【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
ハロンドール王国の宮殿は「太陽宮」と呼ばれていて、王都の中央にあり東西南北のそれぞれの大門から入ることができる。その中で北大門がいわゆる「正門」になり、北大門の正面にあるのが、国王の居城にして行政府の機能を持つ「
正殿には、議員資格を持つ上級貴族の集まる議会を始めとする様々な行政施設も隣接されていて、いずれも美しい彫刻の施された円柱が建物を取り囲む壮麗にして豪華な造りである。無論、その中でも、正殿の美しさと荘厳さが群を抜いているのは言うまでもない。
大陸一の大国のハロンドール王国を治める王の居城として、なるほど、相応しいたたずまいである。
正殿を横目でに見ながら、宮廷内に整備されている庭園の通路を歩きつつ、一郎は思った。
また、この正面からは見えないが、正殿の後方には、「後宮」があり、後宮は国王の性生活の空間だ。国王ルードルフは、実際には正殿よりも、後宮にいることが多いらしく、実際の治政の大半は、直裁ではなく、ほとんどは宰相を始めとする高級官吏が行っている。
さて、一郎たちが向かっているのは、最近になって正殿に隣接するように建てられた「副殿」であり、通称「王妃宮」だ。
王妃宮は、王妃アネルザの生活宮である
薄い青一色に塗られた二階建ての建物であり、背後の空と人口湖に溶け込むようであり、神々しいくらいに美しい。
また、芸術性のある壁面や四周の柱の飾りの豪華さは、正殿に負けず劣らない。
王妃宮には地下階もあり、そこでは、アネルザの飼う奴隷たちが集められている。だから、王妃宮の地下層を奴隷宮と呼んだりもされているようだ。
ハロンドール王ルードルフと王妃アネルザの夫婦としての関係が冷え切ったときに建設された宮殿らしいが、正殿と遜色のない荘厳さを示し、一見して、まるで二対の宮殿のようだ。
つまりは、王妃アネルザの権勢がそれだけ強いということである。
いま一郎は、ミランダの案内で、エリカたちとともに、王妃宮に向かい王宮内を歩いている。
一郎は素肌に革のチョッキと半ズボンをはいただけの姿であり、足はサンダル履きで、首にはしっかりと奴隷の首輪が嵌まっていた。
つまりは、今日の一郎は奴隷ということだ。
無論、首輪は「奴隷の首輪」を模した偽物であり、実際にはなんの魔道も刻まれていない偽物である。
同じような恰好で、一郎に続いてエリカが進んでいる。
エリカもまた、一郎と同様の商品としての「奴隷」ということになっていた。
連行するのは、シャングリアの変身している奴隷商の男であり、シャングリアは、冒険者ギルドから借りた変身の指輪を使って中年の奴隷商に扮していた。
コゼは変装をせずに、奴隷商の下女ということになっている。
今日の一郎たちは、アネルザに性奴隷を売りに来た奴隷商とその商品というわけだ。
奴隷役は一郎とエリカであり、奴隷商側はシャングリアとコゼである。
しかし、コゼはいいが、王軍騎士であるシャングリアは、すでに顔が割れている。だから、変身の魔道具でシャングリアとは似ても似つかぬ奴隷商の男ということにしている。
一行の最後尾には、シャングリアの扮する奴隷商をアネルザに紹介することになっているミランダがいる。
一郎の目的は、イザベラ王女の私設軍の創設に反対するアネルザを「説得」するためだ。
だが、そんな名目では、王妃のアネルザが会うことはまずないので、今日はミランダがアネルザの奴隷宮に納める奴隷を売りに来た奴隷商を紹介するという場を作った。
冒険者ギルドには、さまざまな依頼がやってくるが、全世界に組織が拡がっている冒険者ギルドには、この界隈には珍しい商品を購入したいという依頼もある。
「奴隷」もそのひとつであり、アネルザには蒐集品として価値のある奴隷の売り物があれば、紹介して欲しいと依頼が来ていたらしい。
