【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
164 囚われのふたり
「し、失礼します、アン様……」
部屋の扉の外から声がした。
アンは部屋の中心にある寝台を椅子代わりにして腰かけていたが、扉の方向に向かって返事をした。
この部屋には、寝台以外の家具は存在しない。
机もないし、椅子ひとつない。
服や身の廻りの品をしまう棚さえもない。髪をとく櫛のような、ちょっとした小道具さえも、この部屋には置かないようにキシダインが厳命しているからだ。
必要なものは、その都度、家人に持って来させればいい。
キシダインがそう言うのだ。
もっとも、キシダインは、思わぬ手段で、アンがこの屋敷の外と連絡をするのを極度に恐れているのだ。それで、この部屋にはなにも置かないようにしているというわけだ。
また、キシダインの言い分によれば、王族のくせに魔力を帯びないアンは、キシダインに性奉仕するくらいしか価値がないのだから、寝台以外のものが必要であるわけがないという。
この寝台しかない部屋は、キシダインの妻になって以来の、アンの牢獄でもある。
「どうぞ、ノヴァ」
返事をすると、車付きの手押し台を押してノヴァが入って来た。アンがキシダインに嫁ぐときに連れて来た侍女のひとりであり、いまとなっては唯一の侍女だ。
もともと王家の娘として、嫁ぐときに連れて来た侍女や従者は、十数人ほどだった。
だが、そのうちの何人かは、キシダインに理由をつけられてすぐに解雇され、さらに数名については、最初の頃にアンがこのキシダインの屋敷から逃げ出そうとしたときに、見せしめとして、アンの目の前で毒殺され、そして、残りの数名はいつの間にかいなくなってしまった。
そして、残ったのが、この十七歳のノヴァだ。
人間族の美少女だったノヴァは、二年にわたるアンの監禁生活に従うにつれ、十七歳の美しい女性に変わった。
貴族ではなく、小間使いとして雑用をするために雇っていた貧しい家の娘だ。だからこそ、キシダインの粛清のような侍女狩りの対象にならなかったといえる。
いまとなっては、このノヴァがアンの唯一の心の支えだ。
ノヴァがいなくなれば、もはや、アンはここの生活に耐える力を完全に失うだろう。
アンがノヴァを離さないのは、ノヴァにとって限りなく不幸なことだということは承知している。
しかし、アンにはノヴァが必要なのだ。
そうでなければ、この地獄のような生活に耐えられるわけがない。
だだ、耐えられなくなっても、あのキシダインは、魔道の力で、アンに自殺をすることも許さず、この屋敷の中の限られた「奥の院」という場所から脱することも許さないだろう。
死のうと思ったことも、逃亡しようと思ったことも、一度や二度でない。
その都度、キシダインがアンにかけている魔道の力により阻止された。アンが逃亡のことを考えるたびに呼吸が停止するようになっているのだ。
アンは繰り返される七転八倒する苦しみによって、逃亡について思考しないことを心と身体に染みつけさせられた。
それだけでなく、助けを求めようとして外に連絡を取ろうとするたびに、身近な従者たちを殺されていったりもした。
いまや、このノヴァだけだ。
今度逃げようとすれば、キシダインは容赦なくノヴァを殺すだろう。
おそらく、アンの目の前で……。
もはや、アンは逃亡の意思さえ失っている。
「失礼します……」
ノヴァは、台車を押して入ってきた。
食事のようだ。
ノヴァの押してきた台車には、野菜と肉のスープ、蜂蜜とチーズの乗ったパン、魚の揚げ物、果物と果実水などが載せられている。
「ゆ、夕食です。でも、申しわけありません。食事が冷えてしまいました……」
ノヴァが項垂れて言った。
アンは、ノヴァの手を取り、その身体をアンの近くに寄せた。
「ああっ……」
ノヴァが顔を赤くして俯いた。
アンはノヴァの侍女服の胸元の乳房の谷間に鼻をつけた。
「ひ、姫様……」
ノヴァは乳房にアンの顔をぴったりと密着されて、狼狽えたように言った。
アンはくすりと笑った。
「……アンでしょう。姫様と呼ぶと、また叱られますよ」
