【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
とりあえず、一郎たちは、急いで褐色エルフの里に向かうことになった。
進んだのは、整備された道ではなく、裏道というべき荒れた小路だ。
一郎の考えであり、まともに進むと里を横切ることになり、ユイナの姿を見られて、それが里長のダルカン一派に知られる可能性があるからだ。
ユイナの言葉がすべて正しいと仮定すれば、ダルカンという悪い里長は、ユイナがダルカンが雇った男たちによって処分されたと考えていると思う。
だが、連中は、処置が終われば、当然ダルカンに報告に向かうことになっていたと思うから、時間が経てば、報告がないことで、ユイナの処分に失敗したことを悟るであろう。もちろん、そのユイナが里に戻ってくれば、その時点で失敗に気がつくはずだ。
そうなれば、なんらかの新たな動きに出てしまう。
それよりも、こっちが先手を打つべきだ。
なにしろ、相手は正式な里長だ。
下手をすれば、こっちが動きを起こす前に捕らわれて終わってしまう。
だが、荷を担いで道なき道を進むのは、思ったよりも大変だった。
ルルドの森を出立してからいままでは、大部分の荷はエリカが持ってくれていた。
とても残念なことに、一郎とエリカでは鍛え方が違うようであり、細い身体のエリカに、力でも健脚でも一郎はまるでかなわないのだ。
だから、道中については、重いものはずっとエリカが持ち、一郎が担いでいたのは本当に身の回りのものだけだったのだ。
だが、一応は従者ということになっている一郎が殆ど手ぶらで、「主人」のエリカが重いものを担ぐのでは恰好がつかない。だから、エルフの里に向かうあいだ、一郎は、自分たちの荷のほかに殺した連中から奪った物も一緒に背負っていたのだが、同じように荷を持っているエルフ少女のエリカとユイナの脚にまったくついていけずに、ついつい遅れがちになった。
大汗をかいて遅れて歩いてくる一郎に、ユイナはずっと軽蔑の視線を向けていた。
エリカは、何度も心配そうに振り返り、一郎の荷を自分が担ぐべきかどうか迷っている気配だったが、一郎もそこは踏ん張って、なんとか背負った荷を持ったまま、目的の場所に辿り着くことができた。
トーラスというユイナの祖父である元里長の暮らしている家は、里のほかの集落とは外れた場所にあった。
里長時代は、当然に里の中心部で暮らしていたらしいが、事件以来、ここでひっそりと暮らしているようだ。
うっそうと茂った林があり、そこに隠れるように、小さな平屋の家がある。
「ひっそりとしているわ……。人の気配がない……。ここで待っていてください。あたし、中を見てきます」
ユイナが不安そうに建物の入り口の前で言った。
「ロウ様……?」
エリカがユイナに感づかれないように、一郎にそっと身を寄せてきた。
一郎には魔眼という能力がある。周囲に誰かがいれば、それを事前に察知できるのだ。エリカが声をかけてきたのは、ユイナが向かおうとしている家の中がどういう状況なのかを一郎に教えてもらいたかったのだろう。
怪しい者が待ち伏せでもしていれば、ユイナを行かせるわけにはいかないからだ。
一郎は首を横に振った。
「……誰もいない……。この家の中は空だ……」
小声で答えた。
魔眼の力によって、家の中には誰もいないということがわかっている。
トーラスという元里長についても、イライジャというエリカの昔馴染みについてもだ。
一郎は、危惧していたことが当たってしまったということに嘆息した。
ユイナは家の中にひとりで入っていった。
そのとき、魔眼に新たに引っ掛かったものがあった。
「……いや、誰かいる──。家の裏の林だ……。こっちに……。家に向かっている……」
一郎の言葉に、エリカが緊張した面持ちで、荷をおろして弓矢を担いだ。
だが、一郎はそれを慌てて制した。
“メイ
エルフ族、女
年齢:10歳
ジョブ
戦士(レベル1)
魔術遣い(レベル2)
生命力:10
攻撃力:18
魔道力:20
経験人数:なし”
魔眼に感じたステータスはそれだ。
「待て、エリカ……。ほんの子供だ。女の子のようだ。危険はない……」
危険がないというのは、その女の子の攻撃力などを見ればわかる。それにしても、一郎はこの世界にやってきて、やっと自分の戦闘力に劣る他人を見つけてほっとした気分だ。
もっとも、それは十歳の女の子だったが……。
一方で、ユイナはなかなか戻って来なかった。