それで一郎は、精力抜群の男奴隷として──。
エリカは、珍しい白エルフ娘の性奴隷として──。
それぞれ売られにやってきたというわけだ。
とにかく、一郎は同じ場を作るために、ギルドの宝物を献上する偽商人に扮しようと思ったのだが、それを諦める代わりに、ミランダが準備してくれたのが、奴隷を提供するクエストの活用だ。
なかなかにいいアイデアであり、最初から素直にミランダに相談すればよかったと思ったくらいだ。
「とにかく、あたしは王妃様の前には行けないと思うわ。王妃様に呼ばれるのは、奴隷商とその商品だけよ。あとはうまくやりなさい。だけど、あたしの顔を潰すようなことはしないでよね、ロウ」
「わかっているよ」
一郎はにこにこしながら答えた。
やがて、王妃宮に到着した。
前もって話が通じていたにも関わらず、通されたのは裏口からであり、待たされたのは、なにかの倉庫を思わせる殺風景な場所だった。
「王妃様は書見をされている。そこでしばらく待て」
若い兵がやってきてそう言った。
椅子ひとつあるわけではない。
その兵もすぐにいなくなる。
一郎たちは、そこで立ったまま、待たされた。
「……王妃の冒険者ギルドに対する感情がこれでわかるというものでしょう? 王妃は、基本的に冒険者は野蛮で粗暴な存在としか思っていないわ。そのくせ、ギルドの力は認めていて、気に入った奴隷を全世界から集めろというような依頼もするのよ」
ミランダが笑って言った。
「ところで、奴隷の恰好がとっても、お似合いよ、エリカ」
コゼがからかった。
一郎もそうだが、エリカは腰の上までの丈しかない両開きの革のチョッキを一本の止め紐で結んだだけの肌も露わな姿だ。乳房の半分以上ははみ出ていて、辛うじて乳首がチョッキに隠れるくらいだ。また、半ズボンをはいている一郎に対して、エリカは腿の付け根までしかない短い革のスカートである。
それが真っ白いエリカの肌を美しく惹き立てている。
とても、美しい女奴隷姿だが、エリカは羞恥責めでも受けているように、顔が真っ赤だ。
「う、うるさいわねえ。だいたい、なんであんたが奴隷商の下女の役で、わたしが奴隷なのよ」
エリカが不満そうにささやいた。
すると、ミランダが横で笑った。
「仕方ないでしょう。アネルザ様の気に入るような奴隷となると、人間族のコゼでは不十分よ。白エルフ女の奴隷なんて珍しいから、その出物があると伝言したら、すぐに謁見の許可がでたわ」
「それにしても、奴隷といっても、性奴隷という触れ込みだから、王妃は俺やエリカに性の相手をさせるつもりだろう? 王妃は男でも女でもいける口なのか?」
一郎はミランダに訊ねた。
「基本的には女好きと聞いているわね。王妃の奴隷宮に納められるのは、女奴隷ばかりよ。だから、王陛下はそれを許しているんだけどね。あんたは、女奴隷に種付けをする男奴隷として仕入れるつもりだと思うわ。もっとも、そういう触れ込みで、自分の相手をさせるのかもしれないけどね」
ミランダが悪戯っぽく笑った。
「誰か、来たぞ」
シャングリアが言った。
美しいシャングリアだが、今日は変身の指輪で腹の出た中年男姿だ。
口から出る声もそれに相応しいものだから、シャングリアだとわかっていても、なんだか変な感じだ。
「拝謁のお許しが出た。ただし、奴隷商と奴隷だけだ。副ギルド長は帰っていい。王妃殿下が連れてきた奴隷を気に入れば、仲介料としての金子は、後ほどギルド本部に届けられる」
さっきの若い兵が現われて言った。
「じゃあ、よろしく」
ミランダが声をかけたのは、奴隷商に変装しているシャングリアだ。ミランダはそのまま出ていった。
逆に一郎たちは、若い兵に連れられて建物の奥に歩いていった。
兵に連れられてやってきたのはやや広い部屋だ。