キシダインは、この家の者にアンのことを“姫様”と呼ぶことを禁止していた。このキシダイン家に嫁いだ以上、もはや“姫”ではないというのが理由だが、実際には、それを、昔からの習わしで“姫様”と呼ぶことが多かったアンの連れて来た家人を折檻する理由にしていたのだ。
いまとなっては、もともとの家人は、このノヴァだけなので、“姫様”などという懐かしい呼び方をするのは、このノヴァだけだ。
「……またベーノムたちに嫌がらせをされたのね……。ごめんなさい。わたしのために……」
アンはノヴァの手をさらに引き寄せ、両手でノヴァを抱き寄せてぎゅっと抱いた。
「あっ……」
ノヴァは寝台に腰かけているアンの膝の上に軽く腰かける態勢になった。ノヴァは狼狽はしているが、嫌がってはない。ノヴァもアンに甘えるように、身体をアンに擦りつけてくる。
ノヴァの身体からは、新しい男の精の匂いがぷんと匂っていた……。
ベーノムというのは、キシダインの遣う部下のひとりでり、獣人族の傭兵隊長だ。
獣人族は、房毛のついた耳や尾を持つ、西の三公国に多くいる種族だが、何度も人間族の施政者から不当に虐殺された歴史があり、もはや人数は大陸でも多くはない。
しかし、一度仕えた主人に対する忠誠心が絶対的に厚いと知られていて、キシダインはそれが気に入って、自分を守る者としてベーノムを使っている。
ベーノムは、キシダインの私兵隊長として、屋敷やキシダインの身の回りの警護などをするのが役割だが、「奥の院」と呼ばれるこの屋敷の見張りをするのも、その役割のひとつだ。
ベーノムは、絶対に信頼できる部下だけをここに詰めさせて、ここでどんなことが行われているかは、絶対に余人の洩れないようにしている。
そのベーノムの部下に見張られて、アンは外に行くこともできないし、どこにも連絡も取れないのだ。
それは、このノヴァも同じだろう。
そしてアンは、キシダインによって、この奥の院で性奴隷のように残酷に抱かれ、最近では、娼婦のように客人の性の相手などをさせられたりしている。
だが、ベーノムの部下たちは、さすがにアンに手をつけることはない。
しかし、その犠牲になっているのが、このノヴァだ。
ノヴァは、この奥の院に入っている者では、アン以外では唯一の女になるが、いつの間にかベーノムの部下たちの欲望のぶつけ先のようになってしまい、朝に昼に夜にと、この奥の院のあちこちで彼らに犯されているのをアンは知っている。
だが、アンにはどうすることもできない。
いまも、アンに食事を運ぶ途中で、ベーノムの部下の誰かに捕まって犯されたに違いない。
アンにできるのは、こうやって抱いて慰めることだけだ。
こんなアンと一緒にキシダイン邸にやってきたばかりに、そんな境遇に陥らせることになったノヴァに、アンは申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「……ア、アン様……。あ、あの食事を……」
ノヴァはアンの胸の中で言った。
「そうでした。では、続きは食事のあとに……」
アンはくすりと笑って、ノヴァを放した
ノヴァが真っ赤な顔になった。
可愛い娘……。
思わず微笑んでしまった。
アンは食事の載った台車に手を伸ばした。
「あ、あのアン様……。そ、その食事には、その……び、媚薬がたっぷりと入っております……。食べ物にも、飲み物にも……」
ノヴァが周りを気にするように小さな声でささやいた。
アンは手に取ったさじを動かす手を思わずとめた。
なんらかの魔道の手段でベーノムの部下たちが、この部屋を四六時中見張っているのは知っている。
ノヴァは、アンの食事に媚薬が入っていることを教えてはならないことになっているのかもしれない。だから、こんなにかすかな声でささやいたのだろう。
「そう……」
アンはとめていた手を動かして、食事を口にすることを再開した。
躊躇したところで、食事をしないわけにはいかないし、食べるのをやめれば、ノヴァがそれをアンに教えたことがばれて、懲罰を受けるのはノヴァだろう。
「……も、申しわけございません……」
ノヴァは食事を続けるアンに対し、泣きそうな顔で俯いて言った。
