【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「姫様、よろしければ、そろそろ刻限ですので、ロウ様のところに向かいたいと思います」
シャーラが寝室に入ってきた。
毒を飲まされて昏睡したことによる影響も消え、いよいよ、ロウのところに行く夜がやってきた。
すでに、ほかの侍女たちは、イザベラが寝所に入ったところで、それぞれの部屋に引きあげさせている。
もう、特に呼び出さない限り、彼女たちも個人の時間を過ごすのだと思うが、イザベラがシャーラの移動術でロウの屋敷に移動するとともに、シャーラの魔道でイザベラが寝室で寝ている気配を作ることになっている。
しかも、寝床には掛布をすっぽりと頭から被って寝ている膨らみも作るし、寝息もたてるのだそうだ。
掛けているものを引きはがさない限り、イザベラがいないことがばれることはないらしい。
「ま、待て、まだ着替えていない」
イザベラは驚いて言った。
ほかの侍女に悟られないように、寝所に入るまでは、まったくいつもと同じように振るまった。つまり、いまは完全に休む態勢になっている。
だから、イザベラが身に着けているのは寝着一枚だ。頭からすっぽりと被ったふくらはぎまでの丈の薄物一枚ということだ。その下には腰の下着一枚だけだし、足はスリッパだ。
「着替えるって……。それでよろしいでしょう。どうせ、すぐに脱ぐのですから」
シャーラはあっさりと言った。
「だ、だが、お前がひとりで迎えに来るまでは、いつものと同じようにしろというので化粧もしてないぞ。ロウに抱かれる前に、もう一度身体を洗いたいし、少し待ってくれ」
イザベラは自分の鼓動が早鐘のように鳴るのを感じた。
ロウに抱かれるのはすでに覚悟しているのだが、いざ、その時がやって来ると怖ろしいほどの緊張が襲ってきた。
正直なところ、気持ちを落ち着かせるための時間が少し欲しかった。
「必要ありません。そのようなことをするには、もう一度、侍女を起こさねばなりません。姫様の装束も化粧道具も侍女たちがいる部屋にあるのです。そのままで行きます」
シャーラが移動術の空間を作る仕草をした。
イザベラは慌てて、それを留めた。
「そ、それに、これはふくらはぎまでの丈があるぞ。ロウは短い丈のスカートが好きだと言ったではないか。お前も最近、随分と短いものしかはかないくせに」
イザベラは声をあげた。
実際のところ、ロウの女たちはみんなそうだ。
ロウを取り巻く女たちの中でスカートをはかないのは、コゼとかいう黒髪の小柄な女くらいだ。あのコゼはいつもズボンをはいている。
ほかは全員がスカートだ。
しかも、丈が短い。
例えば、エリカはいつも、太腿を剥き出しにした短いスカートしか身に着けないし、女物を身に着けているのを見たこともなかったシャングリアさえも、最近はエリカと競うような短いスカートだ。
ミランダでさえ、ちょっと前までは下品な革のスーツだったのに、いまは膝が出るスカートしかはいていない。
そもそも、目の前のシャーラもそうだ。
ロウの女になる前には、はっきりと膝下の侍女服だったくせに、だんだんと短くして、いまは膝が出ている。
考えてみれば、スクルズとベルズもそうだ。
巫女服はくるぶしまでの重厚で長いスカートだが、私服はエリカたちのような短い丈だ。
王都でも目立つ美女たちが揃って短いスカートをはくようになったので、最近では王都の社交界の女たちのあいだでも、短いスカートが流行しはじめているようだが、実際には、ただロウが自分の好みで女たちにそれを強要しているだけなのだ。
イザベラはもうそれを知っている。
「それで構わないでしょう。それにロウ様には、イザベラ姫様は、寝所からそのまま連れてくると伝えていますよ」
シャーラが困惑したように言った。
