【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
意識が戻ったときに最初に感じたのは、肩と腿の付け根で四肢が千切れるような激痛だった。
次いで、背中に痛みが移った。
見えるのは、床だ。
どうやら床に対して顔を下に向けているようだ。
だが、ボニーは手足のどこも床には接していない。
身体を吊られている?
これは……?
しかし、ボニーは自分がどういう状況がすぐにはわからずに戸惑った。
「やっと、操心状態から意識が正常になったな。だが、まだ半覚醒のときの操心状態の方がよかったと思うぞ。これからはつらいぞ。なにしろ、拷問のための拷問だからな」
横で男の声がした。
頭がぼんやりとして働かない。
しかし、なんとなく聞き覚えがあるような……。
それにしても、ここはどこだろう?
目に移る景色は床だけなのでよくはわからないが、見知らぬ部屋のようだ。視界に入る限り、家具のようなものは見当たらない。
四方を壁に囲まれた部屋の中心部で、ボニーは身体を天井からでも吊り下げられているみたいだ。
両腕も動かない。
でも、まだ頭がぼんやりとして動かない。
これは……?
おそらく、強力な魔道をかけられて、意識を失っていたか、正気を失っていた?
何回か、そんな魔道にかけられたこともあるので知っているが、そんなときの感覚に似ている。
「いい加減に許してあげたらどうなんですか、ロウ様。もう、全部訊きだしたんでしょう? わたし、ちょっと可哀想になってきました。アスカ城では刺客をさせられていたそうですけど、元はといえば、アスカ様の命令なんです。奴隷の首輪で逆らえないんです。それに聞き出したじゃないですか」
今度は女の声……。
エルスラ……。いや、エリカか……?
声の方向に顔を向けようとして、やっと自分が怖ろしく不自然な体勢で身体を吊られていることに気がついた。
「な、なに、これ──?」
そして、思わず悲鳴をあげてしまった。
ボニーは手首と足首に縄をかけられて、太い四本の縄で天井から吊られていた。
しかも、身体の前側を床に面し、背中側を天井に向けて、手足を上方向に宙吊りにされていたのだ。
いわゆる、逆海老状態だ。
それで、背中や手足の付け根に凄まじい激痛が走っているというわけだ。
しかも、かなりの長時間、この状態にされていたような感じである。
それは、全身の引きつるような痛みと、凄まじいほどの疲労感でわかった。
さらに、どうやらボニーは一糸まとわぬ全裸にされている。
剥き出した乳首も、首を曲げることで辛うじて見えるし、局部に直接当たる外気は、ボニーが下着さえ身に着けていないことを表している。
それに、身体の気怠さ……。
もしかして、犯された……。
そんな感じなのだが……。
「こ、これどういうこと……?」
ボニーは悲鳴をあげた。
そして、イザベラ王女を魅了の術で支配しようとして失敗し、たまたまそこにいたらしいロウと争いになったことを思い出した。
そして、捕らわれた。
横にいるのは、イチ、すなわち、ロウだ。
そして、一緒にいるのはエリカ……。アスカ城ではエルスラと名乗っていて、パリスからロウとともに殺せと命じられているエルフ族の逃亡女だ。
「おう、おう、だんだんと思い出してきたようだな。操心術を解いた甲斐があったというものだ。なにせ、操られてどんなことでもぺらぺらと喋るあんたを拷問しても愉しくないしな」
ロウの嘲笑するような笑いがした。
ボニーは混乱した。
だが、だんだんと頭が覚醒してくると、やっとこの状況が理解できるようになってきた。
もしかして、ここは、あのとき、王宮の小離宮から転送術で跳躍させられた屋敷?
おそらく、そうなのだろう。
ロウたちの暮らしている家に違いない。
その広間のような場所でロウに捕らわれるとともに、パリスのことを喋ろうとしたら突然に呼吸が苦しくなった。
「死の呪文」とか、ロウが叫んだような……。
もっとも、いまは、あのときの息の苦しさはない。
そして、ここは、その建物にある別の場所だろうと思う。
部屋には窓はなく、部屋の四隅に燭台が置いて照らされていた。
地下室のような場所だろうか……?
そして、だんだんと壁にあるものも見えてくる。
縄や鞭、鎖や棒、その他の拷問具が壁にかけられたリ、棚に置かれたりしている。ところどころには、三角木馬を始め、大きな拷問機まである。
そんな感じだ。
ここがどんな目的の部屋なのかはわかってきた。
つまりは「拷問室」だ。
「あ、あたしは、捕らわれたということね……。で、でも拷問しても無駄よ……。首の首輪が見えるでしょう……。自白できないように命令を与えられているのよ。なんにも喋れないわ……」
ボニーは言った。
どういう状況なのかはわかった。
全裸に引き剥かれて、おかしな方向に身体を吊られている。
いまは、ロウやエリカの腰の高さ程度に逆海老で吊られているのだ。
苦しい……。
なにもされていないこの状況でも、呻き声をあげたくなるくらいだ。
こんなことをされなくても、自白できれば自白している。
アスカにも、パリスにも、ましてやキシダインにも、別に義理立てしなければならない理由はない。
だが、喋れないのだ。
それを主張したつもりだ。
しかし、ロウが笑いだした。
そして、なにを思ったか、逆海老に吊っているボニーに近づき、ボニーに背を向ける。
ロウの腰はボニーが横につられている背中よりも、少し低いくらいだ。
そのロウが、ボニーに背を向けたまま、ボニーが吊られている二本の縄を握った。
なに……?
