【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
140 ふたりの刺客
血の匂いがした。
ボニーは嫌な予感がして、山を登る街道を進む道を速めた。
すぐに剣で斬られた男の死骸があった。
しかも、肘と膝から先の四肢が切断されて、口と鼻に土が埋めてある。
男の死因は身体を斬られたことによるものではなく、息を塞がれた窒息によるもののようだ。男の顔には苦しみそのものの表情が残っている。
また、そばには馬車があり、商売物の荷が積んであった。
漁った形跡はあるが、そんなには荒らされてはいない。
ボニーは嘆息した。
誰の仕業なのか、すぐにわかったからだ。
「クライドめ……」
ボニーは恨めしさとともに、その男の名を呼んだ。
だから、あの男と一緒に仕事などしたくはなかったのだ。
だが、パリスの命令だから仕方がない。
ボニーの意思に関わらず、パリスに命令を受ければ、それがどんなに気に食わない内容であろうとも、「命令」を実行せずにはいられないのだ。
なにしろ、ボニーは、今回の一件について、すべてパリスというアスカの従者に従うように「命令」を受けている。
ボニーは、溜息とともに自分の首に装着されている「奴隷の首輪」に触れた。
このわけのわからない世界に召喚され、奴隷の首輪を受け入れてしまったときから、ボニーはあのアスカの奴隷だ。
どんなことでも逆らえない。
いかなる命令でも従わずにはいられない。
それでも、召喚の影響によってボニーに備わった特殊能力が貴重なものだったことにより、ボニーはほかの召喚奴隷よりは、ましな生活をすることができるし、大切な扱いを受けることができたと思う。
そうでなければ、アスカの客人をもてなすためだけの接待用の女娼婦扱いされても、それを受け入れるしかなかったかもしれない……。
いや、それはいまでも同じか……。
あの気まぐれなアスカは、いつだってボニーを大勢の男家来の慰み者にすることもできる。
ちょっとでも気に入らないことがあれば、あのアスカは、容赦なくボニーを死んだ方がましなくらいの惨めな扱いに変更するだろう。
なにしろ、この奴隷の首輪がある限り、ボニーはアスカのどんな理不尽な命令にも従うしかないのだ。
それにしても、今回のことは、なんとなく腑に落ちない。
あのアスカは、どうして、今回の任務に限り、直接に指示をすることなく、パリスとかいう少年従者を通して、ボニーとクライドに「始末」を命じたのだろう。
まあ、気まぐれ魔女のやることなど、理屈もなにもないのはわかっているが……。
ボニーとクライドは、この異世界に召喚されたことによって得た特殊技能を生かした、アスカの裏工作専門の刺客である。
今回、ボニーたちが命じられたのは、少し前にアスカから逃亡したイチという外界人の男と、そのイチを誘惑して逃亡したエルスラというエルフ娘を「処置」することだ。
男については、可能ならば生かして連れ帰るが、面倒ならば殺してもいいと指示を受けている。エルスラについては、基本的には殺害だ。
なぜ、そうなのかは知らない。
知る必要もないし、「命令」に逆らえないボニーは、言われたことに従うしかない。
ただ、今回の任務は、アスカから直接命じられたのではなく、「パリスの指示に従え」という言葉で、奴隷の首輪に命令を刻まれた。
イチとエルスラの始末は、アスカではなく、パリスから与えられたのだ。
いずれにしても、目の前のことだ。
任務を果たすために、イチとエルスラがいると教えられているハロンドールの国境を越えたところで、クライドがまた厄介事を起こしたのだ。
ボニーは、人里に入ると、必ず騒動を起こしてしまうクライドに、林の中に隠れているように「命令」して、ひとりで山を下りて食料を調達しに行っていた。
どうやら、そのあいだに、この騒動を起こしたようだ。
ボニーはとりあえず、調達してきた食料の入った荷を地面に置いた。
そして、面白半分で殺したような死骸から離れて、道の横の林に入る。
林の中に喧噪の痕が続いていたからだ。
最初の死体からすぐの場所にふたりの男の死骸があった。
どちらも、やはり悪戯半分で斬り刻んだような死骸だ。
近くに武器のようなものはないので、抵抗はしなかったのだろう。
致命傷のようなものはないが、十数箇所の傷がある。おそらく、苦しみながら死んだに違いない。
近くの村で食料を手に入れるためにボニーが、クライドにこの林の中で待つように命令したのは、三時間ほど前だと思う。この異世界の時間では、三ノス半というところだ。
死骸の状況から、彼らが死んでから二時間はすぎていると思う。
つまり、ボニーがクライドをここに置いてすぐに、この山街道をさっきの馬車が通りかかったのだ。
それで、クライドが面白半分で襲い掛かって、商人の一行を殺した……。
まあ、そんなところに違いない。
そのとき、さらに奥側から呻き声がした。
それに混じって笑い声もする。
笑い声はクライドだ。
呻き声は……。
女のもの……?