また、食事に媚薬が混ざっている理由もわかる。
おそらく、今夜、またキシダインが客人にアンを抱かせるために、ここに連れてくるのだ。
だから、その前に、アンを悶々とさせておこうということに違いない。
いずれにしても、キシダイン自身がアンを抱きにくることは、もうない……。
ほかの男にアンを抱かせるようになったのは、この半月ほどだが、キシダインには「自分は中古になった女には興味がない」とはっきりと言われていた。
また、前もって媚薬を服用させるのは、アンが淫乱体質の女だと客に信じさせるためだ。アンが男を抱くのは、アンの我が儘だということにするのだ。
また、媚薬を飲んでいることを相手の男に教えるのは禁止されていた。
「どんなお客様なのかしら……」
アンは何気なく言った。
別段の興味があったわけではない。
ただ口からこぼれただけの言葉だ。
「も、申し訳ありません。タリオ国からやって来るキシダイン様の古くからのご友人のグラム兄弟様というご兄弟とか……。今度、行われる王軍大演習を見にこられるということで……。ほ、本当に申し訳……」
ノヴァがしくしくと泣き出してしまった。
アンがその客に抱かれるということを嘆いていると思ったのだろう。
アンは驚いて、食事をしていた皿を横にやって、ノヴァを抱き締めた。
「おお、いいのよ、ノヴァ……。泣かないで……。でも、王軍大演習なんて懐かしいわね。いつか一緒に行きましょうね。お前は、王宮にいるときに行く機会がなかったから、機会があれば行きましょう。あなたはわたしの横よ。仲良く手を繋いで行くのよ。きっとね」
アンはノヴァを抱き締めながらささやいた。
王軍大演習とは、王都の外で実施される国王閲覧の大規模な軍隊の模擬演習だ。
軍集団で実施する演武のようなものであり、花火のように魔道も飛び交い、演習というよりは大規模な見世物のお祭りだ。
王候貴族のみならず、王都市民もたくさん集まり、出店なども出て大変に賑わう。
アンは毎年行っていたが、もちろんキシダインに嫁いでからは一度も行ってない。これからも、二度と行くこともないだろう。
だから、一緒に行こうなんて、ありえない夢を語るだけの戯れ言だ。
ノヴァもそれがわかっている。
アンの腕の中でくすりと笑った。
「姫様とあたしのような下働きが手を繋いでですか? 笑われますよ、姫様」
ノヴァが小さく悪いながら言った。
アンはノヴァがほんのちょっと愉しそうにしてくれたのが本当に嬉しかった。
「……お前は侍女よ。それにいいのよ。笑いたい者は笑えば……。それよりも、食事のあと、少しのあいだ、ここですごしてくれない……。た、多分、この食事を食べさせるのは、また、接待があるのでしょう……。また、見知らぬ男に奉仕する前に……あ、あなたに……。ふうっ……」
アンは突然に襲って来た強烈な身体の疼きに思わず嘆息した。
これは余程の強い媚薬が含まれているようだ。
まだ食事の途中だというのに、身体が火照り切り、全身の毛穴から一斉に汗が噴き出してきた。
なによりも、局部の猛烈な痒みのような疼き……。
アンはあまりの急激な身体の昂りに、息が苦しくなってしまった。
「ア、アン様──」
突然に荒い息をし始めたアンに驚いて、ノヴァが身体を支えるように手を伸ばした。
「だ、大丈夫よ……。そ、それよりも、こ、今夜のお客様はす、すぐに来るのかしら……。そ、それとも時間がある……?」
アンはノヴァを見た。
「まだ夕方なので、ここにおいでになるまでには時間があると思います……。そ、それと、こ、これも命じられているのですが……。食事のあとで、アン様の御召し物はすべて部屋の外に出してしまいます。ほ、本当に、申しわけ……」
ノヴァが言った。
アンは背中を支えるように手を伸ばしていたノヴァの手に、自分の手をそっと添えた。
「あ、謝らないで……。そ、それよりも……。いや?」
アンはノヴァを見た。
ノヴァはまずます真っ赤になった。
「……こ、この部屋に入る前に……犯されました……。ふ、拭きましたが、身体を洗っておりません……。け、汚れています」
「汚れているのは、わたしも同じよ……。それよりも、ここで、またわたしと愛し合うと、ベーノムたちに笑われる……?」