「んぎいいいっ」
絶叫した。
突然にロウが、上を向いているボニーの背中に尻をあげて乗ったのだ。
まるで椅子のように。
「あがああっ、んぎいいいっ」
信じられないような痛みが走り続ける。
ロウは笑いながらボニーの背中で体勢を変え、今度は上に跨るようにした。
しかも両脚は浮かして床から離している。
男ひとりの全体重を逆海老の体勢で支えなければならないボニーは、ただただ悲鳴をあげ続けた。
「泣くような悲鳴をあげるな。こんなの拷問のうちにも入らないぞ。そのうち、なんにも思考できない“もの”のようにしてやるからな。そうすれば楽になる。苦しいともつらいとも、なんにも感じなくなる。そうしたら、解放してやるよ。だが、人間であるうちは、こうやって愉しませてもらう。だから、解放して欲しければ、一生懸命に“もの”になるように努力するんだ、ボニー」
ロウがボニーの背に乗ったまま両手を床に垂れている乳房に当てた。
揉み始める。
今度はびっくりした。
「ひっ、いいいいっ、あ、ああっ、あがあっ……がっ……ああっ」
ボニーはまたもや声を迸らせた。
それは苦痛の声でもあったが、いきなり襲って来た快感に対する悲鳴でもあった。
ロウの手はなんでもないようにボニーの乳房を揉んでいるだけなのに、そこから信じられないような愉悦が沸き起こるのだ。
まるで乳房が溶けるような気持ちよさ……。
背中の激痛に加えて与えられる甘美な快感にボニーは頭がおかしくなりそうになった。
「ロ、ロウ様、そろそろ勘弁してあげてください。もう半日以上も経っていますよ。ボニーが死んでしまいます」
エリカが耐えられなくなったように叫んだ。
苦痛と快楽の狭間でボニーはエリカに視線を向ける。
エリカは清楚な感じの短いスカート丈の貫頭衣を身に着けていた。
手に乗馬鞭を持っている。
どうやら、拷問を加えているロウの助手を務めているという様子だ。
だが、さっきからボニーを庇うようなことを口走ってくれている。
よくわからないが、このボニーに対するロウの仕打ちに嫌気が差してきている様子だ。
だが、半日?
なんのこと?
「さっきから、なにを言ってんだ、エリカ。こいつは、お前と俺を殺しにきた刺客だぞ。なんで庇うようなことばかり、口にしてるんだ?」
ロウが興醒めしたように乳房から手を離した。
だが、まだ背中に乗ったままだ。
ボニーは歯を食い縛った。
「だ、だって、ボニーも喋ったじゃないですか。首輪の命令でやらされただけだって……。わたしにもロウ様にも、邪心はないんですよ。とにかく、少し休ませてあげませんか? 本当に死んでしまいます」
「心配しなくても、死なせはしないさ。俺は折角だから、人間が拷問で完全に破壊する実験をするつもりなんだ。こいつをなんにも考えられない息をするだけの“もの”にする。幸いにも、こいつは自殺ができないようにアスカの命令で暗示がかかっているしな。とにかく、死の一歩手前の苦しみを与えるだけさ。苦痛でも快楽でもな」
「で、でも……」
エリカは困惑気味だ。
それにしても……。
もう半日経った……?
ボニーが喋った……?
よくわからない。
自分はなにかをすでに白状しているのか……?
疑念が起きる。
「まあいい。とにかく、そろそろ水分くらい与えないとな」
「んぐううっ」
ロウがボニーの背で身じろぎしたので、またもや激痛が走り、ボニーは声をあげた。
だが、ロウはボニーの背から降りただけだ。
まだ、激痛は続いているが、やっと耐えられるだけの苦痛にまでなった気がする。
ボニーは激しく息をした。
そのボニーの身体がからからと下がる。
ロウが天井に手を向けて、魔道を加えているような感じで、ボニーの四肢を吊る縄をさげている。ボニーを吊り下げている縄は、天井でフックにでも繋がっているのか、自在に高さを調整できるようだ。
しかし、目の前のロウは、別段になにかの操作具を動かしている気配もないのだが……。
やがて、下降が止まる。
ボニーは、顔がちょうど立っているロウの股間に当たるくらいに高さを調整された。
「水を飲ませてやろう。口を開けろ。俺もちょうど小便がしたかったところだ」
ロウがボニーの顔の前でいきなりズボンの前から男性器を取り出した。
水を飲ませるって……。
まさか……。
小便?
「な、なによっ」
ボニーは驚いて、慌てて顔を横に向けた。
「抵抗しても無駄だぞ、ボニー。命令に従うんだ。口を開いて、俺の小便を一滴残らず飲め──。“ハロンドール王国の夜明けは、赤葡萄酒とタルタルチーズの組み合わせが一番だ。なにしろ、白い鳥が大声で笑うからな”」
びっくりした。
そして、唖然とした。
なぜ、ロウが、キシダインから与えられていた暗号の言葉を知っている──?
