【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
146 女刺客への新たな命令
ボニーは、次々に入ってくるキシダインへの魔道通信を傍らで聞いていたが、最後に送られた内容に呆然とするしかなかった。
クライドは射殺された。
とりあえず事件は終わったという治安担当者からの報告に、キシダインは「ご苦労」とだけ告げていた。
キシダイン邸の客室だ。
ボニーは、キシダインとふたりだけで向かい合っている。
キシダインの許可を受けて、ボニーはさっき脱いだものを身に着けていたが、キシダインは部屋にたちこめさせている媚薬の香を消してはくれなかった。
それでボニーの身体は、相変わらずただれるような疼きを抱いたままだし、閉じ合わせているスカートの中の股間は、いまでもじわじわと樹液を滲み出し続けている。
女刺客であるボニーに対する用心だと思うが、すでにボニーが装着している『奴隷の首輪』にキシダインの命令に従うように刻み終わっている。
それにも関わらず、慎重なことだと思った。
いずれにしても、ボニーの身体は、女だけに効果があるという魔道の媚香のために、まるで薬物で弛緩されたようになっていた。
それにしても、驚きだ。
あの不死身のクライドが死んだ?
それはボニーには、俄かに信じれることではなかった。
クライドは、アスカの奴隷の中では別格の存在で、どんな武器でも魔道でも傷つけられない「アンタッチャブル」な存在だったのだ。
それは、主人であるアスカでさえも同様であり、召喚後にある恒例のアスカの「試し」では、アスカでさえも、クライドを痛めつけることができずに、アスカも不思議がっていたくらいなのだ。
外界人としては先輩になるボニーは、そのときのことをしっかりと覚えていた。
そのとき、アスカがクライドに対して、クライドの役割は「暗殺者」だと告げると、クライドは「面白そうだ」と笑って、あっさりと「奴隷の首輪」を受け入れたのだ。
だが、あのとき、クライドは本当は、「奴隷の首輪」の縛りを刻まれておらず、ただ、支配をされていたふりをしていただけだったようだ。
そのことを、ボニーは、あの山中でクライドと袂を分かったときに悟った。
いずれにしても、クライドとはそんな存在だ。しかも、武器や魔道を寄せ付けないということだけではなく、身体も大きくて力も強く、かなり武器も使い慣れていた。
まさに、不死身の二つ名に相応しい男だった。
そのクライドをイチが殺した……。
いや、あのイチは、いまはロウと名乗っているらしい。クライドが襲い、そして、返り討ちにあった男の名はロウだ。
おそらく、それで間違いないだろう。クライドが死んだとき、そのロウとともに一緒にいたのが、エリカという冒険者仲間の美貌のエルフ女だったそうだから、そのエリカがエルスラなのだろう。
とにかく、そのロウが、不死身のクライドを呆気なく殺害してしまった。
いま、耳にした内容はそうだった。
しかも、ロウは、クライドと接触するや否や、ほとんど一瞬で手にしていた短銃で撃ち殺したらしい。
そんなにロウが強いなんて聞いてない──。
あのクライドには、ボニーもまったく歯が立たなかったのだ。
それをあっという間に返り討ちにしたとは……。
クライドの能力の弱点がなんだったのかはわからないが、誰もがかなわなかったクライドの能力にロウが効果がなかったなら、ボニーの「魅了の術」、すなわち操心術も効果がないということがあり得るのではないだろうか……。
ボニーは、いまさらながら、ロウに関する情報がほとんどないということに困惑した。
事前にアスカやパリスに聞いていたのは、イチ、すなわち、ロウの能力は淫魔師だということだ。
だから、女のボニーは絶対に犯されるなと冗談交じりに言われてはいたが、武術も度胸もからっきしの役立たずだったとも教えられていたのだ。
クライドを倒せるような強者とは聞いてない。
ボニーは呆然としてしまった。
これは、ばつの悪い任務を請け負ってしまった。
その思いがボニーの心を走った。
しかも、ロウの淫魔術に捉われて、ロウのそばに侍っているはずのエリカは、かなりの武道や魔道の持ち主だった。
この王都に入って存在を知ったコゼやシャングリアという冒険者仲間も、そこそこの女傑だという。
キシダインの屋敷に入る直前に集めた冒険者についての噂話だけでも、ロウの率いる美女パーティは、王都界隈ではちょっと知らぬ者がいないくらいに、大きな実績を残しているパーティのようだ。
そのロウを自分は殺せるだろうか……?
