【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
スクルズは、移動術で跳躍して、冒険者ギルド本部の前に移動した。
びっくりした。
そこは、惨憺たる光景だった。
夜だが、かがり火で明るい。
その明るく照らされた一帯の中で、血だまりに倒れている十数名の王兵や冒険者の死体が道路に累々と転がっている。
その中心には、二本の細身の剣を持った巨漢がいて、さらにそれを三十名ほどの王兵が男を取り巻いていた。
巨漢を囲んでいるの者の中には、王兵だけではなく、ギルド本部から出てきた冒険者も混じっているようだ。
遠巻きには、大勢の野次馬もいる。
とにかく、大変な騒ぎだ。
スクルズ跳躍したのは、その王兵の囲みのすぐ後ろだった。
「近づくな。剣も矢も効かん。縄で拘束するのだ。縄の両端を持って、距離を開けて絡みとれ。梯子も使え」
隊長らしき男が叫んでいる。
すると、巨漢の哄笑が響いた。
「まだ、やんのかよ。無駄なことだと言っているだろう。それより、イチという男とエルスラというエルフ女を出せよ。用があんだよ」
巨漢が笑いながら吠えた。
「いい加減にしなさい、あんた。そんな者は知らないわ――。とにかく、誰でもいい――。この男を無力化した者は、ギルドが賞金を出すわ。金貨十枚よ」
囲みの反対側のギルド本部の玄関に近い方角から、ミランダの声がした。
スクルズは、そっちに駆けた。
「ミランダ」
声をかけた。
ミランダは囲みのすぐ外側にいて、その周りには屈強そうな冒険者が集まっている。ミランダは、水色の貫頭衣を身に着けた可愛らしい恰好をしているが、その両腕には大きな斧を握っていた。
確か、あの服は、ロウがミランダに贈ったものだったな……。
スクルズはふと思い出した。
「スクルズ」
ミランダもスクルズを認めた。
スクルズはミランダの隣に行く。
「ミランダ、多分、こいつは、第三神殿を襲った暴漢だと思います。神殿長も副神殿長も殺されました。ほかにも、大勢の神殿兵が……」
スクルズは早口で言った。
「そうなの? こっちも大騒ぎよ。とにかく、とんでもない奴よ。剣で斬っても、槍で突いても、一瞬後には傷なんか消えてしまうの。身体に槍が通っても、なにもなかったかのように、すぐに身体から抜けるわ。矢だって素通りよ。なんなのあいつ──。しかも、刀に毒を塗っているのよ。あいつの刀に触れれば、すぐに昏倒よ。それをあいつは笑いながらとどめを刺すのよ」
あの細い剣は、「刀」という武器らしい。
いずれにしても、スクルズは神殿で耳にした状況と同じだと思った。
ミランダにそれを伝える。
「……ところで、イチとエルスラを出せと言っているみたいですが……」
スクルズは小声でささやいた。
「ロウとエリカのことに間違いないわね……。あれが、なんとかという魔女の刺客ということね……。とにかく、いないと言っているけど……」
スクルズの言葉に、ミランダが苦虫を潰したような表情をした。
「アスカです。ロウ様が恐れていた魔女は……」
スクルズは言った。
ロウとスクルズたちが親しくなるきっかけとなった「三巫女事件」の後、ロウがスクルズやミランダに語った話がある。
それは、ロウとエリカが、ローム三公国のさらに向こうのアスカ城という場所から逃亡してきたのだという告白だ。
ロウたちの居場所が特定されれば、そのアスカが自らやって来るか、あるいは、刺客を送り込む可能性があるという話だった。
ロウの恐れている女……。
そんなものは、スクルズが倒す――。
スクルズは拳を握りしめた。
また、エリカによれば、そのアスカは、とんでもない能力を持った外界人を奴隷にしていて、しかも、ちょっと信じられないような不思議な力がある者も少なくないというのだ。
ロウもエリカも、アスカの刺客が送られるのを非常に恐れているようだった。
あれが、そうなのだ。
確かに強敵そうだ。
でも、いまこそ恩返しを……。
それに、こいつは神殿長たちを……。
「ロウを追いかけてきた、そのアスカの刺客……。とにかく、それに間違いないわね」
ミランダは言った。
三巫女事件の後、事件の首謀者であり、スクルズたちの幼馴染であるノルズという女は、スクルズが預かっていた『変化の指輪』を持って行方不明になっていた。
逃亡を許してしまったのは、スクルズの落ち度だ。
ロウは、ノルズが逃亡したところで、ロウを裏切ることはないはずだと達観していたが、ノルズはロウが神殿と縁が深くなったのを知っていたはずだ。
だから、ノルズがロウの居場所をアスカとかいう魔女に通報したとすれば、まずは、スクルズのいる神殿にやって来るというのは、十分に考えられる。
とにかく、そうであるとすれば、これはスクルズの責任だ。
そう思った。
そして、囲みの外から垣間見える巨漢の首には、『奴隷の首輪』が嵌まっている感じだった。
やはり、アスカの刺客なのだ。
スクルズは確信した。
そのとき、スクルズは、巨漢から少し離れた囲みの中に幼い童女が地面にうずくまっているのを見つけた。
身体を丸くして、耳を手で押さえて顔を隠している。
粗末な布を身体に巻いて、大きな荷を横に置いているが、布の下は裸のようにも思えた。
あの童女は誰だろう?