ボニーは、このおかしな呪文のような言葉を耳にすると、誰であろうと命令に従うように、イザベラを襲う前にキシダインから首輪の力で暗示をかけられていた。
その言葉をどうして、ロウが知っている?
とにかく、ボニーの口は命令に従って、口を開いた。
それがボニーの自由意思でないことは明白だ。
ボニーの身体は勝手に動いている。
口のなかにロウの性器が突っ込まれた。
すぐに、放尿を始まった。
「んっ、ぐっ」
口の中にロウの尿が注がれ続ける。
ボニーの口は“小便を全部飲め”という命令に従い、懸命に喉や舌を動かして、身体に飲み込ませている。
な、なんで……?
ボニーは泣きそうな屈辱感を感じた。
そして、さらに口惜しいのは、このロウの尿をおいしいと感じている自分だ。
どうやら、本当に長く拷問されていたのだろう。
ボニーの身体は水分を失って乾ききっていたようだ。
その身体に与えられる水分は、それが小便であろうともおいしい……。
「なんだ、うまいのか? だったら、この家の小便壺にしてやるか? エリカ、どうだ。俺たち全員の小便をこいつに毎回飲ませることにしようか」
ロウが下品な物言いでエリカに顔を向けた。
「冗談じゃありません」
エリカが怒ったように言った。
やっと放尿が終わる。
口からロウの性器が抜かれた。
もうボニーは、それだけで精根尽きたような気持ちになった。
そのとき、部屋の外から足音が聞こえた。
すぐにふたりの女が入ってきた。
小柄な黒髪の女と白銀の長い髪をした女だ。
いずれも美人だが、小柄な女は童顔でどちらかというと可愛らしいという顔つきだろう。
白銀の女は端正な美女だ。
小柄な方はコゼ……。
白銀の髪はシャングリア……。
いずれも、エリカ同様に、ロウの冒険者仲間だ。
ボニーは事前の調査でそれを知っている。
おそらく、エリカと同じように、ロウはこの美女たちも淫魔術で支配しているのだろう。
卑劣な男だ……。
しかし、それで思い出したが、小離宮における王女付きの侍女長のシャーラの態度を思うと、もしかしたら、このロウはあの魔道戦士のエルフ女さえも淫魔術で支配しているのではないかと思った。
イザベラ王女を淫魔術で支配しているのは間違いないし……。
ボニーが潜入したとき、どう考えても王女とロウは逢瀬の最中だったし、シャーラは完全にロウの言いなりだった。
こいつは、一介の冒険者でありながら、一国の王女でさえも、自分の精の支配下に置いているのだ。
なんというやつなのだろう。
「おう、コゼ、シャングリア。姫様とシャーラはどうした? もう、戻ったか?」
ロウが性器をズボンにしまいながらふたりに声をかけた。
「戻った。こいつが喋った情報を元に、侵入を手引きした者を王兵に捕らえさせると言っていたな。ただ、用心深いキシダイン卿のことだからな。どこまで尻尾を掴めるかわからんが、とにかく、追いかけると言っていた。まずは、侍女のイエンとかいう女を探すそうだ。例の樽はもう外に出ていた後のようだがな」
シャングリアだ。
だが、愕然とした。
侍女のイエンのこと……。
しかも、イエンを宮殿の外に出すために使った樽のことまで……。
シャングリアは口にしたことは、ボニーが喋らなければ、絶対に知り得ないことばかりだ。
そういえば、ロウはボニーを操るための合言葉を完全に知っていたし……。
「……あっ……、あ、あの……。も、もしかして、あたしは、すでに自白した……?」
そうとしか考えられない……。
だが、よく覚えていない……。
すると、笑い声がした。
コゼだ。
「あら、なんにも覚えていないの、ボニー? そうよ、ご主人様の淫魔術とスクルズ様の魔道で繰り返し交互に操心術にかけられて、なにもかも喋ったわよ。あんた、魅了術とかいう操心術が得意技らしいけど、自分がかけられた気分はどう?」
そのコゼが寄ってきた。
操心術……?
ロウたちが自分に……?
そして、スクルズ?
スクルズって誰……?