しかも、おそらく年端もいかない……。
頭に血が昇った。
ボニーは髪に刺した髪飾りを抜いていた。
殺しのときには、ボニーは大きな武器は遣わない。
ただ、この髪飾りの金属の尖った先端で首の横か眉間を刺すだけだ。
それで人は呆気なく即死する。
それがボニーのやり方だ。
声のする方向に向かって進む。
「ク、クライド──」
ボニーは目の前に現れた光景に、思わず声をあげた。
クライドは、草の上に十歳くらいの女の子を裸にして強姦をしていた。
女の子の股間からは破瓜の血だけでなく、おそらく小さな膣に無理矢理に大人の男の性器を突っ込まれたことによる裂き傷による血が出ている。
女の子は、すでに生気を失って虚ろな目をしている。
そんな童女をクライドは愉快そうに犯していた。
しかも、ボニーを激昂させたのは、そばにあったもうひとつの死骸だ。
上半身が裸の女の死体だ──。
いや、死んではいない。
ただ腹を剣で大きく破られていて、死に瀕している。
かすかに上下している胸が女に息があることを示していた。
だが、声を出す力も残っていないようだ。
いま、犯している童女の母親だろう。
クライドの仕業だと思うが、クライドはこの女を腹を裂いて致命傷を与えながらも、苦しませるためにとどめを刺さなかったのだ。
あるいは、娘が犯されているのを見せるために、致命傷を与えながらとどめを刺さなかったのか……。
そのために、女は七転八倒したのだと思う。
地面に拡がる血と、女の身体全体についている大量の土がそれを表している。
ボニーは、とりあえず女に駆け寄り、首の横の急所に髪飾りの芯を刺した。
女の身体からすっと最期の力が消滅する。
「おっ、ボニーか──。わざわざ、近くの村に食料を調達しに行ってくれたが不要だったぞ。たまたま旅の商人の荷馬車が通りかかってな。襲って奪っておいた。そこに置いてある」
クライドがボニーを一瞥して、顎で横を指した。
確かに、そこには食料の包みのようなものがある。
「クライド、その子から離れるのよ。あたしの命令に従いなさい──」
ボニーは、いまだに童女の股間に怒張を貫かせているクライドの首に針の先を置く。
この場所に芯を突き刺せば、一瞬で誰でも死に至る。
そういう急所だ。
さすがに、クライドの動作が静止する。
いずれにしても、クライドはボニーの「命令」に逆らえない。
クライドは、そういう「命令」も受けているのだ。
だが、なんとなく様子がおかしい気がした。
ボニーは、クライドの首に髪飾りの芯を突きつけながら、首を傾げた。
「……俺とお前は、面と向かってやり合ったことはなかったな、ボニー。だが、俺の綽名くらいは知ってんだろう。俺がなんと呼ばれているか言ってみな」
「……不死身のクライド……」
仕方なく口にした。
普通なら、首に当てている尖った金属の芯に力を入れれば、誰であろうとも死ぬ。
だが、ボニーもクライドも、突然に元の世界からアスカに召喚されて、召喚奴隷にされた外界人だ。外界人には、なぜかほかの人間にはない特殊能力を帯びて、この異世界に召喚されるのが通常だ。
ボニーには、視線の合った相手を従わせることのできる「魅了」の能力──。
そして、クライドは、絶対に死なないという「不死身の能力」をもって、この世界に出現したということだった──。
だが、いくら特殊能力者といっても、死なない能力などあり得ないとボニーは思う。
おそらく、それは噂が作り上げた誇張だろう……。
「そういうことだ……」
クライドが言った。