「わ、わかった。なら、これで行く……。だ、だが、もう一度教えてくれ。ロウとふたりきりになったら、どうすればいいのだ? 自分から服を脱ぐのか? それとも、待った方がいいのだろうか?」
「万事、ロウ様に委ねればいいと思います……」
シャーラは困ったように言った。
「ゆ、委ねればいいなどと適当な……。もしも、作法が気に入らなくて、ロウがわたしを抱かなかったらどうするのだ──。いい加減なことを言うな」
イザベラは声をあげた。
「抱かなかったらなどと……。そのようなことはありませんよ」
「し、しかし、この前は抱かなかったぞ。わたしを脅迫して裸にしたくせに、その目の前でお前を抱いたのだ」
「あ、あれは、事前にわたしが手を出さないように頼んだからです。ミランダ様だっていたし……」
「とにかく、ロウに嫌われたら困るのだ。あの男がどんなことを好むのか言うのだ。嗜虐好きだとか、鬼畜癖があるとか言われてもさっぱりとわからん」
ロウが女を抱くときには、女を縛ったり、苛めたりするというのは聞いた。
一応はシャーラやミランダがロウに抱かれるときに、どんなことをしたかも喋らせた。
そんな性交のやり方もあるのかと驚いたが、ロウがそれを好むならそれで構わないし、どんなことでもするつもりだ。
だが、ミランダとシャーラの話でいまひとつわからなかったのは、ロウの前でどのような態度をとればいいかだ。
ふたりとも、口を揃えて、ロウに委ねればいいというのは主張するのだが、よくよく話を聞けば、シャーラは泣き叫んで抵抗したというし、ミランダはただ逆らわなかっただけだという。
ならば、どうすればいいのだと訊ねたら、ふたりは、ロウは女が服従したくないのを無理矢理に服従させるのが好きだから、あまり従順すぎるのもよくないかもと首を傾げながら言うのだが、ならばあくまでも逆らえばいいのかと訊ねれば、とんでもないと、ふたり揃って否定する。
さっぱりとわからない。
「そうはいっても、わたしだって、わかりません。わたしも、ロウ様になにもかも委ねるだけです。とにかく、なにをされても本気で抵抗してはなりませんよ。戯れの範疇に留めてください」
「そういうのが一番わからんのだ」
イザベラは怒鳴った。
「わかりました……。では、一切のことについてロウ様に従ってください。そうすれば間違いないですから」
シャーラが嘆息しながら言った。
「従えばいいのだな」
「四つん這いになれと言われたらなるんです。床を舐めろと言われたら舐めてください」
「そ、そんなことをするのか──」
イザベラは驚愕したが、すぐに頷いた。
「……いや、わかった。床を舐めろといわれたら舐める。だが、事前に聞いておいてよかった。その場で言われれば、驚いたところだ……。間違って嫌がったかもしれん」
「嫌がっていいのですよ」
「なにを言うか──。本気で嫌がれば嫌われるであろう。わたしには、嫌がる素振りの演技などできん。とにかく、全部服従しろというのであれば、そっちが楽だ……。ほかに、どんなことをされると思う?」
「知りません。もう、出発していいですか?」
シャーラが嘆息した。
「ま、まだだ。ほかにどんなことをするかもしれないか言わんか。たとえば、ロウの性器は舐めた方がいいのだろう? むかし、エルザ姉様がタリオ公に嫁ぐとき、閨教育というのを一緒に受けたことがある。わたしはやらなかったが、姉君は木の模型で乳母にやり方を指導されておったぞ……。いや、考えてみれば、練習しておけばよかった。失敗した」
イザベラは悔やんだ。
第二王女のエルザが嫁ぐ前に受けた閨教育は随分前なので、そんなことは忘れていた。
王族の婚姻は、国と国との友好を築くための政略結婚だ。
嫁ぎ先の夫と仲良くすることは、国家として重要事であり、寝所におけるふるまいもきちんと教えられる。もしも、性の相性が合わずに、夫婦の仲が悪くなれば、それはそのまま国家と国家の対立にも繋がりかねないからだ。