そんな迷いが急激にボニーに襲いかかった。
だが、すでにボニーの首輪には、ロウの暗殺についての命令が刻まれている。
それ以外の行動をすることはできない。
とにかく、ボニーはクライドがロウに殺されたということで、そのロウに対する恐怖心を急激に沸き起こしてしまった。
「……クライドというのは、お前のもうひとりの仲間だったな。ロウとかいう冒険者に返り討ちになったそうだ。どうする? もしかして、お前が始末を命令されている冒険者というのは、そいつのことか?」
「もう少し調べます……。どんな男なのか……。弱点はなにか……。ロウの周りにいる女たちはどんな者たちなのか……。とにかく、情報がなさすぎます」
とりあえずそう言った。
クライドを倒したロウの暗殺は、正直、ボニーには荷の重い仕事だと思った。
事前に思っていたのは、淫魔術を利用して女に自分を守らせている女ったらしのような男を想像していた。
だから、自分ひとりでも十分だと思っていたのだが、クライドを呆気なく倒すような男となると、話が違う。
キシダインに対する報告によれば、クライドを倒したのは、間違いなくロウ自身だという。
ロウの女たちは、手も出していないそうだ。
「なるほどな……。だったら、いい方法があるぞ、ボニー。教えてやろう……。それから、下だけ脱いでこっちに来い。命令だ」
キシダインが言った。
ボニーの身体は、さっき着直したばかりのスカートを脱ぐために立ちあがっていた。下着はあまりに股間が汚れていたので、身につけずにそばに畳んで置いたままだった。
再び下半身を剥き出しにしたボニーは、「命令」に従って、キシダインの腰かける長椅子の前に来た。
「奴隷の首輪というのは便利なものだな。この香を焚き込めた部屋の中では、生身の女であるお前は堪るまい。もう少し抱いてやろう……。アンには客の相手をさせていて、どうせ暇だからな……。ところで、俺に背を向けて股のあいだに腰かけろ。そして、両手を頭の後ろに置け。命令だ……」
アン……?
指示された体勢をとりながら、アンとは誰のことだろうと思ったが、すぐにキシダインの妻の名だと思い出した。
確か、この国の国王の第一王女で、キシダインはそのアンを妻にすることで、ハロルド公の地位を授かるとともに、いまだに未決定ではあるものの、この国の王太子の最有力候補になったはずだ。
そのとき、キシダインの手がすっと服の下から胸に向かって入ってきた。
「ふううっ」
自分でも恥ずかしいと思うほどの反応で、ボニーは背中をのけぞらせた。
キシダインの手が服の下でボニーの乳房を擦り始めたのだ。
なんでもない刺激だ。
指先を軽く乳首の周辺に走らせるだけのことだ。
だが、それをされた瞬間に、凄まじいざわめきが全身に駆け巡った。
それほどまでに、媚薬の香に苛まれていたのだと改めてわかった。
「……冒険者ギルドのことを調べるのであれば、うってつけの人物がいる。さっき、俺が仕事を指示したイザベラ王女だ。王女だが身の回りに侍るのは十人ほどの侍女だけだ。宮廷に入り込む手配は準備してやろう。敷地内に入りさえすれば、イザベラのいる小離宮に潜入するのは、お前の腕なら容易だろう。この屋敷に入るよりも楽なはずだ」
キシダインが胸を擦るように円を描いて動く。
つーんとした疼きの刺激が身体を走り抜け続ける。
「んっ、ううっ」
ボニーは歯を食い縛った。