そして、いきなりだった。
クライドがボニーが後ろに当てている首を思い切り、後ろに反らせたのだ。
「きゃあああっ」
ボニーは思わず悲鳴をあげた。
クライドに当てていた芯は見事に首に突き刺さっていた。
「痒いぜ」
クライドが立ちあがった。
「ひっ」
ボニーはクライドの身体に弾き飛ばされて、地面に尻もちをついた。
顔に危険な笑みを浮かべたクライドが迫ってくる。
たったいままで童女を犯していた股間には、なにもはいておらず、童女の破瓜の印が赤くついている。
「とまりなさい──。命令よ、クライド」
ボニーは叫んだ。
ボニーとクライドには、アスカによってパリスの命令に従うように「命令」が刻まれているのと同様に、クライドにはボニーの「命令」には逆らわないように、奴隷の首輪により命令が与えられている。
それは、ボニーが将校待遇のアスカの奴隷であるのに対して、粗野で品のないクライドが一般兵待遇の奴隷であるからだ。
だから、クライドは、結局のところボニーには逆らえない。
しかし、次の瞬間、凄まじい衝撃がボニーの腹に加わった。
一瞬、視界が消える。
クライドに腹を蹴られたのだとわかったのは、二発目の蹴りを腹に加えられたときだ。
「えほっ、があっ、がっ」
ボニーは地面に倒れてしまい、身体をうずくまらせて動けなくなった。
すでに抵抗の気持ちは失われている。
だが、心の底には、「なぜ」という言葉が繰り返されている。
「奴隷の首輪」は絶対だ。
ボニー自身がアスカに逆らえないことでそれは証明されている。
そして、クライド自身の首にも、ボニーと同じ奴隷の首輪がある。
ボニーは、アスカにより、クライドとともに今回の任務に関してパリスに従うように「命令」を刻まれたとき、クライドには、さらにボニーの命令にも従うように、アスカが命令したのを目の前で見ていた。
だから、こんな野蛮人とふたりきりで旅をすることを危険なことと思わずに、やって来たのだ。
「俺が命令に従わないのが不思議か、ボニー?」
髪の毛を掴まれた。
「い、痛い──いたあっ、痛いってばあ──」
無理矢理に立たされる。
平手が頬に叩き込まれる。
「あうっ」
その圧力と衝撃で後ろの樹木に後頭部と背中を叩きつけられた。
「んぐううっ」
拳が再び腹を抉った。
身体が前のめりに倒れるところを、ボニーの首を掴んだクライドに樹木に押さえつけられて、倒れるのを防がれる。
「あがっ」
なにかが首に食い込んだ。
縄だ──。
いつの間にか縄を手にしたクライドに首に縄をかけられて、樹木の幹に結ばれる。
両手で縄を外そうとした。
しかし、結び目は後ろだ。
届かない。
手に持っていた髪飾りの芯はどこかに弾き飛ばされている。
「手は後ろだ、ボニー。自分で樹の後ろに回せ。ちょっとでも手を離せば、容赦なく殴るぜ」
目の前に立っているクライドが、その言葉が嘘でないことを証明するように、ボニーの顔を平手でまた叩く。
身体の大きさなら、元の世界では若い東洋人の女にすぎないボニーは、白人男性であるクライドに比べて、二廻りも小さい。
その力で殴られるのは、ボニーにとっては、まるで丸太で殴られるような衝撃だ。
「……と、とまれ……。め、命令……よ……」
最後の力を振り絞るようにして、ボニーは言った。
命令が耳に入らないわけがない。
ボニーは、この危険人物のクライドが耳栓のようなものをすることを禁止していた。
ほかにも考えられる限りの予防策は取っている。