アンはそれが心配になり言った。
部屋は監視されているのだから、ここでなにかをすれば、それは見張っているベーノムたちに、すぐに知られることになる。
ベーノムたちはキシダインに禁止されているので、この部屋に入ることはない。だから、アンが彼らにからかわれることはない。
しかし、ノヴァは逆に、ここにやって来て、アンの世話をする時間以外は、ずっとベーノムの部下たちと接するのだ。
女主人と百合の関係になったノヴァのことを彼らは、侮蔑とからかいの材料にしているに違いない。
「か、彼らのことは気にしないでください……。アン様のご迷惑にならないように努力します……。あ、あの……、それと、先程のことについては、よ、喜んで……。う、嬉しいです……」
ノヴァがアンから手を離して、服を脱ぎ始めた。
置く場所のない服をノヴァは床に畳んで置いていく。
アンは、急いで残りの食事をかき込むようにして口に入れた。
もう十分だが、ある程度は減らさないと、監視人たちは満足しないだろう。
とにかく、与えられたものの半分ほどを口に入れた。
そのあいだに、ノヴァは完全な素裸になった。
ノヴァの身体には、確かに、たったいままで男に犯されたような気配がある。
そして、可愛らしい身体だが、その身体のあちこちには痣のようなものがある。普段から乱暴に犯されるために、残ってしまったものだ。
また、股間には恥毛はない。
これもベーノムの部下たちから遊び半分で、寄ってたかって剃られたようだ。
ノヴァはなにも言わないが、キシダインが一度面白おかしく、ノヴァの境遇についてアンに語ったことがある。
この部屋の外では、相当にむごいことをノヴァはさせられているようだ。
アンは、この部屋の隅にある魔道の「落とし箱」に排尿や排便をすることができるが、ノヴァのためのものはなく、男のために設けられている場所で、男たちの前でしなければならないのだそうだ。
それを知ったとき、アンは、ノヴァには今後はここで粗相をするように厳命した。
男たちは、原則としてここには入って来れない。
だから、ノヴァは邪魔されずに、ここで排便もできる。
ほかにも、犬のように首に紐をつけられて、奥の院を歩きまわされるとか、ここに入る用事のないときには、嫌がらせで服を隠されて、男たちの前で全裸で家事をするとかである。
もちろん、男たちは食事をするように、ノヴァを犯すということも教えられた。
キシダインの語るノヴァの境遇は、耳を覆いたくなるものばかりだった。
だが、ノヴァは絶対にアンにはなにも言わない。
ただ、いつも、アンに申し訳なさそうに謝るだけだ。
しかし、それを知ったとき、アンは求めるように、ノヴァと身体の関係になった。いまでは、ノヴァなしにアンは生きてはいられない。
アンは食事をやめると、すぐに自ら服を脱いだ。
アンが身につけているものは、寝着一枚であり、それを脱ぐと完全な素裸だ。
必要なとき以外には、下着も与えられない。
この部屋そのものにはアンの服など一枚もないので、ノヴァが持って来ない限り、アンは与えられたものだけを着るしかない。
「来て……。来てください、ノヴァ」
アンは寝台に横になった。
いまごろは、また始まったと、ベーノムの部下たちが、魔道の監視具の前で笑い合っていることだろう。
さっきも口にしたが、笑いたければ笑えばいい。それは、アンの心からの気持ちだ。
アンはノヴァを愛しているし、ノヴァもまたこんなアンを愛してくれている。
それのなにが悪い……。
なにが悪い――。
「姫様、愛しています……」
素裸のノヴァがアンの上に覆いかぶさって来た。
ふたりで愛し合うときには、いつもアンが「女」で、ノヴァが「男」だった。
別にそう決めたわけではないが、いつもそうなる。
ノヴァの手が開いているアンの太腿の上をすっとなぞった。
「ううっ」
アンは首をのけぞらせて大きな呻き声をあげた。
媚薬にただれた身体を愛撫される衝撃は強烈だ。
アンは一瞬にして、愛欲の嵐の中心に引きずり込まれる。
「ああ、可愛い姫様……。姫様、お慕いしております……。ノ、ノヴァは……アン様が……」