驚いたが、思念はそこまでだ。
再び激痛が走った。
コゼがさっきのロウのように、無造作にボニーの背中に乗ったのだ。
しかも、尻を上下させて、どんどんと飛び跳ねるような動きをしている。
「んぎいいいいっ、ふぐううううっ」
あまりの苦痛にボニーは絶叫した。
「も、もうやめなさいよ、コゼ。拷問は終わったのよ」
エリカが叫んだ。
「なに言ってんのよ、エリカ。ご主人様は、こいつに拷問のための拷問を続けるとおっしゃってたわ。そうですよね、ご主人様?」
コゼがボニーの背で立ちあがった。
今度はボニーの四肢を吊っている鎖を両手で持ち、本当にブランコのように揺らし始める。
「はぎいいっ、やめてええっ、あぐうううっ」
本当に背骨が折れるかと思うような激痛だ。
ボニーは泣き叫んだ。
「そのとおりだ、コゼ──。そもそも、エリカ、お前、さっきからうるさいぞ。それとも、お前が代わりに拷問のための拷問を受けるというのか? それなら、ボニーをそのあいだ休ませてやってもいいぞ」
ロウが意地の悪い口調でエリカに言った。
「な、なんで、わたしが……」
エリカは困惑口調で答えた。
「そうだろう? だったら、邪魔するんじゃない」
そして、壁の一画に近づいていく。
すぐに、ロウはなにかの小壺を持って戻ってきた。
「あら、ご主人様、それを使うんですか?」
コゼが愉快そうに言った。
「使うさ。俺のやる拷問いえば、やっぱり、これさ……。女の尊厳を簡単に奪うのは、これが一番いい。これを塗って放置すれば、もう、俺に逆らう気力は消え去るだろうしな」
ロウが言った。
コゼが、「それはいいですね」とロウに媚びを売るような言葉をかけて、ボニーの背から飛び降りる。
とにかく、背中が解放された。
とりあえず、苦痛が去る……。
ボニーはほっとした気持ちが沸くのがわかった。
だが、ロウはなにを持って来たのだ……?
嫌な予感が走る。
だが、それよりも、気になることがあった。
やはり、自分は本当にすでに自白させられたのだろうか……?
だが、操心術であろうとも、奴隷の首輪で与えられている命令は無効にはできないはずだ。
手で触ることはできないが、ボニーの首にはまだしっかりとアスカにかけられた首輪が残っているのはわかる。
「ね、ねえ、あたしは、本当に操心術で自白させられたの……? で、でも、首輪があるのに……」
ボニーは疑念を口にした。
「おう、喋ったぞ。ついでに教えておくが、抵抗されないとつまらないから、心の変換はしてないが、あんたは、すでに俺に二、三発犯されて、俺の淫魔術に支配されている状態にある……。それと、あんたの首輪がキシダインに隷属されている状態であって助かった。アスカの支配のままだったら、外れないところだったしな」
「外れた?」
いま首輪が外れたと言ったか?
すると、ロウの手がボニーの首に伸びた。
首を絞められると思ってびくりとなったが、ロウはボニーの首に手を触れさせただけだ。
しかし、ロウの手がボニーの首を撫ぜ回っているのに、なにも当たっている感じがない。
本当に隷属の首輪が外れたのだろうと思った。
愕然とした。
それとともに、興奮で身体が震えてきた。
首輪が外れた……。
本当に……?
本当に……?
「俺は犯した女の大抵のことを感じることができる。お前の首輪は確かに最初は、アスカの支配だったが、パリスに全面的に譲渡されたかたちになっていて、次いでキシダインをメインの主人として刻まれていた。キシダイン程度だったら、俺でなくても、スクルズでも外せる。いずれにせよ、首輪は外したよ」
ロウが宙から物を取りだすように、ふたつに割れた銀色の金属環をボニーの目の前に示した。
確かに、ボニーに嵌められていた隷属の首輪だ。
「ちょっと待って──。く、首輪が外れたのね? 本当に? 本当なのね。待って、待ってったら。だったら、なんでも話すわ。あたしは、アスカにもパリスにも、なんの義理立てはないのよ。人殺しなんてしたくもなかった。召喚されて、妙な能力をつけられて、そして隷属させられて、仕方なく……。だけど、首輪が外れたんなら、もういいの。どんなことでも話すわ。だから……」
しかし、ロウが首から手を離しながら嘲笑するように笑った。
「いまさら、なにも訊ねることなんてないさ。そのまま操心術にかけて、なにもかも全部口にさせたからな。お前から搾り取れる情報はもうないはずだ。シャーラも戻った。今頃は、お前の自白に基づいて動き回っている。どこまでキシダインの尻尾を掴めるか知らないけどね」
ロウが言った。
「ぜ、全部……?」
怪訝に感じた。
「そうだ。全部だ。もう訊ねたいことなんてない……。ああ、それと、キシダインの施した呪文だけは面白いから効果を残した。あれがあれば、淫魔術を遣わなくても、あんたを言いなりにできるからな」
ロウが笑いながら言った。
ボニーは愕然とするしかなかった。
ロウの喋ったことの半分くらいは意味がわからないことだったが、本当のことを言っているのだということはわかる。
本当になにもかも喋らされたのだ。
「だ、だったら、なんのための拷問なの──? あたしから情報を取りだしたんだったら……。もしも、まだ訊きたいことがあるなら試してみて。もう、あたしはどんなことでも話すわ。喜んで、あなたに協力するし……」
「お前の役割はさっき言ったはずだぜ。これは実験だとね……」
「実験?」
「人間を拷問の末に、“もの”にしてしまう実験だ。なにをどうすれば、心が潰れて、生きるしかばねになるのかの実験台になってもらう。ああ、念のために言っておくけど、自殺も無駄だ。できないように暗示をかけている。つまり、ボニーが受けるのは、拷問のための拷問ということだ。愉しみだなあ」
ロウがけらけらと笑った。
拷問のための拷問……?