キシダインの言葉を頭に入れるために、快感に溺れないように努力しているのだが、それは簡単なことじゃなかった。
キシダインの愛撫は、媚薬の香に襲われているボニーの身体にはっきりと火をつけたようだ。
甘美なざわめきが身体の底から強く湧き出してくる。
「ううっ、くううっ」
ボニーはおかしいほどに上体をくねらせて、身体を悶えさせた。
「聞いているのか、ボニー?」
キシダインが意地悪く言った。
「き、聞いています……あっ、ああっ……」
必死で平静を保とうと努力しているのにかかわらず、ボニーは反射的にぶるりと身体を震わせてしまった。
キシダインの片手がすっと胸からおりて、下腹部を揉むように動き出したのだ。
「……言っておくが、直接に冒険者ギルドに手を出すのは思ったよりも大変だぞ。あそこには、ミランダという切れ者のドワフ女の副ギルド長がいるだけでなく、魔道の防護も厳戒で余人を寄せつけにくい。このハロルド公の俺でさえも、冒険者ギルドは手出しするのは簡単ではないのだ……。その点、宮殿というのは外から入るのが厳重なだけだ。手を出すなら、まずはイザベラ王女にしろ。あいつはギルド長でもある。冒険者についての情報なら、お前がイザベラを支配してしまえば、いくらでも集められる」
「は、はい……。んんっ、くうっ、ううっ……」
キシダインの手がボニーの下腹部を撫で続ける。
いま、ボニーは一度腰を抱えられ、キシダインの膝に乗せられて両脚を跨いで開かされていた。
当然、ボニーの脚は大股開きの状態だ。
その股をキシダインの指が撫ぜあげ、揉み、跳ねるように動く。
キシダインの手が動くたびに、両手を頭の後ろに置いているボニーの身体はびくんびくんと恥ずかしい反応を示した。
「……まずは、ギルド長のイザベラ王女だ。宮廷に入り込むのと小離宮への侵入は、俺の手の者が手引きする。だから、イザベラにお前の魅了の術をかけろ。それができれば、あとは都合よく事は進むだろう。ギルド長には、強制クエストという権限もある。そうしたら、探している冒険者を罠に嵌めるようなクエストを与えてやればいい。それで簡単に殺せる」
キシダインの手がボニーの股間を狂わせる。
入念に表面をなぞり、陰毛にからめ、さらに菊座もいじりまわしてくる。
すでに、女陰はぱっくりと口を開いているようだ。その狭間に、キシダインの指がかなり激しく出し入れを始めた。
一方で、ボニーはキシダインの淫らな指に、ついつい我を忘れそうになりながらも、懸命にキシダインが口にしたことを考えた。
キシダインは、ボニーの請け負った暗殺にかこつけて、イザベラ王女の「処理」をボニーにやらせるつもりだろう。
その魂胆は見え見えだ。
キシダインにとっては、冒険者の暗殺などどうでもよく、折角やってきたボニーという女刺客を自分の政敵であるイザベラ王女の暗殺のために使いたいのだ。
だから、適当なことを言っているにすぎない……。
それはわかっている……。
次期国王の座を狙うキシダインにとって、まだ十六歳のイザベラ王女が最大の政敵だというのは、すでに、ボニーも知っている。
それにしても、キシダインというのは、ボニーのことを余程の低能と確信しているのか、こうやって身体をいたぶりながら囁きでもすれば、王女殺しがロウの暗殺に繋がるなどということを本気で信用すると思っているのだろうか……?