そこに四人の女衛兵に守られているアネルザがいた。
一郎は片膝でしゃがんで頭を下げたシャングリアの後ろでエリカとともに両脚を跪かせた。
コゼは一郎たちのさらに後ろで、ふたりの奴隷を見張る位置に座っている。
「顔をあげよ」
アネルザの声がした。
顔をあげる。
アネルザがそこにいた。
年齢は四十を超えているはずだが、なかなかの美貌だ。豊満であるが、その分とても、エロチックさを感じた。
中年太りのだらしのない女を予想していただけに、一郎は少し驚いた。
俄然、やる気が出てきた。
アネルザは椅子の横にある台から赤い果実を掴んで、むしゃむしゃと食べていたが、突然に、口の中のものを床に吐き捨てた。
「餌だ──。食え、エルフ女」
アネルザがにやにやしながら言った。
「なっ」
エリカが横でぶるりと震えるのがわかった。
横を見ると、エリカはあまりの怒りで蒼白になっている。
まずい……。
「……エリカ……」
一郎は慌てて声をかけた。
ほんの小さな声だ。
「……わ、わかってます……」
エリカから言葉が返ってきた。
そのエリカが腰を屈めたまま進み出る。
さっきアネルザが吐き出した物の前に跪く。
そして、大きく息を吐くと、諦めたように手を伸ばす。
「ひぎいいっ──」
しかし、次の瞬間、エリカが絶叫して、その場にひっくり返った。
驚いてアネルザを見ると、左手に魔道の杖が握られている。
どうやら、エリカに向かってアネルザが魔道で電撃を放ったようだ。
エリカは浴びせられる電撃にのたうち回り、短いスカートの中の白い下着が露わだ。
そして、やっとエリカの悲鳴がとまった。
電撃が終わったようだ。
エリカは荒々しく息をしながら、再び床に跪く体勢に戻った。
「誰が手を使っていいと申した。口で食わんか。躾のなっとらん奴隷だな」
アネルザの意地の悪い声がした。
「は、はい……」
エリカは言ったが、やはりなかなか顔を床に持っていこうとはしない。
さすがに、他人の咀嚼物を食べる気にはなれないようだ。
アネルザがにやにやしながら、再び杖をエリカに向ける仕草をした。
「何分にもまだ未調教のエルフ奴隷でございますから……。王妃様にはその方が、躾の愉しみがございましょう」
そのとき、奴隷商に扮しているシャングリアが口を挟んだ。
どうやら、エリカに向けているアネルザの意識をほかに向けようということのようだ。
アネルザの視線がエリカからシャングリアに移る。
それにしても、違和感のないシャングリアの商人らしい物言いに、一郎は少し驚いた。
こんな風に演技のできる女とは思わなかった。
まあ、お転婆騎士でも、元はしっかりとした貴族教育を受けた令嬢なので、やろうと思えばかしこまることもできるというわけか。
「確かにな。よかろう。このエルフ奴隷の値段を申せ」
「金貨五十枚でございます」
一般的な奴隷の値は金貨二枚くらいであり、大抵の奴隷でも十枚も出せば買えるはずだ。
五十枚というのはかなりの値だ。
「エルフ女の奴隷ともなれば、そのくらいは相当か。よかろう。買おう」
「ありがとうございます」
「……して、その男奴隷は? 精力抜群という触れ込みだったが、どのくらいのものなのだ? 種付け用として使えるようであれば、一緒に贖ってもいいが?」
「説明よりもお見せしましょう。ロウ──」
手筈に従い、シャングリアが一郎に声をかけた。
「はい、ご主人様」
一郎はそう言うと、すっと立ちあがった。
両手で革のズボンを膝までさげる。
「ほう」
アネルザがちょっと感嘆したような声をあげた。
一郎の股間の一物が、隆々と大きく勃起したからだ。
「なるほど、自在に勃起できるのか」
アネルザの視線は真っ直ぐに一郎の股間に向いている。
「まだまだでございます、殿下……。王妃殿下に技を見せよ、ロウ」
「はい」
一郎は両手を身体の横で握って静かに目を閉じた。