ふと思った。
「行け」
そのとき、王兵隊の隊長の声が響いた。
捕縛が再開されたのだ。
両端を数名の兵で握っている太い縄が数本準備されている。
それが前後左右から一斉に巨漢めがけて、近づけられた。
縄が巨漢に絡みついていく。
「別にお前らに恨みもねえし、とりあえず、イチとエルスラを俺の前に連れてきてくれれば、いいだけなんだけどなあ」
巨漢がぶるりと身体を振ったと思った。
すると、一瞬巨漢が消滅して、絡んでいた縄が地面に落ち、巨漢の身体がその前に出た。
そして、駆けだす。
「うわあっ」
「こっちに来るぞ」
「梯子だ。梯子を出せ」
巨漢の行く手を阻もうと、今度は縄の代わりに梯子が突進する。
しかし、ぶつかったと思った瞬間、すっと巨漢の身体が消滅して、梯子の前に現れる。
なんだ、あれは?
スクルズは目を見張った。
「ほら、ほら。まだ、やんのかよ。どうせ、敵わないんだから、さっさと逃げちまえよ、お前ら」
巨漢が梯子を持っていた数名の兵に近づいて、無造作に刀を振る。
「ぐああっ」
「くうっ」
腕に掠っただけだが、刀に腕を切られたふたりの兵が梯子を手放して、苦しみながら地面に倒れた。
「あっ」
スクルズが対応する間もなく、そのうちのひとりの喉を巨漢が無造作に刀で掻き切った。
さらにもうひとりにも武器を向ける。
「やめなさい」
スクルズはたまらず前に出た。
横でミランダが止めるような声をあげたが無視した。
王兵の囲みを割って入り込み、魔道を倒れた兵に向ける。
しかし、喉を斬られた兵はもう駄目だ。
だが、毒で倒れただけの兵は、まだ大丈夫だった。
毒消しをして回復させる。
「スクルズ様」
「スクルズ様が?」
王兵たちが声をあげる。
「おっ、なんだ、お前? いい女だなあ。ちょっと、こっちに来いよ」
巨漢がスクルズに向かって来た。
「うわっ、スクルズ様、危ない」
「スクルズ様に近づけるな」
王兵たちが口々に叫んで、割って入ろうとする。
だが、スクルズはそれを制した。
「近づかないで」
スクルズは叫んだ。
巨漢が目の前に来る。
その太い腕がスクルズに伸びた。
瞬間的に、跳躍術で移動して巨漢の後方に移動する。
「おっ?」
巨漢が声をあげたときには、すでにスクルズは、その背中を見る位置にいた。
「“力場”」
魔力を飛ばして、巨漢の周囲一帯に透明の檻を作った。
これで巨漢は、その中から逃げられないはずだ。
「な、なんだ、これ?」
巨漢が自分の動きを阻む力場の壁に手を当てて不思議そうな顔をしている。
「やった」
「捕らえたぞ」
「さすがは、スクルズ様だ」
周囲からわっと歓声があがった。
「ほう、これはあんたの技か? こんな魔道は初めて接するな。大したものだ」
力場の檻に捕らわれた巨漢がスクルズに身体を向ける。
「武器を捨てなさい。さもないと、力場の中に毒を流します。あなたは、一瞬で死にますよ」
スクルズは叫んだ。
巨漢はお道化た表情で肩を竦める。
だが、両手に持っていた毒を塗った刀は地面に捨てた。
周りから安堵のどよめきが起きる。
「あなたは何者ですか? イチという人になんの用があるのです」
スクルズは怒鳴った。
「俺はクライドだ。何者かと訊ねれられれば……まあ、殺し屋かな。殺し屋が誰かに用ありといえば、それ以上の説明はいらねえだろう」
巨漢、すなわち、クライドが笑った。
そして、そのクライドの身体が一瞬だけ消滅したと思った。
「きゃああっ」
スクルズは悲鳴をあげていた。
クライドがスクルズの力場の檻の外側に出現して、こっちに突進してきたのだ。
油断をしていたスクルズは、対応することができなかった。
体当たりをされて、クライドの大きな腕にがっしりと掴まれた。
「あっ」