だが、それでいいかとも思った。
なにしろ、あのクライドを呆気なく返り討ちしたような男をボニーが殺せるような気がしない。
それよりも、イザベラ王女には縁もゆかりもないが、キシダインが王宮潜入の手筈を整えるというのであれば、王女暗殺の方が割りがいいように思えてきた。
「ううっ、ああっ」
口から激しい息と声が迸る。
それとともに、ボニーから思念が消失する。
ボニーは懸命に意識を保とうとした。
「……よいな……。イザベラ王女を最初に攻略するのが、お前の任務を遂行する早道なのだ。わかるな? 最初にイザベラ王女を術にかけろ。それがいい方法だ……」
まるで口説いているような口調で、キシダインはイザベラ王女を最初に仕掛けろと繰り返しささやいてくる。
「返事をせんか。よいな」
「んぎいいっ」
大袈裟な悲鳴をあげてボニーは、身体をぐっと前のめりにしてしまった。
キシダインの指がいままでわざと避けていたような動きをしていた肉芽に触れてきたのだ。
しかも、ボニーが承知の返事をしなかったためだろう。
少し苛立ったように、指で強く弾くように叩いたのだ。
ボニーはさすがに悲鳴をあげた。
「ほら、触るのをやめてやろう。返事をしろ」
すると、さんざんに身体を弄っていた手をキシダインがさっと引き去った。
途端に燃えあがっていた身体が、一気にじわじわとしたくすぶりに変化したような焦れったさに襲われる。
部屋に充満している媚香の影響はすっかりとボニーの身体を蝕んでいたが、しかし、こうやって刺激を受ける前と受けた後では、ボニーに襲う焦燥感は桁外れだった。
突然に刺激がなくなったことで、ボニーは怖ろしいほどの欲情をあおりたてられた感じになった。
「あ、ああ……。い、意地悪しないでください」
堪らずに、ボニーは恨めしさをキシダインにぶつけた。
キシダインは満足したような笑い声をあげた。
「もう一度、手を後ろだ。手錠を嵌めてから、してやろう。今度は俺に魅了はかけるな。命令だ」
キシダインが横に置いていた手枷を手に取る。
ボニーはキシダインに背中を見せるようにして、手錠をかけやすいようにした。金属音が鳴り、ボニーの両手は再び封じられた。
「……公爵様の指示に従います。まずはギルド長であるイザベラ王女に取り掛かります……。その代わりに、さっきの話を……。あたしを公爵様の奴隷にしてください。かけられている命令は取り消して……。あたしを返さないで……。きっと役に立ちます……」
ボニーは正直に言った。
この公爵に取り入って、いまの境遇から逃亡する。
いまこの時点で、首にある奴隷の首輪は、アスカでもなく、パリスでもなく、このキシダインを主人として刻んでいるはずなのだ。
さっきの通信球による声で、パリスがほとんど無条件にキシダインの命令に従うように、指示し直した。
つまりは、キシダインがボニーに与えているイチ、つまり、ロウ暗殺の命令を取り消してくれれば、ボニーはクライドを殺したような怖い相手に向かわなくてすむ。
そして、しばらくは、このキシダインの奴隷のままでいよう……。
逃亡したところでアスカに刺客を差し向けられるだろうから、それよりは、キシダインに囲われた方がいい。
このキシダインがどういう「主人」か不明だが、多分、あのアスカ城よりはましなはずだ。
キシダインのところでも人殺しをさせられるかもしれないが、ボニーを突然に召喚して、元の人生のすべてを奪ったアスカたちのような者のために働くよりも、遥かにましだと思う。
「パリス殿ではなく、俺のところで働きたいというのだな……?」
キシダインがにやりと笑った。
気味の悪い微笑みだ。
ボニーはぞっとするような嫌悪感を覚えたが、それを隠してしっかりと首を縦に振る。
「それが、あたしの望みです……」
「よかろう……。ならば、我らの完全に意見は一致したということだな。ならば、命令をかけ直してやる。今後は俺の命令の一切に従え……。お前が殺すのは、王女イザベラだ……。ほかの任務は忘れよ」
キシダインが言った。
ほっとした。
これで、ロウと敵対しなくてすむ……。
「ところで、そろそろ欲しいのではないか。では、お前が俺の奴隷になった褒美だ。俺の精をやろう」
「嬉しいです……、ご主人様……」
ボニーは言った。
すると、キシダインが、腿の上に座る体勢だったボニーを床に一度おろして、自分の腰に手をやってズボンをおろし始めた。