奴隷の首輪によってクライドはボニーの命令に逆らえないはずだ……。
さっきのはなにかの間違い……。
そうに違いない。
「せっかくの綺麗な顔をしているんだ。顔の形が変わる前に俺の『命令』に従った方がいいんじゃねえか、ボニー。今度は拳で殴るぜ」
クライドがしっかりと握りしめた拳をぐいと引いた。
「ひいっ」
慌ててボニーは両手を樹木の後ろに回す。
「おう、やっと、どっちが本当は、どっちが上で、どっちが下かわかったようだな。お前なんか、ちょっとばかり、魅了の操り術が遣えるだけのただの小娘だ。いままでは、面倒だから命令が効いているふりをしていただけだ。もともと、俺にはなんの術もかからねえ。アスカの命令も、パリスの命令も、俺には意味はねえ。あいつらは知らねえがな」
クラウドが高笑いした。
ポニーは呆気にとられた。
「そ、そんな、隷属の命令が……効かないの?」
「まあ、だけど、イチという男はともかく、エルスラとかいうエルフ娘は、なかなかの美人だったのを覚えている。そのエルフ女を好きにしていいという仕事は面白そうだった。それに、だから、受けた。そろそろ、アスカ城も飽きたしな。とんずらするにはいい機会だ」
「そ、そんな、馬鹿な……」
ボニーがこの異世界に召喚されたのは一年以上前だが、クライドはまだ半年ほど前だろう。
それまで、ずっとクライドは、アスカの命令には逆らわなかった。
それは、アスカの嵌めた奴隷の首輪のためだろうと思っていたが、クライドは、実は奴隷の首輪など効いておらず、それはそう見せていた演技だというようなことを言っている。
しかし、そんなことは、にわかには信じられない。
だが、なんらかの方法で、首輪を出し抜く方法をクライドが見つけたのは、確かなんだろう。
そうでなければ、クライドがボニーに従わないわけがない……。
「俺にはどんな魔道も魔道具も効かねえんだ。それが、この世界で身に着けた本当の俺の特殊技能だ。あのアスカは、それに気がつかなかっただけさ。信じられないなら、俺に、魅了の術をかけろ。やってみな。視線と視線を合わせて、相手の意思を失わせて、身体を操るんだろう? ほれ、やれ」
クライドがボニーの顔のすぐ前に顔を持って来た。
その余裕に冷たいものが背に流れるのを感じたが、本当に術が効果がないとすれば、ボニーにはクライドに逆らう手段が消滅することになる。
術なしであれば、非力なボニーが大男のクライドにかなうわけがない。
しかし……。
「魅了──」
ボニーは叫んだ。
術をかける。
いや……。
しかし、術が入っていかない。
まるで、クライドなどそこにいないかのように、魔力が素通りする。
これは異常だ。
やっと、ボニーはクライドが言ったことが真実であるということを悟った。
「……わかったようだな。俺は不死身のクライド。だが、それは、本当は刃物で俺を傷つけられないことを示すわけだけじゃねえ。あらゆる魔道も俺には効果がない。魔道の首輪であろうとな──。しかし、それがばれると、連中が対応策を打つと思ったから、アスカには黙っていたんだ──」
「じゃ、じゃあ、いままでずっと……」
「まあいい……。おしゃべりは終わりだ。イチとかいう逃亡男は俺が殺しておいてやる。エルスラは犯す。だが、お前とはここでお別れだ。とにかく、アスカのところの生活は、俺は満更でもなかった。命令に従って、他人をぶち殺しさえすれば、いい暮らしをさせてくれて、うまいものも食えるし、酒も飲めるしな……。そして、女も犯せる……」
クライドがボニーのズボンを手を触れた。