身体をクライドの前に持ってこられる。
そして、片手に腕をかけられて、その腕を背中側に伸ばされて、反対側の腕を掴まれた。
両手が塞がれたかたちだ。
スクルズはすかさず、身体から全力の電撃を放った。
「えっ?」
しかし、効かない。
クライドはへらへら笑ってるだけだ。
しかも、クライドの反対の腕が巫女服の襟をつかみ、下に向かって引き裂いた。
「きゃあああ」
クライドの大きな手は、巫女布とその内衣を一気に腰まで破り、スクルズの乳房から臍までを露わにした。
しかも、さらにどんとんど巫女服に手をかけられて、上衣をむしり取られる。
「ああっ、いやあっ」
スクルズは悲鳴をあげた。
「遠慮はいらんぞ。もっと魔道を遣いな。そのかわり、そのたびに服を少しずつ脱がしてやる」
クライドが大笑いした。
スクルズはもう一度魔道を遣った。
今度は容赦はやめた。クライドの血を一瞬にして沸騰させる。これで即死のはずだ。
「ははは、これで下も没収だ。ほら、お前ら見ろ。この巫女の裸だぞ」
クライドが巫女服のスカートを破り取って捨てた。
「いやあああ」
スクルズは悲鳴をあげた。
「ス、スクルズ様」
「や、やめんか、お前」
「スクルズ様から手を離せ」
王兵たちが怒鳴って、改めてクライドに武器を向け始める。
「近づくな。この女を殺すぞ。この女の首をへし折る」
クライドが叫んだ。
周りの兵がたじろいだ顔になり、歩みを止めた。
すでに、スクルズは腰の下着一枚だ。
乳房も剥き出しになり、白い肌が周りのかがり火の光に照らされて、衆人の視線に晒される。
クライドがスクルズの腕を離して首に腕を巻きつけた。
「うぐっ、ぐうっ」
喉を腕で絞めつけられて息が止まる。
スクルズは呻いた
苦しい……。
スクルズは自由になった両手で懸命に首を絞められている腕を外そうとする。しかし、まるで丸太だ。びくともしない。
そのあいだも、だんだんと首が絞まっていく……。
スクルズは身体に残っているありったけの魔力を力場の術にして迸らせ、クライドを弾こうと企てた。
しかし、まったく、効かない。
「ははは、最後の抵抗か、スクルズとやら? だけど、俺には刃物も魔道も効かねえんだ。不死身のクライドと言われていてな。どんな者であろうと、俺には手が付けられねえ。アンタッチャブルなのさ……。ところで、魔道を遣えば、服を一枚ずつ脱がすと言ったよな」
クライドが高笑いした。
そして、はっとした。
腕を首に巻き付けていない腕が、スクルズの股間に残っている下着にかかったのだ。
そして、じわじわとさげられる。
「いやあ、やめて、やめてください──」
スクルズは悲鳴をあげた。
慌てて、手を下着に伸ばしてそれを阻む。
だが、クライドの力が強くて、対抗できない。
ぐいぐいと下着がさがる。
すでにほとんどさげられていて、陰毛まで覗くほどだ。
スクルズは必死に下着を押さえる。
周りが騒然となる。
「近づくなよ……。近づけば、この女が死ぬぞ。その代わり、いいものを拝ませてやっからよ」
クライドがゆっくりと下着をおろしながら笑い続ける。
「やめなさい。スクルズを離すのよ」
そのとき、兵を割ってミランダが前に出てきた。
クライドがスクルズの下着から手を離した。
スクルズは急いで下着をあげる。
「やっぱり、さっきからちらちら見えていたのは、小さな女だったのか。もしかして、ドワフ族か? ドワフ族はアスカ城にはいねえから、あまり見たことはなかった。ロリコン趣味の俺には、ぴったりの相手だぜ。おい、ドワフ女、この女を助けたければ、武器を捨てろ。さもないとこの女を殺すぜ。殺したところで、俺を傷つけられる者はいねえんだ。俺は大して躊躇いもしねえぜ」