すぐに、ボニーは両手を頭に置いたまま、ぐいと身体を倒されて床に頭をつかされる
ボニーは、尻を高くあげて床に跪く恰好になった。
「うんふうっ」
お尻側からキシダインの怒張が撃ち込まれてきた。
衝撃の甘美さに、ボニーは早くも絶頂の手前まで引きあげられた。
「もう、パリス殿のところに戻る必要はない。これからは俺の仕事を手伝え……。ところで、この穴もなかなかいい味だな。高く買ってやろう」
キシダインが怒張の抽送をボニーの女陰に送り込みながら言った。
ボニーは、喘ぎ声をあげた。
本格的な抽送が始まる。
「ああっ、はっ、ああっ、ああっ」
ボニーは、あっという間に、キシダインの律動に合わせて、ただただ激しく身体を反応させるだけしかできなくなった。
キシダインはただ単純にボニーの股間を突き続けるわけではない。
花唇の中心に向かって、微妙に角度と深さを変化させ、さらに速度も変えて責めてくる。
男遊びに慣れていないボニーにとって、これほどの翻弄は初めてだ。
気持ちいい……。
だが、焦れったい……。
切なくて……狂おしい……。
それがどんどんと膨らむ。
「ああ、はああっ、あああっ、こ、公爵様、も、もう……」
ボニーは必死で声をあげた。
快感がキシダインの肉棒を打ち込まれるたびに大きくなる。
「欲しいのか? 俺の精が欲しければ、そう言え、ボニー」
キシダインが打ち続ける怒張を大きく回すように動かしてボニーを揺さぶる。
「ひんっ……くうっ、ほ、欲しいです──。公爵様の精をください──き、来てくださいっ」
ボニーは完全に我を忘れて叫んだ。
キシダインの律動が一段を速くなる。
もうすぐ来る……。
押し寄せる絶頂に、ボニーは身体全体でそれを受け入れようとした。
続けざまの連打が濡れ切った子宮の奥に打ち込まれる。
「おおっ、おっ、おっ、おおっ」
ボニーは馬鹿みたいなはしたない声をあげていた。
そのとき、キシダインが不意に腰を引いたかと思うと、腰全体をぶつけるようにボニーの尻に叩き付けてきた。
「うっ」
初めてキシダインが呻き声を洩らした。
生温かい精の塊が、衝撃とともに膣に噴き出されるのを感じた。
「あ、あはあっ」
股間を開きながら、ボニーは全身を硬直させていた。
快感が稲妻となって、脳天を撃ち抜く。
「いぐうっ」
ボニーはキシダインに突かれながら、ついに歓喜の絶頂に辿り着きかけた。
「宮廷に潜入する手配は、数日中に整える……。それまでは俺が指示する場所で待機だ。当座の金はやる。次に指示をするのは俺の部下だ。手筈が整えば、俺の部下がお前に接触する。その指示に従え……。そして、王女については、まずは殺すな。お前の術だけをかけよ。殺すのは次だ」
キシダインが腰を前後させながら、悟すように言った。
いきなり殺すのではなく、魅了の術をかけて操り状態にしておけということか……。
それなら、もっと気が楽だ。
いつか魅了術で自殺でもさせるように、王女を操らされるかもしれないが、とりあえず、次ではないのだ。
なんの恨みもない相手を殺すというのは、何度味わっても苦しいものだから、それが次の機会でないということだけでも嬉しい。
「ぜ、全力で……」
「いいだろう……。ほら、欲しいものだ」
腰の律動を続けていたキシダインがぐっとボニーの股間に押しつけるようにして、ぶるりと腰を震わせた。
熱い精が子宮に迸るのをしっかりと感じた。
その感覚を受けながら、ボニーはついに絶頂に達した。
「あはああああっ」
ボニーは身体を弓なりにして全身を震わせた。
一方で、キシダインもまた、精をボニーの中に放ち続ける。その精の最後の一滴までがボニーの股間に注ぎ込まれていく。
ボニーは、頭が真っ白になるような快感とともに、愉悦の戦慄で身体が完全に痺れる感触を味わった。
気持ちいい……。
考えることができたのは、雌の本能としての心の底からの満足感だけだった。
*
「もう、隠していることはないね、ロウ?」
アネルザが不機嫌そうな表情で言った。
一郎がいるのは、アネルザの住まいである宮廷敷地内の王妃宮だ。少し前まで奴隷宮と呼ばれていた地下宮の一室である。
数日前に、クライドというアスカの刺客を返り討ちにして殺したということがあり、そのクライドが最後に言い残したもうひとりの刺客ということがあったので、二日ほどは大人しく屋敷に籠っていた。