当時、まだ十三歳だったイザベラは、そのときに閨教育は一緒に受けたものの、男根の模型を使用した実地教育まではやらなかった。
いまにして思えば、やっておいた方がよかったかもしれない。
イザベラには、エルザに教えた乳母役に当たる存在はいないし、その役割を持っているのはシャーラになるが、シャーラもイザベラとそんなに年齢が変わるわけではないので、イザベラに閨の作法を詳細に教えるほどの経験には乏しいと思う。
「ふぇらちおのやり方ですね。わたしもロウ様に習っていますけど、ロウ様がやらせたいと思えば、徹底的に調教してくれますから、問題ありません」
「ふぇ、ふぇらちお……というのか? ふぇらちおだな? ふぇらちおと言われたら口に咥えて舐めればいいのだな?」
「そんな簡単なものじゃありませんが、何度もいうようですけど、ロウ様に委ねればいいです。もう、本当に行きましょう」
シャーラがイザベラに近づいてがっしりと手を取った。
「ま、待て、まだ覚悟が……」
「覚悟なさいませ」
シャーラの言葉が終わると同時に、はらわたがよじれるような感覚がイザベラを襲った。
一瞬景色が消え、すぐに見知らぬ屋敷の部屋が周りに出現した。
到着したのは、椅子と卓があり、彫刻や絵画も飾られる立派な応接室だった。冒険者の家というので、もっと粗末な建物を予想していたので、調度品の上等さは少し意外だった。
待っていたのは、十歳くらいの年齢を思わせるメイド服を身に着けた童女だ。
だが、なんとなく醸し出す気に違和感がある。
「お待ちしておりました、姫様。ご主人様に仕える屋敷妖精のシルキーです。よろしくお願いいたします」
シルキーと名乗った童女がにこにこしながら頭をさげた。
屋敷妖精については知識としては知っているが、眼にするのは初めてだ。魔力の高い魔道遣いのみに仕えて、屋敷の世話をしてくれる妖精族のはずだ。
それがここにいるということに驚いた。
「屋敷妖精がここにいるということは、この建物の主人は魔道遣いなのか?」
イザベラはシャーラに振り向いた。
「わたしも当初は戸惑いましたが、ロウ様のしもべに間違いないようです。わたしは何度もここに通っておりますので確かです」
「だが、ロウは魔道遣いではないであろう」
「そうですが、それはロウ様が愛人にした女の能力を向上させるという不思議な現象に関係があるのかもしれません……」
シャーラが小声で応じた。
「シャーラ様は広間の方にどうぞ。コゼさんたち三人がお待ちかねです。姫様については、旦那様がお待ちです。まずは、隣の部屋でお仕度をなさってください。さらに先の部屋で旦那様は待っておられます」
シルキーが微笑みながら言った。
「……それでは、姫様」
シャーラは背中側になる部屋の扉から出ていった。
「どうぞ、姫様」
シルキーが示したのは、シャーラが出ていったのとは逆の扉だ。
そこに入った。
さっきの応接室とは一転して、狭くてなにもない部屋だ。
ただ、真ん中に卓だけがあり、そこに革帯のようなものが乗っている。
「ここでお仕度をするようにという旦那様のご指示です。わたくしめがお手伝いいたします。失礼ですが、下着を脱がさせていただきます」
シルキーがイザベラを卓の前に促し、すっとイザベラの足元にしゃがみ込んだ。
当惑するいとまもなく両手を下から入れられて、下着を足首までおろされた。
「ちょ、ちょっと……」
声をあげたときには、すでにイザベラの足首から下着が抜かれてしまっていた。
シルキーはイザベラから脱がせた下着を卓の上に置き、そこにあった革帯を手に取った。
「これを下着の代わりに嵌めていただきます。少し脚をお開きになってください」
シルキーが足の前で革帯を手にしながら言った。
「ま、待て、それはなんだ?」
イザベラは声をあげた。
やっと、シルキーが手にしているのが貞操帯だと知ったのだ。