ボニーからなにかを訊きだすためじゃなく、ロウの愉しみのための拷問……。
背に冷たい汗が流れるのがわかった。
「いずれにしても、今夜はこれで終わりだ。とりあえず、俺も休みたいしな。もう夜中だ。朝までは休憩にしてやるぞ、ボニー」
ロウがそう言いながら、壺の中身をどぼどぼとボニーの尻にかけた。
液体というよりは、かなりの粘性のある油剤のようだ。
大量にかけられたその油剤が、ロウと、さらに伸びてきたコゼの手により尻から股間に拡げられる。
「んんっ、な、なによ、これ……。ああっ、くっ……」
「お手伝いしますね、ご主人様」
コゼも油剤に手を伸ばす。
ふたりの手がボニーの
こんなので感じた仕草をしてしまうのは恥ずかしいのだが、ロウとコゼの手が股間に触れると、全身にびりびりとするような愉悦が走るのだ。
特に、ロウの手……。
なんだ、これ……。
これが淫魔師の手管……。
ボニーは恐ろしくなった。
だが、そのロウもコゼもすぐに手を離した。
ボニーはほっとした。
「……すぐに泣き叫ぶでしょうね」
しかし、コゼが意味ありげにくすくすと笑った。
「まあな。じゃあ、ボニー、今夜だけはひとりにしておいてやる。休憩だ。明日からは、しばらく不眠調教に入る。今日はたっぷりと寝ておけ」
ロウがそう言って、エリカたちを部屋の外に促し始める。
そして、出ていく。
だが、なぜか、コゼだけがそばに残った。
「……もっとも、眠れればの話だけどね……」
最後に残ったそのコゼが、瓶から油剤を手に取り、さらにボニーの床に向いている二つの乳房に油剤を塗る。
「うっ、くっ」
ボニーはたちまちに拡がるおかしな感覚に襲われて、不自由な身体をもがかせた。
そして、手が離れる。
「じゃあね、ボニー。それ、いつまで経っても痒みは消えないから。明日の朝、ご主人様に泣いて頼むのよ。早く発狂できればいいわね。ご主人様は、あんたの精神が破壊できれば、責めは終わりって言っていたわよ」
コゼが瓶を手に持って、ロウたちに続いて部屋を出ていった。
痒み?
とにかく、ボニーはひとりぼっちにされた。
「あっ、こ、これは……?」
しかし、ボニーはすぐに自分の身体におきた異変に恐怖を感じた。
塗られたのが痒み剤だというのは、コゼの言葉でわかったが……。
これは……?
いや、これは──。
「あ、あああああっ、や、やあああああっ、た、助けてええ──。お、お願いよおおっ、戻って来て──。お願いいいいっ」
ボニーは彼らが本当に行ってしまう前にと思って、精一杯の声をあげた。
痒いなんてものじゃない──。
気が狂うほどの激痛にも似た痒みが、ボニーの股間と乳房に沸き起こってきた。
しかも、その痒みは数瞬ごとに倍化していく感じだ。
こんなの耐えられるわけがない。
だが、明日の朝まで放置とか言っていた……。
そんな……。
そんな……。
か、痒い──。
股間が灼ける──。
乳房が……。
痒い──。
狂う──。
本当に狂う──。
「ああ、置いていかないで──。なんでも喋る──。喋れることは、なんでも喋るから──。お願い。なんでも訊いて。ああっ、戻って来て──。屈服する。屈服するから──」
とにかく、ボニーはありったけの大声で、部屋の外にいるはずのロウたち助けを求めて叫び続けた。
*
「んぐううううっ」
ボニーは床をのたうち回った。
股間の肉芽と乳首の根元に装着された淫具から、一斉に電撃が流されたのだ。
口から悲鳴が迸らなかったのは、口に嵌められている穴付きの球形の猿ぐつわのためだ。今朝は朝からそれを嵌められっぱなしなので、もう口の中の涎は乾き切り、悲鳴をあげても涎が迸るわけじゃない。
「誰が休んでいいと言った。今度、止まったら、また、あの痒み剤を塗って放置するぞ。今度は丸一日だ」
寝椅子に身体を横たわらせて、ボニーの仕事を監督していたロウが、ボニーの身体に装着した電極の操作具を横に置いて言った。
とにかく、電撃が止まった。
ボニーは疲労困憊の身体を脱力させた。
そのロウの股間では、シャングリアという女が頭を埋めて、一心に奉仕を続けている。
ロウもシャングリアも全裸であり、ああやってシャングリアが口吻をし始めて、もう一ノス以上になるだろう。召喚前の世界の時間間隔だと一時間近くだ。
本当によくやる。
だが、女に一時間近くも口奉仕を強要するとは、ロウも女扱いが酷いと思った。
そして、ロウの冷酷さを垣間見た気分だ。
ボニーはよろよろと立ちあがった。
両腕が背中で水平に重ね合わされて革帯で拘束されているために、立ちあがるのは簡単ではなかったが、すぐに立たなければ、ロウはまた、あの操作具で電撃を流すだろう。
剥き出しの股間と乳首に直接流される強烈な電撃は、痛みとか、衝撃とかで表現できるものじゃない。
まさに恐怖そのものだ。
ボニーは、自分の身体が電撃の恐怖の怖れで、口惜しくも震えるのがわかった。
このロウに捕らえられて、おそらく、もう二日くらいは経ったのではないだろうか。
はっきりとした時間の感覚は消えている。