だが、一郎が大人しく屋敷にいるということは、すなわち、その相手を屋敷の女たちが務めるということでもある。
せっかくの機会なので、心置きなく女たちを犯し続けていたが、今日の昼を過ぎたところで、エリカたち三人とミランダが、ついに起きなくなってしまった。
ミランダについては、あれからずっと屋敷に監禁状態にして、三人娘とともに一郎の相手をさせ、クライドに犯された「上塗り」を継続していたのだ。しかし、つまりは、一郎はその四人の女を抱き潰してしまったということだ。
ロウがひとりで出歩くなど、エリカが承知することではないが、そのエリカも抱き潰れて眠っている。
それで一郎は、スクルズが設置してくれた移動ポッドで、久しぶりにイザベラ王女のところでも向かおうと思って、まずは「先触れ」を放とうとした。
先触れというのは、スクルズが設置した移動ポッドに備わっている機能であり、移動術による跳躍をしたいときには、一郎の屋敷側の移動ポッドにある決められた部位に触れれば、跳躍をしてもよいかという報せが向こうにひそかに届くのだ。
そして、跳躍しても問題ないということになれば、向こうから合図があり、こっちに移動ポッドにしている姿見の鏡面部が特殊な揺れをして報せるという仕掛けだ。
一郎のところは、誰が来たところで困らないし、屋敷妖精のいるシルキーがいるので制御できるが、女たち側ではそうはいなかい。
勝手に向かえば、もしかしたら召使いが掃除でもしているところに、一郎が出現してしまうかもしれない。
そうなったら困る。
だから、こんな機能がついているというわけだ。
しかし、その先触れを放つ前に、シルキーがブラニー経由で、スクルズが一郎を呼んでいるという伝言を持ってきた。
目の前の移動ポッドを潜って欲しいということだった。
一郎がいた移動ポッドの設置してあるその部屋には、行き先別に大きな姿見が数個あり、それぞれに移動ポッドの接続先が異なる。
移動ポッドがあるのは、「王都内のブラニーがいる屋敷」「第三神殿のスクルズの寝室」「宮殿内のアネルザ王妃の私室」及び「イザベラ王女のいる小離宮の王女の寝室」である。
スクルズからの伝言にあったのは、アネルザの私室に繋がる移動ポッドだった。
いずれにしても、用事があってもなくても、一郎のところに足繁くやってくるスクルズが逆に一郎を呼び出すとは珍しい。
それで、すぐに移動ポッドを潜って跳躍すると、そこに怒っているアネルザとともに、申し訳なさそうなスクルズ、そして、あのマアが待っていたのだ。
マアは、先日、スクルズが調整した「欺騙リング」は首から外している。
人間族の六十歳をすぎた初老の女の面影はなく、若々しい三十過ぎの美人の姿がそこにある。
いずれにしても、アネルザとスクルズとマアが待ち受けていて、一郎は三人に身体をいきなり掴まれて椅子に強引に座らされた。
そして、アネルザとマアに、先日のクライド事件のことをしつこく訊ねられたのだ。どうやら、アネルザとマアは、今日、その事件のことを耳にしたようだ。
別に隠していたわけでもないが、特段に耳に入れる必要も感じなかった。
しかし、マアはとにかく、アネルザがかなり怒っているようだった。
「特に隠しているつもりはなかったけどね。そもそも、スクルズもミランダも知っていたよ。いま、言ったとおりに、俺はアスカという魔女に命を狙われる理由がある。まあ、今回、ついに刺客が送られたということは、ついに、俺とエリカの居場所があの魔女にばれたということだろうね」
一郎は軽く肩を竦めてみせた。
すると、アネルザが苛立ったように、自分が座っている椅子の手すりを叩いた。もともと、気性が激しいことで王都で知らぬ者のない我が儘王妃である。
怒るとかなりの迫力だ。
一郎は苦笑した。
「笑い事じゃないよ──。そういう事情なら、どうして言わないんだい。このアネルザを見くびるんじゃないよ。まさかとは思うが、まさか、居場所が発覚したから、王都を出ていくとか考えてないだろうねえ。そんなことは許さないよ──」
アネルザが怒鳴った。
どうやら、かなり怒っているのは、一郎が逃げていく可能性を考えてしまったみたいだ。
だが、実際のところ、一郎はそれも考えていた。