貞操帯は知識として知っている。股間に装着して鍵をつけることで、夫以外との性行為を防ぐためのものだ。
だが、これから性交をするというのに、性交を防ぐものを装着するということに戸惑いを感じた。
もしかしたら、ロウはイザベラを抱くつもりはないのだろうか……。
ちょっと不安がよぎる。
一方で、貞操帯の股間の内側にあたる部分にたくさんの丸い突起があり、それがねっとりと濡れているということにも気がついた。
「脚をお開きください、姫様」
シルキーはそれだけを言った。
「答えんか、屋敷妖精──。その貞操帯にはなにを塗っておる。そもそも、なぜ貞操帯をせねばならん。わたしはロウに抱かれにきたのだぞ。聞いておらんのか?」
「これは旦那様のご命令です。さあ、脚を……」
「うっ」
その直後、イザベラの両脚は勝手に肩幅ほどに開いて、全身が硬直したように動かなくなった。
屋敷妖精の魔道か……。
そう思ったが、かなりの魔力であり、所詮、下級魔道遣いにすぎないイザベラには、逆らえない。
シルキーは丈の長いイザベラの寝着の中に頭を突っ込むようにして、貞操帯の横帯の部分を腰の括れに締めつけた。
そして、今度は前側から縦帯を股に通して、後ろ側に回ってぐいと股間をそれで抉る。
なかなかの手慣れた手つきであり、あっという間だ。
「ううっ」
イザベラは思わず呻いた。
縦帯の内側にあった突起がイザベラの股間の敏感な場所を思い切り刺激したのだ。
「な、なんだ、これは……?」
イザベラは歯を噛みしめながら言った。
貞操帯の内側の突起はイザベラの肉芽といわず、女陰の入り口や外側、尻の穴までにしっかり当たっていて、しかも、イザベラが動くと突起が微妙に前後左右に動くようだ。
イザベラは顔をしかめた。
しかも、塗ってあった粘性のものは肌に染み入る感じで、それが股間に当たった直後から疼きのような得体の知れない感覚を込みあがらせてくる。
「さあ、どうぞ」
シルキーはイザベラの寝着の下から出てくると、何事もなかったかのように、次の部屋にイザベラを促した。
「あっ、ま、待て……」
歩くと、強い刺激が股から走る。
しかし、シルキーはどんどん進んで、さっと扉を開いた。
仕方なく、イザベラは貞操帯の淫らな悪戯に耐えながら、次の部屋に入った。
シルキーは次の部屋には入らない。
イザベラが中に入ると、背中側で扉が閉められた。
「おお……」
しかし、イザベラは部屋の光景に思わず声をあげた。
そこは大きな部屋ではなかったが、まるで王宮の舞踏会場を思わせる広間が再現されていた。
天井には豪華そうな燭台もあり、また壁の調度品や美術品も見事だ。
さらに魔道で作ったと思われる七色の光が壁から放たれていて、それが優雅な雰囲気を作っている。
部屋の一画には、上等そうな葡萄酒やおいしそうな食事も準備されていた。
なによりも、驚いたのはそこにいるロウだ。
ロウはいつもの冒険者の姿ではなく、完璧な黒い社交装束を身に着けていた。
寝着一枚でやってきたイザベラが恥ずかしくなる正装だ。
イザベラは歯噛みした。
やっぱり着飾ってくればよかった。
いくら冒険者が相手といっても、寝着一枚で来るなど失礼すぎた。
「お待ちしておりましたよ、姫様。さあ、踊りませんか?」
待っていたロウがすっと手を差し伸べた。
「そ、そなた、踊れるのか?」
イザベラはびっくりした。
「練習したんですよ。さあ……」
ロウがイザベラの手を取る。
それが合図だったかのように、部屋の中に舞踏会の音楽が鳴り響き始めた。
イザベラは、ロウの腕の中に入り、まるで吸い込まれるような気持ちになった。
ロウがステップを踏み始める。
イザベラはロウに合わせてダンスを踊り始めた。
「あっ」
イザベラは股間で沸き起こった大きな異変に思わず声をあげた。
股間に装着している貞操帯の突起がいよいよ本格的な効力を発揮しはじめたのだ。
イザベラには、やっとこの貞操帯の役割がわかった。