ボニーは、意識のある時間のほとんどをロウか、ロウの女たちから責められるという時間を過ごしていた。
まさに、ボニーを壊すための拷問だった。
初日の痒み放置から始まったボニーへの数々の拷問は、いまは壁の一方にある二十本ほどの長細いものを右側の壁際から反対側の壁側に移動させるということに変わっている。
部屋の両側に線が引いてあり、一方にあるものを反対の線の内側に移動させるのだ。
動かすものは、ボニーの前の世界にある「ボーリングのピン」に似ていた。
違うのは、先端の細い部分が、触手を思わせるうねうねと動くものに変わっているということと、倒れてもすぐに勝手に立ち上がって、真っ直ぐに上を向くようになっているということだ。
残りは一本──。
すでに、十九本が終わっている。
ボニーは、最後の一本を持つために、「ピン」の真上でがに股になった腰を沈めていった。
運べと言われても、口にはボールギャグがあるし、両手は革紐で後手に封じられている。
ロウに命じられたのは、股間で先端を咥えて運ぶことだ。
「んんんっ」
十九本も運んだので、すでにボニーの股間は、ピンの刺激で濡れている。
それほどの抵抗もなく、ピンの先端がボニーの膣の中に吸い込まれる。
「んんっ、んんっ、んんっ」
ボニーはたちまちに襲い掛かる淫らな刺激に、歯を食い縛った。
「ピン」の先端の触手の部分が、ボニーの体内に入ると、股間の内側の全部をまるで舌で舐めるかのように動くのだ。
ボニーは、刺激に耐えて、膣を締めつける。
また、「ピン」はそれなりに重さがあるので、結構、力を入れないと、途中で落ちてしまう。
ただでさえ、ボニーが滴らせる愛液で、ピンが滑りやすくなっている。
でも、途中で落とせば、電撃をしばらくのあいだ流しっぱなしにされるのだ。
たったいまの電撃は、疲労と睡魔でぼうっとしたことに対する「罰」なので一瞬だったが、ピンを落とした場合の罰は、それが永遠と思うほど続くのだ。
それが耐えられるものではないことは、すでに数回の洗礼を受けているボニー自身の身体と心に染みついている。
しかも、一本でも途中で落とせば、最初からやり直しということになっている。
もう、かなりの時間続けてやっているが、いまだに一度も二十本を続けて運び終わるということはしていない。
だが、やっと最後の一本──。
これまで限りない失敗を繰り返して、コツも飲み込んで、やっとのこと、ここまで終わったのだ。
もう、ここで失敗するわけにはいなかい。
「んんっ、んっ、んんっ」
なんとか股間で、「ピン」を咥え終わったボニーは、今度はがに股のまま歩くことになる。
歩きときには、さらに力一杯にピンを締めつけるために、泣きそうになるくらいに快感が増幅する。
とにかく、それに耐えて、ボニーは進む。
残りの距離は半分……。
ボニーは必死に股間を締めつけながら足を進めた。
「んがああっ」
そのときだった。
突然、肉芽に嵌まっている電撃の電極が淫らな振動をし始めたのだ。
電撃の激痛ばかり与えられていた電極が振動をするなんて初めてだし、予想もしていなかった。
ボニーは腰が抜けたようになり、その場にしゃがみ込んでしまった。
その動きで、ピンはカラカラと音を立てて、ボニーの股間から抜け落ちて、床に転がってしまった。
「残念だったな、ボニー。やり直しだ」
ロウが操作具を持って、笑いながら手をピンに向ける。
ピンが消滅して、床に残っていたピンとともに、最初にあった側の部屋の片方にまとまって出現した。
ボニーは号泣してしまった。
*
「本当に、愚図ねえ」
脚がよろけて床に転んだボニーは、コゼに思い切り蹴飛ばされた。
右から左に、ピンを股間で移動させるという作業が、いまだに続いている。
もう、何十回、いや、百回以上も同じことをしていた。
終わりはない。
最初は二十本を運び終われば、次の責めと言っていたのに、いつの間にか、延々と続く繰り返し作業を強いられることに変わっていた。
股間で運搬をする途中で電撃や振動で邪魔されることはほとんどなくなった。
その代わり、二十本を運び終われば、今度は反対側に同じやり方でそれを戻す。
すっとそれの繰り返しになった。
いまにして思えば、二十本を運び終わればいいと言われて、それを途中で邪魔されているときの方が、遥かに精神的には楽だったと思う。
少なくとも、もしかしたら、この作業が終わるのではないかという希望があった。
いまは、希望すらない……。
いまは、延々と同じことをやらされるだけ。
頭がおかしくなりそうだ。
しかし、やめれば、怖ろしい電撃──。
とにかく、動き続けるしかない。
ボニーはもうふらふらだった。
「ほら、さっさと立つのよ」
コゼが険しい表情で怒鳴った。
ボニーを拷問しているのはコゼだ。
ロウはいったん休むと言って、部屋の外に出ていった。
いまは、このコゼひとりが、ボニーの相手をしているという状況だ。
ボニーをいたぶる役は、大抵はロウかコゼのどちらかだった。どうやら、ロウとコゼが、交代で拷問役を務めている感じだ。