頭の中でエリカやコゼやシャングリアの痴態を想像する。
しばらく、頭の中でエリカたちをいたぶり続ける。
気が充実する……。
込みあがる……。
そして……。
「うわっ」
アネルザが驚愕の声をあげた。
一郎の怒張から白濁液が飛び出し、離れた場所にいるアネルザの髪にものの見事にかかったからだ。
「こ、こいつ──」
「なにをする」
アネルザの両側の女兵が色めきだった。
なにしろ、男奴隷だと思われている一郎の精液がアネルザの髪にかかったのだ。怒るのは当然だ。
しかし、部屋にアネルザの笑い声が響いた。
「待て──。なるほど、これは大したものだ。一物に触れずに精を出すことができるというのは、精力抜群の猛者でもなかなかできんことのはずだ。いいだろう。買おう。同じく金貨五十枚だ」
アネルザの陽気な声がした。
どうやら、一郎の「ショー」が気に入ったらしい。
しかし、もちろん、このショーの目的は、男奴隷としてのパフォーマンスをアネルザに見せるためではない。
一郎はそっと、右手を胸の紋様に置いた。
次の瞬間、周囲の風景が一変した。
「な、なんだ?」
びっくりしているアネルザの声が響いた。
無理もない。
突然に、一郎の手により仮想空間に連れ込まれたのだ。
宮殿は立ち消え、周囲にいたはずの衛兵もいなくなっている。
狼狽えるのは当たり前だ。
さっき、一郎が股間から迸らせた精液が髪にかかった。
これにより、事前に待機をしてもらっていたサキに繋がり、サキの仮想空間に引き込む力がアネルザに及ぶようになったのだ。
「
仮想空間を支配する能力のあるサキだ。
アネルザを連れ込むことを事前に説明していて、仮想空間を準備してもらっていた。
頭に二本の角がある大柄の雌妖であり、一郎の性奴隷のひとりだ。
「よ、妖魔か──? な、なんだ、お前は──?」
アネルザが叫んだ。
さっきまで腰かけていたアネルザの椅子は消滅していて、アネルザはその場に立ちあがっている。事態の変化についていけずに、激しく動揺している様子だ。
しかも、たったいままで持っていた魔道の杖が消滅している。
そのことにも理解ができない感じだ。
「やれやれ、ロウ、もう変身はいいよね」
シャングリアが変身の指輪を外した。
中年男の姿が消滅して、いつものシャングリアの姿が出現する。
「こいつ、わたしに電撃なんて浴びせて……。なんの恨みもなかったけど、一度で嫌いになったわ」
エリカだ。
「でも、シャングリアの助け舟で、この王妃の咀嚼物を食べなくてすんだんだからいいじゃない」
コゼが陽気な声をあげた。
サキの仮想空間に引き込む能力により、一緒にエリカたちも連れてきている。
今日は一郎とともに、アネルザの調教に加わってもらうつもりだ。先日は一郎の気まぐれで、手酷い仕打ちをしてしまったので、ちょっとした罪滅ぼしの意味合いもある。
「うわっ──。な、なんじゃ?」
アネルザが叫んだ。
一郎によってアネルザの両足首には鎖のついた枷が嵌められ、それが空に向かってあがり始めたのだ。
アネルザの両足が上になり、頭が床にさがった。
慌てて、身体を支えようとしたアネルザの両腕を一郎は一瞬にして、枷で後手に拘束する。
「こ、これはどういうことだ? 放せ。放さんか──」
逆さ吊りになったアネルザの悲鳴が響き渡った。
*
「はあ、はあ、はあ……」
アネルザは逆さ吊りのまま、胸を大きく上下させて荒い息をしていた。
さんざんの悪態で声が枯れかけていたというのもあるが、アネルザを痛め続ける四人の暴漢者と一匹の雌妖の仕打ちに、心が折れかけているというのが正しい。
なにしろ、アネルザをここに誘拐した四人は、アネルザがなにかを叫ぶたびに、代わる代わるに電撃鞭を加えるのだ。
アネルザは、浴びせられる電撃の衝撃に、流石に怒りよりも恐怖が支配するとともに、すっかりと身体が疲労しきっていた。