ただ、危険はないだろうという一郎の言葉に、エリカも安心しているようだ。一郎としても、なにかがあればわかる。一郎の魔眼には、家の中にいるユイナのステータスがしっかりと映っていて、特に状態に変化がないことをずっと確認している。
「……ところで、エリカ、“必撃の剣”というのはなんだ?」
一郎は、運んできた三人の男から奪った装備をまとめた荷から手練れの持っていた剣を手に取った。
一郎の魔眼では、対象となる相手の装備しているものが「攻撃力」の数値とともにわかるのだ。
あのとき、手練れの持っていた装備として、単に「剣」ではなく、「必撃の剣」と記されていたのを覚えていた。そもそも、あの手練れの「戦士レベル」は“5”だった。それに比べれば、エリカの戦士レベルは“20”だ。それにも関わらず、戦闘力そのものは、あの手練れはエリカが得意の弓を装備したときに匹敵する“600”だった。
一郎に見える戦闘力は、相手が武器を装備したことにより増加したり、あるいは、拘束などで身動きできないことにより減少したりする。
身体に備わった戦闘力ではなく、装備などを含めた実際の戦闘力が指標としてわかるのだ。
あんなにジョブレベルが違うのに、戦闘力で上回られるというのは、余程の武器だったのではないかと考えていたのだ。
もっとも、あの手練れは、エリカの弓の前になすすべなく呆気なく死んだが……。
「必撃の剣……? これのことですか……?」
エリカは一郎に渡された剣を何気ない様子で握った。
だが、すぐに顔色を変えた。
「まあ──。こ、これは、魔剣です」
エリカは驚きの声をあげた。
「魔剣?」
一郎は首をかしげた。
「魔力で強化されたなんらかの魔道の道具のことを“魔道具”と呼びますが、この剣は、高い魔力が込められた魔道具の剣です。つまりは、魔剣に間違いありません。驚きました。これは大変貴重なものですよ、ロウ様」
「やっぱりな……」
一郎は頷いた。
そうでないかと思ったのだ。
「どんな効果があるんだろう?」
「さあ、それはさすがに使ってみないことには……。で、でも、どんな効果があるかもわからずに遣うことは危険でもあります。魔力の込められた武器には、単に能力向上につながるものだけじゃなく、能力低下、ときには命を奪うような“呪い”のこもったようなものもあるんです」
「そういうものじゃないと思うな……」
一郎は剣を受け取りながら言った。
もしも、呪いのたぐいで能力低下のような影響があれば、それは一郎にも、魔眼でわかったはずだ。しかし、あの手練れの場合は単に戦闘力が向上しただけだった。
試しに、ただ持つだけじゃなく、鞘を腰のベルトに挟んで装備してみた。
「おお……」
その瞬間、一郎は思わず声をあげてしまった。
“ロウ(田中一郎)
人間(外界人)、男
年齢35歳
ジョブ
淫魔師(レベル60)
戦士(レベル1)
生命力:20
攻撃力:120(必撃の剣)
魔道力:0
経験人数:女3
支配女
エリカ
特殊能力
淫魔力
魔眼
ユグドラの癒し”
剣を装備すると思った瞬間、魔眼で観察できる一郎自身のステータスにおける「戦闘力」が跳ねあがったのだ。
それでも、普通の武器を持ったエリカにもかないようもないが、通常の剣を持ったところで、戦闘力が“20”台だった一郎にとっては、格段の進化だ。その証拠に、身体から力が漲る感覚が不意に襲っていた。
一郎は剣を抜いた。
軽い──。
剣の持ち方など知らないはずなのに自然に構えることもできる。
これは大したものだ……。
一郎は少し感動している。
「マジックアイテムということか……」
一郎は呟いた。
「まじっく……なんですか……?」
エリカは訝しむ声をあげた。“マジックアイテム”という言葉は、この世界にはないようだ。
「なんでもない……。とにかく、これはすごいな……。ちょっと、試してみるか。離れてくれ……」
一郎はそばにあった低木に向かって剣を構えた。
「だ、大丈夫ですか……? どこか、おかしなところはないんですか? 本当に……?」
エリカが心配そうな声を出す。
「心配ない」
一郎はエリカに距離をとらせると、その立ち木の幹に向かって剣を振りおろした。
自分でも信じられないくらいの斬撃が飛んだ。
気がつくと、その立ち木は幹の部分で真っ二つになって、上の部分が地面に落ちた。
「す、すごいです、ロウ様」
エリカが目を丸くして拍手した。
だが、一郎は急に剣の重さを感じてしまい、構えを解いて剣をおろした。
“ロウ(田中一郎)
攻撃力:21(剣)”
「あれ?」
声をあげてしまった。
戦闘力が落ちている。
もしかして、一撃だけ?
これで終わり?