これから、次々に刺客を送られる可能性を考えると、それもひとつの選択肢かと思った。
そもそも、もうひとりいるというボニーという女刺客の影はまだない。
どこかに隠れて、まだ一郎を狙っているのかもしれず、いまだにどこにいるのかわからない。
「ロウ様、その表情は、もしや、王都を出ていくことをお考えになられたんですか──? それはあんまりです──」
すると、ずっと穏やかにロウを見守っていた感じだった、スクルズが突然に悲鳴のような声をあげた。
どうやら、逃散も視野に入れていることを悟られたみたいだ。
「いや、出ていくというわけでも……。ただ、可能性のひとつとしてだね……」
とりあえず、一郎は言った。
もともと、この王都に入って来たときから、万が一、アスカに居場所が割れれば、すぐに居場所を変えることを考えていた。シャングリアも、その条件で受け入れたし、だからこそ、旅をしながら旅費を稼げる冒険者というのは魅力的な職業だと考えたのだ。
そのときだった。
一郎たち四人はひとつの卓を真ん中にそれぞれに四方を囲むように座っていたが、真向かいに座っていたアネルザが、突然に卓越しに一郎の胸倉を掴んだのだ。
卓の上には、アネルザが人払いをする前に準備していたらしい茶器が並んでいたのだが、それがアネルザが卓を蹴り飛ばしたかたちになったので、卓から音を立てて落ちていく。
アネルザに胸倉を掴まれたことよりも、そっちが気になったが、卓から落ちた茶器は床に落ちることはなかった。
空中にとまっている。
スクルズの魔道のようだ。
「うわっ」
だが、襟首を引っ張られて、一郎の思念は跳んだ。
アネルザを見ると、かなり激怒している。
いや、泣きそうかもしれない。
ちょっと驚いた。
「そんなこと、許すと思うかい、ロウ……。許さないよ……。本当だよ……。絶対にね……。わたしたちを頼りな……。お前の周りにいるエリカたちも、お前を守るだろうさ……。だけど、わたしたちには、あいつらのような腕っぷしはないけど、違う守り方ができる……。だから、王都から出ていくんじゃない。いや、お前はどこにも行かせない。わたしを何だと思っているんだい……」
アネルザが一郎の首を締めながら、ゆっくりと教え諭するように一郎に言った。
むしろ激昂して喚き散らさない分だけ、アネルザの本気が伝わって来て怖かった。
これは、本当に王都を逃げるとか言ったら殺されるな……。
本気でそう思ってしまった。
「ロウ殿、あたしになにができるかわからないけど、奇跡をくれたロウ殿のために、このマアもひと肌もふた肌も脱ぐよ。金に糸目はつけやしないさ。情報だって金で買える。アスカ城という城塞都市は謎めいた場所で、いままでに知られていることはないけど、金さえかければ、どんな情報だって大抵は手に入る。ロウ殿への刺客なんて、思いつけないくらいに、金の力で締めあげてやる。やってやるさ」
マアが口を挟んできた。
ふと見ると真剣だ。
これは本気で心配をしてくれているのだとわかった。
「ロウ様、わたしになにができるかわかりませんが、どうか、わたしもロウ様のことを守らせてください。だから、どうか、どこかに行ってしまうなんて言わないでください」
スクルズだ。
そして、スクルズは一郎の襟首を掴んでいるアネルザの手にそって、手を触れさせた。
やっとアネルザが手を離す。空中に留まっていた茶器類も、元通りに卓に戻った。
「とにかく、そのアスカの刺客とかいうのは、外来人の奴隷ということなんだろう? 外来人なんて見分けようもないけど、奴隷の首輪はわかりやすいくらいの目印だ。国境警備隊や関所には通達を出させて、入国してくる奴隷については厳しく管理させるし、少しでも怪しい者は絶対に素通りさせない。だから、お前……」
アネルザが大きな声をあげた。
一郎は降参という仕草で、両手を上にあげた。
「わかっている。わかっているよ。王都を脱出するというのは、前にそんなことをちらりと思っていたというだけさ。すでにしがらみもできたし、俺はいまの生活が気に入っている。王都から逃げたりしないよ。約束する」
「絶対ですよ」
スクルズがぎゅっと一郎の手を両手で掴んできた。
「もちろんだ」
大きく頷くとともに、一郎は嘆息した。
これは、やっぱり王都から逃げるわけにはいかないな。
なにがあろうとも、ここで戦おう。
一郎は心からの決心をした