いずれにしても、奴隷商と奴隷だと思っていた四人の男女は、どうやら、アネルザを誘拐するためにやってきた賊徒だったようだ。
どんな魔道を遣ったのか見当もつかないが、ここが宮殿のどの場所でもないことは確かだろう。
なにしろ、これだけ騒いでも衛兵が出てくることはないし、景色のない真っ白いここは、いままでに見たことのない場所だ。
四人の賊徒も、ここが連中にとって絶対的に安全な場所であることを確信している感じだ。
「はあ、はあ、はあ……。き、貴様ら……、な、なんの目的じゃ……? 身代金か……? それとも、わたしを人質にして、陛下と……なにかを……取引き……しようと……いうのか……? いずれにしても……無駄なことじゃ。わたしが……さらわれたところで、陛下は……いささかも困りは……せん」
アネルザは言った。
夫であり、王であるルードルフとの関係は冷え切っている。
アネルザが賊徒にさらわれたと知ったら、おそらく表向きは慌てた素振りをしても、実際にはアネルザを助けるために、なにひとつやろうとはしないだろう。
あの女狂いの男にとっては、アネルザがいなくなるということは、王妃の椅子が空席になって新しい女をそこに座らせる恰好の機会がやってきたという意味でしかない。
それを自分の手を汚さずにできるのだ。
あの男はアネルザがいなくなっても、喜ぶことはあっても、悲しみはしない。
そういう男だ。
「やっと、弱ってきたようだな、主殿。それにしても、やかましい女だ」
雌妖が、アネルザの胸を足で思い切り押した。
「ひいっ」
アネルザは悲鳴をあげた。
逆さ吊りの身体が大きく揺れたのだ。
アネルザの頭は周りの男女たちの足首ほどの高さだ。
身体を揺らされると、床に顔がぶつかるような気がして怖い。
しかし、両手は後手に拘束されていて、顔を守る方法はない。
アネルザは振り子のように身体が動いて、床に顔が接近するたびに、少女のような悲鳴をあげた。
結局、二度三度と髪が床を掃くようになっただけだったが、そのあいだアネルザは、口惜しくも金切り声をあげ続けた。
揺れが収まって、恐怖心が小さくなると、自分が暴漢者に弱味を見せてしまったことに羞恥が走る。
こんな賊徒たちに弱みを見せるのは、アネルザの王妃としての誇りが許さなかったが、なぜか魔道を遣うこともできないし、いつの間にか完全に拘束されてしまって、いまのアネルザにはどうすることもできない。
それにしても、ここはどこなのだろう?
見渡す限り、壁のようなものもないし、両脚を拡げて吊っている二本の鎖は、どう目を凝らしても先端が宙に浮いているようにしか見えない。
浮遊術のような気もするが、アネルザの感じる限り、魔道を刻むために魔力が動いている気配はない。
アネルザには、なんの前触れもなく、一瞬にして宮殿から全く別の場所に転送されたとしか思えなかった。
だが、宮廷という場所は、あらゆる魔道は制限されていて、許された者しか魔道は遣えないはずだ。この四人の暴漢者は、なんらかの方法で宮廷の魔道師隊の警備を出し抜いて、魔道でアネルザをどこかに転送したのだろうか。
「あんたには恨みはないし、目的を果たせば、ちゃんと五体満足で元の宮殿に返しますので安心してください、王妃殿下。ただ、ちょっとばかり調教をさせてもらおうと思いましてね」
周りから“ご主人様”とか“ロウ”とか呼ばれている男が言った。
「ちょ、調教?」
アネルザは思わず言った。
もちろん、その意味はわかる。
アネルザ自身が多くの奴隷女や奴隷男を抱えていて、調教という名の性的嗜虐をすることを日常にしていた。
だが、アネルザ自身が誰かの調教を受けるということなど信じられることではないし、そもそも、この男女は何者なのだろう。