ロウが大股でステップを踏むたびに、股間を苛んでいる突起が前後左右に淫らに動いて、イザベラに妖しい疼きを与える。
しかも、おそらく股間に塗っていた粘性のものは媚薬だろう。
貞操帯の内側の股間から、かっと身体を火照らせるような熱い刺激が全身に拡がり、身体の芯からイザベラを溶かしてしまいそうだ。
「くっ、ロ、ロウ……、こ、これは……」
イザベラはあっという間に、ダンスを踊っている部屋の中央で脚をうまく動かせなくなってしまった。
だが、しっかりとイザベラの腰を掴んでいるロウが、ダンスをやめることを許さない。
「どうしたんです、姫様? あなたを愉しませようと、一生懸命にやったことのないダンスを練習したんですよ。俺のダンスはどうですか?」
イザベラを抱いているロウが華麗な身体捌きをしながら、右に左にとイザベラの身体を動かす。
ロウのダンスの腕前は一介の冒険者とは思えないほどに、見事に精錬されたものだった。
もしも、ロウが本当に以前にはダンスをやったことがないとすれば驚くべきことであり、短い期間で相当の練習をしたということはわかる。
それがイザベラを悦ばせるためだというのが嘘でないなら、心の底から感動するが、いまはそれどころではない。
股間を刺激する貞操帯がイザベラを追い詰め、じわっと得体の知れない感触がイザベラを覆っていく。
貞操帯の内側では信じられないくらいの蜜が溢れていると思う。
しかも、すでに両方の乳首が勃起していて、寝着の布で擦れるのだ。
そこからも疼きが走る。
ついに、イザベラは本当に一歩も動けなくなり、ダンスを中断して、部屋の中央で完全にロウに抱きついてしまった。
「どうです。いい気持ちでしょう?」
「は、はい……」
思わず、そう返事をしていた。
しかし、イザベラは、ロウに対して反射的に丁寧な言葉を使ったことに内心でびっくりした。
そのことにより、イザベラはなぜか羞恥を覚えた。
しかし、イザベラはすでに、目の前のロウに圧倒されている自分を感じていた。
こんな感情は、誰にも抱いたことはなかったものだ。
だが、イザベラは、いま、なんの爵位もない、それどころかどこで生まれたのかもわからないような移民の冒険者に、なぜか惹かれ始めている。
それがわかった。
考えてみると、こんなロウに対して、こんな気持ちを抱くようになったのは、おそらく、あの夜にロウが小離宮に侵入してきたときからだろう。
イザベラの我儘なクエストを逆手に取り、シャーラを利用してイザベラを脅迫して裸にし、恥ずかしいことを強要した。
あのとき、イザベラは口惜しいという感情よりも、ロウという男に完全に圧倒されてしまった自分を感じていた。
結局、ロウはイザベラの身体を視姦しただけで帰ってしまったが、ほっとしたような、それでいて逆に残念だったようなそのときの不思議な感情がいまでも忘れられない。
「俺に嘘を言わないと誓ってください。そうすれば、俺は姫様の絶対の味方になります。ところで、毒を飲んだそうですね。可哀想に……。俺が姫様の味方になれば、二度とそんな目には遭わせません」
「わ、わかった。う、嘘は言わん。誓う」
イザベラはそう応じた。
いま、イザベラはしっかりとロウの両腕に抱かれていた。ロウはイザベラの背中と腰をイザベラの自慢の髪ごとしっかりと掴み、自分の身体にイザベラを密着させている。
イザベラはロウの胸に顔を当てるようにしていた。
「だったら、俺の女になりたいというのは本当ですか? この国の王女様ともあろうものが、ただの冒険者の俺の女のひとりに?」
「そ、そうだ。わたしには味方が必要なのだ。さもないと、わたしは、多分、殺されてしまうだろう。そうならないために、わたしは信頼のできる家人が必要だ」
「俺を家人として取り込むために、俺の女になると……?」
ロウは笑っているようだ。
なにか愉快なことを言っただろうか?