ノヴァの手が上下に動きながら、次第に股の付け根に近づいてくる。
「あ、ああっ、ああっ」
アンは沸きおこわる快感に白い歯を噛み鳴らした。
「む、胸を舐めてください、アン様……。あ、あたしも、アン様の胸を揉みます」
ノヴァが人差し指で股間に亀裂から突起を優しく触れながら、反対の手で片側の乳首を挟み揉む。
「んふううっ」
身体を快感の槍が貫いた。
アンは、身体を弓なりにして悲鳴のような声をあげてしまった。
「ほら、アン様、あたしの胸ですよ」
ノヴァがくすくすと笑いながら言った。
「は、はい」
アンは慌てて、口を開いた。
顔にノヴァの乳房が覆いかぶさる。
「ああっ、す、素敵──。ひ、姫様、噛んで。噛み千切ってください。も、もっと強く──」
ノヴァがアンの胸と股間を愛撫しながら、いきなり感極まったように叫んだ。
まさか、本当に噛み千切るわけにはいかないが、歯形がつくのではないかと思うくらいには強く噛んだ。
するとノヴァは、快感に酔いしれたように絶叫した。
そして、ふたりで二匹の雌になり果てた。
お互いに相手の全身に舌を這わせ合い、肌を擦り合わせ、思うままの場所を触り合った。
ノヴァは真っ直ぐにアンに添う体勢から、いつしか横になり、あるいは完全に逆になり、そうやって姿勢を変化させては、アンを愛してくれた。
やがて、アンは快感の頂点に達しかけた。
そして、再びノヴァに真っ直ぐに覆い被されて、股間に顔を埋められて、舌で敏感な肉芽を繰り返し弾かれたとき、目の前に火花のようなものを飛び散ったと思った。
来る……。
そう思った。
大きな快感の頂点がそこまで来ている。
「んふうううっ」
アンは思い切り太腿でノヴァを挟みつけた。
脚に圧迫されながらも、ノヴァはアンの股間の前でくすくすと笑った。
そして、アンが絶頂する寸前で、さっと舌をアンの股間から離した。
「アン様、一緒にいきましょう。ノヴァが導きますから」
身体を起こしたノヴァが片脚をアンの脚に挟むように置き、女陰と女陰をぴったりと当てるようにした。
そして上下に動き出す。
アンもノヴァも狂乱した。
ふたりの股間がねちゃねちゃと淫らな水音をたてる。
再び絶頂の兆しを感じたのは、あっという間だった。
今度は、ノヴァもまた激しい乱れの最中だった。
アンはノヴァの身体を抱き締めた。
すると、ノヴァもアンを抱き締めてくれて、しかも、唇を唇に重ねてくる。
アンは夢中になって、ノヴァの舌に自分の舌を絡ませた。
「あふうううっ」
「ああ、はああっ……」
アンとノヴァはほぼ同時に絶頂した。
しばらく、絶頂の余韻のまま股間を擦り合わせ続けたが、やがてがっくりとノヴァの身体が脱力し、アンの身体に添う体勢で被さった。
ノヴァの身体は小柄で華奢であり、最初に会ったときのような少女の面影を十分に残していた。
それでいて、ノヴァはこれだけの快感をアンに与えてくれる。
ノヴァと抱き合ったときほどの快楽を男たちに抱かれて感じることはない。
どんな媚薬を使われてもだ。
キシダインやほかの男たちから与えられるのは、身体の気持ちよさにすぎず、ノヴァとの交合により得られる心の充実感とは異質のものだ。
アンは、ノヴァの裸身を下からぎゅっと抱き締めた。
「あ、あなたには申し訳ないと思っています……。こ、こんなことをして……。で、でも、わたしには……」
アンは呟いた。
─でも、わたしには、このノヴァとの愛が必要なのだ。……さもなければ、この屋敷での生活には耐えられない。……ノヴァの存在が、この囚われた娼婦のようなアンの心を支えている。
アンはそう言おうとした。
だが、ノヴァの唇がアンが続く言葉を口にするのを阻む。
アンは、ノヴァが口に舌を蹂躙するまま、束の間、ノヴァが差し入れる舌を吸い、唾液を交わし合った。
「……姫様、なにも言わないで……。それに、これだけは言っておきます……。あたしは結構幸せです……。姫様とこうやって愛し合えるのですから……。姫様がまだ宮殿におられたとき、初めてお会いしたときから、お慕いしておりました……」
ノヴァが言った。
アンは、もうなにも言わず、ただ黙ってノヴァの裸身を抱き締め続けた。