そんな──。
とりあえず、一度剣を鞘にしまった。
すると、また、力が漲る感覚が戻った。
“ロウ(田中一郎)
攻撃力:120(必擊の剣)”
また、戦闘力があがっている。
つまり、この必撃の剣は、いわゆる一太刀限定らしい。
「ふうん……。だいたいの仕組みはわかったな……。とりあえずは遣える……」
一郎は頷いた。
そのとき、家の中からユイナが戻ってきた。女の子を連れている。これはさっき、魔眼で感じたメイという子だろう。
ユイナは深刻な表情をしている。
「エリカさん、あなたの懸念が当たりました……。お祖父さんとイライジャ姉さんは、さらわれてしまったようです……。この子はメイといいます。この家で住み込みで働いている小間使いです。さあ、この方になにを見たのか、もう一度言って、メイ……」
懸念を告げたのは、エリカではなく一郎なのだがと思ったが黙っていた。
メイの肌は褐色ではなく、エリカと同じように白い肌だ。目鼻立ちがはっきりとした可愛い娘であり、将来は美女になりそうな感じだ。もっとも、基本的にエルフ族は美貌で有名であり、誰も彼も美しいらしいが……。
いずれにしても、いかにも利発そうな顔だと一郎は思った。
「ガルシアという方の指揮で、三十人ばかりの人が来ました。ユイナ様が出立してしばらくしてからのことです」
メイははっきりと言った。
「ガルシアというのは、里長のダルカンの腹心の部下のひとりです。あたしたちは、ダルカンとともに、そのガルシアも殺すつもりでした」
ユイナが横から言った。
メイがさらに説明を続ける。
それによれば、突然に踏み込んできた彼らは、家にいたトーラスとイライジャを魔術と剣で取り囲み、強引に連れていったということだった。そのとき、家にいたのは、ほかにはメイだけであり、メイは咄嗟に隠れたらしい。そのメイによれば、ふたりを拉致したガルシアたちは、さらに、この家にあったたくさんの書類を運んでいったようだ。
「エ、エリカさん、どうしたらよいのでしょう──。お祖父さんとイライジャ姉さんが捕縛されたようです──。どうしたら──」
ユイナが泣きそうな声で言った。
「落ち着いて……。とりあえず……」
エリカがそう言いながら、ちらりと一郎に助けを求める視線を送った。
一方で一郎は、思ったよりも、相手が思い切った手を打ってきたことに驚いていたが、それでも冷静に自分の頭がまわっているのを感じていた。
「……まずは、どこに連れていかれたかです。それを突きとめることです」
一郎は口を挟んだ。
ユイナが不機嫌そうな顔でなにかを喋ろうとしたが、それよりも先にメイが口を開いた。
「それは、わたし、わかります──。隠れて聞いてたんです。旦那様とイライジャ様は、里の北にあるダルカン様の別宅に連れていくと連中が言ってました。わたし、しっかり聞いてたんです。この耳で──。それはもう、絶対に確かです──」
メイが一生懸命に言った。
「ダルカンの北の別宅──? なんで、そんなところに──? 捕縛して連行するのであれば、里の中心にある罪人用の塔の牢だと思うけど……」
ユイナは疑念の声をあげた。
しかし、一郎は大きく頷いた。
「いや、やっぱり、そうなんでしょう──。連中は、まだ正式にトーラス様とイライジャ様を捕縛したわけじゃないのですよ──。それよりも、その前にすることがあるのです。連中の狙いはわかりました。いずれにしても、一刻を争う事態であることは確かですけどね……」
一郎は言った。
*
「と、とっとと殺しなさい──。その代わり、七代まで生き返って、お前らに復讐するからね──。どいつも、こいつも、しっかりと顔を覚えたわよ──」
イライジャは喚き声をあげた。
眼の前にいるのは、ガルシアというダルカンの部下であり、さらに五人ほどの者がいる。そのうちのひとりは女であり、しかも、エルフ族ではなく人間族だ。
人間族の女はもちろん、ガルシア以外の者は里の者ではないようだ。イライジャには連中の顔に見覚えがない。
また、ここがどこなのかもイライジャにはわからなかった。
とにかく、突然に家を襲った数十人の男たちによってさらわれ、目隠しをされたうえに薬のようなものを嗅がされて意識を失わせられて、荷物のようにここまで運ばれてきたのだ。
一緒に、義父のトーラスもさらわれたことまではわかっているが、そのトーラスがどうしているかはわからない。
とにかく、気がついたら、なにもかも脱がされて素っ裸にされ、天井から縄で両腕を吊られて、こうやって床に立たされていたのだ。しかも、足首を棒の両端に拘束され、股を閉じることができないようにさせられている。