とにかく、嘘は言わないと誓った以上、打算や駆け引きはするつもりはない。
「お前の女になる……。わ、わたしはまだ生娘だ。わたしもいつかは、どこかの国に政略結婚で嫁ぐか、あるいは、この国の有力貴族を婿にもらうのだろうと思う。しかし、いまはまだ誰にも汚されてはおらん。わたしが誰かの妻になるまではお前の女になる。その代わりに、わたしを守ってくれ……。た、頼む……」
イザベラは正直な気持ちを言った。
「さあ、どうでしょうか……。俺は独占欲が強くてね。自分の女にした者たちが、他人のものになるのは我慢ならないのですよ。生涯、俺以外と交わってはならないとまでは言いませんが、俺の女になるなら、期限付きではなく、生涯の女になって欲しいですね」
ロウが言った。
イザベラは驚いた。
「そ、それはできん……。わたしの結婚は、わたしの意思でどうにでもなるものではないのだ。ある意味ではわたしは奴隷と同じだ。意に添おうと、添うまいと、国王である父上の示す者と婚姻をしなければならん」
「だけど、あなたの父上である国王陛下は、王妃のほかに、何人もの側室もいるし、愛人もいる。実際のところ、妻である王妃殿下とは、いまではまったく夫婦の契りはないのではないですか? 俺はあなたの正式の夫になることを要求しているわけではないですよ。ただ、俺の女になるのであれば、ほかの男のものにはなって欲しくないのです。少なくとも心だけは……」
「だ、だが……」
イザベラは当惑した。
初めての男として、ロウを迎えることは問題はない。
しかし、生涯にわたって、ロウとだけなど不可能だ。
それは王女として許されないであろう。
いずれにしても、ロウが王家の内情について、きわどいことを承知しているということにも驚いた。
だが、そういえば、ミランダが、キシダインをはじめとした王族に、ひそかに冒険者を忍ばせて内情を探らせていると言っていた。それは、キシダインとの政争を余儀なくされているイザベラを守るためでもあるのだが、ロウはミランダから、それによって得られた情報に接しているのだろう。
すると、ロウがくすくすと笑った。
「なるほど、姫様は正直ですね。それに思ったとおり、素直な女性だ。俺の失礼な提案に怒りはしなかった。それどころか真面目に検討してくれている。ありがとうございます」
「怒る?」
イザベラは驚いた。
「だって、普通は怒るでしょう。一介の冒険者にすぎない男が、ハロンドールの王女であるあなたに、生涯の女になれと要求したんですから。むしろ、関係を持つことさえ、おこがましいことなのに」
イザベラはロウの胸に当てていた顔をあげた。
ロウは優しそうに微笑んでいた。
なぜか、そのことでイザベラは、胸が締め付けられるような痛みを感じた。
そのことにもちょっとびっくりした。
自分はどうしたのだろう。
こんなに気後れする感情は初めてだ。
「いいでしょう。俺はあなたを俺の女にします。だけど、俺の性癖のことは知っているでしょう? 俺は姫様を調教しますよ。俺の好みにね。そして、服従させます。俺は俺の女たちに、絶対に受け入れられないようなことを無理矢理に受け入れさせることが好きなんです。姫様にもしっかりとそうします」
「お、おう……。わかっている。なんでも命じていい。わたしは服従する。好きなようにしていいぞ。床も舐めるし、ふぇ、ふぇらちお……だったかな……。それもするぞ」
イザベラは元気に言った。
ロウは一瞬面食らったような表情になったが、すぐに声をあげて笑った。
イザベラはきょとんとした。
「面白い姫様ですね。ならば覚悟してください。俺はしっかりと姫様を調教して、俺のいうことに心が逆らえないようにしてしまいますからね。そして、絶対に受け入れられないようなことも、受け入れてしまうようにします」
「わ、わかった。その代わり、わたしを守ってくれ」
「いいんですか、そんなことを言って……? つまりは、俺は姫様が俺以外の男のものにならないということを受け入れさせてしまうということですよ……。姫様を調教してね……」
「だ、だが、それは、さっきも言ったが……」
イザベラは困ってしまった。
王族というのは好きとか嫌いとか、そういうことで婚姻をしないのだ。
国家の力を強くするため、あるいは王家の権威を高めるために伴侶を選ぶ。
それは男でも女でも同じだ。
「……あなたが王になればいい。そうすれば、結婚しないもするも、姫様の自由だ。……というのも、俺はある事情で、ある権力者から逃げ回らなければいけない境遇でしてね。でも、逃げ回るという選択の代わりに、俺自身がしっかりと権力に守られる存在になるという選択もあることに気がついたんです。俺の女であるあなたが王になる。そうすれば、あいつは俺たちにもう手が出せない……。まさか、国と国との戦をしかけてまで、俺に仕返しをしようとはしないと思いますしね」