しかも、ベルトを外して、下にさげようとする。
「な、なにすんのよ」
思わず声をあげて、手で阻止しようとした。
「うぐうっ」
だが、ものすごい力で左の頬を叩かれる。
身体が倒れかけて、縄が首に食い込む。
苦しさに姿勢を起こそうとすると、右の頬をはたかれた。
ボニーは急いで両手を樹木の後ろに戻す。
「おう、やっと、俺の命令を思い出したか──」
大笑いしながら、クライドがボニーの下半身からズボンを下着ごと足首までさげる。
ボニーは歯噛みした。
だが、暴力に対する恐怖心がボニーの抵抗力を奪っている。
「じゃあ、手を離していい。少し待ってやるから、手で擦って股を濡らせ。さもないと、乾いた股間に俺のマラを突っ込まれることになるぞ。まあ、それもレイプしている雰囲気がしていいかもしれねえがな。いや、やらないなら、これを突っ込むか。実は俺はお前のような年増は、好みじゃねえ。俺が好みなのは、まだ汚れを知らねえ、子供だけだ」
クライドがボニーから離れるように距離をあけて仁王立ちになって、げらげらと笑った。
変態が……。
ポニーは心からの嫌悪感を抱いたが、クラウドが地面から折れた太い枝を手に取ったのを見て蒼くなった。
「くっ」
ボニーは絶句してしまった。
だが、やるしかない。
ポニーは惨めさを堪えて、自分の股間の愛撫を始めた。
それを見て、クライドがげらげらと笑いだした。
「んっ、んんっ……」
ボニーは惨めな自慰を続けながら、あまりの恥辱につっと涙が出してしまった。
犯されるのがわかっていて、自分で股間を濡らさなければならないのだ。
こんなに惨めなことはない。
ただ、こんな状況でも、感じる場所を刺激すれば、どうしても身体が熱くなるし、甘い鼻息も出てしまう。
それが情けなかった。
しかし、クライドに対して特殊能力の効果がないとわかれば、ボニーは絶対にクライドにはかなわない。
特殊能力がなければ、ボニーはただの非力な女でしかない。
身体の大きさも違うし、しかも、クライドは根っからの悪党だ。この旅のあいだに身の上話をしたときにも、クラウドは元の世界で何度も服役したことがある無法者だと言っていた。
召喚されたときに装着された首輪の力により、仕方なく「刺客」をしているボニーとは違う。
しかも、「首輪の命令」によって与えられていたはずの、ボニーのクライドに対する「指揮権」が無効とあっては、ボニーにはもうどう抵抗していいかわからない。
「へへ、惨めな顔をするんじゃねえよ。アスカに将校待遇を与えられたからといって、上司面しやがってよ。所詮、俺から見れば、お前なんて、ただの小娘だ。ほら、口を開けろ。キスしてやるよ」
童女を犯していた股間を丸出しにしているクライドが分厚い唇を突き出して迫ってきた。
しかも、すでに勃起している肉棒をボニーの股間に押しつけてくる。
「い、いやっ」
反射的に顔を背けた。
すると、平手が頬に飛んで来た。
叩かれるのがわかっていても、首に縄をかけられて樹木の幹に固定されているので、避けることもできない。
「ひぐうっ」
顔面がよじれたかと思うような衝撃が加わる。
「た、叩かないで……」
「だったら、自慰をやめるな。手がとまったら折檻だ」
ボニーはまだ痺れている顔をクライドに向けて口を開けた。
クライドの臭い息とともに、舌が口の中に差し入れられる。
「んんっ」
強烈な嫌悪感が口腔に拡がる。
しかし、口いっぱいに相手の舌が差し入れられても、どうすることもできない。