杖は取りあげられているし、拘束されている縄とともに、手首に嵌められている金具は、イライジャが理力を集めるのを防ぐ魔道具のようだ。
魔道は完全に封じられていた。
「さすがは、死んだトードが色狂いになったという美人の嫁だぜ。いい身体してやがる……。どれ、ちょっと味見でもするか」
ガルシアがイライジャへ相好を崩して近寄ってきた。
「く、来るんじゃない──。舌を噛むよ──。噛むからね──」
イライジャは絶叫した。
だが、それをたしなめるように、人間族の女がガルシアを制した。
「遊ぶのは、やることをやってからさ。この告白状に自白を刻ませてからだよ。やることやったら、あとは好きなように愉しんだらいいさ」
人間の女が言った。
「ちっ──。じゃあ、さっさと始めるか──。イライジャ、とにかく、そこにある告白状に向かって、“それは真実です”と喋るんだ。それだけでいい──」
ガルシアが言った。
イライジャは示された告白状に眼をやった。
それは、罪人の供述などに使われる魔道のかけられた羊毛紙であり、これに向かって、“真実です”と言えば、それが羊毛紙に刻まれて、確かに供述をしたという証拠になるというものだ。
だが、目の前の告白状には、まだ、なにも書かれていなかった。
つまりは、この連中はなにも書かれていない告白状に、自白の証拠を先に刻めと言っているのだ。そんなことをすれば、後から好きなことを書き込んで、イライジャが、それを告白したということになる。
そんなことができるわけがない──。
「ふ、ふざけるんじゃないよ。それは白紙だろう──。そもそも、わたしをなんでさらったんだい──。これは正式な調べなのかい──? わたしは、なにかの罪で捕えられたのかい──?」
すると、人間の女がイライジャに近づいてきて、いきなり髪を掴んで、イライジャの顔を強引に自分に向けた。
「そんなことはお前が気にする必要はないんだよ。とにかく、あの理力のこもった羊毛紙に向かって、たったひと言──“真実です”──と口にするだけさ。ほかにはなにも考えるんじゃない──。それから、言っておくけど、舌を噛んで死のうとなんてするんじゃないよ。そんなことをすれば、あのじじいを拷問にかけるからね──。あたしはどっちでもいいんだけど、この連中がいたぶるんなら、若い女エルフがいいというからそうするんだ。お前が死んだら、じじいを拷問する。あんなくたばり損ないなんて、すぐに拷問で死にそうだけどね」
人間の女はイライジャの髪を離し、ガルシアたちをイライジャの周りから離れさせると、横の台から小さな壺を手に取った。
その中に指を突っ込み、粘性の油剤のようなものを指にのせている。
そして、いきなり、それをイライジャの股間に塗り始めた。
「い、いやあ──。な、なにするのよ───。や、やめるんだよ───。ちょ、ちょっとなにを塗ってんのよ──?」
女は開脚されて閉じることのできないイライジャの股間に無遠慮にその薬剤を塗り込んでくる。
「ふん──。なにを塗られたかすぐにわかるよ……。とにかく、お前がその白紙の告白状に、供述をしたという自白を刻みたくなる薬ということさ。告白したら、あとは好きなように遊んでもらいな」
女は嘲笑った。
そのあいだにも、その女は余すところなく、イライジャの股に薬剤を塗り込めてくる。
しかも、股間の亀裂の内側だけでなく、肉芽の内側や菊座の中にまで塗りこみ続ける。イライジャは身動きのできない身体をのたうたせて、抗いの声をあげた。
そんなイライジャの様子をガルシアたちが興奮した様子で見続けていた。
そのことが、イライジャを血が凍るような恥辱に誘う。
「こんなもんだろうね……。まあ、ちょっと様子を見ようか……。抵抗できるようなら、さらに塗り足すけど、一ノスももたないんじゃないかね」
女が笑いながらやっとイライジャから離れた。
しかし、そのときには、なにを塗られたのか、イライジャにははっきりわかっていた。
言語を絶するような苦しみが股間から襲いかかっている。
「痒い──」
イライジャはあまりの痒さに歯を噛み鳴らしながら悲鳴をあげた。
「ああ、痒いだろうねえ──。このヴォロノサ特製の拷問油だからね。発狂するような痒みが襲い続けるよ。我慢できなくなったら、さっさと自白書に言葉を刻むんだ──。どうせ、我慢できるわけがないんだから、さっさとしな」
ヴォロノサと名乗った人間族の女が酷薄な声をあげた。
だが、イライジャは、それどころではなかった。
とにかく、骨まで突きあげるような痒みが襲い続け、イライジャは狂ったように身体を揺さぶり続けた。