シャングリアはひとりでは来ない。
どちらかに混じることが多いが、ほとんどはロウと一緒に来る。
シャングリアについては、拷問役というよりは、ボニーを責めるロウの性の相手をするということがほとんどだ。
また、エリカの姿はしばらく見ていない。
エリカは、ロウがボニーを冷酷に責めるのをたしなめるようなことをずっと言っていたので、もしかしたら、ロウから責め役を外されたのかもしれない。
とにかく、交代で責めているらしいロウとコゼが、入れ替わるのも、もう十回を超えている。
食事と食事の間隔で交代しているような雰囲気だが、十回になったということは、もう三日くらいこれが続いているということだろうか。
そのあいだ、一応はボニーにも食事が与えられる。
拷問を続けるために、弱らせすぎないようにという配慮のようだが、それが唯一の休息時間といえば休息だ。
ただ、食事のときには、乳首と肉芽の責め具は最大振動で動かされる。
ボニーはよがり狂いながら、皿に盛られた餌のようなものを犬食いするというわけだ。
少しでも食べるのをやめれば、やはり電撃──。
食事といえども、それさえも拷問そのものだった。
また、水はロウの尿だ。
ロウが当番のときには、求めれば与えられる。
もう、ボニーもロウの小便を飲むということに、それほどの抵抗はなくなっていた。
「あがあああっ、も、もうやめっ、てええっ、た、立つうっ、立つからああっ」
ボニーは絶叫した。
いまはボールギャグはされていないから、それは少し楽かもしれない。
ボールギャグをされて、作業をやらされると、あっという間に口の中がカラカラになりつらいのだ。
それがないだけ、少しは楽だ。
電撃が終わった。
ボニーはなんとか立ちあがった。
「うあっ」
だが、また転んだ。
もう脚に力がはいらないのだ。
コゼが電撃を淫具で股間に電撃を送り込んできた。
「んぎいいいいっ」
ボニーはもがき狂った。
電撃のあいだは、とても立つことは不可能だ。
終わってから立つしかない。
そして、電撃が終わる。
でも、疲労困憊のボニーには、もうどんなに苦しめられても立てなかった。
コゼがもう一度電撃を加えたが、ボニーはそのあいだ絶叫して身体をもがかせただけであり、終わっても立たなかった。
コゼが盛大な舌打ちをした。
もうだめだ……。
ボニーは、電撃を与えるなら、いくらでも与えろという気分になった。
そう思うと、身体の疲労がどっとボニーを包む。
たちまちに睡魔が襲う……。
もういい……。
苦しめるなら、いくらでもやれ……。
どんなに痛めつけられても、動けないものは、動けない。
どうやら、限界を超えた睡魔と疲労が、あの電撃の恐怖を上回ったようだ。
ボニーの意識は、すっと消えていった。
とにかく、なにがつらいといって、眠れないということよりもつらいことはない。
このピン運び作業が始まって、ボニーは一度も睡眠を与えられていない。
ボニーが寝ないように、ありとあらゆる方法がとられた。
だが、どんなに超人的な体力があろうとも、眠らなくては生きてはいけない。
しかし、睡魔と疲労で意識が薄れると、必ず電撃を加えられて、容赦のない苛酷な現実に戻される。
そして、作業をさせられる、
「な、なに?」
そのときだった。
股間に違和感を覚えたのだ。
つんとする刺激臭と、あの独特の股間に熱さ……。
襲ってきた感覚に、ボニーは無理矢理に覚醒させられてしまった。
「残念だけど、どんなことがあっても、休ませるなとご主人様に言われているのよね。さあ、これでも立たないことができるかしら?」
いつの間にコゼがボニーの身体をの前にしゃがみ込んでいて、初日に施されたあの痒み剤の瓶を持っていた。
どうやら、すでにボニーの股間に、その恐ろしい痒み剤をまたもや塗ったようだ。
その証拠に、発狂するよな痒みがまたもや、襲い掛かって来ていた。
「あああっ、そんんなあっ、か、痒い──。ああ、また、あれを塗ったのね。ああ、ひどい、ひどい、ひどい──。言うことをきけば、あれだけは塗らないと約束したくせにいっ」
ボニーは絶叫した。
耐えがたい痒みは、すでにボニーに襲っている。
「そんな約束したかしら? どっちにしても寝ようした罰じゃないのよ。今度からはずっと塗ってあげるわ。そうすれば、作業に身が入るでしょう。さあ、股間でピンを運びなさい。ピンの先っちょのベロがあんたの痒い場所を刺激してくれるわよ。さもないと、痒みで狂うわよ」
コゼが大笑いした。
ボニーは立ちあがった。
電撃の恐怖よりも、なによりもこの痒みは怖い。
ボニーは痒みを癒したくて、出るはずのない力を総動員して、股間でピンを咥えるために動き出した。
*
作業が続いている。
もはや、思考は停止している。
「んあああっ」
ボニーが腰を屈めて膣にピンを挿入すると、たちまちに股間に拡がる快感に打ち震えた。
恐ろしいほどの痒みが、触手の動きで癒される快感と恍惚感……。