また、あまりのおぞましさに全身を緊張させていたボニーであるが、しつこく舌や口の中を舐めまわされているあいだに、だんだんと身体が脱力してしまうのを感じた。
たっぷりと口の中を蹂躙される。
そのあいだも、ボニーは惨めな自慰を続けている。
ボニーの手が止まったら、殴ると言われているのでやるしかない。
やがて、クライドの顔がボニーから離れる。
おぞましい時間が終わった。
「もう自慰はいい。両手を樹の後ろに回せ」
ボニーは言われたとおりにした。
すると、クライドがボニーの背後に回って、両手を樹木から離せないように別の縄で縛ってしまう。
「どれ、じゃあ、別れの挨拶代わりに、一発抜いていってやるぜ」
前側に戻ってきたクライドが指先に唾をつけて、ボニーの剥き出しの股間に指を伸ばした。
クライドの指が女陰の周囲をなぞりながら少しずつ中心に近づく。
「うっ、くうっ、ふうっ」
不快な指がボニーの股間を刺激する。
おぞましいが、腰を動かしたり、股を閉じて指の愛撫を拒否すれば、また殴られるに決まっている。
ボニーはクライドのするがままにさせた。
すると、口惜しくも、自慰で濡れている股間がクライドの愛撫でだんだんと疼きで包まれてくる。
ボニーは口から洩れそうになる甘い声を懸命に耐えた。
「思ったよりもきついな。生娘ではなさそうだが、そんなに使い込んでもなさそうだ。元の世界では、そんなに遊んでもいなかったようだな」
クライドがボニーの股間に指を出し入れしながらげらげらと笑った。
「う、うるさいわねえ……。は、早く、終わらせなさいよ」
ボニーはあがりかかる喘ぎ声を抑えながら、精一杯の強がりを口にした。
「ははは……。ところで、お前、名はなんていうんだ? そういえば、聞いたこたはなかったしな」
「な、なに……い、言ってんのよ……。うっ、ううっ……。ボ、ボニーよ……」
ボニーは歯を食い縛った。
もう犯されるのは覚悟している。
ただ、一瞬でもこの男に屈して、声を出すことだけは嫌だった。
それだけは、ボニーのプライドが許さない。
「そうじゃねえよ。本名だよ。俺もお前も、このおかしな世界に召喚される前は、ちゃんとした名前があったじゃねえか。それを言えよ」
「リ、リー……シン……ボニン……」
リー・シン・ボニン……。
それが本当の名だ。
「本当の歳は?」
「に、二十一……」
「仕事は?」
「が、学生よ……。だ、大学生……あっ、んんっ」
この世界に召喚される前は大学生だった。
家族もいたし、恋人もいた……。
わずか一年余り前のことだが、もう随分と過去の話のような気がする……。
「もともとの名がボニンで、ボニーか。しかも、大学に通うようなインテリさんかい。わかったぜ、ボニン、じゃあ、犯してやる」
クライドがボニーの片脚を抱えた。
東洋人女性のボニーに比べて、元はアメリカ人だというクライドは身体が大きい。
片脚を持ちあげられると、ほとんどボニーの足は地面から離れて浮きそうになった。
「くっ」
思わず呻き声をあげた。
クライドの怒張が秘孔に入ってくる。
この世界にやって来てから一度も男の性器を受け入れていない。
久しぶりに抉じ開けられる秘肉に裂かれるような痛みが走る。
痛みが腰全体に伝わる。
「おうおう、窮屈な穴だぜ。まるで生娘みたいじゃねえか。まあ、そこの女の子ほどじゃねえけどな」
クライドが顎で地面に横たわっている童女を指した。少女は股間から血を流したまま、虚ろな表情で母親の無惨な死骸を見つめている。
