラは真っ直ぐに魔道の杖を向けた。
しかし、ロウは不敵な笑みを浮かべているだけだ。
「それが炸裂砂を充填した爆裂の首輪ですって?」
ミランダが意味あり気に言った。
ふと見ると、ミランダは白い檻の中ですでに衣服を身に着け終わっている。
「余計なことを言うなよ、ミランダ」
ロウがイザベラに真っ直ぐに視線を向けたまま言った。
「言わないわ。この姫様にはいい薬かもね」
ミランダがそう言うのが聞こえた。
イザベラはぐっと杖を握る手に力を入れた。
「そ、そんなことをすれば、ただではおかんぞ。そもそも、そんなものをここで爆発させれば、お前もただでは済まんはずだ」
「やめてくれよ。炸裂砂のことはなんにも知らないんだな、姫様。この球体から手を離したところで首輪の炸裂砂の塊が爆発して、せいぜい、首がもげるだけのことだ。その雌犬と心中なんて冗談じゃないぞ」
ロウが笑った。
「き、貴様……」
イザベラはロウを睨みつけた。
「それともうひとつ教えてやる。シャーラが身に着けている炸裂砂は首輪だけじゃない。特殊な方法で腹の中にも仕込んだ。どんな方法を使ったのは言わんよ。だが、俺は同じ方法で、あんたに近づくことのできる侍女や衛兵に、その方法で今度は本人も知らないあいだに、腹に炸裂砂を仕込んで近づけることもできる。シャーラにやった方法を使えばね……」
「はあ?」
意味がわからなかった。
炸裂砂を仕込める?
「わからないのかい? 策を晒すつもりはないが、炸裂砂くらい、王宮内の人間に仕掛けるのは簡単だ。それができると言ってるんだ」
「馬鹿を言うな。そんなことできるか」
イザベラは怒鳴った。
「どうかな。俺はシャーラにその方法を説明した。それが可能と思ったから、俺の脅しに屈したんじゃないか?」
ロウが不敵に笑った。
イザベラは唖然とした。
しかし、このシャーラが屈して、王家の秘密を教えたのだ。自分の命が危ういくらいで、シャーラは脅迫には屈しない。
どんな方法かわからないが、シャーラは納得したんだ。
そう考えるしかない……。
「姫様、お許しを……。そして、危険です。降参してください」
シャーラが追い詰められたような表情で言った。
イザベラは耳を疑った。
いま、シャーラが降参を勧告するようなことを言ったのか?
「すると、シャーラは蒼くなったよ。ご覧の通りだ。それで俺をここに連れてきたということだな。あんたには手を出さないという条件でね……。だが、あんたが俺に手を出すんなら、そんな約束は守る義務もない。それで、どうするんだ? 俺を捕らえるよりも、シャーラの身体が肉片になるのが早いと思うがね」
そして、見せつけるように左手を開いて、ゆっくりと手のひらを斜めに向け始める。
「や、やめろっ」
イザベラは慌てて杖をロウに投げた。
「ひ、姫様……」
シャーラが少し気後れをしたような表情になった。
イザベラに対して申し訳なさそうな顔をしている。
「……シャーラを殺してみろ……。およそ考えられる限りの残酷な手段で処刑してやる。お前だけではない。お前の仲間の女も全員だ」
イザベラはロウを睨んだ。
「どういたしまして。すでに手を打っているさ。捕らえられたところで、すぐに脱走できる。俺のことは心配してもらわなくていい」
ロウがにやりと笑った。
「な、なんだと? どうやるというのだ」
イザベラはびっくりした。
「手の内を明かす必要はないだろう……。まあ、少しだけ言えば、ここには俺ひとりしかいない。ほかの三人は、俺があんたが俺を捕まえさせたときに対処するために準備している。だから問題ないのさ」
ロウが余裕たっぷりに言った。
イザベラは絶句した。
炸裂砂を人間の体内に仕掛けたり、宮殿の衛兵に捕らわれても簡単に逃げおおせたりする方法というのはまったく想像できない。
どんな手段なのか、見当もつかない。
しかし、目の前のロウの余裕たっぷりの表情を見ていると、満更嘘でもないという感じだ。
なによりも、シャーラはこんな格好にされても、まったく文句を言わないし、口惜しそうな表情さえもしない。
ロウの完全な言いなりだ。
それが、ロウが本当のことを喋っているという、なによりの証拠のような気がした。
「ところで、姫様、処女の証というのを見物させてくれよ。素っ裸になって、その椅子に両脚を開いて乗るんだ。そして、自分の指で女陰を大きく左右に開け」
ロウが言った。
「な、なんだと──」
イザベラは怒鳴った。
「……約束が……」
そのとき、シャーラが小さな声をあげたのが聞こえた。
「……約束は守るさ、シャーラ。その陰毛を剃り落とすのと引き換えだったしな……。だが、世間知らずの姫様に多少は懲らしめを与えないとならん。それくらいは薬さ。それに最初の話によれば、どうせ、姫様も俺に犯されるつもりはあったんだろう? だいたい、俺に挑戦状を送りつけてきたのは、あんたの主人だ。あんたじゃない。それなのに、あんたばかりが理不尽な目に遭ったんじゃあ、割に合わないだろう。多少の辱めはさせてもらうさ」
ロウが応じた。
理不尽な目……?