ボニーは、もうそれでなにも考えられなくなる。
「ふわあああっ」
大きなあくびの声がした。
ボニーは、それでいま、ボニーを「監督」としているのがロウだとわかった。
ただ、もうボニーを作業に急き立てる苦痛のようなもの与えない。
この作業そのものが、ボニーに延々と続く作業をやめることを拒むのだ。
痒み剤を併用したピン運びの作業の責め苦は、いまだに継続中だ。
違いは、途中から、最初はコゼに直接塗られた痒み剤が、いまはボニーが股間に咥える触手の表面に浮かべるようになっているということだ。
そのため、ボニーは痒みを癒すためにピンを股間で咥え、そのことで新しい痒みを発生させてしまい、その痒みを除くために、またピンに跨る……。
それをひたすらに繰り返すしかなくなっていた。
休むなど、とんでもない。
少しでも止まれば、狂ったような痒みがボニーを襲う。
ボニーは、どんなに疲れていても、股間のピン運びを続けるしかない。
とにかく、もう嫌だ。
疲労の限界は、遥か昔に過ぎていた。
いまは、思考することもできずに、ただ残っていない力を振り絞って作業を継続するという行為が続いているのみだ。
言い知れぬ不安がボニーを包んでいる。
追い詰められている……。
それはもうわかっている。
しかし、怖いのは、このまま、どんどんと追い詰められて、その先になにがあるのかということだ。
深い、深い、深淵の闇……。
自力では脱出できない、漆黒の迷宮……。
己の精神の崩壊をしっかりと自覚させられる恐怖……。
実際、ボニーは、こうやって膣でピンを運ぶという無限作業をしながら、自分が意味不明の言葉を口走っているときがあり、何度もぞっとしたことがあった。
その頻度も多くなっている気がする……。
「もう、許して」、「お願いだから、やめさせて」──。
なんど哀願したかわからない。
その都度、戻ってくるのは、ロウの冷笑……。
「いい加減に飽きたな。そろそろ、やめるか、ボニー──。犯して欲しければ、犯してやるぞ。もしも、俺が達するまで意識を保っていられたら、この責め苦を解放してやろう。その代わり、途中で気を失えば、また、無限拷問だ」
ロウが言った。
「お、おれがい……。おれがいしひゃす……」
ボニーは歓喜の声をあげていた。
やっと、終われる。
それは希望だ。
自分の舌がびっくりするほどもつれて、うまく喋れないことに驚いたが、それはいい。
ボニーは運びかけていたピンを床に離して、ロウににじり寄っていた。
なんでもいい。
解放されたい。
この延々と続く、発狂するような作業を許されたい。
ロウはボニーを横たわらせた。
この部屋にいるときのロウは、いつも裸なので、すぐに剥き出しの性器が迫ってきた。
すでにロウの性器は勃起している。
ボニーの股間にロウの性器が埋まっていく。
「きゃうううっ」
自分の口から聞いたこともないような声が迸った。
わけがわからなかったが、単純に快感と呼ぶには、あまりにも大きな愉悦のうねりが襲い掛かった。
魂を灼くような気持ちよさ……。
なんだこれ……?
ボニーは我を忘れた。
女の尊厳をすべて奪うような、単純な「ピン」の振動だけを相手にさせられた作業の中で、ボニーは自分を女としてはもちろん、人間としても完全に否定されたような気持ちにずっとなっていた。
だが、いま、ロウという生身の人間に犯されている。
そのことがこんなに嬉しくも、ありがたいことだとは思わなかった。
ボニーの腰は、そんなことをする必要がないのに、自然と腰が動いている。
「あ、あああっ、んはああっ、はああああっ」
駄目だ……。
気持ちよすぎる……。
ロウの心に吸い込まれる……。
そんな錯覚がボニーを襲う……。
律動が続く。
懸命に意識を保とうと努力するが、ロウのひと突き、ひと突きは、ボニーの意識をそれだけで奪ってしまうような激しい甘美感を与える。
だが、ロウという人間に犯されているこの快感は、あの闇の中に生まれた一筋の光明だ。
ボニーは、そのロウという光にむさぼりつかないではいられなかった。
道具ではなく、人として扱われている。
それは、壊れそうなボニーの心に射したかすかな希望のように思えた。
「いぐううううっ」
すぐに絶頂がやってきた。
ボニーは、陶酔とともに、すべての感覚を一気に飛翔させた。
「……まあ、情けだ。俺も達してやるよ。これを受けたら少し休んでいい。このまま続ければ、あと一日くらいで壊れただろうけど、壊すのは数日先にするか」
ロウが呆れたような口調でそう言った。
次の瞬間。ロウの精がボニーの子宮に迸ったのがわかった。
ありがとうございます……。
本当に、ありがとうございます……。
ボニーは心からの叫びを心で口にした。
いつの間にかボニーは泣いていた。
それが口惜しみの涙なのか、屈辱の涙なのか、あるいは、悦びの涙なのか、いまのボニーには、まったく自分の感情がわからなくなっていた。
とにかく、眠れる……。
ボニーは、許された束の間の睡眠に自分を精神を沈めさせた。