その顔は一切の表情をなくしたように能面だ。
「はっ、はうっ」
ボニーは樹木を背に拘束された身体を弓なりにした。
クライドの怒張の先端がぐいとボニーの股間の最奥部に到達したのだ。
律動が始まる。
クライドが笑いながら、ボニーの股間に自分の腰を打ちつけるように前後に動かし始めた。
「ううっ、うっ、ううっ」
激しい抽送だ。
ボニーの膣をこれでもかというように抉る。
女の快感など関係ない。
ただ、クライド自身の快感を得るためだけの動きだ。
だが、女の性の悲しさか、そんな自分勝手な性交でも、次第にボニーの身体は、女の反応を示してしまう。
情けないが、だんだんと快感の疼きが拡がっていく。
感じ始めた自分の身体を戒めるように、ボニーは苦痛を示す悲鳴をあげた。
レイプされるのは耐えられる。
しかし、レイプされて感じてしまうなど、これほど惨めなことはない。
だが、それを心配する必要はなかった。
クライドは激しい律動の末に、ボニーの反応などお構いなしに、唐突にボニーに射精したのだ。
ボニーの股から怒張を引き抜いた。
ほっとした。
とにかく、終わったのだ。
クライドがボニーから離れて、脱ぎ捨てていたズボンを身に着け始めた。
「じゃあな、ボニー ──。この辺りは夜になれば、獰猛な獣も出没するそうだ。お前の魅了の術も、知性のない獣相手じゃあ役には立つまい。せいぜい頑張って、日が落ちる前に縄抜けをするんだぜ──。もっとも、血の匂いを嗅いですぐに獣も集まってくるかもしれねえから、陽が暮れるまで大丈夫とは限らんがな」
着衣を整えたクライドが笑いながら言った。
「な、なに言ってんのよ。まさか、このままにして放っておくつもり? ほ、解きなさいよ」
ボニーは呆然とした。
確かにクライドの言うとおりだ。
この一帯にたちこめる血の香りは、すぐに血に飢えた肉食系の猛獣を呼び起こすだろう。
この周辺が獰猛な獣が出現する地域だというのは、ボニーも事前の調査で承知している。
だが、クライドはもうボニーを完全に無視することに決めたようだ。
そして、横たわっている半裸の童女に身体を向けた。
「なに、呆けてやがる。荷を担げ、小娘。裸で歩くのが嫌なら、馬車に積んでいるマントで身体を覆っていい。とにかく、一緒に来るんだ」
クライドが童女を思い切り蹴り転がした。
「ひいいっ」
童女が悲鳴をあげて、身体を丸めて暴力から身を守ろうとする。
「ク、クライド、やめなさい」
ボニーは叫んだ。
だが、もうクライドは、ボニーなど存在しないかのように、ボニーには反応しない。
「……それとも、ここで殺されたいか、お前──。生かして置いてやると言ってんだ。荷物持ちとしてな。それと、旅のあいだの慰め女にしてやる。ただし、少しでも遅れれば、首の骨を折って、容赦なく殺す。ほら、立つんだ──。立ちやがれ──」
クライドがもう一度、童女を蹴った。
童女が悲鳴をあげながら、クライドの罵声に屈して身体を起こす。
そして、クライドに言われるままに、びりびりになった衣服のまま、クライドの示した荷を背負った。
童女には大きすぎる荷のはずだ。
ましてや、たったいま破瓜をされたばかりの童女に、それを担いで山道を歩けというのは惨い命令だ。
だが、クライドは童女を強引に歩かせ始めた。
「ま、待って、待ちなさい、クライド」
ボニーは樹木に縛りつけられたまま、力を振り絞るように叫んだ。
しかし、クライドは一度も振り返ることなく、荷を背負わせた童女とともに、街道の方向に立ち去っていった。