「ある事情?」
イザベラは首を傾げた。
「それはいいでしょう。そのうち説明します。それよりも、王になってくださいよ。とりあえず、王太女にね。あなたの置かれている状況のことはミランダやシャーラから十分に聞きました。いまや、かなり、俺は王族同士のことを承知していますよ……。とにかく、あなたは、キシダインとかいう貴族に匹敵するような力を握っていることをお忘れなく」
ロウが言った。
「キシダインに匹敵する力?」
イザベラは眉をひそめた。
そんなものはない。
キシダインはこのハロンドール王国きっての古い家柄の一族のひとりだ。ハロンドール王家を凌ぐとは言わないが、イザベラはいまはただの第三王女にすぎない。そんなイザベラよりは、キシダインは大きな権力を持っている。
「冒険者ギルドですよ──。あなたはギルド長です。それを忘れてはいけません」
ロウは言った。
「ギルド?」
冒険者ギルドがなんだというのだ。
確かにイザベラはギルド長だが、それは歴代のギルド長に王族が就くという続いている習わしによるものだ。だが、それは名目的なもので、実際にギルドを動かしているのは副ギルド長のミランダだ。
「……まあいいでしょう。ところで、最初に俺が姫様に会いに小離宮に行ったときのことを覚えていますか?」
「お、覚えている……」
イザベラは答えた。
「自慰のことを訊ねましたね。どのくらいするのかと……。本当はどのくらいするんです? さあ、正直に答えると誓ったことを忘れないで」
「なっ」
思わず絶句した。
恥ずかしいという感情に包まれる。
イザベラは身体を固くした。
「さあ、正直に──」
すると、ロウが強い口調で、また言う。
なんで、そんなことを口にしなければならないのか……。
不本意だという感情がこみあがる。
だが、確かに、正直になんでも言うと誓った。
誓いは守らなければならない……。
「……み、三日に一度くらいだ……」
イザベラは言った。
それにより、かっと顔が赤くなるのがわかった。
「嘘を言ってはいけませんよ、姫様。姫様がとても感じやすい敏感ないやらしい身体をしていることはわかっているんです。その姫様が三日に一度の自慰で我慢できるわけがない」
ロウがからかうように言った。
「ほ、本当だ。そのくらいだ……。ただ……」
「ただ、なんです?」
「さ、最近は毎晩……しているかもしれない……」
消え入るような声で言った。
恥ずかしい……。
いまだに部屋の中では音楽が鳴り響いている。
この瞬間においては、イザベラが貞操帯のほかには薄着一枚の寝着姿であるのに対して、ロウは貴公子然としたしっかりとした格好だ。
そのことも、羞恥に追い打ちをかけている気がする。
「ズリネタはなんです?」
「ずりねた?」
意味がわからなかった。
イザベラはきょとんとしてしまった。
「なにを考えながら、自慰をしているんです?」
ロウが言った。
イザベラは今度こそ、全身がかっと熱くなった。
しかし、嘘を言わないという約束だ……。
「お、お前だ……。毎晩、お前のことを考えている……」
仕方なく、イザベラは言った。
あのとき、ロウに強要されて裸になり、股間を拡げさせられた。
イザベラは、あの夜以来、そのときのことを思いだすと、どうしようもなく股間が疼いてしまって仕方がなくなるようになっていた。
そのことを心に蘇らせてしまったイザベラは、身体を赤くしてロウの胸の中で身体を小さくした。
ロウはイザベラの返事に、ちょっとびっくりしたような仕草をした。
だが、すぐに嬉しそうに笑ったのがわかった。
「可愛い姫様ですね」
ロウが腰に回している手に力を込めてぐっと抱き締めた。
一方で背中に回していた手を離して、イザベラの顎に指をかけて顔を仰向かせる。
「んんっ」
イザベラは身悶えた。
ロウがイザベラの口に唇を当てたのだ。
すぐにイザベラの口の中にロウの舌が差し入れられた。
「んふうっ」
なんだこれは……?
イザベラは当惑した。
生れて初めての本格的な口吸いは、イザベラが想像もしていなかったような強烈なものだった。
ロウに口の中を蹂躙されて、すぐに力が抜けるような感覚が走り抜ける。
それだけでなく、頭がぼんやりとして朦朧としてしまう。
気持ちがいい……。
口の中を刺激されて、こんなにも気持ちいいというのが不思議だが、ぞわぞわという感触がイザベラの全身に拡がっていく。
それにつれて、身体に震えが走り、膝ががくがくと揺れた。
「んふううっ」
次の瞬間、イザベラはロウの顔から口を離して悲鳴を迸らせていた。
貞操帯の内側の突起が突然に激しく振動を始め出したのだ。
「うあっ、ああっ」
ロウに抱かれている身体がのけぞった。
衝撃に身体が棒立ちになる。
「さあ、踊りましょう」
すると、ロウがイザベラの身体を抱いて、再び踊り始めた。
イザベラは悲鳴をあげた。