シャーラの哀れな姿を見る限り、相当の酷いことをされたという感じだが、一体全体、なにをされたのだろう。
少なくとも、気の強い魔道戦士のエルフ女のシャーラが、ロウという冒険者に対して、完全に屈服しているという感じだ。
ただ脅されているということではなく、シャーラは心の底からロウには逆らう気がないように見える。
しかし、たった夕方から夜中という限られた時間だけで、どうしてシャーラは、ここまでロウに完全に屈してしまったのだろう?
「お、お前、シャーラになにをしたのだ──?」
すると、ロウが白い歯を見せた。
「大したことじゃないさ。のこのことミランダの服というあんたの挑戦状を俺に持って来たシャーラを逆さ吊りにして媚薬責めにし、素っ裸にして犬のように倒れるまで歩き回らせた。そして、気絶するまで犯し続け、意識を失っているあいだにその首輪を嵌め、腹にも炸裂砂を仕込んだ」
「な、なにいっ?」
「あとは脅して、下の毛を一本残らず剃ってやった。小便も大便も目の前でやらせた。思いつく限りの辱めをさせたよ。最後にはつるつるになった股間に刺青で“雌犬”と刻ませた……。まあ、それくらいかな……。それから、もう一度拷問し、宮殿に入り込む経路を白状させた。かなり抵抗したけど、いまは、もう逆らう気力もないようさ」
「き、貴様……よ、よくも……」
腹が煮え返った。
なんという卑劣な男なのだろう。
そもそも炸裂砂などという汚い手を使って、シャーラを脅すなど……。
「おいおい、恨むんなら自分自身を恨むんだな。俺をどんな男か知らずに、シャーラを俺の屋敷に来させたのは、あんただ、姫様。まあ、これに懲りたら、お転婆は自重することだな。少なくとも、信頼できる味方には耳を傾けろ」
「わ、わたしに説教してるのか」
かっとなった。
だが、イザベラの怒声など、まったく動じる気配もない。
そのことが、逆にイザベラを動揺させた。
「冒険者を試すようなことはするな。冒険者なんていうのは、王族といえども、それだけで尻尾を振るようなことはしない。あんたは、あんたが王女というだけで、頭をさげてちやほやする相手に随分と慣れてしまっているようだけど、冒険者というのはそういうものとは隔絶した存在だ。それとも、こんなことをしても、俺が王家に敬意を払うとでも思ったか?」
「そ、それは……」
確かに、冒険者を舐めていたということは否定できない。
まさか、伝言を持っていかせたシャーラがそのまま捕まるなど、思いもよらなかった。
「少なくとも、俺は王族という存在よりも、俺のことを慕ってくれる女たちの方がずっと敬意を抱く相手だ……。まあ、ギルド長のあんたには、釈迦に説法だったかな……。とにかく、危険なものに関わろうとしているということを自覚することだ。それよりも、早く服を脱げよ。侍女なんかどうでもよければ、助けを呼びな」
ロウがイザベラを睨みながら言った。もう、微笑んでなどいない。
そして、再び左手に持った球体を離すような仕草をする。
「ま、待て」
イザベラは言った。
口惜しいがこうなったら仕方がない。
イザベラは怒りで震える指で服を脱ぎ始めた。
「ひ、姫様──」
すると、もう一度、シャーラが声をあげた。
そして、大きく息を吸ってから、ロウに向き直った。
「ロウ様、やっぱり、これは承知できません。姫様にこんなことをさせるわけには──」
シャーラがなにかを決心したように叫んだ。
一瞬だが、なんとなくシャーラのロウに対する態度が、さっきと異なる気がする。
おかしな感じがして、イザベラは解きかけていた装束の紐を緩める手をとめた。
「落ち着けよ、シャーラ……。俺の手には爆裂の首輪を作動させる球体があるんだぞ。それに、これは姫様のためさ……。ほら、これで落ち着くか?」
ロウが言った。
ただ、なにかをしたという感じはない。
しかし、なにかを喋ろうとしていたようなシャーラが、急に黙り込んでしまった。
イザベラは首を傾げた。
「姫様は早く服を脱ぎな。今度手をとめたら、遠慮なくシャーラを殺すぞ」
ロウが言った。