短い革のチョッキと半ズボンに、首に奴隷の首輪をしているロウという名の男が本当は奴隷などではなく、ここにいる雌妖を含めた男女のリーダーであることは確かだろう。また、集まっているほかの女は全員がちょっとした美人であり、しかも、それなりの手練れのようだ。
こうやって面と向かってみるとわかる。
しかし、その正体は不明だ。
わかったのは名前だけだ。
ロウと同じように奴隷の恰好をしてきたエルフ女はエリカ──。
奴隷商の下女の恰好をしてきた小柄な黒髪の女はコゼ──。
そして、魔道具で男に変身をしていたのはシャングリア──。
また、雌妖の名はサキ──。
それにしても、シャングリアには顔に覚えがあるような気がするが……。
それで、はたと思いついた。
「あっ、お前、王軍騎士のシャングリアではないか──?」
叫んだ。
確か、王軍騎士団に所属しながら、惚れた男がいて、その男を追って冒険者になったとかいう変わり者の女騎士だ。
近くで顔を見るのは初めてだが、そういえば騎士団の謁見などで、ルードルフの横で眺めたことがあると思う。
それでなんとなく顔を知っている気がしたのだ。
騎士団の中では女兵は珍しい。
なによりもシャングリアはすっきりとした美女だ。
わかってしまえば、間違いようもない。
モーリア男爵家のお転婆姫こと、シャングリアだ。
「お初にお目にかかります、王妃殿下」
シャングリアがお道化たように片膝をついて臣下の礼をした。
「き、貴様、なんのつもりだ。わ、わたしを王妃と承知しての狼藉か──。承知せんぞ、シャングリア」
「申し訳ありません、殿下……。実のところ、わたしたちにも、よくわからないのですが、ロウがどうしても、こういう虐待が必要というので……」
シャングリアは悪びれた素振りもなく、すっと立ちあがると、持っている白い棒をアネルザの太腿に這わせた。
「や、やめよっ」
叫んだ。
さっきからロウを含めた四人は、代わる代わるこうやって持っている棒で逆さ吊りのアネルザに電撃を浴びせるのだ。
どうやら、連中の持っている棒は、先端から電撃を浴びせることのできる魔道具らしく、アネルザはもう何十発も四人から電撃鞭を四方から喰らっている。
「ぎゃああああ」
絶叫が周囲に響き渡る。
腿から全身に電撃の衝撃が襲い掛かった。
それにしても、なんという屈辱だろうか。
もしも、こんな風に逆さ吊りでなければ、まだこの恥辱感は小さくて済んだかもしれない。両脚を上にあげて吊られることでアネルザのスカートは完全にまくれあがり、股間の下着をこの暴漢者たちに晒し切っているのだ。
そして、剥き出しの脚に入れ替わり電撃鞭を浴びせられる。
こんな屈辱など、とてもじゃないが現実とは思えない。
「……お、お前たち冒険者だな……。わ、わたしにこうやって狼藉をするのも、なにかのクエストか……?」
電撃による身体の痺れが収まりかけたところで、アネルザはそう口にした。
シャングリアは冒険者になったのだ。
そのシャングリアがここにいるということは、ロウやエリカたちのもまた冒険者に違いない。
冒険者といえば、実力はあるが、金さえ払えば殺人でさえ、やってのける野蛮人の集団だ。
「冒険者であることはご名答です……。でも、これはクエストじゃないですよ、殿下。ところで、あまり、電撃鞭はお気に入りではないようですね。大して下着も濡れてない」
ロウがスカートが垂れ落ちて露になっている下着を見下ろしながら言った。
かっと怒りと屈辱で身体が熱くなる。
「あ、当たり前……、ひいっ」
罵ろうと思ったが、ロウがその股間にロウがぴったりと棒の先端を押しつけた。
アネルザは恐怖に竦みあがってしまった。
だが、予想していた電撃は襲ってこなかった。
「あまり、マゾの性癖はないようだ。でも、心配ないよ。しっかりと、マゾの快感を刻み込みますから。俺の与える嗜虐から離れられなくなるように」
ロウが棒の先端で、薄地の下着の上から陰核をくりくりと刺激してくる。