「わ、わかったわ。あたしが人質になるから、スクルズは離しなさい」
「ほう、お前が人質なら、いいだろう。俺はどちらかというと、こんな成熟した女よりも、子供が好きなんだ。乳房がでけえのが気に入らねえが、それさえ我慢すれば、童女のようなもんだ。イチとエルスラが来るまで、お前を相手にしてやるよ。その代わり、このスクルズは解放する」
「約束よ」
ミランダが二本の斧を地面に放り投げた。
「指輪もだ。ドワフ族は、指輪で魔道を遣う。遣われたところで、どうってことはねえが、犯しているさなかに、魔道で抵抗されれば興醒めだしな」
ミランダが無言で指輪を外して斧の横に置いた。
「ま、待って、いけないわ。ミランダ──。わたしの代わりに、わざと捕らわれるなんて」
スクルズは声をあげた。
だが、クライドに首にかかっている腕に力を入れられた。
絶息しそうになり、声がとまる。
「うるさい姉ちゃんだ。このドワフ女の気が散るだろう……。さあ、ドワフ女、このスクルズを助けたければ、その場で素っ裸になれ。脱いだら、そこの建物の二階に行くぞ。この道端じゃあ、レイプするにも具合悪いしな」
クライドが哄笑した。
「な、なんですって?」
服を脱げと言われて、ミランダがさすがに顔を蒼くした。
周囲からはクライドをなじる声がかけられ続けているが、スクルズを人質に取られているために、近づけないのだ。
「早くしろ、ドワフ女──。この女を助けてやってもいいと言っているのは、俺の気まぐれだぜ。その方が、なんとなくお前が無抵抗で尻を向けそうだからだ。そうじゃないなら、こいつの首をへし折り、無理矢理にお前を犯すだけだ」
「や、やめなさい。わ、わかったわ。脱ぐ。脱ぐわ」
ミランダは口惜しそうな顔で服に手をかけた。
スクルズはもう一度止めようと思ったが、クライドに首を絞められたまま引っ張られて、声を出すことができなかった。
そして、クライドは、さっき兵たちが捕らえようとして、地面に落ちていた縄のところまでスクルズを連れていくと、スクルズに両手を背中に回させて、片手で縛って胴体に巻き付けた。
抵抗することは不可能だった。
命令に刃向かえば、容赦なく首が絞まるのだ。
「さあ、脱いだわ。もう、スクルズを離して」
ミランダは下着一枚の姿になって、胸を両手で隠してクライドを睨んでいる。
しかし、クライドは意地悪く笑った。
「まだ、一枚残ってんじゃねかよ。せっかくの野次馬を愉しませてやれよ。それも脱ぐんだ」
「ま、待って、ミランダ……。き、危険よ……。こ、この男は……んぐうっ」
また首を絞められる。
スクルズの息が止まった。
「ぬ、脱ぐ。脱ぐから、やめなさい」
ミランダが諦めたように、最後の下着を脱いで足首から抜いた。
夜闇の中とはいえ、周囲は照明で明るい。
灯かりに照らされるミランダの裸身に、周囲からどよめきが起きる。
「おい、兵の隊長──。その二階の建物から人間を全員出せ。俺たち三人が入ったら、周りを封鎖しろ。そして、イチとエルスラという男女を探し出して連れて来い」
クライドが叫んだ。
クライドが示した二階というのは、ギルドとは道を挟んで向かいにある小さな商家だ。
小物を売っている店のようだが、店の者らしき男女が驚いた顔でこっちを見た。
「あたしが人質になれば、スクルズを解放する約束でしょう」
ミランダが両手で股間を胸と隠しながら怒鳴った。
「心配いらねえよ。お前が俺の相手をしている限り、手は出さねえよ。じゃあ、ミランダ、そこに入れ。ほらほら、どけ、どけ。俺たちの前に来るな。女が死ぬぞ」
クライドがその二階建てに向かって、スクルズの首に腕をかけたまま、進み始める。
ミランダも、クライドに追い立てられるように、全裸のまま、前を歩かされだした。