「うっ、くうっ、や、やめよ。き、気安く、さ、触るな──」
アネルザは声をあげた。
「あなたには屈服してもらいます。調教だと言ったでしょう。事前の調査によれば、王妃殿下は集めた性奴隷を性調教するのが、なによりの愉しみだそうですね。だから、わざわざ奴隷の恰好をしてきたんです。どうです。奴隷だと思っていた男にこうやっていたぶられるというのは? この屈辱が堪らない快感に変わりますからね。そうしたら、たっぷりと子宮に精を注いでさしあげます」
ロウが言った。
「ううっ」
アネルザは身体をぶるりと震わせて呻いた。
ロウの持つ棒の先が突然に小刻みな振動を始めたのだ。
「な、なんの……つ、つもりだ……。ううっ、くうっ……」
アネルザは歯を食い縛った。
何気ない振動なのに、信じられないような愉悦が迸った。
ロウの持つ棒の先端は、確実にアネルザの敏感な肉芽に布越しに振動を当ててくる。
だが、それだけではない。
ロウは時折、無造作に棒の先を股間のあちこちに動かすのだが、それが激しい快感を引き起こす。
どうやら、一転して今度は色責めに切り替えたようだ。
「うくっ……あっ、な、なにを……する……のだ……?」
アネルザは懸命に腰を捻って、棒の振動を避けようとした。しかし、ロウは棒をぴったりとアネルザの感じる場所に押し当てたまま逃がさない。たまらず腰を振って跳ね除けようとしても、ただ別の感じる場所に移動するだけで、かえって翻弄されるだけだ。
アネルザはあっという間に官能のうねりに追い詰められていく。
「なにって、調教ですよ。調教──。ところで、奴隷の王妃殿下は勝手に達しては駄目ですよ。勝手に達した場合は、いま棒が当たっている場所に電撃を浴びせますからね。なんとしても耐えてください」
「なっ──」
アネルザはびっくりした。
いま、棒が当たっているのは、布越しとはいえアネルザの陰核そのものだ。
そんなところに、電撃を浴びせられるなど信じられない。
「な、なにを言っているのか……。く、くうっ──。そ、そんなこと──こ、この王妃である……あっ、ああ」
「ほら、ほら、文句を言っている暇はありませんよ。達したら、このクリトリスに電撃ですからね。それが嫌なら耐えるんです」
ロウが笑いながら言った。
しかし、どんどん気持ちよさが膨れあがる……。
駄目だ……。
もう、達しそうだ……。
だが、こんな冒険者風情に、哀れにも絶頂の許しを乞うなど……。
「それにしても、相変わらず鬼畜だのう、主殿……。しかし、この年増を支配するのであれば、さっさと犯して精を放ってしまえばいいのではないか?」
そのとき、ずっと後ろで見ていただけのサキという雌妖が声をかけた。
「いや、サキ──。精の力で支配するのは簡単だが、これまでの経験によれば、精を放っても、先に屈服させてからでないと、なかなか支配を継続させるのは難しくてね。心に反して無理に強い支配をすると、どうしても心に破綻をきたしてしまう傾向があるようなんだ。だから、わざわざ、こんな手間暇かけてるのさ」
ロウが言った。
そのあいだにもアネルザはどんどんと追い詰められている。
身体を駆け巡っている絶頂感が逆さ吊りの身体を打ち震わせる。
「そうなんですか?」
「へえ」
エリカとシャングリアが、ロウの言葉を聞いて声をあげた。
このふたりは、アネルザを責めることに躊躇もないが、積極的に嗜虐するということもない。ただ、ロウの指示に従って、電撃鞭を浴びせてくるだけだ。
「そうですかあ? ただ、そっちの方が愉しいから、そうしているだけじゃないんですか、ご主人様?」
コゼだ。
そのコゼがロウと同じようにアネルザの無防備な股間に棒先を這わせてくる。
しかも、下着の横から棒先を内側に入れようとしてくる。
アネルザはまたもや悲鳴をあげてしまった。
「くっ、くううっ──」
そして、ついに限界がやってきた。
アネルザは噴きあがる快感の爆発を予感し、ロウが求めている屈辱の言葉を発することに決めた。
股間そのものに電撃を浴びせられるよりもましだ。
いまは、この男が求める屈服をくれてやる。
だが、あくまでも、いまだけだ。
「わ、わかった──。い、いかせてくれ──。も、もういくっ」
アネルザは叫んだ。
しかし、ロウは口から嘲笑を発した。
「駄目だ──。そのまま、我慢しろ。奴隷の調教だと言ったでしょう。簡単に絶頂の許可はもらえませんよ」
ロウがけらけらと笑う。
呆気にとられた。
エリカとシャングリアが背後で息を吐くのがわかった。
だが、もう限界は超えている。
我慢するなど不可能だ。
「んふううっ、あはああっ」
アネルザはついに振動に負けて、快感を大きく飛翔させた。
逆さになった身体をぶるぶると震わせて身体を弓なりにする。
「うぎゃあああ」
その瞬間、凄まじい衝撃が股間で起こった。
ロウが容赦なく電撃を股間に与えたようだ。
頭が一瞬白くなった。
気がつくと、生温かいものが股間から顔に向かって流れ落ちてくる。
自分が失禁をしたということを悟るのに、少しの時間が必要だった。
「これはこれは、おもらしですか。仕方ないですねえ。手枷を外してあげましょう。だから、小便まみれになった服を脱ぐんです。それができたら、逆さ吊りから解放してあげますよ」
「えっ?」
「二度は言わんよ。調教だしね──。お前たち、王妃様が服を脱ぐまで、電撃を交互に浴びせろ」
ロウの言葉が終わると同時に、背中で拘束されていた腕が自由になった。
しかし、その代わりに、ロウにすっかりと言いなりの女たちが電撃鞭を加え始める。
電撃責めの再開だ。
「ぎゃあああ──や、やめよ──な、なにをするか──。あぎゃあああ──」
アネルザはとっさのことで頭が回らなかった。
だが、数発でやっと、服を自分で脱げと命じられたということがわかった。
しかし、こんな卑劣な冒険者たちの前で、自ら脱衣などできないというのは確かだ。
そんなことは王妃の誇りが許さない。
だが、凄まじい電撃鞭の一発一発の激痛が、耐えられないはずの一線をアネルザに超えさせる。
再び始まった電撃鞭が十を超えたとき、アネルザは悲鳴とともに声をあげた。
「脱ぐよ──。脱ぐ──。脱げばいいんであろう──。だ、だから、やめよ──あぎゃああ──」
「脱ぎ終わったら、やめてあげますよ、王妃様。だから、さっさと脱ぐんです」
ロウが言った。
そして、電撃が加わる。
「もうしわけありません、王妃殿下……。ロウの命令なので」
「まあ、いいんじゃない。結局のところ、ご主人様は王妃様を女として満足させるんだろうし、これは儀式みたいなものよ」
「儀式ねえ……」
シャングリア、コゼ、エリカだ。
この女たちも同情するような口調でありながら、電撃だけはロウと同じようにアネルザに襲いかからせる。
しかも、この四人はアネルザが脱衣をしようとする行為を邪魔するように、二の腕や肘や手首に電撃を加えてくるのだ。
それも、ロウの指示だ。
「や、やめよ──。き、汚いぞ──うぐううっ──」
「これが調教というやつでしてね」
そして、ロウが悪びれる様子もなく電撃を浴びせかけてくる。
横からも後ろからも、女たちの持つ電撃鞭が襲う。
逃げようもない。
アネルザは絶叫し、懸命に服を破りながら、逆さ吊りのまま身体を大きくのたうたせた。
「やっと、乳房が出ましたね。ほら、次はその小便まみれの下着を引き千切るんですよ」
ロウが腰にあげようとしたアネルザの手に電撃を加えてきた。
「面白いのう。この年増の慌てぶり。どれ、そろそろ、わしも参加してよいか、主殿?」
すると、見学していた雌妖がけらけらと笑いながら言った。
「もちろんだ、サキ。泣き叫ばさせてくれ」
ロウが鬼畜に笑った。